上海最大規模のアニメ・漫画・ゲームの展示会「第9回 CCG EXPO 2013」のゲームエリアの参観記です。
【前の記事】
CCG EXPO 2013(1)ガンプラ、ラノベ、アニメイトなど
CCG EXPO 2013(2)フィギュア、VOCALOID、SNH48など
CCGのゲーム展示は北ブロックに集められています。ゲームの展示会については、毎年7月の最後の週に「ChinaJoy」(中国国際数碼互動娯楽展覧会)というゲーム専門展示会が上海で行われており、CCGよりもChinaJoyの方が遥かに規模が大きいです。ChinaJoyは「東京ゲームショー上海版」のようなものです。
しかし近年のChinaJoyは、もともと入場者数が莫大なうえに、キャンギャルの撮影、記念品配布を求めて入場客が集中する傾向があり、なかなかゆっくり展示を見ていられないです。
この10年間、中国のオンラインゲーム産業は急成長し、2012年の市場全体収入は600億元(約9000億円)を超えたと発表されています。いまちょうどChina Joyを開催中ですが、今年の趨勢としては、スマホ・タブレットで起動するモバイルゲームのシェアが急激に伸びており、各種展示会では従来型オンラインゲームと拮抗する勢いを見せていると報道されています。
中国のオンラインゲームは、海外ゲーム移植ものと中国産のものがあります。
この10年で最も流行ったオンラインゲームは「World of Warcraft」(WOW)(中国語タイトル:魔獣世界)です。WOW(魔獣世界)は社会現象になるほど流行し、WOWユーザーが一種の社会的勢力になるほどの影響力があり、WOWユーザーが集うネットコミュニティはメンバーの多さとオンライン率の高さから、異常なほどの情報伝播力を持っていました。しかし、中国でのWOWブームのピークは2006年から2008年頃で、ちょうど網易(NetEASE)が運営代理権を獲得した2008年あたりからブームの下降が始まり、ユーザーが徐々に減少し、いまではピーク時の勢いはないです。
韓国系ゲームの移植も多く、NCsoftの「タワーオブアイオン」の中国版「永恒之塔」などは一時期非常に派手なタイアッププロモーションをしていましたが、現在では勢いがダウンしています。
中国製オンラインゲームのヒット例は、歴史や武侠小説を題材にしたものが多く「夢幻西遊」「天龍八部」「征途」などがあります。ファンタジー系では「完美世界」(パーフェクトワールド)は成功した例といえます。「完美世界」は日本向けにもサービス提供されています。
現在オンラインゲーム業界は、産業規模自体は急激に成長したけれど「行き詰まりの状態」にあると言われています。その主な理由は、
1.ゲームのシステムがマンネリ化しユーザーに飽きられている。
2.課金システムが不合理。
3.CG技術の全体的なレベルが上がりすぎて、ビジュアル面での差別化が難しくなった。
などが挙げられています。
1点目は特に強く言われており「中国のオンラインゲームはシステムが本当にワンパターン。ヒット作のシステムをそのままコピーしてキャラクターを少し変えただけのようなゲームがたくさんある。」のだといいます。
今年のCCGでは、従来型オンライン、アーケードゲームのほか、モバイルゲームのプロモーションもあり、中国ゲームのアニメ映画化など多メディア化の動きも見られます。
-CCG Expo 2013 ゲーム出展 日系関連-
・Dance Evolution/ダンスエボリューション(KONAMI)+「世宇科技」
・湾岸ミッドナイト4(namco)+「華立科技」
・鉄拳(namco)+「久娯」(鉄拳中国大会を開催)
・スクエニ+盛大(SNDA) 盛大遊戯は中国最大のオンラインゲーム会社の一つ、スクエニと提携してファイナルファンタジー、拡散性ミリオンアーサーなどをリリース。
・SEGA(精文世嘉)「WCCF」
など
-中国ゲーム-
・「完美世界」(完美世界)
・「光栄使命」(無錫巨人網絡)
・「秦時明月」(玄機科技)
など
CCG Expo2013のゲーム出展で一番目を引いたのは、中国ゲーム会社「盛大遊戯」からリリースされた「拡散性ミリオン・アーサー」(スクエア・エニックス)の中国版です。(中国タイトル:百万亜瑟王)
盛大遊戯(Shanda Games Limited )はNASDAQに上場もしている中国で最も早く発展したオンラインゲーム会社の一つです。スクエア・エニックスと盛大は2010年頃から「ファイナルファンタジー14」の中国版リリースに向けて提携を開始しています。
「拡散性ミリオンアーサー」はオンラインカードバトルRPGで、2013年7月18日から中国版のiOS、アンドロイド版(β版)のリリースが始まりました。
「拡散性ミリオンアーサー」中国版「百万亜瑟王」iOS、アンドロイド版リリース公式サイト:
http://ma.sdo.com/web1/home/index.asp
「拡散性ミリオンアーサー」の中国モバイル版がリリースされたことは、「中国のオンラインゲームも、従来型から本格的にモバイル型に移行する時代に入った」ことを表すニュースとして注目を集めています。
【関連ニュース】
・盛大遊戯、7月18日の「拡散性ミリオンアーサー」モバイル版リリースを受け、NASDAQの当社株価が19%上昇。(7月19日 新浪科術)
・盛大遊戯、モバイル版ミリオンアーサーの反響が予想を大きく上回る。App Storeでの無料ダウンロードランキングで1位に。(7月22日 網易遊戯)
■盛大遊戯のブース。プロモーションに大量のメイドコスを動員。このメイドコスの中には「男の娘」も混じっています。


■今年の盛大遊戯のブースはもっぱらスクエニの作品を宣伝していました。FF14:中国タイトル「最終幻想XIV」

アーケードゲームの出展では日本製のソフトが目立ちますが、ゲーム機筐体と運営を提供するのは中国のゲーム会社というケースが多いです。
■湾岸ミッドナイト4(namco)+ゲーム会社「華立科技」。レースイベント開催中。


■鉄拳(namco)+「久娯」。鉄拳中国大会を開催。

■Dance Evolution/ダンスエボリューション(KONAMI)+「世宇科技」

■SEGA(精文世嘉)「WCCF」

中国ゲームで目を引くブースの一つは歴史アドベンチャーゲーム「秦時明月」です。アニメ版も制作されており、この夏はアニメ劇場版が公開される予定です。
■サイン会をやっていました。サインしているのは原作者かキャラデザイナーかと思ったら、有名コスプレーヤーでした・・・。


すごかったのが、中国初の軍事ゲーム「光栄使命」です。これは、巨人網絡(GIANT)と中国人民解放軍の南京軍区と共同開発した中国軍事ゲームで、この夏オンライン版が正式にリリースされました。武器や服装などのビジュアルがものすごくリアルです。



中国人民開放軍は、軍隊生活を舞台にしたテレビドラマや映画の制作によく参画していますが、商用ゲームの開発に参与したという話は初めて聞きました。このゲームは海外からの引き合いもあり、輸出が解禁される可能性も出てきたと報道されています。もし輸出されたら、中国軍事ゲームという新しい種類のゲームとして、世界のゲームファンの関心を集めるかもしれません。(参照ニュース)
CCG Expo2013年の入場者数は昨年を上回ったと報道されていますが、私の感覚でいうと、昨年よりも人出が少なかったように感じます。出展企業からもそういう声がありました。
昨年出展していた企業で今年出展していなかったものとして目につくのは、一つはアサツー・ディケイです。昨年アサツー・ディケイは「新テニスの王子様」のプロモーションで大きなブースを出していましたが、今年は出展がありませんでした。もう一つは、昨年は大規模な「スター・クラフト」大会が開催されていましたが、今年はありませんでした。
CCGは、全体的に日系コンテンツが目立ちます。但し、漫画・アニメ・ゲームといったいわゆる文化産業は、中国の政策上、独資で運営することが不可能な部分があり、或いは独資では運営・流通・販売が難しいこともあり、合弁またはライセンス契約などの形が取られていることが多いです。しかし、ライセンス契約、合弁契約の中身がどうなっているのか、また、ライセンス料がいくらなのか、契約が正しく履行されているのかなどは外部からは知ることができません。そのため、外面的には華々しく日本産コンテンツがプロモーションされているように見えても、日本企業側にとって実際にどれほどの収益に繋がっているのかは見えにくい面があります。とはいえ、中国の消費者にとって、日本のアニメ、漫画、ゲームのコンテンツそのものは高い人気があります。
【おまけ】隣で開催していたComiCon13のコスプレ
■2013年春・夏 一番話題の「進撃の巨人」104期訓練兵団。


■左:ハンジ。 右:サシャ。

■レールガン
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CCG EXPO 2013(1)ガンプラ、ラノベ、アニメイトなど
CCG EXPO 2013(2)フィギュア、VOCALOID、SNH48など
CCGのゲーム展示は北ブロックに集められています。ゲームの展示会については、毎年7月の最後の週に「ChinaJoy」(中国国際数碼互動娯楽展覧会)というゲーム専門展示会が上海で行われており、CCGよりもChinaJoyの方が遥かに規模が大きいです。ChinaJoyは「東京ゲームショー上海版」のようなものです。
しかし近年のChinaJoyは、もともと入場者数が莫大なうえに、キャンギャルの撮影、記念品配布を求めて入場客が集中する傾向があり、なかなかゆっくり展示を見ていられないです。
この10年間、中国のオンラインゲーム産業は急成長し、2012年の市場全体収入は600億元(約9000億円)を超えたと発表されています。いまちょうどChina Joyを開催中ですが、今年の趨勢としては、スマホ・タブレットで起動するモバイルゲームのシェアが急激に伸びており、各種展示会では従来型オンラインゲームと拮抗する勢いを見せていると報道されています。
中国のオンラインゲームは、海外ゲーム移植ものと中国産のものがあります。
この10年で最も流行ったオンラインゲームは「World of Warcraft」(WOW)(中国語タイトル:魔獣世界)です。WOW(魔獣世界)は社会現象になるほど流行し、WOWユーザーが一種の社会的勢力になるほどの影響力があり、WOWユーザーが集うネットコミュニティはメンバーの多さとオンライン率の高さから、異常なほどの情報伝播力を持っていました。しかし、中国でのWOWブームのピークは2006年から2008年頃で、ちょうど網易(NetEASE)が運営代理権を獲得した2008年あたりからブームの下降が始まり、ユーザーが徐々に減少し、いまではピーク時の勢いはないです。
韓国系ゲームの移植も多く、NCsoftの「タワーオブアイオン」の中国版「永恒之塔」などは一時期非常に派手なタイアッププロモーションをしていましたが、現在では勢いがダウンしています。
中国製オンラインゲームのヒット例は、歴史や武侠小説を題材にしたものが多く「夢幻西遊」「天龍八部」「征途」などがあります。ファンタジー系では「完美世界」(パーフェクトワールド)は成功した例といえます。「完美世界」は日本向けにもサービス提供されています。
現在オンラインゲーム業界は、産業規模自体は急激に成長したけれど「行き詰まりの状態」にあると言われています。その主な理由は、
1.ゲームのシステムがマンネリ化しユーザーに飽きられている。
2.課金システムが不合理。
3.CG技術の全体的なレベルが上がりすぎて、ビジュアル面での差別化が難しくなった。
などが挙げられています。
1点目は特に強く言われており「中国のオンラインゲームはシステムが本当にワンパターン。ヒット作のシステムをそのままコピーしてキャラクターを少し変えただけのようなゲームがたくさんある。」のだといいます。
今年のCCGでは、従来型オンライン、アーケードゲームのほか、モバイルゲームのプロモーションもあり、中国ゲームのアニメ映画化など多メディア化の動きも見られます。
-CCG Expo 2013 ゲーム出展 日系関連-
・Dance Evolution/ダンスエボリューション(KONAMI)+「世宇科技」
・湾岸ミッドナイト4(namco)+「華立科技」
・鉄拳(namco)+「久娯」(鉄拳中国大会を開催)
・スクエニ+盛大(SNDA) 盛大遊戯は中国最大のオンラインゲーム会社の一つ、スクエニと提携してファイナルファンタジー、拡散性ミリオンアーサーなどをリリース。
・SEGA(精文世嘉)「WCCF」
など
-中国ゲーム-
・「完美世界」(完美世界)
・「光栄使命」(無錫巨人網絡)
・「秦時明月」(玄機科技)
など
CCG Expo2013のゲーム出展で一番目を引いたのは、中国ゲーム会社「盛大遊戯」からリリースされた「拡散性ミリオン・アーサー」(スクエア・エニックス)の中国版です。(中国タイトル:百万亜瑟王)
盛大遊戯(Shanda Games Limited )はNASDAQに上場もしている中国で最も早く発展したオンラインゲーム会社の一つです。スクエア・エニックスと盛大は2010年頃から「ファイナルファンタジー14」の中国版リリースに向けて提携を開始しています。
「拡散性ミリオンアーサー」はオンラインカードバトルRPGで、2013年7月18日から中国版のiOS、アンドロイド版(β版)のリリースが始まりました。
「拡散性ミリオンアーサー」中国版「百万亜瑟王」iOS、アンドロイド版リリース公式サイト:
http://ma.sdo.com/web1/home/index.asp
「拡散性ミリオンアーサー」の中国モバイル版がリリースされたことは、「中国のオンラインゲームも、従来型から本格的にモバイル型に移行する時代に入った」ことを表すニュースとして注目を集めています。
【関連ニュース】
・盛大遊戯、7月18日の「拡散性ミリオンアーサー」モバイル版リリースを受け、NASDAQの当社株価が19%上昇。(7月19日 新浪科術)
・盛大遊戯、モバイル版ミリオンアーサーの反響が予想を大きく上回る。App Storeでの無料ダウンロードランキングで1位に。(7月22日 網易遊戯)
■盛大遊戯のブース。プロモーションに大量のメイドコスを動員。このメイドコスの中には「男の娘」も混じっています。


■今年の盛大遊戯のブースはもっぱらスクエニの作品を宣伝していました。FF14:中国タイトル「最終幻想XIV」

アーケードゲームの出展では日本製のソフトが目立ちますが、ゲーム機筐体と運営を提供するのは中国のゲーム会社というケースが多いです。
■湾岸ミッドナイト4(namco)+ゲーム会社「華立科技」。レースイベント開催中。


■鉄拳(namco)+「久娯」。鉄拳中国大会を開催。

■Dance Evolution/ダンスエボリューション(KONAMI)+「世宇科技」

■SEGA(精文世嘉)「WCCF」

中国ゲームで目を引くブースの一つは歴史アドベンチャーゲーム「秦時明月」です。アニメ版も制作されており、この夏はアニメ劇場版が公開される予定です。
■サイン会をやっていました。サインしているのは原作者かキャラデザイナーかと思ったら、有名コスプレーヤーでした・・・。


すごかったのが、中国初の軍事ゲーム「光栄使命」です。これは、巨人網絡(GIANT)と中国人民解放軍の南京軍区と共同開発した中国軍事ゲームで、この夏オンライン版が正式にリリースされました。武器や服装などのビジュアルがものすごくリアルです。



中国人民開放軍は、軍隊生活を舞台にしたテレビドラマや映画の制作によく参画していますが、商用ゲームの開発に参与したという話は初めて聞きました。このゲームは海外からの引き合いもあり、輸出が解禁される可能性も出てきたと報道されています。もし輸出されたら、中国軍事ゲームという新しい種類のゲームとして、世界のゲームファンの関心を集めるかもしれません。(参照ニュース)
CCG Expo2013年の入場者数は昨年を上回ったと報道されていますが、私の感覚でいうと、昨年よりも人出が少なかったように感じます。出展企業からもそういう声がありました。
昨年出展していた企業で今年出展していなかったものとして目につくのは、一つはアサツー・ディケイです。昨年アサツー・ディケイは「新テニスの王子様」のプロモーションで大きなブースを出していましたが、今年は出展がありませんでした。もう一つは、昨年は大規模な「スター・クラフト」大会が開催されていましたが、今年はありませんでした。
CCGは、全体的に日系コンテンツが目立ちます。但し、漫画・アニメ・ゲームといったいわゆる文化産業は、中国の政策上、独資で運営することが不可能な部分があり、或いは独資では運営・流通・販売が難しいこともあり、合弁またはライセンス契約などの形が取られていることが多いです。しかし、ライセンス契約、合弁契約の中身がどうなっているのか、また、ライセンス料がいくらなのか、契約が正しく履行されているのかなどは外部からは知ることができません。そのため、外面的には華々しく日本産コンテンツがプロモーションされているように見えても、日本企業側にとって実際にどれほどの収益に繋がっているのかは見えにくい面があります。とはいえ、中国の消費者にとって、日本のアニメ、漫画、ゲームのコンテンツそのものは高い人気があります。
【おまけ】隣で開催していたComiCon13のコスプレ
■2013年春・夏 一番話題の「進撃の巨人」104期訓練兵団。


■左:ハンジ。 右:サシャ。


■レールガン
