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ソチオリンピック~中国フィギュア若手選手の活躍と中国での冬季五輪の価値

2014年02月25日 | 普通の日記
ソチオリンピック17日間の戦いが幕を下ろしました。
中国では冬季オリンピックに対する関心は低く、ほとんど注目されていません。国民の半分くらいは、ソチオリンピックの存在を認識していないのではと思います。存在を認識している人でも、いつ開幕していつ閉幕するかを知っている人は珍しいです。あまりにも関心が低いので、選手が気の毒になってくるほどです。
周りの中国人に「どうして中国は冬季オリンピックに対する関心がこんなに低いの?」と聞くと、「中国は冬のスポーツはダメだから。」と答える人が多いです。しかし、決してダメというほど悪くはありません。ソチオリンピックの中国のメダル獲得数は金メダル3つ、銀メダル4つ、銅メダル2つの合計9つで、全体のランキングでは12位、アジア諸国の中では韓国を僅かに上回りトップです。(韓国は中国より銀メダルが一つ少なく全体で13位)

中国で冬季オリンピックが関心を持たれない理由として次に多く挙げられるは、「ウィンタースポーツは一般市民の生活からあまりにもかけ離れているから。」というものです。この理由は納得できます。人口の3分の1くらいは恐らく雪を見たこともなく、スキー場にアクセスできる立地条件に暮らしている人は、全体の中のごく僅かです。なので、冬季五輪の種目が人々の共感を得られないのは無理もないかなと思います。

ソチオリンピックでは9つのメダルを獲得しましたが、中国のメダル獲得種目は非常に偏っています。大半のメダルをショートトラックで稼いでいます。しかも女子が強いです。
【中国選手のソチオリンピックメダル獲得状況】
周洋  女子ショートトラック1500メートル金メダル
李堅柔 女子ショートトラック500メートル金メダル
張虹  女子ショートトラック1000メートル金メダル
範可新 女子ショートトラック1000メートル銀メダル

武大靖 男子ショートトラック500メートル銀メダル
韓天宇 男子ショートトラック1500メートル銀メダル
陳徳全/石竟男/武大靖/韓天宇 男子ショートトラック5000メートルリレー銅メダル

徐夢桃 女子エアリアル 銀メダル
賈宗洋 男子エアリアル 銅メダル

また、メダル獲得選手のほとんどが吉林省か黒龍江省出身というように、選手の出身地域も極めて偏っています。吉林省は北朝鮮と国境を接する中国の東北地域で、黒龍江省はロシアとの国境がある地域です。

日本ほどではありませんが、フィギュアスケートは冬季五輪の花形人気種目です。
中国はペアに力を入れており、ペアは毎回上位に入賞していますが、シングルはあまり良い成績を上げられず、特に男子シングルは非常に弱い種目とされてきました。
ソチオリンピックでは、若い世代の選手が活躍し、国内で期待を集めています。

男子シングルでは、イエン・ハン(閻涵/Yan Han)が7位の成績を残しました。
男子シングル総合7位は、中国男子シングルの五輪の成績としては歴代最高です。「やっと、中国の男子シングルも希望が見えてきた」と言われ、注目の若手選手の一人です。まだ17歳と若く、今後の活躍が期待されます。
■中国フィギュア男子シングルイエン・ハン(閻涵/Yan Han/ハン・ヤン)。


イエン・ハンは初の五輪で7位という好成績を残したので、中国の国営局CCTVのスポーツチャンネルでインタビューが組まれました。インタビューには女性コーチとともに登場しましたが、イエン・ハンは小さな声で訥々と話す、素朴な色白の少年といったかんじでした。
男子シングルの金メダルが同じく10代の羽生君だったこともあり、インタビュー番組の司会者は、イエン・ハンと羽生君を未来のライバルに持ち上げて話を盛り上げようとしたのか、「羽生君とはジュニア時代から長年競い合ってきた関係なのでしょうか!」と話をふっても、イエン・ハンは「いえ、そんな・・・」みたいな低調な反応で、素朴でマイペースな少年に見えました。しかしコーチは、「イエン・ハンには、スケーティングの技術の上達も必要だが、情調面での成長が必要。ときどき激情を発することがあるが、その激情を外に発散させるのではなく、自分自身に向けてしまうときがある。」と語っていました。淡々としているけれど熱い何かを秘めているようなところのある選手です。
中国では、日本のフィギュア選手に対しては比較的関心が高く、特にキムヨナと浅田真央にはずっと注目していました。しかし、いかんせん冬季スポーツ全体に対する根本的な認知度が低く、羽生君なども中国フィギュアスケートファンの間では人気がありますが、全体的にいうと、フィギュアという種目自体正しく認識できていない人が多いのです。(というか、日本ほどフィギュアスケートに高い関心を寄せている国は他にないのでは・・・。)

女子シングルでは、李子君がオリンピック初出場で14位に入りました。ものすごく可愛い選手です。彼女も17歳で、黒龍江省の出身です。
■中国フィギュア女子シングル 李子君(リー・ズージュン/Li Zijun。中国では君君/ジュンジュンという愛称で呼ばれる))


緊迫したショートプログラムでも、李子君はにこにこと笑って、まさに氷上の天使でした。女子シングルで常にほほ笑みを絶やさなかったのはこの子だけのような気がします。彼女は声もとても可愛く、少女らしい話し方をします。インタビューであどけなく、「私の力は上位を争う実力者たちには到底及ばない。自分はメダル争いには関係ない、いつものスケートをするだけ。」と語っていました。

これは、日本の選手にはとても言えないセリフだなと思いました。
日本では、出場権を勝ち取るために熾烈な選考が行われています。選考を勝ち抜いて、日本代表としてオリンピックに出るというだけで、大変なプレッシャーを背負っています。
李子君は、演技用のメークに白いチームジャージを着た姿で「今回のオリンピックではたくさんの収穫を得た。今後に生かしていきたい。」とインタビューに答える映像が何度も流れ、これから期待したい選手と位置付けられています。

中国CCTV(中央電視台)のスポーツチャンネルがソチオリンピックを放送していましたが、実況のアナウンサーは、李子君の体格、柔軟性からくる素質を誉めながらも、「彼女の持てる力の範囲の中で最高の演技をしてみせました。」と冷静なコメントで応援していました。
ソチオリンピックが終わってみて思ったことは、メダルを取らなければどんなに可愛くてもスターにはならないんだなということです。
結果を残せないスポーツ選手に対する目は厳しくドライです。
もともと中国は、何事においても結果主義的な傾向が強いですが、スポーツに対しても、結果主義であることを感じます。
日本は、結果もさることながら、スポーツマンシップが大切、試合の内容が大事といった見方が比較的強いです。また、選手にまつわるドラマやエピソードがたくさん紹介されるので、選手を応援することで、観客は感情移入しドラマを擬似体験することができます。ですが、中国では選手の人間的なエピソードはある程度影響するものの、やはり競技者としての側面が重視されていると感じます。

中国の女子エアリアル選手に、李妮娜(Li・Nina)という有力な選手がいます。トリノ、バンクーバーと連続して銀メダルを獲得しています。ソチの決勝では着地で大転倒して、メダルを逃がし4位に終わりました。この李選手は美人アスリートとして有名です。しかし、上村愛子選手と比べると、上村選手ほどの国民やメディアからの注目、応援は受けていません。スキーをはじめ、もっというと、大半のスポーツが、中国の大多数の市民にとって物理的に手の届かないところにあることも関係していますが、中国では全般的に「アスリートは世界一になってこそ讃えられるべきもの。」と考える傾向があります。銅メダルでは話題にもならないといってもよく、結末に待っているのは感動とは限らず、競技は本来残酷なものなのだと感じました。
コメント (8)
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