杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

イノセント・ゲリラの祝祭

2009年04月26日 | 
海堂尊 著 

東城大学医学部付属病院不定愁訴外来の責任者で、万年講師の田口公平は、いつものように高階病院長からの呼び出しを受けていた。高階病院長の“ささやかな”お願いは、厚生労働省主催の会議出席。依頼主は、厚生労働省役人にてロジカル・モンスター、白鳥圭輔。名指しで指名を受けた田口は嫌々ながら、東京に上京することを了承した。行き先は白鳥の本丸・医療事故調査委員会。さまざまな思惑が飛び交う会議に出席した田口は、グズグズの医療行政の現実を知ることに・・・・・・。

『田口・白鳥シリーズ』の第四弾です。舞台は桜宮市でも東城大でもなく、厚生労働省の一検討会の議場ということで、そこには殺人もサスペンスもありません。

医療事故を調査するための独立した組織創設の検討を目的とした「医療事故調査委員会創設検討会」といえば聞こえはいいけれど、実際は世間の目を誤魔化すうわべだけの会にしたい魂胆がミエミエで、そこに解剖至上主義の教授や司法・法曹の思惑が絡んでいく様は、現実もかくやというリアリティを感じさせてくれます。

シリーズの中で繰り返し登場する「エーアイ」が本作では堂々の主役。
著者はこれを書きたいがために、これまでのシリーズを展開したのかと思うほど、徹頭徹尾官僚の内部を辛辣にえぐりだす筆致は、田口風に言えば「少々げんなり」な感もあるのだけれど・・・

田口先生の雀荘仲間である島津・速水、そして今回の切り札として登場する彦根、デジタルハウンドドッグの異名を持つ加納警視正、バチスタ事件の被害者遺族に「螺鈿迷宮」で活躍の別宮記者など、それぞれの作品に散りばめられた人物たちも満を持しての再登場というところかな。

気になるのは檜山シオンの正体と、「北」の事件に潜入した姫宮の活躍。これは次回作以降のお楽しみかな。

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