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中華芸能考古学~東芝ノートパソコンと俳優黄暁明(ホアン・シャオミン)

2024年07月15日 | エンタメの日記
最近部屋の片付けをしていたら昔のものがたくさん出てきました。
スマホが普及してからあらゆるもののデジタル化・電子化が加速し、これまで紙であることが当たり前だったものが紙媒体ではなくなっています。
スマホが普及して約10年、3Gから4G、5Gへと通信が高速化するに伴い、中国では新聞、雑誌、チケット、宣伝物など、日本以上に印刷物が激減しています。ここまで紙媒体が減少すると、部屋の奥底で眠っていた古いチラシやパンフレットは、ノスタルジーを通り越して刺激的ですらあります。

2010年、スマホが普及するすこし前の時代の東芝ノートパソコン「 Satellite L600 」(Dynabook)の中国向け広告チラシが出てきました。
当時の美形俳優の代名詞であった黄暁明(ホアン・シャオミン)が広告キャラクターを務めています。

このチラシはかなり紙質がよく、画像も鮮明です。当時のチラシの中ではお金をかけて作ったと思われる高級チラシです。

黄暁明(ホアン・シャオミン)1977年11月13日生まれ プロフィール身長:179cm 北京電电影学院演劇科卒業。ビッキー・チャオ(趙薇)やチェン・クン(陳坤)とは同級生であるとよく語られています。
黄暁明は2000年代以降の中国ドラマ・映画界の発展を担ってきた大スターです。
20代前半から多くのドラマに出演していますが、スター俳優としての地位を固めたのは2007年に放送された「新上海灘」(新・上海グランド)です。スン・リー(孫儷)との共演で主役の許文強(シュー・ウェンチャン)役を演じてイケメン俳優として大ブレイクしました。
「新上海灘」(新・上海グランド)は日本を含め海外でも放送されており、海外輸出された中国ドラマとしてはかなり古い部類に入ります。
黄暁明は俳優業だけではなく、広告業界においてとてつもない業績を上げました。それは俳優としての功績を上回るほどの意義を有します。
かつて中国では、大手グローバル企業の広告はほとんどが香港・台湾、あるいは韓国など海外の芸能人がイメージキャラクターを務めていました。
グローバル企業の広告イメージに適した中国本土の芸能人がほとんどいない状態だったのです。その常識を変えていった先駆者が黄暁明です。
黄暁明は、香港・台湾のタレントと比べて遜色ない美貌と洗練された雰囲気を持ち、素朴で明るいキャラクターも好イメージでした。
2008年には中国大陸出身芸能人として初めて「ペプシコーラの中華地区広告キャラクター」に選ばれるという偉業を成し遂げました。現在に至るまで本当のたくさんの有名企業、高級ブランドの広告キャラクターを務めています。

黄暁明とともに東芝ノートパソコンのイメージキャラクターを務めたのは女優の李氷氷(リー・ビンビン)です。
李氷氷(リー・ビンビン) 1973年2月27日生まれ、身長166㎝ 

李氷氷は范氷氷(ファン・ビンビン)や章子怡(チャン・ツイー)などと同時期に活躍した有名な中国人女優です。
ハリウッド進出に積極的で「バイオハザードⅤ」(2012年)「トランスフォーマー4(ロストエイジ)」(2014年)などに出演歴があります。
近年はあまりドラマに出ていませんが、長身でスレンダー、ロングヘアとイブニングドレスが似合い、清楚さとゴージャスさを兼ね揃えるという中国女性芸能人に求められるルックス基準を完璧に満たしている女優さんでした。

2010年の東芝は家電・パソコンの大手メーカーとして、当時の中国トップタレントであった黄暁明や李氷氷を起用し、贅沢な広告展開を行っていました。
現在、東芝のノートパソコンの広告を中国で見かけることはありません。東芝のノートパソコンが中国から完全に消えたわけではありません。ただ、ノートパソコンという商品自体が派手な広告を出して売るようなものではなくなっており、シェアの高い他メーカー、レノボ、Acer、Asus、サムスンなどもノートパソコンの広告のためにギャラの高そうな旬のタレントを投入することはありません。

日系電器メーカーの衰退が著しいとよく言われていますが、中国市場に限っていうと、中国でシェアを失ったのは日系メーカーだけではありません。中国国産メーカーの飛躍は著しく、Phillips、シーメンス、ノキア、モトローラ、ヒューレット・パッカード、DELLなどほとんどの世界的メーカーがシェアを下げています。その中にはサムスン、LG電子などの韓国メーカーも含まれます。

韓国大手電子機器メーカーLGは、スマホが登場するまでは中国での携帯展開に積極的でした。
2005年、2006年頃は、音楽再生(MP3)機能を重視したおしゃれなデザインの「LG チョコレートフォン」を韓国とほぼ同時に中国でも発売し、当時の韓流ブームとの相乗効果でヒット商品となりました。
当時のLG携帯はウォンビンやキム・テヒなど韓流トップスターがCMに登場し、圧倒的におしゃれな広告で一世を風靡しました。
「チョコレートフォン」の後続機種として発売されたのがLG Cyon「ロリポップフォン」です。

往年のKPOPファンであれば覚えているはず、2009年にBIGBANGが後輩グループ2NE1を携えて大々的にプロモーションした楽曲が「Lollipop」です。
「Lollipop」はLGの携帯「ロリポップフォン」の広告曲でした。


飛ぶ鳥を落とす勢いのBIGBANGと直系妹グループ2NE1。YGエンターテイメントの黄金時代。「Lollipop」のビジュアルはその後の2NE1のイメージ展開にも影響を与えていると思います。

韓国ではBIGBANGと2NE1がイメージキャラクターを務めていましたが、中国展開ではBIGBANGと2NE1に代わってM.I.C男団とf(x)が起用されました。

f(x)とM.I.C男団の中国版「Lollipop」は2009年に制作されており、当時デビュー間もないKPOPガールズグループf(x)の楽曲に、中国のボーイズグループ「M.I.C男団」がフィーチャリングされるという形でした。

BIGBANGと2NE1の「Lollipop」のビジュアルイメージを踏襲しており、ぱっと見では区別がつきません。このチラシの印刷の質は非常によくないです。この中のどれが檀健次かよく分かりません。

「M.I.C男団」は中国本土でプロデュースされたボーイズグループです。
デビューは2010年とされており、f(x)とコラボした「Lollipop」のMV制作時はデビュー前だったことになります。
中国本土のレコード会社の中では名門と言われていた「太合麦田」がプロデュースしたボーイズグループで、注目はされていました。
しかし、当時の中国ではアイドルグループの活動の場が少なく、彼らを支えるノウハウも不十分で、グループとして活動できた期間は非常に短いです。「M.I.C男団」は記憶の彼方に遠ざかっていく存在でしたが、グループのメンバーである檀健次(タン・ジェンツ)がドラマ『猟罪図鑑〜見えない肖像画〜』などで2022年になって俳優として大ブレイクしたことにより、「M.I.C男団」が再び話題に上るようになりました。
LG携帯「Lollipop」のチラシの中で単体で写真が出ているのは崔魯佳というメンバー(グループ脱退済み)でした。「Lollipop」のMVを見ても檀健次は特にクローズアップされていません。檀健次がグループデビューしてから10年も経ってから俳優としてブレイクしたのは稀有な例です。


スマホが登場する前の中国携帯市場では、ノキア、モトローラが圧倒的に強く、サムスン、LGなど韓国勢はどちらかというと高級・おしゃれ路線で、さらに廉価携帯としてZTE(中興)、TCLなどの中国メーカーがひしめいていました。
たくさんの中国携帯メーカーがありましたが、デザイン・音楽再生機能を売りにしていたのが歩歩高とOPPO(オッポ)です。OPPO(オッポ)は現在も中国スマホメーカーの大手として中国国内のほか東南アジアで高いシェアを有します。

2009年に発売されたOPPO携帯A201。音楽再生(MP3)機能を重視しており、当時大人気だったSuperJunior-Mを起用して若年層・女性ユーザーをターゲットに展開。

SuperJunior-Mは2008年にデビューしたSMエンターテイメントのボーイズグループ「SuperJunior」の中国向け派生グループです。
中国人メンバーのハンギョン(韓庚)を中心に、シウォン、ドンヘ、リョウク、ギュヒョン、ヘンリー、チョウミの7名によって結成されました。いまになって思えば、ビジュアル、ダンス、歌唱力をバランスよく配分したメンバー構成でした。
2008年4月にアルバム『迷』(MI)で中国デビューして以来、メディアでSuperJunior-Mの話題を目にしない日はないほど売れていました。しかし、デビューから2年ほどで中心人物であったハンギョン(韓庚)が突然グループを脱退したため、SuperJunior-Mの中国活動は頓挫し、最終的には中国市場からフェイドアウトすることになります。
OPPO携帯A201。スライド式のデザインはサムスン、LG携帯と似ていました。


中国は印刷物の品質が向上する前にデジタル化の時代を迎えてしまったことに加え、印刷物にはセンサーシップのハードルもあるので、紙媒体・有形媒体の文化はあまり継承されていません。
だからこそ、時代の遺物であるチラシや宣伝物、書籍やCD、DVDを掘り起こすと、忘れていた大事なことを瞬時に思い出したりして、何ものにも代え難い力があります。
コメント (8)
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