あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

久々に興奮

2009-10-18 20:44:43 | Weblog
今週は家に帰ってません、前半は学会に行って遊んでたのですが、水、木、土と当直、唯一帰れた金曜日も、帰宅は午前2時、4時間寝に帰っただけで、今日は当直あけて、久々に家でのんびりしようと思っていたら、帰る間際に、さっき引き継いだ内科のO先生に引き止められ、AMIの自由壁破裂が来るととのことで、帰るチャンスを失いました。
しかし、本日、日曜日、うちの外科医はみんなプライベートでお忙しくて、誰も捕まらず、いたのは研修医上がりのペーペーのみ、それでもいないよりいくらか増し、看護婦も1人、ME1人、計4人で、日曜日の手術室でひっそりと行いました。
これを、チャンスといわずして、なんと言いましょう。
あまり頭を使う手術ではありませんが、久々の開心術で、リーダーとして冷静を装ってましたが、心の中は大興奮。
ちょうど、数ヶ月前の学会で傍聴した心破裂のセッションが頭の中によみがえりました。
執刀前にボスと電話がつながり、縫ったらあかんぞー、タココンブ貼り付けて閉じてくるだけやーといわれ、はいと答えておきましたが、先の学会の話では、タココンブだけでは再破裂の可能性が高いということが話題になっており、みな、いろいろな補強方法をなさっておりましたので、そのときの記憶をたどって、ちょっと工夫しました。
とりあえず、開けてみたら、心尖部のoozing ruptureでしたので、まずは院内にあるだけのタココンブ6枚全部つかって、ひたすら押さえて止血。
その後は、再破裂の予防に馬心膜一枚まるまるフィブリン糊で貼り付けて、ずれないように健常な心筋部位に4針で固定。
それでも心配でしたので、さらにサージゼルシートを一枚でかでかと、これまたフィブリン糊で貼り付けて補強と、3層に被覆しました。
心筋はAMI後という事で、高度の浮腫をきたしており、心嚢内になかなかおさまらず、何箇所か、心膜に切開を加えて、押し込んできました。
それでも、心嚢内はパンパンなのでしょう、術後はやはりタンポナーデ様の血行動態になっています。
IABPとカテコラミン大量サポートでなんとか帰室しましたが、肺は真っ白だし、血行動態は不安定だし、おしっこは一滴もでないし、術後が大変です。
前壁は全くといっていいほど、動いていませんが、しばらくして、心筋の浮腫が引いてくれば、血行動態が安定してくるのでしょう。
肺もいっぱいいっぱいですが、血行動態が改善するまでは、なんとか肺をだまして、ボリューム入れて血圧を保つしかないのでしょう。
という事で、今日も帰れそうにありません。

そういえば先日の台風で、うちの家庭菜園すべてぶっ壊れて、庭がメチャクチャなことになっていますが、あれからずっと休みが取れず、そんまんまなんです。
今日やろうと思ってたのにー、あー。
でも、久々に手術できたので、よし、日ごろの溜まっていた鬱憤も少しは晴れました。
でもほんとは、こんな緊急とかばかりでなく、定期の予定手術をやらせてもらいたい、といいたいところですが、贅沢ですね。
また、チャンスを待つのみ。