酔眼独語 

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「シーレーン防衛」の合唱が始まる

2008-04-22 04:32:38 | Weblog
 日本時間の21日午前10時すぎ、中東イエメン・アデンの東約440㌔の沖合で、日本郵船所有の大型タンカー「高山」(15万トン)が海賊と見られる小型船舶の銃撃を受けた。被弾した船体の一部に穴が開き、燃料漏れを起こしているが航行に支障はないという。(共同)

 これはなかなかインパクトがある事件だ。サウジと極東を結ぶ大型タンカーが海賊だかゲリラだかの襲撃を受けた。当初、小型船はロケットランチャーを撃ち込んできたとも伝えられた。

 アデン湾は中東原油のメーンルートではないが、スエズ運河経由の船舶が多く集まる海域だ。今回の襲撃はソマリアの海賊と見られる。「アフリカの角」が凶暴さをむき出しにしたということなのだろうか。

 日本国内ではシーレーン防衛の重要性を訴える議論が高まるに違いない。現に今回の襲撃では周辺に展開する多国籍軍の艦船が出動した。わが海自はこれらへの給油などを行っている。襲撃によって任務の必要性が裏打ちされた格好だ。補給艦を警護する護衛艦の増強などという意見も出てきそうだ。

 全く的外れな主張ではないだろう。ただ、襲撃の意図や背景が不明のうちから、大騒ぎするのは考え物だ、事の真相を見極める慎重だがあっていい。

 日本やアジアに与える影響は軽視できない。こうした事態が続けば、ドバイ原油の価格や船舶保険が一段と跳ね上がる恐れがある。ペルシャ湾やマラッカ海峡も含めて船舶の安全航行をどう確保するか。国際社会の難題がまた一つ増えた。

 世界の耳目が中東に向けられている間に、アフリカがとんでもないことになっている。ソマリアは無政府状態だ。紅海に面したエリトリアも紛争が絶えない。エチオピアの内紛も収まらない。いまやアフリカ中にゲリラが跋扈している感がある。

 これらは米国主導のアルカイダ掃討作戦と無縁ではない。アフガンなどを追われたゲリラはアフリカの貧困地帯に逃げ込み、拠点づくりに励んでいるらしい。こうなると対アルカイダ戦は、もぐらたたきのようなことになる。米国の戦略ミスが招いた混乱といってもおかしくはない。

 さて、こうした地学リスクの高まりにわが国はどう対処するのか。

 国際海事局の調べによると、昨年世界で起きた海賊襲撃事件などは計263件、海賊銀座のマラッカ海峡が中心で、紅海・アデン湾は13件、ソマリア沖は31件となっている。

 船会社は「警戒態勢を強化するしかない」と話すが、自前の護衛隊を雇いでもしなければ無理だろう。

 そこで浮かび上がるのが、先に述べた海自による護衛活動の強化である。日本のエネルギー確保という重要任務を帯びる。多国籍軍への給油よりは国民の理解も得やすい。沿岸国の了解さえ取れれば、派遣に問題は少ない。概ねこのような論議が交わされることになろう。

 それこそ、海自の海外独自展開につながる行動であり、「油のためには」などと容認すると一気にエスカレートしかねない。しっかりと推移を見守りたい。
コメント
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