上海阿姐のgooブログ

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2012年9月16日の上海

2012年09月23日 | 普通の日記
こんにちは。上海阿姐です。全然更新してないのに、コメントをいただきありがとうございます・・・!m(__)m ご心配いただいて、本当に恐縮しております。阿姐は元気に普通に暮らしております。

上海は危なくないですか?恐くないですか?

と色々な方からお気遣い頂いているのですが、意外と答えるのが難しいと思います。

「恐い」というのは感覚的なものなので、人によって感じ方が違います。すれ違う人に見られただけで「恐い」と感じる人もいるし、「たとえ物くらい飛んできたってケガしなきゃいいや」と思う人もいます。「危ない」ということについては、人によって求める安全性の度合いが違います。例えば小学生の子どもが2人いるお父さんと、私のような人間では周囲の環境から求められている安全の度合いが違うと思うのです。

なので、いま中国にいることが危ないか?恐いか?というと、用心しなければいけないとは思うけれど、恐いと思うほどではないです。これはあくまでも現時点での私の感覚です。むしろ治安の問題より経済的な影響の方が余程心配です。

先週末9月15日(土)と16日(日)は中国全土で反日デモが行われました。反日デモの情報については日本大使館・領事館のホームページで、デモのルートや実施時間などが事前に通知されていました。これらのデモは中国当局が把握しており、民事警察、特種警察、武装警察などが警備に出動します。
上海でも事前の告知どおりに9月16日(日)に反日デモが行われました。この日は依頼があってデモの様子を見に行きました。そうでなくても見に行くつもりでいました。見えないと恐さが増すし、人づてに伝わる話はどうしても誇張されがちです。実際に見て経験すれば、より多くの情報を得られるし、自分の感覚で判断できます。私は2005年4月の反日デモのときも上海にいて、当時のデモを見ています。2005年のときは途中から2kmくらい歩道沿いで様子を見ました。今回は集合から最後のグループが散っていくまで見ました。

デモの開始時間は午前10時からで、集合場所は地下鉄3・4号線の虹橋路駅とされていました。午前9時頃駅に着くと、集まっている人は10人くらいしかいませんでした。こんなに少ない人数でやるつもりなのかな・・・?と思って30分くらい過ごしました。9時30分を過ぎた頃くらいから、いつの間にか人が集まってきました。注意して見ていると、プラカードや横断幕などの道具を持って、数名でミニバンに乗って駅にやってきた人々もいて、活動の中核となるグループがいるのだなと思いました。

9時40分頃から、横断幕やプラカードを掲げたアピールが始まりました。皆で横断幕やプラカードがよく見えるように掲げて、シュプレヒコールを叫びます。横断幕は「釣魚島は中国のものだ」「釣魚島を返せ」「神聖なる領土の侵犯者を許すな」「日貨排斥」(日本製品不買)といった内容が多いです。
この時点で参加者として集まっていたのは100人いるかいないかだと思います。参加者よりマスコミも含めたギャラリーの方が多かったです。通行人が集まって、反日デモ隊の写真を携帯で撮っています。そして、デモ隊が写真や動画に撮られることに対して非常に前向きで、撮られることを望んでアピールします。また、仲間同士でも「次は俺を撮ってくれ」と交代に記念撮影をしています。





これは2005年との大きな違いです。あの頃は、こんなに撮られることに積極的ではなく、むしろ撮るのが憚られる雰囲気でした。あのときは「デモ」自体が社会的に認められるのかどうか、少なくとも見ている側は懸念を抱いていました。ところが今は、活動グループが写真を撮られ、それをネット配布されることを望んでいるようです。反日デモ自体が社会的に認められるという自信があるのだと思います。
横断幕やプラカード、中国の国旗を掲げてポーズを取る人々。それに群がり写真を撮るマスコミやギャラリー。

この雰囲気、どっかで見たことあるな・・・・

そうだ、コミケのコスプレの雰囲気だ・・・!!

微妙に楽しそうなので、心理的にもコスプレと似たところはあるのかもしれません。「参加している人が楽しそうだ」というのは、2005年の時も思いました。2005年の参加者は、もっと生き生きとしていて、デモ行為自体に興奮しているのが感じられましたが、2012年はそこまでの新鮮さがなくなっているのかもしれません。

午前10時になるのを待って、デモ隊は日本領事館に向ってスタートを切りました。この頃には警察も出動して交通整理を含め警備体制がしかれていました。鉄道の高架沿いを歩いて大通りを曲がると虹橋路に出ます。この道を真っ直ぐに進み領事館に向います。



デモ隊は日本領事館に向って予定のルートどおりに進んでいきます。中国の小さな国旗は無料で配られていて、通行人もこの旗をもらって列に混じればデモ参加者になれます。こういう即席参加者も多いです。デモ隊の歩くスピードはかなり速く、ついて行くのに大変な思いをしました。この時点ではデモの参加者は数百人で、デモの先頭から最後尾までの間は30m~50mくらいだったと思います。特に暴力行為もなく平和的に歩いていました。2005年との大きな違いです。2005年のときは、通りがかる日本車に卵をぶつけて喜んだり、ペットボトルの水をかけたり、道端の日本料理店の看板を破壊したりしていましたが、今回はそういう損壊行為がなかったです。参加人数そのものが少なかったので、デモ自体が脅威というほどではなかったと思います。



領事館のある虹橋開発区に入るあたりから、警官の数が激増しました。虹橋路から古北路の曲がり角に、警官がびっしりと並んでデモ隊を出迎えます。警官の数の方が多いくらいです。ここまで来ると領事館まであと少しです。デモは10時に虹橋路駅集合となっていましたが、ゴールは日本領事館なので、途中の道を練り歩かずに直接領事館にとやってくる人たちもかなりいました。大型バスで集まったグループもいます。デモの参加者は大学生から20代が中心で、30代前半と思われる人もいますが、基本的には若者中心です。男性の方が多いです。最終的な参加人数は分かりにくいですが、1000人~2000人くらいだったのではないでしょうか。

延安西路から娄山関路に入るところで車両通行止めになり交通規制が引かれます。娄山関路はまだ歩行者は通行できますが、領事館の前の通りとなる興義路に入るところからは、完全通行止めになり、デモに参加する人しか通れません。しかも、デモ隊を一斉に通すのではなく、警察がバリケードを張り、デモ隊が強行突破できないように規制します。ここでデモ隊が分断されるので、集団行動としての威力が削がれます。この付近には武装警察も出動していました。ここが一番緊張するポイントで、集団行為を望むデモ隊が警察と衝突する場面もありました。



領事館付近はマスコミに対する規制もあり、目立つカメラを持っている人は呼び止められ、記者証をチェックされます。領事館の建物を映せる範囲は中国の記者証を持っている人のみに撮影を許可していました。
驚いたのは、領事館の入口付近に、「マスコミ取材専用エリア」と看板が掲げられ、マスコミカメラマン専用のスペースが設けられていたことです。びっくりしました。そこまで当局側で計画されているとは・・・。2005年の反省も大きいのではと思います。領事館の周辺は大量の警官と武装警察が厳重警備していますが、あまりにも厳重なので「警察はどっちの味方なんだ」と逆にデモ隊の怒りを買い、衝突を引き起こすのではと心配になりました。警官の配置はとても統率が取れていましたが、上海の場合は目標が日本領事館と決まっているので、対策を取りやすいかもしれません。もっとも今回はデモ参加人数が比較的少なかったので秩序を維持できましたが、2万人、3万人という参加者がいたら警備の限界を超えるのではないでしょうか。





参加している人は、服装や持ち物(使っている携帯電話の機種など)から判断すると、収入レベルがあまり高くない人々だと思います。かといって、定職がなく街をゴロついているという雰囲気でもなく、ある意味で真面目そうな人が多いです。
そして、上海地元民ではなく外地出身者が多いです。デモのために近郊の街からやってきた人もいるようです。但しデモ隊の中に上海人はゼロではありません。上海語を話している人もいました。

中国は厳しい競争社会です。高い学歴、外国語能力、資格や専門技術、または強い人脈がなければ良い仕事には就けません。財産がなければ投資もできません。人脈がないと難しい分野も多いです。学歴もない、安定した仕事もない、財産もない、人脈もない人はどこに希望を見出せばいいのか・・・どうやって自分の存在を社会に知らせることができるのか・・・そこで出てくるのが「反日」です。尖閣諸島問題においては「反日」であることが「愛国」に直接繋がります。現代の競争社会の中では低層にいる存在だけれど、反日つまり愛国という点で、精神的には人よりも高いレベルにいるのだということを誇示したいのだと思います。反日愛国活動をすることで、社会に居場所を見出したい、社会や国に認められたいという意図があるのではと思います。「世の中に不満があるので憂さ晴らしに暴れている」というほど乱暴ではなく、だからこそ上海のデモでは暴力・破壊行為はほとんど見られませんでした。

尖閣諸島の問題に関しては、大半の中国人にとって日本の対応は不快なものなので、反日行動も社会の理解を得やすいです。そういう自信があるから、デモ参加者はあんなにも写真を撮られることを好むのだと思います。

「日本製品不買」を呼びかける声は強いです。これは「中国人が日本製品を買うと、日本企業が儲かった利益を寄付して尖閣諸島が購入される。だから日本製品を買う人は売国奴。」という理屈に基づくものです。単純明快なロジックなので、これに影響される人は多いと思います。寄付をしたと言われる企業の具体的な社名もネット上で出回っており、それらは中国でもよく知られている大手企業ばかりです。

上海の反日デモは比較的秩序があるものでしたが、このことは別に日中関係の安心要素になるわけではないです。早急に両国政府によって解決、安定化することが必要です。

今後の政治動向と経済影響については心配で仕方ありませんが、9月16日の上海のデモ自体は恐いと思うほどではありませんでした。何年も中国に住んでいますが、恐いと思うことはあまりないです。普通に暮らしています。でも、日本に住んでいる人たちに「中国は恐くないですか?」とよく聞かれます。私も日本に帰ったら恐いと思うようになるのかな・・・?と不思議に思います。
コメント (15)
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