上海阿姐のgooブログ

FC2ブログ「全民娯楽時代の到来~上海からアジア娯楽日記」の続きのブログです。

中国BLネット映画「双程」と「不可抗力」~逆風の中の中国「耽美小説」映像化ラッシュ

2016年11月06日 | エンタメの日記
2016年中国では立て続けにBL実写ネット映画・ドラマが公開されました。
そのひとつが「双程」です。
「双程」は藍淋という女性作家の同名のいわゆる耽美小説が原作です。

「双程」A ROUND TRIP TO LOVE
主演:高泰宇、黄靖翔
制作:次元文化、次元影業
配信日:2016年9月12日 前編配信開始
配信サイト:中国動画サイトLetv(楽視)、捜狐(sohu)動画など。有料会員向け配信作品として公開されました。



クレジットの制作は「次元文化・次元影業」(DIMENSION)となっていますが、「次元文化」はコスプレイヤーのマネージメント会社です。
さらにいうと、「次元文化」の前身は杭州の大手コスプレサークルでした。コスプレサークルが拡大成長し、コスプレイヤーのマネージメントを行うようになり、2016年には融資を受けて映像制作会社「次元影業」を作ってしまったのです。
「次元文化」映像制作プロジェクトの第一弾として制作されたのが「双程」です。

受け役の程亦辰(チェン・イーチェン)を演じた黄靖翔(ホアン・ジンシャン)はものすごく有名なコスプレイヤーです。
プロフィールには「モデル、俳優、コスプレイヤー」と併記されていますが、コスプレイヤーとしての活動がメインです。
中国小説の「盗墓筆記」や、古装ファンタジーもののコスプレが有名です。
刀剣乱舞の鶴丸のコスプレで日本のツイッターでも話題になったことがあります。
【黄靖翔コスプレ関連書籍】
  

攻役の陸風(ルー・フォン)役を演じた高泰宇はコスプレイヤー出身ではなく、芸能系学校の出身です。長身で韓ドラ俳優みたいな雰囲気の人です。けっこう演技が上手いと思います。

中国はコスプレが盛んですが、女性レイヤーより男性レイヤーの方が人気があり、レベルが高いです。
サイン会などをやると何千人というファンを動員できるカリスマ的な人気を誇るコスプレイヤーもいます。
彼らは自分たちで写真集やポスター、ポストカードを自主制作して売っています。そこから更に選ばれた精鋭は商業出版の写真集などを出すに至ります。

コスプレ写真集の中でBL的なシチュエーションを取り入れるのはもはや当然のことなので、「双程」はコスプレの延長で実写BL映画を作ったという印象を受けます。
「次元文化」は「コスプレイヤーをスターに育てる」ことを目指しているので、制作側の意図でもあると思います。

「双程」と同じ作家の小説を映像化した、「不可抗力」というBLネット映画も公開されました。

「不可抗力 UNCONTROLLED LOVE」(「不可抗力之男僕的秘密:不可抗力の下僕の秘密」)
主演:孟瑞、王博文
制作:新片場、奇樹有魚、智頂互娯
配信日:2016年6月28日 配信開始
原作:藍淋



原作はものすごく有名な耽美小説です。
ネット上ではあまりにも有名で、二次創作やK-POPグループのFanfictionのカップリングに名前が置き換えられた「改名版」も多いです。
私も5~6年前にあるBBSにアップされていたものを読んだことがあります。私が読んだのはSuperJuniorのカップリングに名前が置き換えられたバージョンでした。

小説のセリフを映画シナリオでもそのまま使っており、原作に非常に忠実に作られています。
展開もエピソードが一部カットされていることを除けば、ほぼ小説どおりなので、

懐かしい・・・・!

と思ってしまいました。原作小説が最初に発表されたのは2005年で、相当数の女子が読んだことがあると思います。
耽美小説の古典的有名タイトルの映像化といっていいです。
今回の映像化、配信に向けて働いたスタッフや協賛会社の中には、「学生の頃にはじめて読んだ耽美小説が「不可抗力」だった」という女性も多いのではと思います。

原作小説は映画版よりもっと悲惨で救いようのない作風です。
映画版は俳優が割と柔和で愛嬌のあるルックスなので、悲劇性が薄まっていたように感じます。

「双程」より「不可抗力」の方が原作ファンにとっては満足度の高い出来になっているかと思いますが、「双程」の方がお金がかかっていて映像がきれいです。

「双程」は特に、この種のBL映画にしては非常にお金がかかっていて、セット、衣装、音楽、カメラワーク、映像処理などのクオリティが高いです。
BL実写にありがちな、低予算的な処理がなされている部分がほとんどないです。
それどろか、不必要なほどの豪華絢爛な「金持ちセット」が登場します。
とくに音楽がすごくいいです・・・!

ドラマ「上癮」(Addicted)もそうだったのですが、俳優の演技が上手いです。いったいどこで勉強してきたんだろう。と思ってしまうほどです。

しかし残念なことに、中国の動画サイトでは、「双程」も「不可抗力」も公には視聴できない状況になっています。
中国国内の動画サイトから削除されています。
「不可抗力」も「双程」も配信から僅か1~2ヶ月の間に、配信停止になってしまいました。
現在では主に、Youtubeやタイのサイトが視聴プラットフォームとなっています。Youtubeは中国国内からはアクセスできないようにされており、基本的には視聴できません。

中国動画サイトで配信できないと、配信許諾料や広告の利益分配などを得られません。収益を確保する道はあるのでしょうか。
「双程」と「不可抗力」以外に、2016年は9本のBLドラマ・映画が配信されると言われていましたが、内容を変更するか、配信規模を縮小あるいは公開の場を国外に移すしかなさそうです。
コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 急増する日本アーティストの... | トップ | ミュージカル刀剣乱舞上海公... »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (青い雨)
2016-11-06 02:28:54
とても興味深く読ませて頂きました。どちらの映画も私は観ていないのですが存在は知っていました。どちらも日本でほ人気あるようです。でも双程を製作したのがコスプレイヤーさん達が作った会社だとは…!ビックリします。
しかし、やはり中国でBLの規制は強いんですね。出ている俳優さんには影響はないのでしょうか。
返信する
こんにちは ()
2016-11-06 21:02:56
 阿姐さん こんにちは。お久しぶりですね。
 中国ではコスプレイヤーというジャンルが確立しているんですね。なんかびっくりです。この方も絵に描いたような美男子さんですね。
 そして中国ではBLは難しいという話は聞いているんですが、そういう需要はあるということなんですね。み、みてみたいです・・・

 年末に上海に行きます~
返信する
青い雨さん (上海阿姐)
2016-11-07 00:16:20
こんにちは~コメントありがとうございます!
「上癮」が配信されたとき、あまりにも中国国内で反響が大きすぎたので、あれから規制されてしまいましたね。
「上癮」の主演の二人は名指しで警告を受けたといわれています。
でも、芸能界から完全に封殺されているわけではないでと思います。
「上癮」の許魏州とか全国コンサートツアーやったりしてますね。
ただCPでの活動は大々的にはできないですね・・・。

中国には年齢等級制度(R-15、R-18など)が存在しないのです。それもあって一律規制がかけられやすいです。「双程」などは最初から用心して有料配信扱いにしていましたが、それでもプレッシャーに勝てなかったみたいですね・・・。
返信する
玲さん (上海阿姐)
2016-11-07 00:27:33
こんにちは~お久しぶりです!上海にいらっしゃるのですね
中国のコスプレはレベル高いですよ。コスプレ人口も多いです。その理由のひとつは、小道具や衣装が手に入りやすいのです。世界の工場中国ですし、模造品を作る技術も高いので、、アニメとそっくりの高品質の衣装、ウィッグなどが比較的安価に手に入ります。

実写BLに関していうと、日本も難しいんじゃないですかね。
日本ではあれだけ大量のBL漫画・小説が発行されている割にはクオリティの高い実写BLが少ないです。
なので、ここ1年あまりの中国実写BLブームに驚かれている方も多いのでは。
日本では普通、俳優の将来を考えると、事務所がBL実写化作品に俳優を出したがらないですよね・・・。
返信する
こんにちは (はるみとまこ)
2016-11-07 12:57:36
興味深く読ませて頂きました。
ふむふむ。
日本でもコミック止まりな気が致します。でも、実写を見たいとも思わないのですが(汗)
モーリスとか懐かしいなぁ~。
柚香さんの写真集はコスプレです(爆)
とても素敵で、中国に行けば人気出ると思うのですが。
阿姐さんにも見て頂きたいです!
返信する
こんにちはー (せいこ)
2016-11-07 15:32:41
有料会員サイトでもダメなんですねー。。。
どちらの映画も見てはいないけど、名前だけは知ってました。
Twitterでよく見かけるから日本にもファンが多いと思います。
詳しいお話いつもありがとうございますー!!
返信する
はるみとまこさん (上海阿姐)
2016-11-08 00:53:35
こんにちは~!
モーリス・・・懐かしい~^^;
タイはさすがに多いですけど、日本でも実写は少ないですよね。あってもけっこう無理が滲みでてますよね・・。
それを思うと、ここ最近の中国BL実写って、男同士のラブシーンの演技がすごく上手いんですよ。
いったいどこでどうやって勉強してきたんだろう?と思うほどに・・・。
柚カレーさん写真集、コスプレですか・・・!
パーソナルブックとかいつの間にかシチュエーションものというか、コスプレ寄りになってきましたよね
返信する
せいこさん (上海阿姐)
2016-11-08 00:58:20
こんにちは~!ほんとに日本にもファンの方がたくさんいるんですね~びっくりです!どの作品も個性的でクオリティ高いなと思います!
メイキングとかオフショット、ファンミの動画が面白くてはまっちゃうという方も多いんでしょうね^^
しかし、いろんな尺度のバージョンがあって、どれが完全版なのかよく分からないですね。
私が観た「不可抗力」は前編後編ともに1時間33分くらいのものでしたが、中国で当初公開されたバージョンは75分だったようです。
返信する

コメントを投稿

エンタメの日記」カテゴリの最新記事