眠れ、悪しき子よ〈上〉 | |
クリエーター情報なし | |
文藝春秋 |
眠れ、悪しき子よ〈下〉 | |
クリエーター情報なし | |
文藝春秋 |
55歳の早期退職の男が故郷近くの村営住宅へ引っ越すところから話が始まる。
うらやましい。
だいたいが私の人生プランにも55歳を超えて働くことは想定されてはいなかった。
魔がさしたままズルズル辞めるに辞められず、
辞めるというきっかけもつかめずもうちょいだからと愚図って今日。
日本海に面した霊験あらたかな山を抱く田舎。
田舎に住む者として実に描写がよく分かる。
ところで題名の「悪しき子」とは誰をさすのか?
上、下巻ともその一点に集中して読みすすんだ。
もしかして人みな生まれながらに悪しき子では?
買い集めた哲学書を静かな田舎でゆったりと紐解くつもりが、だんだん狂気の世界へ。
酒が見せる妄想か?現実か?
境目がぼやけてどんどん悪と善との境すら妖しくなってゆく。
すべてから開放されたつもりの退職。
こんどは近所や血族との柵がクローズアップされる。
人は人と関わることでしか、存在価値や自分を感じることが出来ないのか?
この小説評を読むとこの作者が好きという人から、あまり好評でない。
初めの一冊。
めずらしくグロテスクな世界に耽溺した。
不思議な筆致に惹かれる。
読み終わって頭がぼぉ~っとしている。
子供の頃の夏休みすることもなくひとり家で物語に集中した後こんな気分だった。
現実の世界にちょっと戻れない。
当時飼っていた犬を連れだして散歩しながらすこしづつ現実に戻っていった。
さて、今は犬が居ない。
居ないが台風の接近の風がまだ心地よい程度。散歩には適している。
犬なし散歩で頭を元に戻した。
明日から善人ぶって仕事に復帰しよう。
家に籠って物語だけが友達の陰気な子供時代と寸分違わぬ大人の夏休みだった?
丸山健二の本はまだ幾冊か図書館にあった。
これが一番新刊っぽかったので手にした。返して次を借りてこよう。
もう数冊読んでみたい。
それどころでない明日かもしれない。
台風の雲が不気味な夕焼けを醸し出していた。
まるでこの小説の世界みたいだ。
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