東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

梨木坂

2011年09月04日 | 坂道

梨木坂下 梨木坂下 梨木坂下 梨木坂中腹 前回の三宅坂中腹から青山通りを南へ横断し、右折し、社会文化会館の角を左折すると、梨木坂の坂下である。まっすぐに上っている。平坦な道がちょっと長いが、坂自体は短く、勾配は中程度よりも緩やかといったところか。右側は石垣が続いており、坂上で右折すると国会図書館の出入口である。

坂上西側の歩道わきに標柱が立っているが、次の説明がある。

「この坂を梨木坂(なしのきざか)といいます。『江戸紀聞』では"梨木坂、井伊家の屋の裏門をいふ。近き世までも梨の木のありしに、今は枯れてその名のみ残れり"とかかれています。さらに『東京名所図会』には"陸軍省通用門と独逸公使館横手の間なる坂を梨木坂といふ"とかかれています。」

梨木坂中腹 梨木坂中腹 梨木坂上 梨木坂上 尾張屋板江戸切絵図(麹町永田町外桜田絵図)を見ると、井伊邸と三宅邸との間に三宅坂から南西へ続く道があるが、その先に南への道が井伊邸の裏手を通っている。ここが梨木坂と思われるが、坂名も坂マークもない。近江屋板には、坂名はないが、坂マーク△がある。坂上近く西側は、細川豊前守の屋敷である。

『御府内備考』には「梨の木坂」としてのっているが、上記の標柱と同じ『江戸紀聞』が引用されている。

石川は、坂下が井伊邸の裏門口にあたり、そこにあった梨の木が目印とされたのであろう、としている。

明治になってから旧井伊邸跡が陸軍省などの敷地になったが、明治地図(左欄のブックマークから閲覧可能)を見ると、この坂下の東側(いまの社会文化会館のあたり)に近衛師団などがあり、その東南に陸軍省がある。その通用門がこの坂にあった。
(続く)

参考文献
横関英一「江戸の坂 東京の坂(全)」(ちくま学芸文庫)
山野勝「江戸の坂 東京・歴史散歩ガイド」(朝日新聞社)
岡崎清記「今昔 東京の坂」(日本交通公社)
石川悌二「江戸東京坂道辞典」(新人物往来社)
「嘉永・慶応 江戸切絵図(尾張屋清七板)」(人文社)
市古夏生 鈴木健一 編「江戸切絵図 新訂 江戸名所図会 別巻1」(ちくま学芸文庫)
「古地図・現代図で歩く明治大正東京散歩」(人文社)

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