杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

プレシャス 試写会

2010年04月15日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
一ツ橋ホール 19:00~

2010年4月24日公開予定 アメリカ 109分

1987年、ハーレム。16歳の黒人少女クレアリース“プレシャス”ジョーンズ(ガボレイ・シディベ)は、二人目の子供の妊娠が学校に知れ退学になる。二人共、実父に性的虐待を受けて出来た子供だった。母親(モニーク )からも虐待を受けていた。しかし、代替学校に通い始めたプレシャスは、レイン先生(ポーラ・パットン)と出会い、読み書きや学ぶことの楽しさを知るようになる。そして、劣悪な環境から抜け出そうと家を出るが・・。

ハル・ベリーの『チョコレート』のプロデューサーだったリー・ダニエルズの初監督作品。
両親からの虐待に苦しむ黒人少女が、一人の教師に出会い、学ぶ楽しさを知ることで自分の未来について考えるようになる物語でした。

実父からのレイプによる妊娠や母親からの虐待という、とても信じられないような辛い現実の中でも、自我を持ち、周囲の助けを借りながら必死に生き抜こうとするヒロインの姿はその名前の通り気高く感じられました。

理想とは程遠い毎日を送るプレシャスの唯一の慰めは現実逃避の夢を見ること。その明るくてゴージャスな空想世界と辛い現実の対比が何とも切ないです。ヒロインの見かけはお世辞にも可愛いとは言えず(はっきり言えば醜い)母親に頭が悪いと言われ続けて育ったのですから勉強に無気力になっていても仕方ない。(^^;

でも、代替学校でのレイン先生との出会いがそんな彼女を変えて行きます。「勉強したって何にもならない、お前はバカなんだから」と言われ続けて育ち、読み書きの出来なかった彼女が学ぶ楽しさに目覚め、同じように問題を抱えている仲間=友人と出会うことで愛し愛されることをも学んでいく様子は、萎れかかった植物が生気を得て輝くかのようでした。
(看護士役でレニー・クラヴィッツが出演してます

しかし明るい兆しが見え始めたのも束の間、今度は父親がエイズで亡くなりプレシャスにも陽性反応が出ます。それでも彼女は自分の手で子供たちを育てようとします。カウンセラー(マライア・キャリー)を交えた話し合いの席で母親の本当の気持ちを聞いた彼女は毅然として母に別れを告げるのでした。

この母親の独白がまた凄まじいの。無学で無知な女のたった一つの拠り所が夫なのは理解できるけれど、だからといって娘を犠牲にして許されることは絶対にないし、怒りの矛先を娘に向けるなんて言語道断です。ハーレムやブロンクスという劣悪な環境に蔓延る無知蒙昧という負の財産を抱えるアメリカのこれもまた一つの現実なんだねぇ

あまりにも違いすぎる環境に我が身の幸運を振り返り感謝せずにはいられない気持ちになりました。

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