上海阿姐のgooブログ

FC2ブログ「全民娯楽時代の到来~上海からアジア娯楽日記」の続きのブログです。

2014年フィギュアスケート中国杯男子ショートプログラム観戦~事故1日前の羽生くん

2014年11月24日 | 普通の日記
11月7日(金)の夜、上海で行われたフィギュアスケート2014年中国杯を観にいってきました。
羽生くんが2日目の練習中の事故で、負傷しながらフリーのプログラムを滑り2位に入り、大きなニュースになりました。
私は羽生くんが負傷した2日目のフリーではなく、1日目のショートプログラムのみを見ました。

中国杯には日本からたくさんのファンが観戦に来ていました。大会はショート、フリー、エキジビジョンと3日間に渡り行われます。
私が見た11月7日(金)夜19時半からの男子ショートプログラムは、前5列目くらいまではほとんど日本からの観戦客で埋まっていました。
大会の会場は東方体育センターという上海のやや郊外にある屋内スポーツアリーナですが、会場に足を踏み入れると、

ここは日本か・・・・・?

と思うほど、日本企業のスポンサー広告で埋め尽くされていました。

メインスポンサーのトヨタLexusはまだ中国向け宣伝といえますが、リンクを取り囲む日本企業、高須クリニック、ほけんの窓口、JACCSなどほとんどの企業が、中国とはほぼ関係がなく、明らかにテレビ中継を通じた日本向けの宣伝枠として機能していました。広告だけ見ていると、中国杯は場所だけ上海のスポーツアリーナを借りた、日本の衛星試合のようでした。

■トヨタLexusの屋外展示


■リンク周辺は日本企業の広告と、日本ファンが持参した垂れ幕に囲まれる


羽生くんの所属クラブである全日空も全面的に協賛しています。
■会場内の全日空プロモーションブース


■「頑張れ!羽生!」


男子ショートプログラムには11人の選手がエントリーされており、日本人選手は2人です。
海外の会場まで足を運ぶようなファンは、かなり熱心なフィギュアファンといえますが、日本の選手だけを応援しているわけではなく、フィギュアというスポーツ自体を応援しています。

ミーシャ・ジーというウズベキスタン代表の男子選手がいます。

ミーシャ・ジーが出てきたとき、前列のお客さんがいっせいにウズベキスタンの旗を出してミーシャを応援しました。
ウズベキスタン人が上海にスケートを見に来たりしません。
中国人の中に、ミーシャのファンがそれほどいるはずもありません。
日本から観に来たファンが、ウズベキスタンの旗をかかげでミーシャ・ジーを応援しているのです。

この応援マナーは独特だと思いました。

会場には上海在住と思われるアメリカ人のグループが観戦に来ていましたが、彼らはアメリカ選手が出てくるときのみ星条旗を掲げて賑やかに応援します。これが一般的なスポーツの応援風景だと思います。

ですが日本人ファンは、個人的に応援している選手が出場すると、その選手の国の国旗をかざしてアピールします。日本、ロシア、中国、ウズベキスタンの旗をとっかえひっかえ出します。いったい何種類の国旗を持ってきているのでしょうか・・・。

よく、ロシアやヨーロッパのフィギュア選手が「日本が好き」とか「日本は第二の故郷」と発言してメディアに取り上げられますが、そりゃ日本を好きになるわと思いました。これほど海外フィギュア選手を暖かく迎える国は、日本だけなのでは・・・。

テレビでフィギュアの海外の大会が中継されるとき、客席がガラガラのときがあります。日本大会以外は、ガラガラのときの方が多いかもしれません。中国杯も、男子は羽生くんのおかげもあり前方は埋まっていましたが、ペアのショートプログラムはガラガラでした。

私が観にいった翌日、大会2日目のフリーの6分間練習で、羽生くんがあんなことになってしまって本当に驚きました。

1日目はあんなに元気に滑っていたのに---。

事故が起きたのは「本番前の6分間練習」ですが、ショートプログラムの前にも「6分間練習」はあります。見ていて危ないなとは思いました。
中国杯の場合、男子シングルのエントリー選手は11名だったので、前半5名、後半6名に分かれて演技します。
つまり、前半5名の6分間練習 → 前半選手5名がひとりずつ演技 → 後半6名の6分間練習 → 後半選手6名がひとりずつ演技という流れで行われます。
スコアで順番が決まるので、羽生くんは上位者が集まる後半グループに入ります。
男子ショートの滑走順序はラストの11番目でした。
つまり、羽生くんが6分間練習をしていたときは、6名の選手が同時にリンクでウォームアップすることになります。
男子はウォームアップで3回転ジャンプを跳ぶ選手も多く、すれすれのところまで選手同士が接近することもありました。
かなりひやっとするシーンもありましたが、選手はこういう状況にある程度慣れてしまっているのかもしれません。

■男子ショート 6分間練習






1日目の男子ショートの日、羽生くんは6分間練習のとき、まっさきにリンクに飛び出しました。

リンクに出たときは最初は背中にJAPANとロゴの入った黒いジャージを羽織っていました。が、途中でジャージを脱ぎました。
脱いだ瞬間、女性ファンの大歓声で会場にどよめきが起きました。

羽生くんのスケートを会場で見たのは初めてでしたが、ものすごくオーラがあってきれいです。
ジャンプの精巧さがよく話題になりますが、一番の魅力は柔軟性だと思います。
スケーティング自体が滑らかできれいです。会場で見ていると、スケート靴の刃と氷が触れる音が聞こえますが、羽生くんは音もなく滑ります。
ソチオリンピックで金メダルを取ったときは、プルシェンコの棄権、フリーでの転倒などもあり、疑問視する声もありましたが、中国杯に登場した羽生くんは実力と才能に溢れた選手でした。出てきただけで別格オーラがあります。
そして、小顔で細身なルックスからは繊細なイメージを抱きがちですが、羽生くんは勝利への渇望がみなぎるファイターだと思いました。
羽生くんの背後には、「僕は勝つ僕は勝つ僕は勝つ---」という闘志の炎がめらめらと燃えているように見えます。

日本ではフィギュアスケートは冬季オリンピックの花形競技です。オリンピックでは選手は日の丸を背負って戦っている・・・少なくともメディアではそのような姿が報道されます。ですが、フィギュアスケートというものは、競技者の絶対人口が少なく、国別に戦うような競技でもないんだなと改めて思いました。
中国杯で1位、2位になった選手と、9位、10位になった選手の演技を比べると、素人がみても一目でレベルの違いが分かります。世界大会で1位と10位のレベル差がこれほど明白というのは、不思議な感じがしました。
層が薄いという言い方もできるかもしれませんが、絶対的な競技人口が少なく、しかも、トップレベルに上り詰めるまでの過程が非常に困難なスポーツだということが分かります。
特に男子フィギュアスケーターは、存在自体がレアで、世界は広いけれど同じステージで戦える選手はほんの少ししかいなくて、このような大会にエントリーできる選手たちは敵というより「全員仲間」なんじゃないかと思ってしまいました。

2日目のフリー、なぜ羽生くんは出場することを選んだのか。それは羽生くんにしか分からないことですが、「なぜ」と考えずにはいられません。あの羽生くんにのしかかったスポンサー広告の数々を見ると、誰だって疑問を持つと思います。

羽生くんと2日目の練習中にぶつかったのは、イェン・ハンという中国人の選手でした。中国国内ではとても有望視されている選手です。イェン・ハンも負傷しながら、フリーの演技を敢行しました。
私は羽生くんを応援してはいますが、「日本人」という生まれたときに自動的に与えられた属性しか、羽生くんと共通点がありません。イェン・ハン選手は中国人ですが、「男子のトップクラスのスケーター」という世界に数名しかいない稀有な属性を共有していて、客観的にみて羽生くんにずっと近い存在です。
羽生くんが棄権しなかった気持ちを分かることができるのは、イェン・ハン選手なのかもしれません。

羽生くんのスケートを会場で観たのはこの1回だけですが、羽生くんはファイターだと思いました。
2日目のフリーに羽生くんが出場したとき「格闘技じゃないんだから、血を流してまでリンクに立たなくても」という意見もありました。
フィギュアは格闘技ではありません。でも羽生くんはファイターだと思いました。

■男子ショートプログラム 羽生くん滑走後のリンク。前に座っていた日本人ファンがいっせいに立ち上がり、多くの花束やプレゼントがたくさん投げ込まれました。
コメント (4)
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韓国ミュージカル「トゥーランドット」上海公演を観てきました~~ミュージカル俳優イゴンミョンさんの魅力

2014年11月04日 | エンタメの日記
韓国ミュージカル「トゥーランドット」を観てきました。この作品は、第16回(2014年)中国上海国際芸術祭出品作品の一つとして上演されました。K-POPアイドルが出演することで日本でも認知度が若干上がっていますが、韓国はミュージカルが盛んです。


上演日:2014年11月1日、11月2日 19:15~(合計2公演)
場所 :上海東方芸術センター 歌劇庁(1015席)


チケット:480元/380元/280元/180元 (480元=約8500円、180元=約2700円。※海外ミュージカルとしては非常に低価格に設定されています)

本作品は大邱国際ミュージカルフェスティバル(Daegu International Musical Festiva、通称DIMF)の作品として上海芸術祭に出品されました。2010年に韓国で試演された後、2011年第5回DIMF(大邱国際ミュージカルフェスティバル)の開幕作品として上演されました。
DIMF公式サイト:http://f.dimf.or.kr/

今回2014年11月の上海公演は、トゥーランドットをパク・ソヨン、カリフ王子をイ・ゴンミョン、召使のリューをイ・ジョンミが演じました。



■チケットサイト 大麦(damai.cn)サイトの写真 出典:http://item.damai.cn/73331.html






韓国ミュージカル「トゥーランドット」は、オペラ「トゥーランドット」をベースにしていますが、以下のような改編が加えられています。
まず、原版にある中国的な要素はほとんど排除されています。舞台設定は中国王朝の宮廷ではなく、ファンタジー系ゲームの世界のようなビジュアルです。
また、音楽は韓国ミュージカルオリジナルなのではと思います。有名な「誰も寝てはならぬ」など、プッチーニのオペラ楽曲は使われていないような気がします。
狂言回し的な役割を果たす大臣たちは本来3人ですが、4人になっています。
物語の中核となる「3つの謎解き」の内容と答えは、書き換えられています。
トゥーランドットの母親が登場します。トゥーランドットは母の死に由来する恨みと呪いによって、氷のような残酷な心になるという背景に重点が置かれており、トゥーランドットと母親の妄執が物語の鍵になっています。
主要キャストはまったく踊りませんが、モブダンサーの動きはアクロバティックな要素が盛り込まれており、衣装や髪型も前衛的です。

韓国ミュージカルならでは・・・・と思うところ。

まず、女奴隷のリューが、アイドルのようにかわいらしくて、とても奴隷や召使には見えませんでした。
衣装や髪型、メークが、造形としては非の打ちどころのないプラスチックな美しさでした。K-POPアイドルのようです。
衣装、メーク、顔、スタイル、造形的な美しさという点では、メインキャストの3人は本当に美しかったです。豪華な衣装を着こなすスタイルもさすがです。
特にカリフ王子を演じたイ・ゴンミョンさんがものすごくかっこよかったです。
背が高くて180cmくらいあるのではないでしょうか。長髪に、中央アジアの荒野を旅する若者風衣装が非常によく似合っていました。色白で非常に若く見えるイケメンミュージカル俳優です。歌も芝居も上手いですが、立ち姿の美しさが圧倒的です。背が高いというのは非常に大事なことだと思ってしまいました。

ビジュアルだけだなく、主役から脇役まで全体的に歌、芝居、ダンスがとても上手いです。ミュージカルが盛んだからなのか、舞台の場数を踏んでいる感じがします。

「3つの謎解き」は原版とは違ったものにアレンジされており、極端なほどの愛の追及と耽美性が色濃く出た謎解きになっています。韓国は「死をかけた愛、愛のための犠牲」というテーマを創作虚構の中で表現することに長けており、作品の個性になっています。

少し残念だったのは、主要キャストは全然踊らないことです。ゴンミョンさんが踊るのかと思って楽しみにしていたのですが、全然踊りませんでした。
また、ミュージカルとしては上演時間が短いです。19:15に開演し、21:25には終わりました。間に20分の休憩があるので、作品自体は2時間弱です。原版のオペラはそのくらいの時間なのかもしれませんが、現代的な展開のミュージカルとして演じる場合、2時間弱では時間が足りないと思いました。3時間くらいあれば、人物の背景などももう少し描けたのではと思います。

海外ミュージカルの上演は字幕が必要になります。本作が上演された上海東方芸術センターの場合、左右のスクリーンに字幕が表示されますが、見にくかったです。7列目より前は字幕スクリーンよりも席が前になってしまうので、字幕が見えません。


スクリーンが左右の壁にあるので(正面写真ではスクリーンが写真に収まらない)、中腹の席でも正面客席からはかなり字幕が観にくいです。


海外ミュージカルの上演でネックになるのは、字幕の問題かもしれません。字幕の尺の取り方、字幕文字の長さ、言い回しなど、字幕の質の重要性を感じました。

しかし一方で、ミュージカルというものは、ある程度字幕を必要としない人が見るのが前提なのかもとも思います。
中国は子供に対する英語教育熱が高いせいか、娯楽性の強いアメリカミュージカルが上演されると、高額なチケットを払って家族連れで英語ミュージカルを観に来る人がたくさんいます。観察していると、字幕はあまり必要とされていません。

11月2日(日)の公演を観にいきましたが、1階席の客の半分くらい上海在住の韓国人と上海韓国人社会と何らかの関わりがある中国人だったのではと思います。集客率は8割くらいでした。客席のマナーは決して悪くないものの、熱狂的に盛り上がるというかんじではなく、2日目最終日でしたがカーテンコールがなかったです。純粋にこのミュージカルに興味を持って観に来た中国人観客は相対的にいうと多くはないと思います。中国での韓国ミュージカルの認知度は高くないといえます。「韓国ミュージカル」が中国市場の中でポジションを得られるかは、まだ未知数です。
コメント (6)
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