酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

「空自イラク派遣は違憲」、胆の坐った裁判長だ

2008-04-17 22:33:36 | Weblog
 正直びっくりものの判決だ。

 名古屋高裁で争われていた自衛隊のイラク派遣差し止め請求訴訟控訴審のことである。青山邦夫裁判長は、控訴自体は棄却したものの「イラクで活動する航空自衛隊の活動は多国籍軍の武力行使と一体であり違憲。バグダッドは戦闘地域であり、空自の派遣はイラク特措法にも違反する」との判断を示した。

 明快な判断である。一審が憲法判断を避け、「自衛隊員でない原告には訴える利益がない」と門前払いを食わせたのとは対照的である。

 最大のポイントは「空自活動が多国籍軍の武力行使と一体化している」という点にある。物資輸送は戦争継続には欠かせない。むしろ、兵站が戦局を規定するといってもいい。これは軍事の常識でもある。「軽装備の兵を運ぶのは問題ない」「直接戦闘にに使う武器弾薬を運んでいるわけではない」。政府のこれまでの説明である。かなり苦しい論理だ。3年前の国会で小泉首相が脂汗を流したのも当然だろう。

 水や食料は当然にも戦略物資である。燃料も同様だ。それなくしては戦争ができない物資を運ぶことは、当該の軍の行動と一体化している。こうみなすべきだろう。

 自衛隊の行動を憲法9条違反と認定したのは、1973年の長沼ナイキ基地訴訟判決以来である。高裁段階での違憲判断は初めてだ。

 政府の反応は噴飯モノである。首相は「傍論でしょ、関係ない」。官房長官も「空自おりの活動に影響を与えるものではない」という。気分は分からないでもない。

 でも、わが国の行政のトップが高裁判断を公然と無視するコメントを発するのはいかがなものか。「判決内容を仔細に検討し、しかるべく対応する」。せめてこれぐらいのことを言えないのか。あからさまに司法判断を否定しては、法治国家の長たる資格が疑われる。

 それにしても、この青山さん。どこに異動されたのでしょうか。戦後の裁判史上に残る判決言い渡しを他人に委ねることになった感想もぜひ聞いてみたい。

 長沼訴訟の際は、札幌地裁所長が担当の裁判長に圧力を掛けていたことも明らかになっている。本件裁判長も今後、さまざまな圧力にさらされるだろう。

 青山裁判長はきっと硬骨漢に違いない。イラクでの空自の活動が違憲だというのは、かなりの市民に定着した考え方だ。半ば常識である事態について、あらためて「違憲だ」と言わねばならないところに今日の日本の不幸がある。

 違憲は違憲なのだ。政府自らが司法判断を無視していては、中国の「人治」を笑うどころではない。国会も違憲判断にどう従うかが問われている。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする