上海阿姐のgooブログ

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「名探偵コナン劇場版 ハロウィンの花嫁」11月18日中国劇場公開~待望の「アバター2」の公開は

2022年11月17日 | エンタメの日記
映画「名探偵コナン劇場版 ハロウィンの花嫁」が11月18日に中国で劇場公開されます。アニメ「名探偵コナン」の人気と知名度は非常に高く、ここ数年は劇場版もコンスタントに中国公開が実現しています。
中国では2022年に入ってから深セン、上海などで大規模なロックダウンを実施し、厳しい外出規制が行われてきました。
都市単位、エリア単位での外出制限や映画館休業措置が断続的に行われたため、多くの新作映画が公開延期せざるをえず、2022年の中国映画界はとてつもないダメージを受けました。他の国と異なり、中国の場合は、2020年、2021年よりも2022年のほうがエンタメ関連が受けたダメージが大きいです。

本来は客入りピークであるはずの10月の国慶節連休も、めぼしい大作は主旋律映画「万里帰途」くらいしか公開されず、それなりにヒットしたものの、この作品以降はほとんど新作が公開されていません。
映画館はいちおう営業していても、新しい映画がまったくやっていないという状態が続いていました。
そんな中、11月18日に「名探偵コナン劇場版 ハロウィンの花嫁」が公開されます。

『名探偵コナン劇場版 ハロウィンの花嫁』 中国語タイトル『名侦探柯南:万圣节的新娘』
日本公開日:2022年4月15日 中国公開日:2022年11月18日(金)18:00


中国の劇場で映画を上映するためには、政府当局(広電総局)のセンサーシップを受け、許可書(許可番号)を取得する必要があります。
①映画完成 ②センサーシップ審査の申請 ③センサーシップ審査に通過 ④公開日決定 ⑤劇場公開 というプロセスが必要になります。

センサーシップを通過できるか、通過までにどのくらいの時間がかかるかは不確定で、大きなハードルになっています。
さらに、いまはセンサーシップは通過したのに公開日が決まらないことも多く、大量の作品が公開待ちのまま停滞しています。
そんな状況の中、コナン劇場版「ハロウィンの花嫁」は公開にこぎつけただけでも大変なことで、喜ばしいことです。
「ハロウィンの花嫁」の中国公開日が正式に発表されたのは11月9日、唐突に発表されましたが、配給側からすれば「やっと決まった」と安堵したかもしれません。
新作映画の公開日がなかなか決まらない主な理由は、コロナ感染状況による映画館休館、外出制限などのリスクがあることで、制作コストが高い大作ほど公開時期の選定に慎重になります。

2022年11月17日に発表された中国各地のコロナウィルス蔓延状況は以下のような状況です。


11月16日(0~24時)の中国全土の新規陽性者は2328人、新規無症状者は20804人と発表されています。
人口母数が14億人とはいえ、これまでと比べると全国各地の新規陽性者数は高い水準にあります。
感染拡大地域は重慶、鄭州、広州、北京、フフホト(内モンゴル)などで、上海、成都、深センなど大多数の地域は小康状態にあります。
なお、石家庄(河北省)はゼロコロナ脱却試行中?として注目されています。

都市別にみると、現在最も厳しい封鎖が実施されているのが重慶です。また、河南省の鄭州も規制が厳しいです。
一方、広州と北京は感染者が増えている割には、封鎖措置は必要な範囲内に留める方向に動いています。
中国は「ゼロコロナ」をやめたわけではありませんが、やみくもに封鎖して社会活動を止めるのはよくないと正式に通達を出し、運用を改めていこうとしています。
鄭州、重慶では11月17日現在映画館はほぼ全館休館ですが、広州は感染集中区域である海珠区、荔湾区などは休館であるものの、都心部の天河区は映画館が営業しています。北京も原則として映画館は営業中です。
そんな一種の転換が行われようとしている中、「名探偵コナン劇場版 ハロウィンの花嫁」が中国劇場公開されます。「ハロウィンの花嫁」が公開されることで中国の映画館が久しぶりに活気づくと思います。

センサーシップに通ったとしても、なかなか公開日が決まらない状況にあるので、センサーシップが通るかどうかも分からない作品は、なおさら難しい局面に置かれています。
ハリウッド映画はここ数年、中国で公開できないケースが続いています。あれだけ中国で人気だったMARVEL作品も2019年の「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」以降は中国で劇場公開されていません。
中国側は民族をめぐる表現、LGBTの登場人物の描写などに敏感で、「多様性」を掲げる米国映画としては修正の施しようがないこともあります。
最近の作品ではDCの「ブラックアダム」(10月21日北米公開)、MARVELの「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」(11月11日北米公開)も、北米で公開されてしまったので、中国ではこのまま劇場公開されないのではと言われています。

いま注目が集まっているのは“アバター2”こと『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』です。
「2022年12月16日に世界同時公開」と発表されたので、中国でも12月16日または15日に公開されるのではと言われていますが、まだ正式な公開日は発表されていません。

映画「アバター」が公開されたのは2009年(中国では2010年公開)です。その後、2021年に中国で再上映されています。この再上映で興行収入17億元(約300億円)を上げ、これが上乗せされたことで「アバター」は再び世界興行収入歴代1位になったと言われています。
中国の映画館は基本的にすべてシネコンで、商業施設(ショッピングモール)に付帯しているため、商業施設の建設に比例してスクリーンが増えます。
「アバター」が公開された2010年当時はいまほど多くのスクリーンはなく、映画館で公開されるハリウッド映画も「トランスフォーマー」くらいしかありませんでした。
精緻な3D作品「アバター」は当時中国で大ヒットしました。ちょうどIMAXスクリーンが出始めた頃で、人々は3Dの「アバター」をIMAXで観るために早朝から劇場の外まで並ぶほどの熱狂ぶりでした。長期に渡り上映され、「アバター」を観ていない人はいないほどのブームでした。まだ娯楽がそれほど豊富ではなく、映画といえば友達同士で連れ立って観に行くものだったので、別の友だちと「アバター」を二回、三回観たという人もざらにいました。
「アバター」は多くの人にとって思い入れのある映画なので、その続編である『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の期待度も高く、中国の劇場側にとっても救世主になるはずです。
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鄭雲龍(郑云龙)主演「中国語版フランケンシュタイン」上海公演を9月に観ました

2022年11月08日 | エンタメの日記
9月の話になりますが、鄭雲龍主演の舞台「フランケンシュタイン」(上海公演)を観に行きました。鄭雲龍(郑云龙)は中国で最も有名なミュージカル俳優の一人です。

舞台「フランケンシュタイン」(中国語タイトル:弗兰肯斯坦/弗蘭肯斯坦)
会場:上海大劇院大劇場 公演期間:2022年9月16日~9月25日(全12公演)
脚本:ニック・ディア(Nick Dear)、監督(英国):ドミニク・ドルムグール(Dominic Dromgoole)
監督(中国):李任 振付・動作指導:王亜彬  チケット価格:1080元/680元/480元/380元(1元約20円)


舞台セットやライティングは全体的にシンプルです。


人造人間を生み出した男・ヴィクター・フランケンシュタインと彼に生み出された怪物(「人形の生物」)の二役を、4人の俳優が役替りで演じます。
主演俳優4人(袁弘、鄭雲龍、闫楠、王茂蕾)


この4人の中で圧倒的に人気があるのが鄭雲龍(郑云龙)です。鄭雲龍がキャスティングされている日程とそれ以外の日程で、チケットの取りにくさが全然違いました。

鄭雲龍(郑云龙/Zheng YunLong/ジェン・ユンロン)


1990年6月27日生まれ、山東省出身、身長187cm、名門国立芸術大学の一つ北京舞踏学院ミュージカル学科卒。
鄭雲龍は中国語版ミュージカル「ジキルとハイド」(中国語タイトル:変身怪医)など多くの舞台で活躍していましたが、2018年から2019年にかけて放送された声楽系サバイバル番組「声入人心」(SuperVocal)第一季に出演したことで一躍スターになりました。
「声入人心」は36名の男性歌手が歌で競い合い、最終的に6名のグループが選ばれるという湖南テレビ制作のサバイバルバラエティです。
湖南テレビはこの種のサバイバルバラエティを作るノウハウに非常に長けており、贅沢なステージと起伏に富んだバトル展開がおもしろく、番組として大当たりしました。
この番組をきっかけに、中国ミュージカル俳優の知名度が飛躍的にアップしました。
その中でも、ミュージカル俳優としては、阿云嘎(アユンガ)と郑云龙(ジェン・ユンロン)の二人が突出して売れました。二人は実力とルックスを兼ね揃え、キャリアもありましたが、一部のミュージカルファンの間だけで知られる存在でした。それが、「声入人心」に出たことをきっかけに、誰もが知るようなスターになったのです。

湖南テレビ「声入人心」。準決勝に入る前の重唱バトル(2019年1月)。宝塚でお馴染みのエリザベート「私だけに」を阿云嘎と郑云龙が熱唱。


鄭雲龍は「声入人心」に出る前から中国語版ミュージカル「ジキルとハイド」の主役を演じるなど舞台で活躍していました。
しかし、当時は中国人キャストによる中国語ミュージカル自体がいまひとつメジャーではありませんでした。
その理由の一つは、中国とくに上海では、海外ミュージカルの招聘がとても盛んで、ミュージカルが好きな人は、外国語原版を観ることができたからです。
上海では「上海文化広場」という劇場が海外ミュージカルの招聘に非常に力を入れており、ブロードウェイミュージカルだけではなく、フランスミュージカルなども頻繁に上演していました。
2012年から2020年の間に、「ロミオとジュリエット」(フランス語版)、「エリザベート」(ウィーン版)、「ノートルダム・ド・パリ」(英語版/フランス語版)、「モーツァルト!」(ドイツ語版)、「ロックオペラ モーツァルト」(フランス語版)などが上演されています。このほか、英語版のブロードウェイミュージカルも多数上海に来ており、いつでも海外ミュージカルが観られる状態でした。
上海文化広場公式サイト 上演作品の紹介 https://www.shcstheatre.com/news/article.aspx?SYS_ID=622


ところが、2020年コロナ禍以降、海外招聘ミュージカルは途絶えました。
ミュージカルだけでなく、あらゆるジャンルで、あれほどたくさん来ていた海外アーティストがぱったりと上海に来なくなったのです。
結果的に、コロナ以降は中国人キャストによる演劇・ミュージカル、舞踏劇の存在感が高まったといえます。

とにかく鄭雲龍の舞台が観てみたくて「フランケンシュタイン」を観に行きました。
大きな勘違いだったのですが、公演が始まるまでてっきりミュージカルだと思っていました。
いつまでたっても歌が始まらないので、おかしいと思ってタイトルを見直すと、「ミュージカル」(音楽劇)とはどこにも書かれていません。
作品紹介にはちゃんと「英国ナショナルシアター版フランケンシュタインの中国語版」と書かれており、自分もそのことは知っていました。
にもかかわらず、「鄭雲龍が出る以上、歌うはずだ」と思い込んでいたのです。
それくらい、鄭雲龍といえばミュージカルというイメージが強かったのです。
鄭雲龍の歌が聴けなかったのは残念でしたが、演技はびっくりするほど上手かったです。スタイル抜群で身体能力が非常に高いです。
鄭雲龍があまりにもメジャーで、派手なルックスをしているので、無意識にアイドル視していましたが、鄭雲龍は完全にプロの舞台役者でした。

「フランケンシュタイン」カーテンコール 左:鄭雲龍・人形の生物 右:袁弘・ヴィクター。袁弘は「宮廷女官 若曦」で第十三皇子を演じるなど有名なドラマ俳優。


鄭雲龍は役替りで「ヴィクター」と「人形の生物」の二役を演じていますが、鄭雲龍を見たいなら「人形の生物」の方が見応えがあると思います。

英国ナショナルシアター版(NT版)「フランケンシュタイン」を観たことがある人の感想によると、基本的にはNT版に忠実に中国語化しているそうです。
どの俳優の演技も素晴らしかったのですが、個人的には後味の良くないお芝居だと思いました。
コロナ規制の影響でリハーサル不足だったのでしょうか、モブの動きにまとまりが欠ける感じがしました。
中国版「フランケンシュタイン」のオリジナル演出として、原作小説の作者であるメアリー・シェリーが妊婦の姿で終始舞台上に存在しているのですが、この演出の意図がよく分かりませんでした。

コロナ以前、つまり2019年まで、上海には本当にしょっちゅう海外ミュージカルが来ていました。
海外ミュージカルの招聘に大きく貢献したのは、2011年に再建された劇場「上海文化広場」です。「上海文化広場」は約2000席の3階建シアターで、市内中心地のいわゆる「旧フランス租界」エリアにあります。
上海文化広場が再建されたのは、時間的にいうと上海万博(2010年)の時期です。
「ベターシティ、ベターライフ」(《城市,让生活更美好》)という公式スローガンを掲げて開催された上海万博とともに、上海の都市機能・インフラ整備が急速に進められました。上海文化広場の再建も、その一環だったと記憶しています。

比較的初期に招聘されたフランス語版「ロミオとジュリエット」(2012年12月上演)、ウィーン版「エリザベート」(2014年12月~2015年1月上演)などは滅多に観れるものではないと思って観に行きました。その後も、多数の有名な海外ミュージカルが上演されましたが、だんだん観に行かなくなりました。いつでも観れると思っていたからです。この作品を観なくても、来月、来年はまた違うミュージカルが次々とやって来ると信じて疑わなかったので、いま観なくてもいいと思ったのです。
それが、新型コロナウィルス蔓延により状況が一変しました。コロナ規制だけではなく、中国では政治的緊迫感、政治の社会干渉も強まる一方なので、2019年以前の豊かな時代は遥か昔のことのように感じます。
あのとき観ておけばよかった、と後悔することもありますが、エンタメは食いだめできるものではないので、いまあるものを楽しみ、これから生まれるものを受け止めたいと思います。
上海文化広場 上海市黄浦区復興中路597号
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Netflix配信中国映画『星明かりを見上げれば』(原題『人生大事』)~朱一龍主演のヒューマンドラマ

2022年11月06日 | エンタメの日記
2022年6月に中国公開された朱一龍主演の映画『人生大事』がNetflixで配信されています。Netflixでの日本語タイトルは『星明かりを見上げれば』で好評を得ています。
この映画は中国で2022年6月24日に公開され、興行収入17.12億元(約340億円)を記録しており、2022年度の興行収入ランキング4位につけています。
映画『星明かりを見上げれば』(原題『人生大事』
主演:朱一龍、楊恩又(子役)、王戈、劉陸、羅京民
監督・脚本:劉江江、監修:韓延 時間:112分 公開日:2022年6月24日


あらすじ
葬儀屋の息子・莫三妹は稼業を毛嫌いしている。しかし服役歴のある莫三妹が戻る場所は実家の葬儀屋しかなく、やむなく仕事、つまり葬儀を請け負う。仕事先で老婆の遺体の手入れしていると、突然タンスから幼い少女が飛び出してくる。「おばあちゃんを返せ!」と。死んだ老婆は少女の祖母で、少女の親代わりだった。老婆の葬式が済んでも、火の粉を散らしたような気性の少女を親戚たちは持て余している。葬儀屋の莫三妹は押し付けられるように少女を預かることになるが、やがて不思議な情が芽生えて、莫三妹、少女、仕事仲間2人を合わせた4人で家族のように暮らし始める・・・。


主演俳優 朱一龍(チュー・イーロン) 葬儀屋の息子・莫三妹役
朱一龍はプロフィールによると、1988年4月16日生まれ、身長180cm、体重62kg、出身地は武漢、北京電影学院卒です。
2006年に名門・北京電影学院演劇科に入学、2010年に卒業、在学中から多数のドラマやウェブシネマに出演していますが、俳優としてブレイクしたのは2018年にウェブドラマ「鎮魂」が配信されてからです。
「鎮魂」はブロマンス・ファンタジードラマで、この作品をきっかけに、朱一龍は爆発的に売れました。演じた役は大学教授で、ドラマ公開時、朱一龍はすでに30歳になっていました。中国芸能では、長い間脇役が多かった俳優が、30歳前後になって突然ブレイクするケースが少なくありませんが、朱一龍はまさにその代表例です。「鎮魂」のヒット以来、朱一龍は主役クラスの俳優として活躍しています。
過去記事:中国配信ドラマ「鎮魂」が大ヒット~BL・耽美から“兄弟情”へ
ルックスのイメージから、温和で繊細な美形役を演じることが多かったですが、『星明かりを見上げれば』では従来のイメージとまったく異なる、粗暴な社会のはみ出し者を演じています。


映画『星明かりを見上げれば』の舞台は武漢です。
朱一龍が演じる莫三妹と莫三妹の父親の会話は、北京語(普通話)ではなく武漢方言で語られています。
朱一龍は武漢出身なので、自ら武漢方言を話しています。
一方、少女・小文(シャオウェン)は劇中で四川方言を話しています。小文の亡くなってしまった祖母も四川方言を話しています。
設定としては、四川から武漢に出てきた祖母に育てられているため、孫娘の小文も日常的に四川方言を話している、ということかと思います。
武漢は内陸の大都市なので、様々な出身の人が住んでいてもおかしくありません。
小文(シャオウェン)を演じた子役の楊恩又が四川省成都出身で、もともと四川方言を話せたため、そのような設定になったのかもしれません。

小文(シャオウェン)役を演じた楊恩又
プロフィールによると楊恩又は2013年10月16日生まれ、四川省成都出身。2018年に社会実録番組の再現ドラマから芸能活動をスタート。広告モデルやショートフィルムの出演歴がある。『星明かりを見上げれば』の名演で一躍注目を浴びましたが、本格的な演技は本作が初めてと言われています。現在9歳で、逆算すると撮影当時満7歳だったことになります。


『星明かりを見上げれば』のクランクインは2021年5月27日、クランクアップは2022年8月1日と発表されています。
本来、この映画は2022年4月2日に公開される予定でした。ところが、3月以降、深センや上海などの大都市がロックダウンに入り、各地のコロナ規制が厳しくなったため公開が延期されました。延期を経て、改めて設定された公開日が2022年6月24日です。
なお、上海は当時まだロックダウンの影響が残っており、映画館は全面休業状態にありました。上海の映画館が再開したのは7月8日です。
当初のポスター。2022年4月2日に公開予定でしたが、公開直前に公開を延期しました。


本作のような大作とは言いがたいヒューマンドラマが興行収入17.12億元(約340億円)を上げるのは快挙です。
しかも、コロナ規制の影響を相当受けています。一方で、コロナ規制があったために、他に目ぼしい新作映画が上映されなかったので、興行収入が伸びたという見方もあります。

葬儀業の男性が主人公という設定から「中国版おくりびと」と言われることもありますが、人物関係の設定が「うさぎドロップ」に似ており、ポスターも類似性が見られるという指摘もあります。
非常によくできた映画ですが、家族ドラマ、ヒューマンドラマとしては、ストーリーがものすごく斬新というわではありません。
ただ、葬儀屋という仕事の主人公を通じて、市井の人々の暮らし、商店と住居が一体化した雑然とした路地、中国独特の風習などを美しい映像でテンポよく描き出しており、映像に説得力があります。
一貫して庶民を描きながらも、映像の作りが異様に洗練されているのは、昨今の中国映画ならではです。

ただし、ストーリーとしては、ひっかかるところがあります。具体的にいうとラストの展開が妙に安直に感じられました。
しかしそれは、中国の法律が関係しているものと思います。中国では2020年に民法各法をとりまとめた「民法典」が正式に施行されました。「民法典」には親が子どもを扶養する義務だけではなく、子どもも親を扶養する義務があることが明確に定められています。
つまり、子どもは、将来的に実の親を扶養する義務があり、法律上の継父継母がいてもその義務は変わりません。この映画は、2022年の中国ファミリードラマとして、中国の法律、道徳観と矛盾しないようなラストになっています。
コメント (4)
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