今に伝わる酒呑童子のお話は、
こんなことがベースとなって形成されて来ていると。
カラツの神はそんなことを話してくれていたのです。
——————続きます。
そんなカラツの神の話を思い起こしながら、
僕は老ノ坂にある「首塚大明神」へと向かいました。
首塚へと向かう道は鬱蒼とした森の中にあって、
途中、ゴミの不法投棄も散見されました。
投棄もされるような場所なので昼間でも人っ子一人見当たらず。
薄気味悪さも満点。
「やはり、来ない方がよかったかな......」
と、昔、
頼光さん達に連れられて来た検め人(あらためにん)の気持ちも
よくわかる瞬間もありましたが、イザ着いてみると、
首塚のところだけは少し開けた空間となっていて、
キラキラとした木漏れ日も差し込み、
意外にも明るい雰囲気でした。
塚の辺りには、そこだけ、
脅しの効いた異様に大きい木々が門番のように立っていました。
「なるほど。確かにすごい地の力だ......
悪い気は、しない、な......」
僕はそう呟きながら、
深い森の中に突然現れた小高い塚の前に佇む鳥居をくぐり、
塚の上を螺旋を描くようにして作られている参道を歩き出しました。
参道を歩くとすぐに気がついたのですが、
途中までの無法地帯的な森の様相とは違い、
この塚だけは明らかに誰かが?
地元の方々が?大事に掃除も管理もしている様で。
塚の周囲には金網も張り巡らされ、清廉に守られていました。
僕は意外にも心地よいそんな参道から
ねーさんに到着のメールを送りました。
実はここに来る前、カラツの神からは、
「この塚へはねーさんと一緒に来て欲しい」
とも言われていたのです。
勿論、この時のねーさんは横浜の方のいたので、
ソレは「気持ち」の話ではありますが、
メールをするとすぐに電話がかかって来て、
僕は彼女と電話で話しながら塚の参道を登って行きました。
そしてこの時、
にわかに信じられないことが起こったのですが。
それは参道脇の背の高い草々がグルグルと、
まるで狂ったかのように!?
激しく円を描くようにして回り出したのです。
それも、僕が歩いていくのに合わせて!?
塚の下から上へと順々に回る草々も移動して来るのです。
この様子は電話で話していたねーさんにも実況中継をしていたのですが、
実はスマホの動画も残っていたりもしまして......
ただ、今見てもあまりに衝撃的な!?
映像なのでちょっと公には出来ない感じでもあり......( ̄ー ̄;)ウーン...
でも、その様子を表現してみれば上記した通りではあるのです。
カラツの神の言っていた「回る力」というか、
上昇気流というか、なんというか......
そんな草花がグルグルと回りまくる、
不思議な気力に満ちた参道を通って僕は塚の頂上に着きました。
頂上にある社(やしろ)の前に立つと、
ねーさんとの電話は繋げたまま本殿の前に置き。
静かに礼をして。手を合わせ。挨拶も交わし。
もう一度電話をピックアップして。
ねーさんからはそのままカラツの神のガイドをもらいつつ、
僕は犬の首が埋まっている塚があるという
社(やしろ)の裏の方へと回り込んでみました。
果たして、
社の裏には本当にこんもりと小さく盛り上がった塚がありました。
塚の上には石礫(いしつぶて)や割れた鬼瓦?
などが無造作に積み上げてあります。
ここで一つ明記しておきたいのは、この時、この地には、
首塚恐怖症!?であった僕は初めて足を踏み入れたのであって。
塚の細かい様子に関しては全くもって何も知らず。
ビジュアル的な予備知識なども殆ど無いまま来ていたのです。
ソレは電話の先にいたねーさんにしてもそうであって。
ましてや、本殿の裏にこんな塚があるなんていうことは知る由もなく。
そもそも、
その社(やしろ)裏の塚は社の前に立ってもまったく見えていない状態で。
イソイソと社の横を通り、わざわざ後ろに回り込み、
そうして初めて裏にそんな小さな塚があることがわかるのです。
さらにこの時、ねーさんは
「塚の上に岩がある」
と、この場所に来る前から明確に言っていて。
じっとその塚を見てみると、
こんもりと盛り上がった土の上に積まれている
沢山の石や瓦のカケラの奥下の方に埋もれる様にして、なんと!
確かに岩もあったのです。
ソレは決して大きなものではありませんでしたが、
沢山の石礫(イシツブテ)の中に混じる様にしてあったのです。
「さて、岩もあるね......奥に。
どうすればいい?
祝詞とか?
いるのかな?」
「ちょっと待ってね、、聞いてみる、、、
うーーんと、ただその塚の前で静かに立ってればいいって。
そう言ってる。
「そう。
じゃぁ、手を合わせて静かにしてみるよ。
電話は繋いでおくわ。唐津さんが言うように」
そうして、僕は大きな塚の頂上にポツンと置かれた社(やしろ)の、
そのまた後ろにある小さな盛土の前で背筋を伸ばし。
静かに佇み。
心を研ぎ澄まして手を合わせてみたのです。
塚の側に置いたスマートフォンは先ほどと同様、
そのまま横浜にいるねーさんと繋がっています。
そしてこの時、気がつくと、あれだけビビっていた!?
自分の首塚に対する恐れは嘘のように綺麗に消え去っていました。
目の前には森の深さを際立たせるような幾筋もの細い木漏れ日がキラキラと、
まるで白糸の滝の様に小さな石の塚の上に差し込んでいて。
両手を胸の前で合わせながら光源である真上の方を見上げてみれば、
そこには彼方の世界に繋がる錯覚が起きてしまう様な、
真っ青な、穴のような空がありました。
そんな辺り一帯には現実感の消失した、
嘘のように静かな時が漂っていました。
——————続きます。
☆「織部の唐津の酒呑童子」シリーズ過去記事☆
「1」「2」「3」「4」
こんなことがベースとなって形成されて来ていると。
カラツの神はそんなことを話してくれていたのです。
——————続きます。
そんなカラツの神の話を思い起こしながら、
僕は老ノ坂にある「首塚大明神」へと向かいました。
首塚へと向かう道は鬱蒼とした森の中にあって、
途中、ゴミの不法投棄も散見されました。
投棄もされるような場所なので昼間でも人っ子一人見当たらず。
薄気味悪さも満点。
「やはり、来ない方がよかったかな......」
と、昔、
頼光さん達に連れられて来た検め人(あらためにん)の気持ちも
よくわかる瞬間もありましたが、イザ着いてみると、
首塚のところだけは少し開けた空間となっていて、
キラキラとした木漏れ日も差し込み、
意外にも明るい雰囲気でした。
塚の辺りには、そこだけ、
脅しの効いた異様に大きい木々が門番のように立っていました。
「なるほど。確かにすごい地の力だ......
悪い気は、しない、な......」
僕はそう呟きながら、
深い森の中に突然現れた小高い塚の前に佇む鳥居をくぐり、
塚の上を螺旋を描くようにして作られている参道を歩き出しました。
参道を歩くとすぐに気がついたのですが、
途中までの無法地帯的な森の様相とは違い、
この塚だけは明らかに誰かが?
地元の方々が?大事に掃除も管理もしている様で。
塚の周囲には金網も張り巡らされ、清廉に守られていました。
僕は意外にも心地よいそんな参道から
ねーさんに到着のメールを送りました。
実はここに来る前、カラツの神からは、
「この塚へはねーさんと一緒に来て欲しい」
とも言われていたのです。
勿論、この時のねーさんは横浜の方のいたので、
ソレは「気持ち」の話ではありますが、
メールをするとすぐに電話がかかって来て、
僕は彼女と電話で話しながら塚の参道を登って行きました。
そしてこの時、
にわかに信じられないことが起こったのですが。
それは参道脇の背の高い草々がグルグルと、
まるで狂ったかのように!?
激しく円を描くようにして回り出したのです。
それも、僕が歩いていくのに合わせて!?
塚の下から上へと順々に回る草々も移動して来るのです。
この様子は電話で話していたねーさんにも実況中継をしていたのですが、
実はスマホの動画も残っていたりもしまして......
ただ、今見てもあまりに衝撃的な!?
映像なのでちょっと公には出来ない感じでもあり......( ̄ー ̄;)ウーン...
でも、その様子を表現してみれば上記した通りではあるのです。
カラツの神の言っていた「回る力」というか、
上昇気流というか、なんというか......
そんな草花がグルグルと回りまくる、
不思議な気力に満ちた参道を通って僕は塚の頂上に着きました。
頂上にある社(やしろ)の前に立つと、
ねーさんとの電話は繋げたまま本殿の前に置き。
静かに礼をして。手を合わせ。挨拶も交わし。
もう一度電話をピックアップして。
ねーさんからはそのままカラツの神のガイドをもらいつつ、
僕は犬の首が埋まっている塚があるという
社(やしろ)の裏の方へと回り込んでみました。
果たして、
社の裏には本当にこんもりと小さく盛り上がった塚がありました。
塚の上には石礫(いしつぶて)や割れた鬼瓦?
などが無造作に積み上げてあります。
ここで一つ明記しておきたいのは、この時、この地には、
首塚恐怖症!?であった僕は初めて足を踏み入れたのであって。
塚の細かい様子に関しては全くもって何も知らず。
ビジュアル的な予備知識なども殆ど無いまま来ていたのです。
ソレは電話の先にいたねーさんにしてもそうであって。
ましてや、本殿の裏にこんな塚があるなんていうことは知る由もなく。
そもそも、
その社(やしろ)裏の塚は社の前に立ってもまったく見えていない状態で。
イソイソと社の横を通り、わざわざ後ろに回り込み、
そうして初めて裏にそんな小さな塚があることがわかるのです。
さらにこの時、ねーさんは
「塚の上に岩がある」
と、この場所に来る前から明確に言っていて。
じっとその塚を見てみると、
こんもりと盛り上がった土の上に積まれている
沢山の石や瓦のカケラの奥下の方に埋もれる様にして、なんと!
確かに岩もあったのです。
ソレは決して大きなものではありませんでしたが、
沢山の石礫(イシツブテ)の中に混じる様にしてあったのです。
「さて、岩もあるね......奥に。
どうすればいい?
祝詞とか?
いるのかな?」
「ちょっと待ってね、、聞いてみる、、、
うーーんと、ただその塚の前で静かに立ってればいいって。
そう言ってる。
「そう。
じゃぁ、手を合わせて静かにしてみるよ。
電話は繋いでおくわ。唐津さんが言うように」
そうして、僕は大きな塚の頂上にポツンと置かれた社(やしろ)の、
そのまた後ろにある小さな盛土の前で背筋を伸ばし。
静かに佇み。
心を研ぎ澄まして手を合わせてみたのです。
塚の側に置いたスマートフォンは先ほどと同様、
そのまま横浜にいるねーさんと繋がっています。
そしてこの時、気がつくと、あれだけビビっていた!?
自分の首塚に対する恐れは嘘のように綺麗に消え去っていました。
目の前には森の深さを際立たせるような幾筋もの細い木漏れ日がキラキラと、
まるで白糸の滝の様に小さな石の塚の上に差し込んでいて。
両手を胸の前で合わせながら光源である真上の方を見上げてみれば、
そこには彼方の世界に繋がる錯覚が起きてしまう様な、
真っ青な、穴のような空がありました。
そんな辺り一帯には現実感の消失した、
嘘のように静かな時が漂っていました。
——————続きます。
☆「織部の唐津の酒呑童子」シリーズ過去記事☆
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