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ドラマ「鎮魂」の配信停止と朱一龍の人気

2018年09月24日 | エンタメの日記
動画サイトYoukuで独占配信され、30億近い再生回数を記録した人気ドラマ「鎮魂」が、最終回から僅か数日後に全話配信停止になってしまいました。
7月25日に最終話第40話が配信されてから、約1週間後の8月2日、何の前触れもなく、忽然とサイトから姿を消してしまったのです。
ほどなくして、配信禁止になったという情報が流れました。
視聴者にとっては「まさか」という思いと「やっぱり・・・」という思いが半々だったのではと思います。

ドラマなどのコンテンツが当局から発禁処分を受けたとき、その理由を政府側が具体的に公表することは基本的にありません。
あったとしても「関連法令に違反する」「社会秩序・公共の道徳に反する」もしくは「暴力的、教育上よくない」といった漠然とした理由しか示されません。
もともとドラマを規制する法令には、禁止対象となる要素が大量に羅列されているため、規制しようと思えばほとんどのものを規制できるのです。

ドラマ制作側が公式Weiboなどで、配信停止になったことを公表することがありますが、理由はやや曖昧にぼかして、ひっそりと発表することが多いです。
公式の情報をもとにニュースメディアが記事を報道しますが、このあたりから憶測が混じり始めます。

「鎮魂」の場合、ネットメディアでは、「封建的な迷信を煽り、社会の陰鬱とした面を過度に誇張し、血生臭く暴力的なシーンが一部ある」ことが配信停止の理由と言われていますが、視聴者にとっては釈然としません。

発禁になるというのは作品にとっては「死」に相当します。
その作品を本当に愛している人は、作品がいつ誰の手によって、どういう経緯で死んだのか詳しく知りたいと願うけれど、結局よく分からずに終わってしまうことが多いです。
戦争で子を亡くした親が、自分の子どもがどこでどうやって死んだのか知りたくても、「戦いの中で死んだ」と伝えることしかできないのと似ているかもしれません。

中国ではテレビドラマ・ネットドラマのいずれも、政府機関の届出審査を受ける必要があります。
審査に通過すると、届出番号が発行されます。
「鎮魂」も当局の規定に従って審査に通過し、届出番号を取得していたのに禁止処分を受けました。正規のルートで届出をしていても安全とはいえないのが現状です。

発禁になる理由が釈然としないので、次に出てくるのが、「ライバル会社が当局にクレーム通報した」という説です。
中国は「法治社会・規範に則った社会」を築くことを目指し、一般市民による法令違反通報制度がかなり整えられています。
通報のためのホットラインやウェブサイトが充実しており、こういった公の通報ルートを利用して、映像作品やゲームに対しクレーム通報し発禁に至らしめることは事実上可能と言われています。

救いといえるのは、出演者に対して目立ったペナルティは課せられていないということでしょうか。
同じく配信停止になったBL実写ドラマ「上瘾」(Addicted)主演の二人(黄景瑜、許魏洲)など、一度人気が出れば、大きく飛躍するケースもあります。
「鎮魂」の主演の二人、朱一龍と白宇も「鎮魂」のヒットを契機にKFCや化粧品など多くのCMに起用されています。

【朱一龍イメージキャラクター】KFC。地下鉄駅などでも掲出されていて非常に目立ちます。


Loreal


Lenovo携帯


中国ではドラマやアニメが放送禁止になったり、漫画やゲームが規制されたりすることは頻繁にあるので、人々は耐性ができて大して驚いたり悲しんだりしなくなっています。
「ああまたか」「やっぱり」と思うだけで、涙も出なくなります。ただ虚無感が残るだけです。

しかし、中国のエンタメはここで終わりにはならないと思います。人とお金がある限り終わりにはなりません。
喪失や終焉は悪いことではない。何かが終われば、その代わりに新しいことを始めることができる。と思うしかないです。
右往左往する群衆の中から、圧倒的な魅力と能力を持った英雄や天才がきっと現れる。と思わせるだけの人口が中国にはあります。
逞しく楽観的な人々は、本能的に太陽が再び昇るのを信じているようです。
コメント (5)
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