杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ダラス・バイヤーズクラブ

2014年09月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年2月22日公開 アメリカ 117分

1985年、テキサス生まれの電気技師ロン・ウッドルーフ(マシュー・マコノヒー)はロデオと酒と女の気儘な日々を送っていたが突如倒れる。病院のベッドで目覚めた彼に、医師はHIV陽性反応が出たことを告げ、余命30日と宣告する。俳優ロック・ハドソンが実はゲイでありエイズに冒されたと公表され、ゲイ=エイズという盲目的な偏見が蔓延していた時代で、同性愛者でもないのになぜ自分が!?と納得できないロンは、図書館で情報を漁り、異性との性交渉でも感染することを知る。また当時臨床試験が開始されたばかりのAZTの処方を担当医のイブ(ジェニファー・ガーナー)に頼むが断られてしまう。生きる欲求に駆り立てられて、ロンは代替薬を求めてメキシコへ渡り、毒性の強いAZTではなくアメリカでは未承認だが効果が見込める薬を国内で売りさばくことを思いつく。販売ルートを広げるため入院仲間だったトランスジェンダーのレイヨン(ジャレッド・レト)を仲間に引き入れ設立した「ダラス・バイヤーズクラブ」は、会費を払った会員に必要な薬を無料で配るシステムで、名目上薬の売買はないため法の網をすり抜けることができた。しかし、AZTの製薬会社や医師たちが自分たちの利益を守ろうと彼らの前に立ちはだかる。ロンは弁護士を雇い、生きるために国と徹底抗戦の構えをとるが・・。


実話に基づいた映画だそうです。主演のマシュー・マコノヒーは役作りのために21kgの減量をし、第86回アカデミー賞主演男優賞を受賞しています。

ロンの発症前の生き方は決して褒められたものでも共感できるものでもありません。まさにテキサスの田舎者丸出しで、ゲイに対しての偏見も当然のように持っていました。それなのにゲイがなる、ゲイしかならない筈のエイズを自分が患っていると聞かされて、初めは信じようとしません。けれど調べるほどに自分の症状が当てはまることに気付き愕然とします。仲間も友人も離れていく中で、やっと見つけた未承認薬の治験も拒絶され、藁にも縋る気持ちでメキシコに渡った彼は、そこでアメリカでは未承認だけれど効果の見込める代替薬に出会います。生きるために必死に学ぶ彼は、そこらのぼんくら医者より遥かに治療薬の専門家然としてきます。AZTの毒性に気付きながらも製薬会社の手先に成り下がった医者とは大違い

それでも彼一人では人望もなく販売ルートを広げることができません。友人たちはエイズになったロンをゲイと疑い距離を置いています。それならと状況を逆手にとり、ゲイのレイヨンを仲間に引き込んで彼の持つネットワークで同病の患者を募ることを思いついたロン初めはゲイを軽蔑していた彼の偏見も次第に解けていきます。確かに性癖は異なるけれど、それ以外何も自分たちと変わらないことに気付くのです。

レイヨンはイブの友人でもあります。治験対象者ですが、自分の友人に薬を分けていて、ロンが自分にもと頼んだ時に「三等分にはできない」と断ります。ロンの偏見に傷つき憤慨していたレイヨンですが、一緒にクラブに携わるようになるにつれ二人の間には友情が生まれていったようでした。ジャンキーなレイヨンをロンは最後まで心配していました。イブは医者として病院(上司)の方針に従わざるを得ませんが、個人的には毒性を知りつつ投与することが倫理的に正しいのか苦悩しています。彼女はロンたち患者の背負った苦しみに共感しますが、そのために病院を追われることになります。彼女を突き動かしたのは生きることに必死なロンたちの姿だったのかも。

自分たちの利権にしか目が向かない国や企業といった権力者たちに個人で抵抗し声を上げたロンのような存在があったからこそ、状況も改善されていったのでしょう。今なお有効な認可薬のない病気は沢山あり、患者さんたちはより安全で有効な新薬を求めています。安全性の確認はもちろん必要だけれど、情報の公開と共有はこれからもどんどんなされるべきと思います。ロンが投じた一石は大きな意味があったと感じる作品でした。

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