あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

下行の解離やりました。

2009-11-20 18:17:02 | Weblog
ぐぐっと寒くなりましたね、という事で今週は月、火と解離が続き、月曜日野はTARとなり、止血困難で12時間を越える手術となり、もう、睡眠サイクルが完全に狂い、ダメージ回復に時間がかかりました。火曜日の解離はみんな疲労困憊という事もあり、私に執刀が回ってきました。チャンス到来です、ここで業績を上げて、ボスに認めてもらわなくてはいけません。
下行の嚢状瘤の解離でありましたが、最初は前医でも破裂という事で、転送されてきまして、たしかに術前のCTでは嚢状瘤の部分が破裂に見え、破裂のつもりで手術に望みましたが、開けてみたら瘤の解離でありました。
中枢は弓部手前まで、末梢は横隔膜まで、その先もたぶん、解離してまして、下行の解離の手術は初めてであり、どうしたものかと思いましたが、嚢状瘤で解離を起こしたものと考え、とりあえず、瘤の部分のみ、人工血管で置換することといたしました。急性期なので、2連銃にして外膜のみで吻合するわけにはいかず、GRFグルーで内膜、外膜をあわせて断端形成して吻合しました。
もし、エントリーが他にあれば吻合部に圧がかかってしまいますが、仕方ありません。
Th7-8は結紮、Th9は温存しました。
幸い吻合部からの出血はなく、すぐに閉胸となりまして、2時間40分で終了。
緊急のときって、予定の手術と比べて、急いでる分、意外と早く終わったりするのね。とはいっても、今回もボスの前立ちで、ここ掘れワンワンでしたけど。

下行の手術はこれでまだ、2例目でありますが、いつも思うのですが、ほんとの下行であれば、手術自体はしっかり視野が取れれば、AAAより簡単なのではないかと思います。
すべては段取りというか、視野を出すことかと思います。
ボスの話では、大動脈の外膜というのは、末梢に行けば行くほど強くなると、確かに、上行の解離のときは外膜はペラペラだけど、AAAとか末梢血管とかでは、石灰化で内膜剥離しちゃって、外膜のみで吻合することも間々あるわけで、今回も下行の外膜は思ったよりしっかりしてまして、安心して吻合ができました。

という事で、術後は腎機能が悪化してしまい、一度だけ透析しましたが、対麻痺もなく、ご飯も食べてくれています。
明日ぐらいには離床を試みたいと思います。