杏子の映画生活

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おとなになって読むアンデルセン

2014年04月29日 | 
須田諭一(著) メトロポリタンプレス(発行)

(はじめにより)
今、なぜアンデルセン童話なのでしょうか?アンデルセンが生きた貧しい時代のデンマークと現在の日本。
物質的な部分ではもちろん異なりますが、孤独などの心の問題はとても似ています。
そこで大人になった今、もう一度アンデルセン童話を読み、大人の視点で新しい教訓を発見して人生の糧にしたいと思います。日常にうるおいを与えるために、もう一度、アンデルセン童話を読むというわけです。


【目次】(「BOOK」データベースより)
・人魚姫ー失恋を繰り返したアンデルセンの経験から生まれた悲話
・おやゆび姫ー恋愛、そして意外な結末。とくに女の子に人気のある物語
・ブタ飼い王子ー欲しい物を手に入れるためにキスをするお姫様
・はだかの王様ー人間、いちばん言ってはいけないこと、それは真実
・すずの兵隊さんーアンデルセン・マジックが炸裂する物語
・赤い靴ーアンデルセンの幼少期の経験がちりばめられた物語
・みにくいアヒルの子ー貧しい生まれ、作家として成功した自分を投影した物語
・ヒナギクー強者のエゴに怒りをぶつけた傑作
・マッチ売りの少女ー当時のデンマークの社会を現わした悲話
・さやからとび出た五つのエンドウ豆ー童話の傑作。シンプルで楽しい物語
・イーダちゃんのお花ー知人の娘をモデルにした初期の童話
・あの女はろくでなしー純愛を描いた大人向きの恋愛童話
・雪の女王ーうつくしい心とは?出会いと成長を描いた童話
・のろまのハンスー本当の頭の良さや自立心を考える童話
・空とぶトランクー未熟な精神が生む未熟な恋愛。恋愛童話の傑作
・雪だるまーアンデルセン童話の根底のテーマ”無常”を描いた物語
・あるおかあさんの物語ー十五ヶ国語で翻訳された恐怖童話の傑作
・影shadow-幻の名作。童話というには難解な物語

18編のアンデルセン童話のあらすじの後で筆者の視点での解説が加えられていますが、個人的には特に目新しい解説とは思えなかったので物足りなさが残りました。が、改めて童話のあらすじに触れたことで、子供の時にはわからなかった物語の背景や大人の事情といった側面を味わうことができたのは楽しかったです。

筆者は巻末でアンデルセンが何故あのような童話を書いたのかを彼の生育環境から論じています。
アンデルセンは貧しい家の生まれで、父は彼を可愛がったけれど、従軍し帰還した後で精神を病んで亡くなったこと。父方の祖父も火事で家を失ったことからやはり精神を病んでいたこと。母方の家系も自慢できるものではなかったことなど、彼の生育環境は決して安らかなものではなかったようです。しかし父も父方の祖母も想像力の豊かな人だったようで、このことが彼の創作活動にはプラスになったと言えるのかな。
コンプレックスや複雑な生い立ちが彼の人格を歪めている面は否めず、恋愛に関しても成就することはなかったそうです。筆者はアンデルセンを矛盾を抱えた不完全な人間として分析していますが、満たされない思いを童話に昇華させたのだとしたら、やはり彼は偉大な作家なのでしょう。
アンデルセンの童話は友情・親子愛・恋愛などの「愛」がテーマとして扱われていますが、弱者の視点と上流階級への批判が盛り込まれたものも数多いそうです。そんな豆知識と共にもう一度童話を読み直すのも面白いかも

それはそうと、大人になって童話を斜めや裏から読もうとする自分を、何も余計なことを考えずにお話自体を単純に楽しめた子供時代の自分が見たらどう思うのかしらん?

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