上海阿姐のgooブログ

FC2ブログ「全民娯楽時代の到来~上海からアジア娯楽日記」の続きのブログです。

中華芸能考古学~東芝ノートパソコンと俳優黄暁明(ホアン・シャオミン)

2024年07月15日 | エンタメの日記
最近部屋の片付けをしていたら昔のものがたくさん出てきました。
スマホが普及してからあらゆるもののデジタル化・電子化が加速し、これまで紙であることが当たり前だったものが紙媒体ではなくなっています。
スマホが普及して約10年、3Gから4G、5Gへと通信が高速化するに伴い、中国では新聞、雑誌、チケット、宣伝物など、日本以上に印刷物が激減しています。ここまで紙媒体が減少すると、部屋の奥底で眠っていた古いチラシやパンフレットは、ノスタルジーを通り越して刺激的ですらあります。

2010年、スマホが普及するすこし前の時代の東芝ノートパソコン「 Satellite L600 」(Dynabook)の中国向け広告チラシが出てきました。
当時の美形俳優の代名詞であった黄暁明(ホアン・シャオミン)が広告キャラクターを務めています。

このチラシはかなり紙質がよく、画像も鮮明です。当時のチラシの中ではお金をかけて作ったと思われる高級チラシです。

黄暁明(ホアン・シャオミン)1977年11月13日生まれ プロフィール身長:179cm 北京電电影学院演劇科卒業。ビッキー・チャオ(趙薇)やチェン・クン(陳坤)とは同級生であるとよく語られています。
黄暁明は2000年代以降の中国ドラマ・映画界の発展を担ってきた大スターです。
20代前半から多くのドラマに出演していますが、スター俳優としての地位を固めたのは2007年に放送された「新上海灘」(新・上海グランド)です。スン・リー(孫儷)との共演で主役の許文強(シュー・ウェンチャン)役を演じてイケメン俳優として大ブレイクしました。
「新上海灘」(新・上海グランド)は日本を含め海外でも放送されており、海外輸出された中国ドラマとしてはかなり古い部類に入ります。
黄暁明は俳優業だけではなく、広告業界においてとてつもない業績を上げました。それは俳優としての功績を上回るほどの意義を有します。
かつて中国では、大手グローバル企業の広告はほとんどが香港・台湾、あるいは韓国など海外の芸能人がイメージキャラクターを務めていました。
グローバル企業の広告イメージに適した中国本土の芸能人がほとんどいない状態だったのです。その常識を変えていった先駆者が黄暁明です。
黄暁明は、香港・台湾のタレントと比べて遜色ない美貌と洗練された雰囲気を持ち、素朴で明るいキャラクターも好イメージでした。
2008年には中国大陸出身芸能人として初めて「ペプシコーラの中華地区広告キャラクター」に選ばれるという偉業を成し遂げました。現在に至るまで本当のたくさんの有名企業、高級ブランドの広告キャラクターを務めています。

黄暁明とともに東芝ノートパソコンのイメージキャラクターを務めたのは女優の李氷氷(リー・ビンビン)です。
李氷氷(リー・ビンビン) 1973年2月27日生まれ、身長166㎝ 

李氷氷は范氷氷(ファン・ビンビン)や章子怡(チャン・ツイー)などと同時期に活躍した有名な中国人女優です。
ハリウッド進出に積極的で「バイオハザードⅤ」(2012年)「トランスフォーマー4(ロストエイジ)」(2014年)などに出演歴があります。
近年はあまりドラマに出ていませんが、長身でスレンダー、ロングヘアとイブニングドレスが似合い、清楚さとゴージャスさを兼ね揃えるという中国女性芸能人に求められるルックス基準を完璧に満たしている女優さんでした。

2010年の東芝は家電・パソコンの大手メーカーとして、当時の中国トップタレントであった黄暁明や李氷氷を起用し、贅沢な広告展開を行っていました。
現在、東芝のノートパソコンの広告を中国で見かけることはありません。東芝のノートパソコンが中国から完全に消えたわけではありません。ただ、ノートパソコンという商品自体が派手な広告を出して売るようなものではなくなっており、シェアの高い他メーカー、レノボ、Acer、Asus、サムスンなどもノートパソコンの広告のためにギャラの高そうな旬のタレントを投入することはありません。

日系電器メーカーの衰退が著しいとよく言われていますが、中国市場に限っていうと、中国でシェアを失ったのは日系メーカーだけではありません。中国国産メーカーの飛躍は著しく、Phillips、シーメンス、ノキア、モトローラ、ヒューレット・パッカード、DELLなどほとんどの世界的メーカーがシェアを下げています。その中にはサムスン、LG電子などの韓国メーカーも含まれます。

韓国大手電子機器メーカーLGは、スマホが登場するまでは中国での携帯展開に積極的でした。
2005年、2006年頃は、音楽再生(MP3)機能を重視したおしゃれなデザインの「LG チョコレートフォン」を韓国とほぼ同時に中国でも発売し、当時の韓流ブームとの相乗効果でヒット商品となりました。
当時のLG携帯はウォンビンやキム・テヒなど韓流トップスターがCMに登場し、圧倒的におしゃれな広告で一世を風靡しました。
「チョコレートフォン」の後続機種として発売されたのがLG Cyon「ロリポップフォン」です。

往年のKPOPファンであれば覚えているはず、2009年にBIGBANGが後輩グループ2NE1を携えて大々的にプロモーションした楽曲が「Lollipop」です。
「Lollipop」はLGの携帯「ロリポップフォン」の広告曲でした。


飛ぶ鳥を落とす勢いのBIGBANGと直系妹グループ2NE1。YGエンターテイメントの黄金時代。「Lollipop」のビジュアルはその後の2NE1のイメージ展開にも影響を与えていると思います。

韓国ではBIGBANGと2NE1がイメージキャラクターを務めていましたが、中国展開ではBIGBANGと2NE1に代わってM.I.C男団とf(x)が起用されました。

f(x)とM.I.C男団の中国版「Lollipop」は2009年に制作されており、当時デビュー間もないKPOPガールズグループf(x)の楽曲に、中国のボーイズグループ「M.I.C男団」がフィーチャリングされるという形でした。

BIGBANGと2NE1の「Lollipop」のビジュアルイメージを踏襲しており、ぱっと見では区別がつきません。このチラシの印刷の質は非常によくないです。この中のどれが檀健次かよく分かりません。

「M.I.C男団」は中国本土でプロデュースされたボーイズグループです。
デビューは2010年とされており、f(x)とコラボした「Lollipop」のMV制作時はデビュー前だったことになります。
中国本土のレコード会社の中では名門と言われていた「太合麦田」がプロデュースしたボーイズグループで、注目はされていました。
しかし、当時の中国ではアイドルグループの活動の場が少なく、彼らを支えるノウハウも不十分で、グループとして活動できた期間は非常に短いです。「M.I.C男団」は記憶の彼方に遠ざかっていく存在でしたが、グループのメンバーである檀健次(タン・ジェンツ)がドラマ『猟罪図鑑〜見えない肖像画〜』などで2022年になって俳優として大ブレイクしたことにより、「M.I.C男団」が再び話題に上るようになりました。
LG携帯「Lollipop」のチラシの中で単体で写真が出ているのは崔魯佳というメンバー(グループ脱退済み)でした。「Lollipop」のMVを見ても檀健次は特にクローズアップされていません。檀健次がグループデビューしてから10年も経ってから俳優としてブレイクしたのは稀有な例です。


スマホが登場する前の中国携帯市場では、ノキア、モトローラが圧倒的に強く、サムスン、LGなど韓国勢はどちらかというと高級・おしゃれ路線で、さらに廉価携帯としてZTE(中興)、TCLなどの中国メーカーがひしめいていました。
たくさんの中国携帯メーカーがありましたが、デザイン・音楽再生機能を売りにしていたのが歩歩高とOPPO(オッポ)です。OPPO(オッポ)は現在も中国スマホメーカーの大手として中国国内のほか東南アジアで高いシェアを有します。

2009年に発売されたOPPO携帯A201。音楽再生(MP3)機能を重視しており、当時大人気だったSuperJunior-Mを起用して若年層・女性ユーザーをターゲットに展開。

SuperJunior-Mは2008年にデビューしたSMエンターテイメントのボーイズグループ「SuperJunior」の中国向け派生グループです。
中国人メンバーのハンギョン(韓庚)を中心に、シウォン、ドンヘ、リョウク、ギュヒョン、ヘンリー、チョウミの7名によって結成されました。いまになって思えば、ビジュアル、ダンス、歌唱力をバランスよく配分したメンバー構成でした。
2008年4月にアルバム『迷』(MI)で中国デビューして以来、メディアでSuperJunior-Mの話題を目にしない日はないほど売れていました。しかし、デビューから2年ほどで中心人物であったハンギョン(韓庚)が突然グループを脱退したため、SuperJunior-Mの中国活動は頓挫し、最終的には中国市場からフェイドアウトすることになります。
OPPO携帯A201。スライド式のデザインはサムスン、LG携帯と似ていました。


中国は印刷物の品質が向上する前にデジタル化の時代を迎えてしまったことに加え、印刷物にはセンサーシップのハードルもあるので、紙媒体・有形媒体の文化はあまり継承されていません。
だからこそ、時代の遺物であるチラシや宣伝物、書籍やCD、DVDを掘り起こすと、忘れていた大事なことを瞬時に思い出したりして、何ものにも代え難い力があります。
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憧れのソウル・大学路に行ってきました~文化の移植・ソウル大学路と上海人民広場

2024年05月12日 | エンタメの日記
先日約4年ぶりにソウルに行きました。今回初めて韓国ミュージカル(Kミュージカル)の聖地・大学路(テハンノ)に行ってみました。
上海ではここ数年ミュージカルが急成長しており、Kミュージカルを中国語化したものが多数上演されています。上海でこれだけミュージカルの公演が増えたのは、Kミュージカルのフォーマットを取り入れたからだともいえます。

韓国ミュージカルは作品のバリエーションが豊富で、ソウルの大学路に集中する小劇場では少人数(3名~6名)のキャストで演じる休憩なしの約2時間の演目がよく上演されています。その中でも、男性俳優メインで構成される作品は若手俳優が豊富な中国に適しており、多くの作品が中国語化されています。
上海では人民広場近辺に劇場が集中しており、ソウル・大学路のミュージカル文化が移植されたような状態です。もちろん移植されただけではなく、現地の土壌に見合った成長を続けています。

大学路は地下鉄4号線恵化駅の周辺エリアを指し、ソウル大学のキャンパスがあったことが名前の由来だそうです。韓国ミュージカルの聖地と言われていますが、ブロードウェイというよりは下北沢のようなところでした。
細い道路の両側に飲食店やバー、カフェが入った低層ビルが立ち並び、ビルの合間にミュージカルを上演する小中規模の劇場が点在しています。

今回はYES24 Stage(Hall1)で『狂炎ソナタ』というミュージカルを観ました。
本当は自分が中国語版を観たことがあるKミュージカルを観たかったのですが、タイミング的にそんなに上手くいきませんでした。『狂炎ソナタ』は7月に上海で上演される予定です。
  

韓国ミュージカルのチケットはYes24やinterparkのウェブサイトで事前に購入できます。すごく便利です。
中国のチケットを海外から購入しようとする場合、中国の携帯番号がないと購入が難しいです(Wechat、アリペイ(支付宝)内のミニプログラム機能でチケットプラットフォーム(大麦、猫眼、票星球など)を呼び出すことで、中国の携帯番号がなくても購入できるものもあるようです)。

韓国ミュージカルの客層は中国ととてもよく似ていると思いました。
観客の95%以上が女性で、20代、30代がメインです。一人で観にきているけれど、劇場に行けば顔見知りに出くわす・・・というかんじでしょうか。
開演前に英語での火災時避難の案内があり、その後に劇場スタッフが韓国語で注意事項をアナウンスしましたが、「スペシャルカーテンコール」という単語しか聞き取れませんでした。
私が観たのは平日の夜公演で、客入りは9割くらいでした。
お芝居が終わった後、観客が一斉に立ち上り拍手を送りました。いきなり最初からスタンディングオベーションです。このフェーズが恐らく「カーテンコール」で、カーテンコールでは観客は撮影をせずに拍手を送ることに集中します。だから敢えて全員立ち上がっているのかもしれません。
ひととおり拍手を送り、俳優さんが舞台から去ると観客が再び着席し、「スペシャルカーテンコール」が始まります。ここからは観客による撮影が可能になります。スペシャルカーテンコールが始まる前にスタッフがステージに散らばった小道具などをざっと片付けます。中国ではこのような片付けを挟むことはありません。
スペシャルカーテンコールのときの雰囲気は中国とまったく同じでした。立派な一眼レフカメラを構えている観客が多く、自動シャッターを切る音、ピント合わせのピピ、ピピピという電子音が劇場に鳴り響きます。


上海のミュージカル公演では、お芝居が終わり俳優さんが舞台上でお辞儀をしている段階から撮影可能です。そのため、撮影を優先して拍手をしない観客が一定数います。カーテンコールで観客が一斉に立ち上がって拍手を送るという大学路の鑑賞マナーは、上海には移植されていないようです。

『狂炎ソナタ』は3人の俳優で構成される作品で、日本でも上演されています。
ミュージカル『狂炎ソナタ』日本語サイト:https://mu-sonata-2024.com/
物語の大筋は辛うじて把握していましたが、韓国語が分からないのでセリフの内容は全然分かりませんでした。
初めて大学路のミュージカルを観て一番印象的だったのは、役柄に合うバリトンの人がキャスティングされていたことです。
中国のミュージカルは声質よりもルックスのバランスを重視するせいか、バリトンの人材がほとんどいないです。

韓国ミュージカルの俳優さんは顔とスタイルが良く、衣装の着こなしがおしゃれで、歌や演技も上手く、そして緊迫感のある舞台でした。
舞台表現の熟練度という点では、韓国の方が上海よりも上かもしれません。ただ、ルックスレべル、基礎的な歌唱力という点では、それほど差はないように思います。だからこそ、多くのKミュージカルを中国語化して上演できているといえます
韓国俳優は雰囲気があり、韓国俳優ならではのかっこよさがあります。中国俳優はスタイルそのものがきれいで、美形のバリエーションが豊富です。

大学路の観客のマナーはよく、公演中にスマホでメッセージを打つ人や、スマホをぼとりと床に落とす人はいませんでした。ただ、上海と同じく咳をしている観客が多く、感染症流行の影響を感じました。

大学路は想像していたよりもずっとコンパクトでちょっと拍子抜けしました。ソウル大学は医学部(大学病院)を残して移転してしまいましたが、成功館大学のキャンパスが近く、他にも学校があるので学生街の雰囲気があります。






上海のミュージカル劇場は人民広場周辺に集中しておりロケーションがよいです。
劇場自体は小さくても建物自体は大きく、昔から続く繁華街にあるので「これから劇を観に行くぞ」と気分が上がりやすいです。中国は建築物のサイズがすべて大きく、凹凸がダイナミックなので写真映えします。

上海人民広場近辺の九江路。人民大舞台、亜州大厦の正面入口付近です。


ソウルはとても機能的で常にバージョンアップされている都市ですが、写真でその良さを表すのが難しいです。
しばらく行かないうちにインチョン空港第1ターミナルは改装されており、一瞬第2ターミナルにいるのかと思ったほどです。
インチョンT1の外国人向けの入国審査窓口は全部で20個ありますが、そのうちの18個が稼働しており、20分程度で入国審査を通過できました。
インチョン空港は機能性が高くキャパシティの大きい空港ですが、その分あらゆるポイントで歩く距離が長いのが難点です。

ミュージカル鑑賞以外に観光もしました。

景福宮(キョンボックン)
ソウル版の浅草雷門のようなところです。平日だったこともあり外国人観光客ばかりでした。あらゆる国の人々がレンタルの韓服(ハンボク)を身に纏って景福宮を目指します。景福宮は韓服を着ていると入場料が無料になります。景福宮の入場料は3,000ウォン(約340円)なのでレンタル料の方がもちろん高いのですが、欧米、東南アジア、アフリカ系、あらゆる国の人々が韓服を着ていました。


文化遺産名所としてすごく面白いかと言われると微妙なところですが、建築物の復元工事を懸命に進めており、韓国のやる気を感じさせられる場所です。

青瓦台(チョンワデ、せいかだい) 
2022年に現職尹錫悦大統領の方針により「市民の懐にもどってきた」元大統領府・青瓦台。
メインの建物「本館」の内部は見学できますが、それ以外は広大な敷地の庭園を楽しむというものになります。本館はクラシックな独特の内装・デザインですが完成は1991年と意外と新しいです。
庭園はとてもきれいに整備されています。青瓦台の中で文化財として価値があるとされているのは最近国宝に指定された「石佛坐像」です。「石佛坐像」があるところまで登ると、見晴らしがよく、天気に恵まれれば南山ソウルタワーも見えます。


2024年汝矣島桜祭り
今年はソウルでも桜の開花が予想より少し遅れたようです。汝矣島桜祭りの開催期間は3月29日〜4月2日でしたが、満開は4月4日頃でした。
食べ物の屋台が集まるヨイナル駅がスタート地点として案内されていますが、ここから桜並木に入り国会議事堂を回って最後まで歩くと相当の距離になります。汝矣島の先端をU字型に歩くようなコースになるので、疲れても途中で離脱して交通機関に逃げるポイントがありません。そのかわり、路上に仮設トイレが沢山設置されており便利です。


汝矣島の漢江沿いのエリアは市民の憩いの場として整備されています。
夜中でも安全で追い出されることはないそうです。芝生のキャンプエリアに夜中まで人が大勢集っており、マラソンサークルのような若者のグループも多かったです。漢江の周辺は自然に恵まれた環境です。なぜソウルでは漢江周辺の不動産が高いのか分かるような気がします。


2016年頃まで韓国の観光業は中国人観光客にすごく依存していましたが、現在では済州島(チェジュド)を除くと、中国人観光客の比率は高くありません。欧米、東南アジア、インド、日本など、世界各地からまんべんなく観光客が訪れています。
かつては中国語と日本語の表記もよく見かけましたが、いまは外国語は英語に一本化しているように思います。その代わり、英語表記がある場所が増えて、外国人にとってはより便利になったかもしれません。


韓国も物価が上がっていると言われていますが、旅行する分にはそこまで高いと思いませんでした。円安の影響を除外すると、上海と比べてソウルがすごく割高だとは思いません。
ミュージカルのチケットの価格も、演目によって異なりますがソウルと上海で大きな違いはないように思います。

街中を普通に歩いている分には、あまりKPOPやKドラマの影響力を感じませんでした。
かつてのイ・ビョンホンやイ・ミンホのように特定の俳優がものすごく売れていて広告がそこら中にあるという時代ではなくなったのでしょうか。
4月5日からNetflixで韓国ドラマ『寄生獣』の配信がスタートするので、『寄生獣』を宣伝する地下鉄のモニター、路線バスのラッピングを何度も見かけました。

地下鉄や街中では日本のキャラクター商品を身につけている人が以前よりも目につきました。
ちいかわのストラップ、サンリオやクレヨンしんちゃんのスマホケース、そして書店では日本の漫画の単行本が沢山売られています。
JUMP系を中心とするメジャー漫画の単行本は1冊約6,000ウォン(約680円)で販売されており、韓国の物価からするとそれほど高いものではないと思います。コーヒー1杯より少し高いくらいの値段です。
一方、韓国の漫画は元々デジタル媒体で発表されているので、そこから紙媒体化すると単価が高くなる傾向があるようです。そのため、韓国の漫画より『呪術廻戦』など日本の漫画の韓国語版の方が定価が安く、不思議な感じがします。

AK PLAZA 弘大店の中にあるアニメイト 漫画・書籍の品揃えが豊富。


AK PLAZAは日本関連のテナントが多いです。アニメイトがある5階は他のグッズショップも入っており、欧米人も多く来店していました。



BLは韓国コンテンツが強いですが、少年漫画は日本の漫画が売上ランキングの上位を占めていました。呪術廻戦、フリーレン、ブルーロックなど日本と同じようなタイトルが売れています。あと『極楽街』が人気かもしれません。

コロナの3年を経て、韓国では日本コンテンツ(主にアニメ)に対する受容度が上がったように感じます。
大統領交代による政治的な影響もあるかもしれませんが、それよりも、ビジネスとしての旨味が浸透したからなのではと思います。
日本でKPOPが流行っていますが、「KPOPビジネス」によって利益を得るのは韓国側だけではありません。KPOPビジネスに関わる日本企業にも当然利益を得るチャンスがあります。
むしろ、いちから新しい何かを自分で創り出すよりも、あらかじめ商品として完成しているKPOPを売る方が早く稼げる可能性があります。

日本のアニメや漫画、周辺グッズは競争力のある商品です。
売れると分かっているのだから、排斥せずにビジネスにすれば韓国側にもメリットがあります。経済的にも、いまの韓国は日本の商品価格を受け入れる力が十分あります。
クリエイティブな仕事は不確定性が高いです。天才はいつ現れるのか分かりません。いちから何かを創り上げるのは大変なことです。
中国でも日本のアニメグッズがよく売れていますが、「中国独自のアニメを盛り上げよう」という志にこだわらずに、すでに出来上がっている日本の商品を販売して消費する方が遥かにラクで、ビジネスとしてもリスクが小さいです。
感情的な抵抗がなくなってしまえば、文化はどんどん吸収されます。日本と韓国はシンクロする市場の範囲がさらに広がっていくと思います。

スマホゲームは韓国でもmiHoYoの原神やスターレイルが人気です。miHoYoは「日本風のゲームを作る中国のゲーム会社」です。


ソウルで行われる高畑勲展の地下鉄駅構内の広告
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映画『君たちはどう生きるか』中国で公開~劉昊然など人気俳優を起用した中国語吹替版

2024年05月02日 | エンタメの日記
スタジオジブリのアニメ映画『君たちはどう生きるか』が2024年4月3日に中国で公開され、5月1日現在までに興行収入7.76億元(約155億円)を上げています。日本での3月時点での興行収入90.8億と比較すると、日本の約1.5倍に相当します。

中国語タイトル『你想活出怎样的人生』は「君たちはどう生きるか」のほぼ直訳となります。
本作の英語タイトルは「The Boy and the Heron」(少年とアオサギ)です。先に公開された台湾や香港では、英語タイトルの「少年とアオサギ」をもとにした『蒼鷺與少年』という中国語タイトルとなっています。


興行収入7.76億元(約155億円)というのは、中国ではそれなりのヒットです。
中国の映画市場の規模は大まかにいうと日本の約5倍なので、日本市場での感覚に換算すると30億円超えのヒットに相当します。

~最近中国で公開された日本アニメ映画の興行収入ランキング~(2024年5月1日現在)
「すずめの戸締まり」   8.07億元(約160億円)2023年3月24日公開 2023年通年ランキング20位
「君たちはどう生きるか」 7.76億元(約155億円)2024年4月3日公開 2024年通年ランキング暫定6位
「THE FIRST SLAM DUNK」6.6億元(約132億円)2023年4月20日公開 2023年通年ランキング25位

「君たちはどう生きるか」は中国で大健闘しており予想を上回るヒットとなっています。
まず、4月3日から清明節の3連休に合わて公開されましたが、同時期にめぼしい新作がほとんどなかった(他に『ゴジラxコング2』くらいしかなかった)ことがプラスにはたらきました。

日本では事前に情報を出さない、前宣伝をしないという珍しい手法が取られましたが、中国では2つのキーワードを全面に出した宣伝が行われ、ターゲット層にうまくリーチしたのではと思います。
宣伝キーワードの一つは、「第96回アカデミー賞長編アニメーション賞受賞作品」であることです。
アカデミー賞の発表が2024年3月10日だったので、中国公開の3週間前にちょうどよく「アカデミー賞受賞」という強力な宣伝材料ができました。
近年中国映画が米アカデミー賞の有力候補に挙がることはほとんどありませんが、中国人は米アカデミー賞に無関心というわけではなく、むしろ相当の権威として捉えられています。

もう一つは、「宮崎駿人生の映画 別れの作品」というキャッチコピーがつけられ、宮崎駿監督の人生を総括した映画であること、そして最後の作品であることが強調されました。
中国語タイトルは『你想活出怎样的人生』で「人生」という単語が含まれています。キャッチコピーの「人生」というキーワードと重なっており、マーケティングが上手いと思いました。
中国で多く使われた宣伝素材。オスカー受賞のロゴが入っています。キャッチコピーのフォントサイズが大きいので「人生告別」が映画のタイトルだと勘違いしている人もいました。


吉野源三郎作の小説「君たちはどう生きるか」の中国翻訳小説も発売されており、小説タイトルはアニメと同じく『你想活出怎样的人生』。「アニメの巨匠宮崎駿監督の一生に影響を与えた小説」と宣伝されており、結構売れています。


豪華キャストによる中国版吹替版
「君たちはどう生きるか」は日本語原版で公開されていますが中国語吹替版もあります。吹替版には名だたる人気俳優が起用されています。
主役の11歳の少年・眞人の中国版吹替を担当したのは人気俳優の劉昊然(リウハオラン)です。
劉昊然(リウ・ハオラン):1997年生まれ、身長185cm、10代から活躍する人気俳優。爽やかなルックスで、若者らしい明るさと知的な一面を表現できる評価の高い俳優。ドラマ「琅琊榜(ろうやほう)〈弐〉〜風雲来る長林軍〜」、映画「唐人街探案」シリーズが有名です。
その他にも、青サギをコメディ俳優の大鵬(ダーポン/董成鵬)、ヒミを歌手の張含韵(ジャン・ハンユン)、父親の勝一とインコ大王をベテラン人気俳優・朱亜文(ジュー・ヤーウェン)、夏子を高圓圓(ガオ・ユエンユエン)、大伯父を陳建斌(チェン・ジェンビン)が吹替ています。

これはものすごい豪華キャストです。第一線で主役や重要な役どころを演じる大物俳優が大量に投入されています。
朱亜文(ジュー・ヤーウェン):1984年生まれ、ドラマ「大明皇妃」の皇帝役など地位のある重要な役柄を演じることが多い俳優。軍事・革命もの映画(主旋律映画)にも多く出演しています。
大鵬(ダーポン/董成鵬):1982年生まれ、元々はテレビ番組の司会者。自身が監督・主演したシットコム「屌丝男士」が大ヒットし、人気コメディ俳優となり多くの映画に出演。プロデューサーとしても有名。
陳建斌(チェン・ジェンビン):1970年生まれ、90年代から俳優として活躍する中国芸能界の大御所。キャリアが長く多数の出演作があります。「宮廷の諍い女(甄嬛伝)」で皇帝役(雍正帝)を演じています。
高圓圓(ガオ・ユエンユエン):1979年生まれ、2000年代から一貫して第一線で活躍する美人女優。2014年に俳優の趙又廷(マーク・チャオ)と結婚し、芸能人カップルとしても有名。
張含韵(ジャン・ハンユン):1989年生まれ、オーディション番組・第1回目「超級女声」で3位になり芸能界入り。中国芸能史において特別な意義を持つタレント。近年バラエティ番組をきっかけに再ブレイクしています。

英語版の吹替もイギリスの人気俳優ロバート・パティンソンが青サギの声を演じるなど、豪華キャストで制作されています。
台湾版は青サギを人気俳優のグレッグ・ハン(許光漢)が演じるなど、宮崎駿映画の吹替版を豪華キャストで作ることが世界的に流行っているようです。

3月28日に上海で中国公開を記念して試写会が行われ、ジブリの鈴木敏夫プロデューサーを招き、吹替を務める劉昊然(リウ・ハオラン)、大鵬(ダーポン)、朱亜文(ジュー・ヤーウェン)が登壇しました。




しかし、これほどの豪華キャストで制作された中国語吹替版は、映画館でほとんど上映されませんでした。95%以上が日本語版での上映です。
北京の映画館では吹替版を比較的多くスケジュールしていますが、北京でも吹替版の比率は10%くらいにしかならないと思います。
中国語版は字幕の読めない子どもにも理解しやすいようにという配慮から作られたはずなので、土日や郊外の住宅街に近い映画館で中国語吹替版が比較的多く上映されています。中国語吹替版を観るためには吹替版を上映している映画館をわざわざ探して、場合によっては郊外まで行かないと観ることができません。

「君たちはどう生きるか」の中国語吹替版を観みましたが、1997年生まれの劉昊然(リウハオラン)が小学生の少年役の吹替をするのは、ちょっと声のトーンが落ち着きすぎているように思いました。
名だたる俳優が吹き替えたメインキャラクターも良かったのですが、普通の声優が起用された脇役の老婆たちの声の演技もうまくて驚きました。
中国では人気俳優に頼らなくても、職業声優で吹替版を作る実力が十分あると思います。

2024年4月30日から中国では宮崎駿作品『ハウルの動く城』が上映されますが、こちらの吹替えキャストも豪華で、主役のハウル(日本語版は木村拓哉)を若手俳優の于适(于適/ユーシー、2023年公開の映画「封神」で一躍有名になった美形俳優)、ソフィーを人気若手女優の田曦薇(ドラマ「卿卿日常 」のヒロイン)が吹替えています。この二人は旬の若手俳優です。

日本のアニメ映画の中国公開は着実に増えており、4月30日から労働節休暇に合わせて『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』が公開されました。
6月15日には『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』も中国で公開される予定です。

  

「スパイファミリー」劇場版も中国語吹替版がありますが、こちらは俳優を起用するのではなく専門の声優をキャスティングしています。
中国ではベテラン人気声優として知られる、边江(ロイド)、李冠霖(ヨル)、山新(アーニャ)がメインキャストを務めます。
边江と李冠霖は多くの中国ファンタジー時代劇の吹替をしており、よくコンビを組んでいます。ドラマ「三生三世」の主役コンビ(ヤン・ミーとマーク・チャオ)の声を演じているのも李冠霖と边江です。
山新は中国語ボーカロイド「洛天依」の元音源の提供者であり、声優陣は中国声優業界ですごく実績のある方たちです。

にもかかわらず、中国語吹替の上映はやはり非常に少ないです。「スパイファミリー」は子どもも観るだろうし、もっと吹替版を上映すればいいのにと思うのですが、日本語版の方が集客力があると認識されているのでしょうか。
中国の声優、吹替のレベルは急速に向上しています。声優がタレント化するまでには至っていませんが、実績のある声優は不足しており、中国ドラマ、中国アニメ、ラジオドラマなどのニーズも多いので、吹替人件費は安くありません。
一方で、近年生成AIの活用が進んでおり、将来的に吹替えはAIで可能、むしろAIの方が低コストで優秀なのではという見方もあり、今後中国の「吹替」も成長の形を変えていくかもしれません。
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KING GNU アジアツアー「THE GREATEST UNKOWN」上海公演(2024年4月14日、15日)

2024年04月25日 | エンタメの日記
4月14日、15日にKing Gnuの初上海ライブが開催されました。King Gnu(キングヌー)はいまものすごく売れている日本のミクスチャー・ロックバンドです。2024年4月に台北、シンガポール、上海、ソウルの4都市で開催された「Asia Tour THE GREATEST UNKOWN」はKing Gnuとしては初の海外ツアーとなります。



King Gnuは2018年に初シングル「Prayer X」がアニメ「BANANA FISH」のエンディング曲に起用され、翌年2019年にはドラマ「イノセンス 冤罪弁護士」の主題歌「白日」で紅白歌合戦に初出場しています。ソニー・レーベル所属のアーティストになってから短期間のうちに急激にメジャーになりました。
2024年4月14日、15日に上海静安体育センターで開かれたライブが「初の上海公演」となりましたが、本当は2020年に上海に来るはずでした。ライブの会場と日程の情報まで流れていたのにコロナの影響で実現されませんでした。
King Gnuは売れてきたところにコロナ規制に遭遇し、他のバンドと同様にライブ活動ができなくなりました。しかし結果的にいうと、コロナの3年の間にKing Gnuはさらに売れているバンドになりました。

2020年に計画されていた上海ライブの会場は「ModernSkyLAB上海」(摩登天空上海)だったと言われています。
ModernSkyLAB上海は2017年にオープンした上海の中では大きいライブハウスで、詰め込めば1000人以上収容できる会場です。
2024年4月のアジアツアー上海公演で実際に使われた会場は「上海静安体育センター体育館」でした。アリーナに椅子をぎっしり敷き詰めていたので4000人弱収容できたのではと思います。4000人弱×2日間の公演で、のべ約8千人弱集客したことになります。

上海静安体育センター体育館 地下鉄1号線 汶水路から徒歩5分




King Gnuの上海ライブの情報が発表されたとき、ファンの間では「どうしてこんな小さい会場でやるんだ」「チケット取れるわけがない」「なぜメルセデスベンツアリーナでやらないんだ」と不満の声が上がりました。メルセデスベンツアリーナは約1万5千人収容可能なアリーナホールで、上海においてはさいたまスーパーアリーナのような位置づけの会場です。
当初は4月14日の1公演でしたが、急遽15日が追加になりました。それでもチケットは発売から数秒で完売でした。

上海公演のチケット価格は人民元1380元、1180元、980元、680元、480元です。現在の為替レートは人民元1元=約20円なので、日本円に換算すると、27,600円、23,600円、19,600円、13,600円、9,600円という値段になります。決して安くはありません。日本の場合、東京ドームなどのドームコンサートでの指定席が11,000円なので、日本に比べると上海はざっと2~3倍高いイメージです。

2024年4月14日、15日 King Gnu Asia Tour THE GREATEST UNKOWN 上海公演座席表 静安体育センター


中国では公式ファンクラブ経由でチケットを販売するという仕組みは基本的に普及しておらず、チケットアプリで一斉発売されます。
この数年、中国ではダフ屋行為・転売の防止対策として、チケットアプリに身分証番号と携帯番号を紐付けさせてかなり厳しい実名制販売を実施しています。
King Gnuの上海公演は、チケットアプリ「大麦」(damai)と「票星球」で発売されました。
実名制なので、チケットアプリで購入する時点で自分の身分証情報を登録する必要があります。会場にもよりますが、入場の際に電子チケットのQRコードを読み込んで入場するのではなく、身分証カードを機械で読み込む、または公安システムと連動して顔認証でゲートを通過する方法が取られています(外国パスポートでの購入者は別途設けられた有人ゲートから入場)。つまり、QRコードの譲渡は不可能で、身分証を借りたとしても顔認証でひっかかる可能性もあり、かなり厳しくなっています。
かといってダフ屋が撲滅されたかというと、決してそうではなく、発売の時点で代行業者にチケット購入を依頼する人が増えています。代行に頼まないと取れない公演も多いです。
代行業者は超高速ネット環境で、プログラミングコードを実行してチケットを取っていると言われています。代行依頼料は公演の人気度によって異なり、安ければ100元(2000円)、高ければ2000元(4万円)というケースもあるようです。
つまり、人気のあるアーティストの大型会場でのコンサートの場合、かなり厳しい実名制が採用されているので、発売日を過ぎて完売となった後にチケットを入手することは非常に難しいです。実名制の救済として、キャンセル・リセールがありますが、リセールされる枚数はやはり少ないです。

King Gnu上海ライブのお客さんは女の子が多かったです。
7対3くらいの割合で女の子が多く、20代、30代の社会人がメインだと思います。日程的に大学生は来にくかったかもしれません。中国では中学生や高校生がこういったコンサートに出掛けることは少なく、遊びは大学生になってからという風潮があります。

予想はしていましたが、「呪術廻戦」のコスプレをしてライブに来ている人が結構いました。
King Gnuはあらゆるジャンルでのタイアップを軒並み成功させていますが、その中でもアニメ「呪術廻戦」の影響力は絶大です。
King Gnuはタイアップしたアニメのほぼすべてが中国で正規配信されています。偶然かもしれませんが、結構すごいことだと思います。
『BANANA FISH』(中国語タイトル:战栗杀机) 「Prayer X」 当時IQIYIで正規配信。いまは配信されていないかもしれません。
『王様ランキング』(中国語タイトル:国王排名) 「BOY」 bilibili動画などで正規配信。『王様ランキング』第1期は中国でかなり人気がありました。
『呪術廻戦 第二期 -渋谷事変-』 (中国語タイトル:咒术回战第二期)「SPECIALZ」 bilibili、Youku、iQIYi、テンセントビデオで正規配信
『劇場版 呪術廻戦 0』 中国未公開。正規配信もされていないと思います。「一途」「逆夢」

日本のアニメは中国で人気がありますが、すべての作品が正規ライセンスされるわけではありません。
センサーシップの強化により、正規ライセンスされる日本アニメの本数は一昔まえに比べると減っています。
『進撃の巨人』や『トーキョーグール』は中国で配信停止になったのに、『呪術廻戦』は配信停止になることなく、いまも大人気でアーカイブ配信されています。中国当局の規制の基準は曖昧で、表現の規制はどこにボーダーラインがあるのか不明瞭です。そのときの社会的な空気にも左右されます。

人気アニメとのタイアップは海外向けには絶大なアピール力があります。
また、対象を中国に絞っていうと、「日本で売れている」こと自体が大きなアピール材料になります。
日本には多くの中国人が留学や就労のために居住しており、日本に頻繁に旅行に行く人も多いです。彼らは日本での生活のキラキラした一面を動画にして中国SNSアプリで発信しており、その中でも「人気アーティストのコンサート」は一度は経験してみたい憧れの対象です。
日本に滞在している大小さまざまな中国人インフルエンサーが発信する日本でのコンサートの熱気や非日常感に惹きつけられ、「自分もこのアーティストのライブに行ってみたい」と思う人は少なくありません。



コロナ規制が解除された2023年以降、怒涛の勢いでライブが再開され、日本アーティストも次々と中国に来ています。
日本の音楽アーティストに対する評価は全般的に高く、とくに日本のバンドのライブ演奏には絶大的な信頼が寄せられています。
中国ではライブ中の撮影が事実上取締られていないこともあり、SNSにライブレポをアップする人はすごく多いです。
King Gnuも他の日本アーティストも、中国人ファンがSNSにアップしたライブの感想やレポをみると、褒めちぎられています。
そんな絶賛の対象であるアーティスト自身は、上海の繁華街を歩き回ってファンに遭遇してはサインやツーショットに応じ、上海でシェアサイクルに乗るなど庶民的な姿をインスタグラムにアップしています。そのような情報は瞬く間に中国SNSで拡散されます。

上海淮海中路のSONYショールーム PlayStation × King Gnu メンバーのサインが入ったプレステが展示されています。




King Gnuは若い子たちの支持を集める人気バンドです。
4人のメンバーは1992年、1993年生まれですが、彼らの親の世代にあたるような大人が聴いても純粋に良い曲だと思えるハイクオリティなJPOPを作り出しています。世代を超えて受け入れられるのは、メンバーが好んで聴いたきた音楽と、その親世代が好んで聴いてきた音楽に重なり合う部分があるからかもしれません。

いわゆるJPOPの曲風自体は宇多田ヒカルがデビューした1990年代から現在まであまり変わっておらず、歌詞やアレンジが時代ごとにアップデートされ続けています。それは音楽的に進歩していないのではなく、多くの人々に愛される音楽が受け継がれるというJPOPの普遍性が形成されているのだと思います。

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中国の"グランドスラム俳優”張譯(チャン・イー/张译)~2023年大ヒット社会派ドラマ『狂飆』(The Knockout)

2024年03月31日 | エンタメの日記
中国俳優といえば真っ先に誰を思い浮かべるでしょうか。『陳情令』の肖戦(シャオジャン)、王一博(ワンイーボー)、『琅琊榜(ろうやぼう)』の胡歌(フーゴー)、王凱(ワンカイ)、呉雷(ウーレイ)、近年多くの主演ドラマが日本で放送されている許凱(シューカイ)、早い時期から海外でも知られている元祖美形俳優・黄暁明(ホワンシャオミン)、陳坤(チェンクン)、いま勢いがあるイケメン俳優白敬亭、王鶴棣、張凌赫、檀健次、任嘉倫・・・などでしょうか。

日本を含め海外では、中国映画よりもドラマの方が紹介される機会が多いので、映画を中心に活動している俳優よりも、ドラマ中心の俳優の方が知名度が高いかもしれません。「ドラマ俳優」と「映画俳優」に明確な線引きがあるわけではありませんが、中国ドラマの場合、特に古装ドラマではセリフを声優が吹替えていることが多いです。映画は基本的に吹替えを使わないので、映画の方が俳優として高い技量が求められるといえます。
また、中国映画界には華表奨、金鶏奨、百花奨という三つの映画賞があります。これらは「三大映画賞」と呼ばれ、中国芸能界において非常に権威があり、監督賞や主演俳優賞を受賞するのは栄誉とされています。
華表奨、金鶏奨、百花奨の三つすべてを制覇すると、グランドスラム(中国語で「大満貫」)と言われます。
2023年に「中国グランドスラム俳優」の仲間入りをしたのが、俳優・張譯(チャン・イー)です。

張譯/张译(チャン・イー/Zhang Yi)
1978年2月17日生まれ ハルビン出身、身長178cm 出演作であるチャン・イーモウ監督の『崖上のスパイ』は日本でも公開されました。『崖上のスパイ』では金鶏奨と百花奨を受賞。


多くの大作映画で主役を演じ、2023年ついに「中国グランドスラム俳優」となった張譯ですが、もともとは軍属の劇団員として舞台俳優をしていました。
2006年にドラマ『士兵突撃』に出演したことをきっかけに、キャリアが大きく転換します。
『士兵突撃』は中国人民解放軍の兵士の生活と組織構造をリアルに描いた大ヒットドラマです。中国ドラマ史上TOP10に入る名作ドラマだと思います。職業の一つとしての軍人が、一つの職場としての軍隊でどう生きていくかを描いたドラマで、実際の戦争は出てきません(2000年代に戦争をしていないため)。実戦として描かれるのは、ミャンマーとの国境線での麻薬組織との戦闘くらいです。戦争のない時代の軍人にとって、戦友との別れは戦死ではなく、怪我や成績不振による組織からの離脱であるという現実を描いています。
張譯はドラマ『士兵突撃』で、主役の兵卒(王宝強)を指導する班長役を演じて大好評を得ました。さらに2009年に抗日戦争ドラマ『我的団長我的団』に出演し演技力が本物であることを証明します。この2作は当時大ヒットし、わずか2作で張譯は軍隊ものドラマの主役クラスの俳優となりました。

2006年の『士兵突撃』、2009年の『我的団長我的団』は康洪雷監督のドラマですが、いまの中国ではもうこういうドラマは作れないのではと思います。
『士兵突撃』(2006年) 主役の王宝強のほか、張譯、陳思誠などその後中国芸能界で大活躍する人材を世に知らしめたドラマです。


『士兵突撃』と『我的団長我的団』で上官役を演じた段奕宏は当時「理想の上司」としてもてはやされました。


『士兵突撃』や『我的団長我的団』は戦争・軍事ドラマですが、「英雄」と崇められて一時の脚光を浴びる戦士と、泥の中で終わりのない訓練と先の見えない戦いを続ける一兵士としての現実が多面的に描かれており、深みのあるドラマでした。

張譯(チャン・イー)はその後も着々と俳優としてのキャリアを重ねていきます。ただし、軍事、警察、現代社会派ドラマへの出演が多く、武侠ドラマやファンタジー時代劇にはほとんど出ていません。
次第に映画出演も増えていきますが、2018年公開の戦争アクション映画『オペレーション:レッド・シー』(紅海行動)が一つの分岐点となります。
『オペレーション:レッド・シー』は中東内戦地域(架空の国)で人質を救出するという戦争アクション映画で、張譯は作戦を実行する精鋭部隊の隊長を演じます。優れたカメラワークと緊迫した戦闘シーンがロングランにつながり、『オペレーション:レッド・シー』は興行的に大成功します(2018年度興行収入トップ)。この頃から張譯は数字の取れるヒットメーカーとして多くの大作映画にキャスティングされるようになります。

2017年頃から現在に至るまで、中国では「主旋律映画」(主旋律电影)と呼ばれる国としての主流の価値観を提唱するための映画が多数作られています。
それは、内戦地域のテロ組織から自国民を救出する戦争アクションであったり、抗日戦争、朝鮮戦争などを舞台とする歴史戦争映画であったり、中国の苦難の歴史や歩みを偉大なものとして表現する映画です。

張譯は多数の「主旋律映画」に主役として出演しています。
「主旋律映画」は「強い国力」を表現するため、一般的に大量の俳優が投入されるスペクタクル映画となっており、高額の製作費がつぎこまれます。
張譯はその俳優キャリアの中で、兵士や刑事役を多く演じており、人のために戦う正義漢のイメージが強いです。しかも、映画『オペレーション:レッド・シー』が大ヒットしたことで、興行的にも数字が取れるという実績もできました。実力と興行実績を兼ね揃えた張譯は、大作「主旋律映画」の主演を任せられる筆頭俳優として、『我和我的祖国』『我和我的家郷』『八佰』『金剛川』『万里帰途』などに次々と出演しています。

しかし、「主旋律映画」というのは中国の正しい価値観を提唱するものなので、正義と悪の対比がはっきりしており、正義が勝つと決まっています。話としては先が読めてしまうし、マンネリ化しやすいです。そのような作品の主役を正義のイメージを背負った張譯がたびたび演じてきました。張譯はすごく好きな俳優ですが、張譯が主役を演じた近年の朝鮮戦争を背景とした「主旋律映画」があまり好きではないので、張譯に対する印象も引きずられてしまっていたかもしれません。「主旋律映画」の中でも『我和我的家郷』などはエンタメ的によくできていて面白いと思います。

そんな中、2023年1月に張譯主演の新作ドラマが放送されました。『狂飆』という現代社会派ドラマです。
『狂飆』(The Knockout) 2023年1月14日放送開始 放送媒体:CCTV-8、愛奇芸(iQIYI) 全39話
主演:張譯、張頌文、高葉、倪大紅、李一桐、李健など 監督:徐紀周 撮影場所:広東省江門など


ドラマ『狂飆』は公権力と犯罪組織との癒着撲滅をテーマにしたドラマで、現実世界と一部シンクロしており、第1話の冒頭では「習近平政権のもと犯罪組織取締活動が強化されており・・・」というくだりがあります。
張譯は『狂飆』でもやはり正義感の強い刑事役を演じます。しかし『狂飆』では正義は簡単には勝ちません。ギリギリまで悪の勢力が大活躍します。それが『狂飆』の面白いところであり、悪役・高啓強を演じた張頌文がこのドラマをきっかけに大人気になりました。

高啓強を演じた張頌文(ジャン・ソンウェン)。1976年5月10日生まれ 身長175cm 広東省出身 北京電影学院卒 『バッド・キッズ』、『心居』などにも出演していますが、『狂飆』で大ブレイク。


~あらすじ~
高啓強(ガオ・チーチャン)は弟と妹を大学に行かせるために市場で魚を売って生計を立てる純朴な青年。地元のチンピラから理不尽なショバ代をせびられたり、高額な賠償請求をされたりしても、甘んじて受け入れようとしていた。チンピラとの衝突をきっかけに、張譯が演じる刑事・安欣(アンシン)と高啓強が出会う。安欣は正義感溢れる青年刑事で、高啓強に同情心を寄せ、何かと気に掛けるようになる。
ところが、チンピラたちは高啓強は刑事の後ろ盾を得たと勘違いし、余計にちょっかいをかけてくるようになる。高啓強は偶然やくざの息子の死に加担してしまい、黒社会との関係が切れなくなっていく。その日の問題を解決するため小さな悪を受け入れていくうちに、利益の大きさと比例して大きな悪を受け入れざるを得なくなっていく。PHSの販売、村単為での立ち退き事業などを経て、いつしか高啓強は京海市の表の世界も裏の世界も牛耳る不動産会社のトップに上り詰めていた。一方、刑事・安欣は京海市に巣食う悪を追い詰めながらも様々な妨害に遭遇し、未婚のまま40代を迎えていた。そんなとき、犯罪組織撲滅活動の実行部隊が安欣のもとを訪ねてくる---。

2023年の大人気CP 高啓強と安欣。


張譯は1978年生まれなので、ドラマ撮影当時は43歳くらいだったことになりますが、20代の青年時代と年齢以上に老け込んだ40代の刑事役をうまく演じ分けています。
20代の青年時代の安欣は、正義感に燃える怖いもの知らずの刑事。しかし多くの挫折と理不尽な処遇を経て、40代の安欣は髪が真っ白な出世を阻まれた刑事として登場します。




本作のヒロインは、刑事・安欣の幼馴染役を演じる李一桐(リー・イートン)のはずでした。しかし、高啓強と再婚して「親分の姐さん」役を演じた高葉の方が人気が出ました。
陳書婷役を演じる高葉。動物的なカンと豪胆な性格で危ない橋を大胆に渡っていく。前夫に愛はないが一人息子が彼女の弱点。安欣とは不思議な縁で繋がっている。


『狂飆』を観ると、現代社会においてなぜ普通の人間が腐敗に巻き込まれていくのか、よく理解することができます。
善良な弱者であった高啓強は、20年で表社会・裏社会を仕切る街のボスに登りつめますが、その過程はこの20年の実際の中国経済成長と不動産ブームとリアルにシンクロしており、高啓強という悪役は視聴者からみて共感できる人物です。
また、『狂飆』では20年前の中国地方都市や農村の貧しさが深く描かれています。教育の不足、モラルの乏しさ、血縁のみを信用する村社会に足を取られながらも、貧しさこそが富を求める強い原動力となっており、悪役のたくましさに敬服します。

『狂飆』が放送されてから丸一年経ちましたが、社会ドラマとしては『狂飆』ほどの評価と支持を集めた作品はこの1年なかったように思います。
2023年12月に放送された『繁花』(ウォン・カーウァイ監督、胡歌主演の1990年代の上海を舞台とした商戦ドラマ)も社会現象になりましたが、映像美に魅了されるものの、洗練され過ぎたキャラクターに違和感を抱く視聴者も多く、万人から支持されたとはいえないかもしれません。
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王一博(ワンイーボー)と中国ポケモンカード~「二次元」は上海商業施設の活性剤

2024年03月28日 | エンタメの日記
上海の中山公園という地下鉄駅の前に「龍之夢」(龙之梦)という大きなショッピングモールがあります。このショッピングモールに最近ポケモン公式カードショップがオープンし、モールの外壁に巨大な広告ポスターがかけられています。広告のイメージキャラクターは中国人気俳優・王一博(ワンイーボー)です。中国では王一博(ワンイーボー)の巨大広告自体は決して珍しいものではないのですが、ポケモン×王一博という組み合わせはかなりのインパクトがあります。

ポケモンカプセルボールを手にした王一博(ワンイーボー)。「王一博と一緒にポケモントレーナーになろう!」と書いてあります。


ショッピングモール「龍之夢」3階にオープンした「ポケモン公式カード館」。
中国版ポケモンカード、グッズ売り場と対面ゲームスペースがあります。2023年12月にオープン。


店内にはカプセルを模したようなスペースがあり、王一博がポケモンカードでバトルする広告映像が流れています。


王一博(ワンイーボー)は2019年に放送されたウェブドラマ「陳情令」で世界的に人気を集めている中国若手俳優です。
ボーイズグループのダンス担当として韓国デビューした経歴を持つダンスの実力者でもあります。王一博ほどのメジャーな中国芸能人が日系企業の広告に出るのは珍しいことです。もっともポケモンは完全にグローバル化されているので「日系企業」という扱いでもないのかもしれません。

3月21日から中国大手動画サイトiQiyi(愛奇芸)で王一博(ワンイーボー)の主演ドラマ『追風者』の配信がスタートしました。『追風者』は1930年代の上海を舞台とするスパイものです。中華民国期の諜報活動をテーマにしたドラマは数多くありますが、『追風者』は1930年代の中国金融界(中央銀行)が舞台です。王一博は金融の才能を発揮して国のために戦うという新種のヒーローを演じています。


ここ数年、上海のショッピングモールではアニメ・ゲーム関係のショップが次々とオープンしています。
かつて中国ではアニメ・コミック・ゲームの頭文字を取って「ACG」という言葉がよく使われましたが、いまでは「ACG」とい言い方はほとんどされなくなっており、「二次元」という言葉に置き換わっています。中国語における「二次元」はアニメ・ゲーム・漫画の中でも二次元キャラクターを中心として構成されるものを指し、これにまつわるイベントやグッズなど周辺産業も包まれます。

上海には昔からグッズ(主にフィギュア)の輸入品を扱う店は多かったですが、ここ数年は日本のメーカーや制作会社の正規出店が増えています。現在、上海のショッピングモールでは毎日のようにアニメ関係のコラボイベントやポップアップストアが展開されています。

■コラボ
「呪術廻戦」とniko and...のコラボ。期間:2023年12月2日~2024年1月14日
「呪術廻戦」TVアニメ第2期は中国の三大プラットフォーム(Youku、iQIYI、テンセント)+bilibili動画というフル体制で配信中で、いま中国で最も知られている日本アニメのひとつです。




niko and...はアニメコンテンツとのコラボを何度も行っており、「エヴァンゲリオン × niko and...」コラボではかなりの混乱が起きたので、「呪術廻戦」コラボは予約入場制を取り入れるなど混雑対策が取られていました。そのため連日ファンが殺到というかんじではありませんでしたが、常に多くのコスプレーヤーが訪れていました。

「名探偵コナン」とデイリー・クイーン(アイスクリーム)のコラボ。2023年5月~。


「名探偵コナン」とパン&カフェのチェーン店「奈雪の茶」(NAIXUE)のドリンクコラボ。2023年11月15日~


「名探偵コナン」とテイクアウトドリンクのチェーンLELECHA(楽楽茶)のドリンクコラボ。2023年11月15日~。


「名探偵コナン」は中国で非常に人気のある作品です。
コナン劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影』が2023年12月16日に中国で公開されたので、劇場版公開に合わせて飲食系のコラボが企画されたのだとは思いますが、同じようなドリンクチェーン2社が同じ時期に同じようなコラボを行うという常識的には考えられないことをやっていました。相乗効果あるいは炎上効果を狙ったものだったのでしょうか。

■ポップアップストア
アニメのポップアップストアを出すモールはいくつかありますが、企画力・集客力ともに圧倒的に力があるショッピングモールが「上海静安大悦城」です。「上海静安大悦城」は上海の中心地・人民広場駅から1つ先の曲阜路駅と直結する大型モールです。常に何かしらのコンテンツのポップアップストアや展示イベントが行われており、「二次元城」と呼ばれています。LOFT、サンリオショップ、アニメイトカフェなど多くの日系ショップが出店しています。

「SPY×FAMILY」上海静安大悦城ポップアップストア。開催期間:2023年8月4日~9月3日


時期的に中秋節前だったこともあり、SPY×FAMILYコラボの月餅が販売(予約受付)されていました。


「エヴァンゲリオン×niko and...」中国コラボでも月餅を作っていました。かなり凝ったデザインでした。


■アニメ・漫画関係の公式ショップ
JUMPショップ上海店 美羅城1階 2021年12月開店。


JUMPショップ上海店は開店から2年以上が経っていますが、いまも常に賑わっています。賑わいが続いているのは「缶バッジ」などランダムグッズが定期的にアップデートされているためかと思います。ランダム缶バッジは価格が比較的手ごろで種類が多く、本気でコンプリートしたい人も遊びで買う人もいます。缶バッジの人気コンテンツはジャンプ系では「ハイキュー!!」です。


■“上海の秋葉原”・百聯ZX(百聯ZX創趣場)
百聯ZXは南京ロード歩行者天国にある商業ビルです(住所:南京東路340号)。2023年1月に現在のようなアニメビルにリニューアルされ、上海の新名所として人気を集めています。
1階に入居しているバンダイTAMASHII NATIONSをはじめ、アニメイト、ブシロードなど多くの日系ショップがあります。中古グッズショップもありまさに「ミニ秋葉原」です。


屋外の巨大スクリーンは公式の広告のほか、有志がいわゆる同人絵を流すことが可能で人気のあるキャラクターの誕生日には多くの生誕イラストが掲出されます。この街頭スクリーンを見るために集まる人もおりオタク濃度の高い空間を作り出しており「上海の秋葉原」と呼ばれています。


1階にはイベントスペースがあり、期間限定展示やランダムダンスのイベントがよく行われています。
飛び入り参加型のランダムダンスイベント。KPOPファンの間で流行っているランダムダンスのアニメオタク版です。


アニメグッズにはフィギュアなどのコレクター系グッズと、缶バッジやアクリルスタンドなどの収集系グッズがあります。
収集系グッズに関していうと、中国でいま流行っている日系IP(コンテンツ)は、ハイキュー!!、ブルーロック、あんさんぶるスターズ!、文豪ストレイドッグスなどです。
日系コンテンツの中国生産グッズを主に扱う店も出てきています。


ブルールックの缶バッジ。中古品なのでキャラにより値段が違います。安定してレートが高いのは凪。千切、蜂楽も高い。


ハイキュー!!缶バッジ。研磨、月島、及川あたりのレートが高いです。


百聯ZXの最上階にあるVRゲームのスペース。中国はそれこそ20年くらい前からVR、ARゲームに力を入れており、VRゲームのハードメーカーも少なくありません。しかし、VRゲームのユーザーがすごく増えているとはいえません。VRコーナーは“上海の秋葉原”・百聯ZXビルの中で最も閑散としています。カードゲームのコーナーのほうがよほど賑わっています。


■中国産コンテンツ
日本アニメの情報はほぼリアルタイムで中国にも入ってきます。ただし、ここ数年は、中国で正規配信される日本アニメの作品数が減少しており、メジャーな作品でも中国配信されていないこともあります。たとえば「推しの子」「チェンソーマン」「機動戦士ガンダム 水星の魔女」などは中国で正規配信されていません。また、「進撃の巨人」「PSYCHO-PASS サイコパス」「トーキョーグール」などはかつては配信されていましたが、ある時期から配信禁止になっており、後続シリーズも配信されていません。

正規板として出版が認められた作品は一般書店の店頭に並び、受け手の幅が広がります。中国では「スキップとローファー」、「ホリミヤ」、「ルックバック」(藤本タツキ)などが高く評価されており正規版出版物が多くの書店に並んでいます。


2023年は「進撃の巨人」10周年・完結記念の年でした。中国では「進撃の巨人」は配信禁止となっており、タイトル名を出すことすら難しいです。にもかかわらず、2023年11月には上海静安大悦城で「進撃の巨人」ポップアップストアが開催され多くのファンが訪れました。告知・宣伝ポスターすらなく闇イベントのように行われましたが、行列ができる盛況でした。期間:2023年11月11日~12月17日(延長があったかもしれません)「進撃の巨人」の名前は出さずに「リーブス商会展」として行われていました。


単体でみると中国にもかなりの数の有力「二次元」コンテンツがあります。
BL原作の古装ファンタジー「魔道祖師」「天官賜福」、国際的な制作陣による中国産アニメ「時光代理人」などはグッズの種類も多く、他業種とのコラボ展開もさかんです。
スマホゲーム「原神」「アークナイツ」「崩壊スターレイル」などは世界的にヒットしており、中国にも膨大な数のプレイヤーがいます。
また、中国乙女ゲーム「恋とプロデューサー」「光と夜の恋」「時空の絵旅人」「恋と深空」「未定事件簿」などは華麗なビジュアルと壮大なファンタジックなストーリーが特徴的で独自のジャンルを築いています。

「アークナイツ」(明日方舟)を制作する鷹角網絡(HYPERGRYPH)は上海のゲーム会社。


乙女ゲーム「光と夜の恋」のポップアップストア。上海静安大悦城 2023年9月28日~12月27日


日本アニメの方が産業として成熟しているので、いまは日本コンテンツの方が強いですが、中国もアニメに力を入れているので、中国コンテンツと日本コンテンツが半々くらいのバランスになると社会的に健全な市場とみなされ、持続的に成長できるのではと思います。

3月29日から上海静安大悦城に「ちいかわ × MINISO」の中国初ポップアップストアが登場します。中国にも本格的にちいかわブームがやって来そうです。
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中国スマホ広告に参戦する新手のイケメン俳優たち~スマホ広告に登場する成功の象徴

2024年01月23日 | エンタメの日記
中国は恐らく世界で一番「国産スマホ」の競争が激しい国です。国産スマホとして、HUAWEI(ファーウェイ/華為/华为)、OPPO(オッポ)、Xiaomi(シャオミ/小米)、Vivo(ビボ)、honor(栄耀、※ファーウェイから分離)などのメーカーが激しいシェア争いをしており、どのメーカーもこぞって「売れてるイケメン俳優」をイメージキャラクターに起用しています。

中国のスマホはSIMカードと本体が分離しているため、通信会社は関係なくスマホメーカーが単独で広告を出しています。
iPhoneの中国シェアはここ数年約20%(約2.5億ユーザー)を維持しており依然として巨大市場ですが、iPhoneは特定の芸能人を使った派手な広告を出すことはありません。
サムスンの中国市場シェアは現在1%に満たず、中国市場から追い出された形になっています。
したがって、iPhoneを除外した約8割のシェアを中国スマホ各社が争う様相となり、「売れてる芸能人」を起用してブランドイメージの維持向上に務めています

HUAWEI(ファーウェイ) nova12シリーズ 若手俳優の易烊千玺 (イー・ヤンチェンシー/ジャクソン・イー)がイメージキャラクター。2018年からの長期広告提携。


易烊千玺 (イー・ヤンチェンシー)2000年11月28日生まれ。湖南省出身。アイドルグループ「TFBOYS」の最年少メンバーとして10代前半から芸能活動を開始。
2019年に公開された映画「少年の君」の演技が評価され主演俳優として多数の賞を受賞。以後「1950 鋼の第7中隊」(原題:長津湖)、「1950 水門橋決戦」(原題:長津湖の水門橋)、「満江紅」など立て続けに大作映画に主演。「長安二十四時」(2019年放送)に出演以降、ほとんどドラマには出ておらず、もっぱら映画俳優として活動している。
2022年7月に国家話劇院の入職資格試験の件で叩かれたことがあるが、それ以外にはスキャンダルやネガティブなニュースがほとんどない優秀なアイドル。

OPPO(オッポ)Reno11シリーズ 美形俳優の朱一龍(チュー・イーロン)がイメージキャラクター。


朱一龍(チュー・イーロン) 1988年4月16日生まれ、武漢出身。ブロマンスドラマ「鎮魂」の教授役でブレイク。
主演映画「星明かりを見上げれば(人生大事)」(2022年公開)、「ロスト・イン・ザ・スターズ/妻消えて(消失的她)」(2023年公開)が立て続けに大ヒット(Netflixで配信中)。これまでの温和で紳士的なイケメンのイメージを壊して演技の幅を広げた。

シャオミ(Xiaomi)Redmiシリーズ イメージキャラクター王一博(ワンイーボー) 2019年からXiaomiの商品ラインRedmi(レッドミー/紅米)の長期イメージキャラクターを務めている。


ドラマ「陳情令」のヒットで俳優活動がメインになっているが、元々はボーイズグループのメンバーで実力のあるダンサー。1997年8月5日生まれ、10代で中韓混合グループ「UNIQ」の一員としてデビュー。数多くの企業の広告に出ており、所属事務所YUEHUA(楽華)の稼ぎ頭。

honor(栄耀)栄耀100シリーズ 俳優・楊洋(ヤンヤン)


1991年9月9日生まれ、上海出身、名門の解放軍芸術学院で舞踊学校で舞踊を学ぶ。
オンラインゲームと古装ファンタジーを絡めた恋愛ドラマ「シンデレラはオンライン中!」(原題:微微一笑很傾城)(2016年配信)で大ブレイク。それ以前にも「左耳」「盗墓筆記」など多数のドラマに出演。2007年16歳のとき「紅楼夢」の主人公・賈寶玉の子ども時代役を演じてドラマデビュー。幼い頃から舞踊を学んでおり芸歴は長い。
楊洋(ヤンヤン)は比較的若い頃から売れた俳優で、中国ウェブドラマの発展を牽引したイケメン俳優。最近では「且試天下」などファンタジー時代劇にも出ている。
honor(栄耀)は元々ファーウェイ傘下のラインナップ。ファーウェイ本体のPシリーズ、Mateシリーズより低価格の商品ラインだった。米国制裁の影響もありファーウェイはhonorを2020年に分離。

honorのイメージキャラクターはこないだまで「山河令」でブレイクした俳優・龚俊(ゴンジュン)でしたが、新シリーズの発売に合わせて新たなイメージキャラクターを立てることも珍しくありません。

そして最近、中国スマホ広告戦線にまたニューフェイスが加わりました。

Vivoが新商品S18シリーズの広告に、若手イケメン俳優の張凌赫(チャン・リンホー)と張晚意(チャン・ワンイー)を起用したのです。
写真左:張晚意(チャン・ワンイー)  写真右:張凌赫(チャン・リンホー) 


張凌赫(チャン・リンホー) 1997年12月30日生まれ、江蘇省出身 ドラマ「蒼蘭訣」(2022年配信)に出演して一躍有名に。
公称身長190cmの長身。南京の難関大学「南京師範大学」卒業の秀才キャラでもある。最近では「寧安如夢」、「雲之羽」など立て続けに古装ドラマの主役を演じている。また、アニメ化された耽美小説「天官賜福」のドラマ版で主役の一人・花城役で出演すると言われており、他にも放送待ちのドラマが多数ある。

張晚意(チャン・ワンイー) 1994年4月22日生まれ、湖北省出身。ヤン・ズー主演のドラマ「長相思」(2023年放送)出演を機に大ブレイク。新人というわけではなく、10代の頃から俳優活動をしておりキャリアは長い。どちらかというと遅咲きだが、中国は若いときからキャリアを積み、30歳前後になってブレイクする俳優は少なくない。

張凌赫と張晚意はこの1、2年の間にメジャーになった俳優で、易烊千玺や王一博と比べると一般的な知名度はやや劣ります。
しかし、Vivoは相対的に低価格路線で若年ユーザーをターゲットとしており、上昇気流に乗っている新手のイケメンを投入するというのがVivoの戦略です。

なお、Vivo、OPPO、Xioamiなどの中国スマホは東南アジアで高いシェアを占めています。

スマホ各社は熾烈な競争をしているとはいえ、広告スタイルとしてはかなりの横並びといえます。
まず、各社揃ってイケメン俳優、つまり男性を広告に起用しています。過去にディリラバ(ウイグル出身の美人女優)がOPPOの広告に出ていたこともありましたが、基本的にスマホ広告はイケメン若手俳優に占拠されています。

いま中国スマホの広告に出ているタレントは、いずれも素晴らしい成果を収めてきた人たちです。
10代の頃から中国芸能界で活躍してきた易烊千玺や王一博、コロナ規制の中でも主演映画をヒットさせた朱一龍、新手のイケメン俳優として頭角を表す張凌赫らは中国芸能界の開拓者であり成功者です。
スマホは生活、仕事、娯楽の必需品であり、スマホ一台でビジネスを興すことも不可能ではなく、スマホ決済、オンラインバンク利用率が極めて高い中国ではスマホは金銭取引に直結し、あらゆることがスマホで処理されます。
スマホの広告に成功の象徴といえる「いま一番売れている芸能人」を起用するのは、ユーザーに成功のイメージを植え付けることが狙いの一つであると思われます。

なお、中国では広告にもセンサーシップ(検閲審査)があり、屋外広告物の掲出は関連当局に申請する必要があります。
広告に使用する単語、文言についてもNGキーワードが多数あり、センサーシップをスムーズに通過させるためにも、屋外広告物には文字自体があまり使用されず、メッセージ性のある広告はほとんどありません(政府広告は除く)。
結果的に、商品と芸能人を隣に並べただけの単純な構図の写真広告となり、広告として創意工夫があるとは言えません。
だからこそ、広告は芸能人自身の持つ知名度やイメージに大きく依存しており、起用する芸能人がどれだけインパクトを与え、商品認知に貢献できるかが重要となります。
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コロナを乗り越えて存続する上海SNH48~SNH48専用劇場オープンから10年

2024年01月16日 | エンタメの日記
いまから約10年前の2013年8月、SNH48グループの専用劇場「SNH48星夢劇院」(SNH48シアター)が上海虹口区嘉興路にオープンしました。
「SNH48」はAKBグループの上海版として2012年4月に発足したプロジェクトです。当時AKBグループはジャカルタ、バンコクなど海外展開を進めており、上海SNH48は中堅人気メンバーだった宮澤佐江らを中心に立ち上げる予定でした。
しかし、中国当局のレギュレーションは複雑で、日本人メンバーはほとんどまともに舞台に立つことができないまま、上海での活動を諦めざるを得ませんでした。一方、上海現地で行われたオーディションにはルックスレベルの高い中国人の女の子が多く集まり、中国人メンバーのみで公演をスタートさせていきます。

その後紆余曲折あり、2016年には諸事情により「SNH48」は日本側のAKB運営会社(AKS)と決別することになります。
これ以降、SNH48は中国の独自運営になり、中国運営会社が自前で用意した楽曲・振り付けによる「オリジナルセットリスト」で公演を行っています。

専用劇場での公演が始まってから10年、多くの出来事があり、SNH48は何度も浮き沈みを経験しています。
2024年現在、中国特有の様々な規制、3年間続いた厳しいコロナ感染対策を経てもなお、SNH48は生き残っています。

現在の「SNH48星夢劇院」。劇場の外観はオープン当初とあまり変わっていません。




AKBと決別して「オリジナルセットリスト」を導入したあたりから、本来のコンセプトであった元気さ、明るさ、親しみやすさといった要素は薄れ、どちらかというとクールなパフォーマンスが増えていきます。簡単にいうとKPOP化しています。
メンバー、観客(女性客)、作り手ともに普通にKPOPが好きなので、楽曲面でもビジュアル面でもKPOPの影響が強くみられます。

日本側のAKBと決別したとはいえ、「AKBモデル」である劇場公演、握手会、総選挙、リクエストアワーなどの活動メニューはほぼ踏襲しており、いまでも夏の「総選挙」がSNH48の最大のイベントとなっています。
中国では2021年に課金投票を伴うオーディション番組が当局の批判を受け実質的に禁止されたため、SNH48も「総選挙」という名称の使用をやめました。2022年以降は「SNH48グループ年度青春盛典」という名称に変えていますが、実質的には「総選挙」です。

2023年度の「総選挙」の結果
1位(金賞)袁一琦(ユエン・イーチー)SNH48チームH 7期生(2016年9月15デビュー) 2000年3月19日生まれ 身長170~172.5cm? 四川省出身
  

2位(銀賞)王奕(ワン・イー)SNH48チームH 8期生(2017年9月8日デビュー) 2001年6月6日生まれ 身長172~173cm?江蘇省出身
  

3位(銅賞)宋昕冉(ソン・シンラン)SNH48チームX 4期生(2015年1月31日デビュー) 1997年7月8日生まれ 身長166cm(公式) 山東省出身
  

4位 周詩雨(ジョウ・シーユー) SNH48チームN 9期生(2018年2月3日デビュー) 1998年4月11日生まれ 身長168cm? 江蘇省出身
  

直近の総選挙では上位7名のうち6名が165cm以上あり、すらりとしたスタイルのかっこいいタイプが人気上位を占めています。TOP16に入るメンバーの大半が在籍年数6年以上のベテランで完璧なチャイナメイクをマスターしています。

現在SNH48グループ全体で200名近くが在籍していますが、閉じられた固有のプラットフォーム上で活動しており、その中で注目を集め、ファンを定着させるのは容易なことではありません。
中国当局は芸能に対して様々な規制を課しており、資金的にもSNH48の中でやれることは限られています。
そんな中、現在SNH48を支えているのが「CP」という要素です。
「CP」はカップリングの略ですが「ペア」と理解した方がいいかもしれません。仲の良いメンバー同士が「CP」として振る舞い、デュエットパフォーマンスをすることで人気を伸ばすというものです。
SNH48オリジナルの企画として「最佳拍档」(「パートナー」)という、ペアを組んでパフォーマンスを競い合うイベントもあり、「CP」を成功させることは人気確立の鍵ともいえます。
近年のCPの成功例の一つが、直近の総選挙で2位になった王奕(ワン・イー)と4位周詩雨(ジョウ・シーユー)のCP「詩情画奕」です。現在最有力CPで、宝塚の男役と娘役のようなパフォーマンスを頻繁に披露しています。

2024年1月13日(土)成都で行われた第10回金曲賞(リクエストアワー)「双人舞」で第2位を獲得。


今回の金曲賞では卒業間近の劉姝賢とその盟友・胡暁慧が組むCP「奶包」に敗れましたが、昨年は「詩情画奕」が優勝しています。



優勝者の特典として制作されたMV「失憶」(Unaware)。ハンガリーのブダベストで撮影されました。


MVのストーリー:深い絆で結ばれている二人ですが、周詩雨は記憶を失い、自分がどういう記憶を失ったかも認識できていない。ブタベストの街中で2人は再び出会い、過去の二人と現在の二人の姿が交錯する。増えていく写真と折り鶴、無限にループする出会いと忘却、そして絵葉書に記されたメッセージ・・・という韓国映画のテイストが漂う耽美的なMVです。

2023年1月の第9回金曲省 1位「失憶」 左:周詩雨(ジョウ・シーユー)右:王奕(ワン・イー)


このMVはSNH48シアターで公演開始前によく放映されています。
中国ではBLドラマは禁止されてるのにこれはいいのか?と何ともいえない気持ちになります。SNH48は名前こそ有名ですが、閉じられた環境の中で活動しており、活動自体の露出度は高くないので咎められることもないようです。

王奕(ワン・イー)は恵まれたルックスの持ち主ですが、デビュー当初は人気がありませんでした。
最初は普通のかわいいアイドルで、公演にも真面目に取り組んでいましたが、微妙に愛想がなかったためデビューしてから3年くらいはほとんど人気が出ませんでした。
ところが、周詩雨とのCPで「男役」にキャラ変更したことで、爆発的に人気が上昇しました。
「CP」のパフォーマンスでは、メンバー二人の関係性を擬似恋愛的なものに設定することで、きわどいポーズや動作をすることが可能になります。それが「CP」の強みです。
中国は表現に対する規制が厳しいので、刺激的で目新しいものにファンは飢えており、その飢えを満たす一つの手段が「CP」なのです。
「男役」といっても本気で男性の役柄を演じるわけではなく、女の子がKPOPボーイズアイドルのコスプレをしているような雰囲気に近く、女性ファン受けがいいです。SNHの「男役」のヘアスタイルは概ねロングのストレートで茶、金、青、緑などのカラーが入っています。
SNHのファンにはLGBT指向を持つ人も少なくありませんが、それよりも腐女子が多く、SNHの「CP」パフォーマンスは腐女子がBLに求める耽美性を女性に転換して表現するようなかんじで、独特のジャンルのエンタメを作り上げていると思います。

もちろん固定の「CP」を持たないメンバーもたくさんおり、普通にアイドルをやっている子も多いですが、握手会がしょっちゅうあるわけではないので、可愛い正統派は差別化するのが難しいです。
「男役」に走りすぎると男性ファンが離れるのでリスクもありますが、すでにSNH48のファンの6割以上が女性なので、女性に好かれる属性を持っているのは有利です。

最新の総選挙の「神7」上位7名。EP「NUMBER ONE」のジャケット。7名のうち6名が身長165以上。KPOPのコスプレのような雰囲気。


SNH48が存続することができたもう一つ重要なポイントは、「口袋48」というメンバーとファンが直接交流できる専用アプリをかなり早い段階で導入していたことです。
「口袋48」は現在KPOP界で広く使われている「Weverse」に近い機能を持つアプリですが、「口袋48」がリリースされたのは2015年で、Weverseよりも遥かに早いです。
SNH48をみる限り、中国のIT、映像、ビジュアル制作力は相当高いレベルにあり、オリジナルセットリストの楽曲や衣装のセンスはかなり良いです。
メンバーの平均年齢が上がり、新人定着率が低いなど様々な問題はあるものの、どんな衣装も着こなすスタイルのよいメンバーがまだ現役で多数活動しています。
そして、SNHの「CP」パフォーマンスは、日本のアイドル界にもKPOPにも例のない独特のエンタメなのではと思います。
中国の現状を踏まえると、専用劇場で毎週公演ができているというだけで奇跡のようなもので、SNH専用劇場はエンタメの持つ魔法のような熱量と儚さが交差する場所です。
公演後、ミニバンで宿舎に帰るメンバーを見送るために待っているファン。ミニバンに乗り込むときに写真を撮れます。


虹口区の再開発が進んでおり、劇場以外の住居、店舗はほとんど封鎖され住民もほとんど退去しました。
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日・中・韓 3つのバージョンのミュージカル「スリル・ミー」~上海ミュージカルの出待ちの日常

2024年01月10日 | エンタメの日記
2023年9月下旬に池袋の東京芸術劇場シアターウエストでミュージカル「スリル・ミー」の日本人キャスト版を観ました。「スリル・ミー」はオフブロードウェイをオリジナルとする俳優2人とピアノ伴奏のみで演じられるミュージカルで、韓国、日本、中国でも上演されている人気の演目です。
これで、韓国語、中国語、日本語、3言語バージョンの「スリル・ミー」を観たことになります。

【スリル・ミー観劇歴】
韓国語版:2012年7月銀河劇場 チェ・ジェウン×キム・ムヨル版(韓国語+日本語字幕付き)

中国語版:2016年上海大劇院中劇場、2022~2023年:大世界、共舞台

日本語版:2023年9~10月 池袋 東京芸術劇場シアターウエスト


近年ソウルの小劇場で上演されている韓国版は見たことはなく、韓国版と日本版は1回(1ペア)しか観ていませんが、3バージョンの違いを挙げてみたいと思います。

【韓国版】 2012年7月銀河劇場 韓国初演キャスト チェ・ジェウン×キム・ムヨル 
10年以上前に観たものなので記憶がちょっとあやふやです。
韓国初演キャスト版の「彼」と「私」は根本的に恋愛関係というよりは支配欲が勝っており、犯罪と司法を利用して目的を果たす知能犯で、「私」は自分の行いについて後悔していません。最後まで周りを欺き、「彼」を手に入れる完全犯罪を成し遂げたことに恍惚します。愛だけでは説明できない破壊的な人格が観客をぞっとさせます。「彼」と「私」の関係性は複数の解釈が可能で、「彼」×「私」ではなく、「私」×「彼」と解釈するほうが自然だったかもしれません。
冒頭で「私」が出獄する際に手に荷物を抱えているという演出があったような気がしますが、記憶違いでしょうか。

【日本版】 2023年9月 東京芸術劇場シアターウエスト
会場が小さいせいもあり、マイクの音量が入っていないのではと思うほど生声に近い状態で演じていました。そのことに驚きました。
キスシーンがあります。「私」は「彼」に対して恋愛的な意味で執着しており、「彼」もある程度それに応えているという演出でした。
「彼」と「私」は人間的な若さ・未熟さがあり、韓国初演キャストと比べると常識的な人物にみえました。
中国版と比べると日本版はピアノと演者の息が合っており、ピアノの音量もちょうどいいです。
舞台セットや照明がとてもシンプルなので、場面展開での俳優の力量が試されると思いました。

【中国版】主に2023年1月~3月、上海共舞台の最終クール。中国語タイトル『危険遊戯』
日本版の演出は、国内の著名な舞台演出家(栗山民也)が務めていますが、中国版は韓国人演出家の指導を受けており、クレジットには韓国側監督・演出と中国側監督・演出の名前が併記されています。上演許諾自体、韓国側から受けているのかもしれません。
中国版「スリルミー」にはキスシーンがありません。
同性愛を直接連想させるような俳優同士の身体的な接触、性的な関係を匂わせる演出は抑制されています。そのため、二人がどういう関係性であるかは色々な解釈が可能で、キャストによっても解釈が異なります。
また、快楽犯罪、子どもを殺すといった反社会的パーソナリティはぼかされており、人格自体の問題ではなく、若く未熟だったために過ちを犯したが、そのことについてはある程度後悔しているという演出にされています。つまり、道徳的に説明がつくキャラクターに修正されています。



中国の「スリルミー」ファンは、中国版の歌詞やセリフ、演出が変えられていることに不満を抱いており、全体的に辛口の劇評をよくSNSに投稿しています。
しかしながら、私は日本版を観たことで、中国版「スリルミー」には良い点がたくさんあることに気づくことができました。

中国版は、まずなんといっても俳優のルックスレベルが高いです。若い、高身長、スタイル抜群、顔がいいです。
そして、基本的に声楽を専門に学んでいるので、ミュージカル歌唱ができています。うまい人ほど滑舌が良く歌詞が聞き取りやすいです。

「スリルミー」に関していうと、中国版の方が舞台セット、照明がきれいです。
中国版は照明効果に助けられている部分がかなり大きく、舞台セットがきれいに見えるのも照明のおかげだと思います。
照明の明暗がはっきりしており、ブルー系のライトはとくにきれいです。
舞台では照明の配色や当て方によって、役者の心情表現を補うことが可能です。
日本版の舞台が白黒の紙漫画だとすると、中国版はカラーのウェブトゥーンで、日本版は生身の演技への依存が強く、中国版は設備・技術の応用がうまいです。


中国版「スリルミー」は「彼」が「私」を殴るシーンが2回あります。2回目は「私」が吹っ飛ぶくらい激しく殴ります。
この殴るシーンは中国版「スリルミー」の重要な見どころの一つで、リピーターはこのシーンになるとオペラグラスをすっと構えます。
日本版にはこの殴るシーンがないので逆にびっくりしました。

もう一つ、「スリルミー」に限ったことではなありませんが、中国ミュージカルのすごく良い点があります。
それは、チケットが取りやすいという点です。基本的に満席にならない公演が多く、平日夜公演は3分の1くらいしか埋まっていないこともよくあります。
そのため、自分が行きたいときにふらっと観に行くことが可能です。
そして、終演後には「出待ち」(SD/ステージドア)があります。
観客が少ないときは必然的に出待ちをする人も少なく、そういうときは上海ならではの楽しいボーナスタイムとなります。
俳優さんは早ければ終演から15分くらいで出てきて、出待ちをしているファンに写真を撮らせてくれます。タダでイケメンを間近で見ることができます。
大抵の場合「出待ち」を仕切る古参ファンがおり、俳優に気の利いた質問を投げかけてくれたりして、それに俳優が乗ってくると、舞台裏の小ネタを語るような屋外ミニトークショーが始まります。

「スリルミー」が上演されていた上海共舞台での出待ち風景。


「スリルミー」で「彼」を好演していたミュージカル俳優・趙偉鋼(チャオ・ウェイガン)。1991年生まれ、南京芸術学院出身、身長は180弱だと思います。芝居がうまく四肢の動きが非常にきれいな俳優です。
韓国ミュージカル「ヴァニシング」(VANISHING)中国版『消失』(2023年9月15日~11月12日 上海共舞台)での出待ち風景。ファンが頼んだポーズをしてくれます。


中国版「スリルミー」で「私」を殴るときの趙偉鋼はものすごくかっこよかったです。
「I'm Afraid」でのたうち回る場面では動きを旋律に絡めるのがうまく、動きに色気があります。歌よりも演技で観客を納得させられる中国ミュージカル界には珍しいタイプ。中劇場主演、大劇場助演クラスの俳優ですが、6歳年上のミュージカル女優と結婚したことを公表しており、そのことも好感度アップにつながっています。

趙偉鋼クラスのキャリアのある中堅俳優は、誰にでもサインをしたり、ツーショット写真を撮らせてくれるわけではありません。
古参ファンの誕生日など特別なケースのみサインやツーショットに応じているようで、オタクと俳優の信頼関係が垣間見える瞬間です。


劇場のすぐ近くの路上パーキングにいつも車を停めています。車までファンはお見送り。本人が運転し、たまに奥さんや仲の良い共演者を乗せて帰ることもあります。


中国の舞台にも良くないところはあり、その筆頭は観劇マナーです。
上演中の会話や盗撮はさすがに少なくなってきましたが、観劇中にスマホをいじっているお客さんは多いです。
各列2、3人はスマホをいじっている人がいて、スマホの明かりが気になります。
ただし、中国のミュージカルは席種が細かく分かれており、前列席になればなるほど価格が高く設定されています。つまり、前の列の人のスマホの明かりが気になるのは、自分が安い後列席に座っていることが原因の一つでもあるのです。もっとお金を出して前列席を買えばこの問題はある程度回避できるので、安い席で観る以上、仕方のないことだと思っています。
それに、本当にお芝居に引き込まれていれば周りの環境は気にならなくなるはずです。後方列まで引き込まれるような舞台に巡り合えることを願って、大抵いつも2階席で観ています。
カーテンコールは常時撮影可能で自動シャッターの音が劇場に鳴り響きシュールです。
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中国初の“18禁映画”『怒りの海を越えて(涉过愤怒的海)』~中国映画の中の日本という留学先~

2023年12月28日 | エンタメの日記
曹保平監督の中国映画『怒りの海を越えて(涉过愤怒的海)』が撮影完了から約4年を経てついに劇場公開されました。中国映画には18禁(R-18指定)、15禁(R-15指定)といった鑑賞年齢を制限するレイティングシステムはありませんが、この映画は半分宣伝の意味も込めて、「18歳以下の観衆は慎重に判断して観るように」というコピーを大きく掲げており、中国初の“18禁映画”と言われています。
日本留学中の中国人学生とその家族にまつわる物語で、中国と日本(東京、京都)で撮影が行われています。

映画『涉过愤怒海』(渉過憤怒的海) 直訳:怒りの海を越えて 英語タイトル:Across the Furious Sea
監督:曹保平 原作同名小説作者:老晃  公開日:2023年11月25日中国公開  撮影:2019年~年内に撮影完了
主演:黄渤(ホアン・ボー)、周迅(ジョウ・シュン)、周依然、張宥浩 時間:144分 興行収入:5.48億元(約110億円、2023年12月末現在)


色々な意味で興味深く、非常に面白い映画なので、ぜひ日本でも公開してほしいです。

~あらすじ~
漁師の金隕石(ジン・ユエンシー)は漁に出ている最中、離婚した妻から連絡を受ける。日本留学中の娘(金麗娜/愛称:シャオナー)が失踪して何日も連絡が取れないのだという。金(ジン)は娘の安否を確認するため東京に向かう。そこで娘の級友から同じ中国人留学生の交際相手・李苗苗(リー・ミャオミャオ)に連れ出されたのではと聞き出す。金はミャオミャオの消息を掴み留学先の京都大学に向かう。大学寮(京都大学吉田寮)で本人と接触することに成功するが逃げられてしまう。
時を同じくして、金は娘が17ヶ所刺された姿でホテルで遺体となって発見されたと連絡を受ける。
東京で娘の遺体と対面した金は、自らの手でミャオミャオに復讐することを誓い、再び海を渡る---。

主人公 金隕石(ジン・ユエンシー) 危険を犯すことを厭わない気性の荒い漁師。娘の復讐に燃えて何度も海を渡る。
本役を演じる黄渤(ホアン・ボー)は中国映画界を代表する人気俳優の一人。ヒットメーカーで、コメディから戦争ものまで幅広いジャンルの作品に出演しています。


容疑者の男子学生・ミャオミャオの母親役を演じる周迅(ジョウ・シュン)。周迅は中国を代表するベテラン映画女優。
高級住宅街の豪邸に住んでいるが、金に襲撃される。金に対し「私があなたの立場なら私でもミャオミャオを殺す」と言いながら、息子を逃がすことを企てる。


金の娘・シャオナー。東京の日本語学校に留学している。コンビニ、ホテルのベッドメイク、居酒屋、メイドカフェなど多くのアルバイトを掛け持ちしている。
シャオナーを演じるのは1996年生まれの女優・周依然(チョウ・イーラン)。重慶出身、四川音楽学院古典舞踊専攻。大学卒業後に演技の道に進む。本作の撮影終了後、多くの現代もの青春ドラマに出演している。


容疑者の男子学生・ミャオミャオ。京都大学に留学中。コスプレの趣味を持つ中国富裕層の留学生。
ミャオミャオを演じるのは1995年生まれ、身長179cmの俳優・張宥浩(チャン・ヨウハオ)。中央戯劇学院卒業、四川省出身。


日本留学と中国人学生を結びつける要素の一つとしてコスプレが重要な役割を果たします。
シャオナーとミャオミャオが接近したきっかけの一つが『BLEACH』のコスプレです。
シャオナーは井上織姫のコスプレをしており、ミャオミャオは『BLEACH』の敵キャラ、ウルキオラ・シファーのコスプレをしています。ウルキオラは虚無を体現するキャラクター。『BLEACH』は中国では「死神」というタイトルで知られており、比喩的な意味合いがあります。

■商業映画としてのエンタメ性 
ダークな人間ドラマですが、「一人娘を異国で殺された父親が復讐のために容疑者を追って何度も海を渡る」という復讐アクションとしての側面があります。基本は家族ドラマなのですが、船上で水上警察に発砲されたり、大量の魚が空から降ってきたり、地下鉄ホームから線路に飛び降りて電車に向かって逃走したり、商業映画らしい派手で刺激的なシーンが少なくありません。
また、常識的な善人はほとんど登場しません。


■日本と中国の対比
日本ロケのパートが全体の4分1くらいを占めており、日本語のセリフも多いです。
日本ロケは、神田駅周辺、秋葉原、京都大学吉田寮、関西地方の私鉄駅、商店街、居酒屋、コンビニ、神社仏閣、日本家屋など、ノスタルジックで生活感溢れる空間が意図的に選ばれています。
一方、中国でのシーンはガランとした豪邸、巨大なコンベンションセンター、ひたすら長い橋など現代的でやや無機質な風景がドライに描かれており、その土地と海の広さは絶望感が漂っています。
監督は日本を凄惨な事件の舞台にしておきながら、日本的なものを礼賛していると見ることもできます。
この映画は2019年に撮影が完了しており、作中では2018年の物語として進行します。日本ロケもコロナの前に完了しています。


■中国人留学生にとっての日本
この映画は日本留学中の中国人男女の出会いによって物語が始まります。
コロナの影響を受けてもなお、中国人の海外留学は増加傾向にあり、距離的にも文化的にも近く、安全で費用も手頃な日本は留学先として根強い人気があります。
実際には、日本に留学している中国人の大半は「大卒」または「院卒」以上の学歴を得るために留学しています。
一方で、英米と比べれば費用が手頃で、アルバイトを含め職を得やすい日本には、新たな居場所を求めて留学してくる人もいます。親にとっても子どもにとっても、扱いに困る家族と距離を取って生きるためには、日本は都合のよい場所といえます。
留学生・シャオナーは、たくさんのアルバイトをかけ持ちしながらも、東京の自由と孤独に適応しています。しかし、ミャオミャオと出会ったことによりレールが歪んでいきます。一方、ミャオミャオは富裕層の子息で、安全に遊べる日本で気の向くままに生きている様子が伺えます。


出演者は若手から大物、ベテランまで演技が上手いです。
端役の演技も絶妙で、日本のコンビニの店長、駅員さん、ホテルの受付、日本語学校の先生などが味のある演技を見せています。
阿部力が日本に帰化した中国人という設定で、中国語と日本語バイリンガルの日本側の刑事(役名:島津)を演じています。
中国版ポスターには阿部力の名前は主演陣として列記されておらず、脇役という扱いなのかもしれません。それにしては出番が多く、主役である黄渤と対峙する場面も多いです。日本語が分からない金(ジン)に日本語と中国語で交互に話しかけるという奇妙なシチュエーションもあり、やや不思議な役柄でした。しかし、この映画自体、登場人物が全体的にエキセントリックなので、島津刑事という異質なキャラクターも一つのピースとして上手くはまっていたと思います。

144分、約2時間半の尺がある作品ですが、2時間くらい経ったあたりで少し飽きてきました。
復讐アクションの側面を持つため、追跡シーンに時間を割きすぎと感じる部分があります。
しかし、ラストに近づくに連れて意外な展開になります。冒頭から一貫して「娘の仇討ちに燃える父親」の視点で物語が描かれますが、あるタイミングで視点が変わることにより、いびつな真相が明かされていきます。
最後まで観ると、退屈だと思ったシーンにもすべて意味があったと思える作りになっています。
多くの伏線、隠喩が込められていたことに後から気付くので、「もう一度観たい」と思わせる良作です。★をつけるとしたら、5点満点のうち4.5をつけたいと思います。
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