上海阿姐のgooブログ

FC2ブログ「全民娯楽時代の到来~上海からアジア娯楽日記」の続きのブログです。

タイの大ヒットティーンドラマ「ホルモンズ」~中国で「Dao×Koi 百合CPファンミ」開催

2016年11月20日 | タイドラマ
中国でドラマ俳優のファンミーティングが開かれるのは珍しいことではありませんが、今年の6月、ちょっと変わったファンミーティングがありました。
タイドラマ「ホルモンズ」出演者の中国ファンミーティングです。

タイドラマ「ホルモンズ」は2013年5月に放送開始し、TVシリーズはシーズン3まで制作され、映画版も作られました。

「ホルモンズ」はタイで大ヒットしたものすごく有名なドラマです。

ホルモンズ(HORMONES) Season1 2013年5月~GTH ON AIR(現GMM ONE)などで放送。全13話
ホルモンズ Season2 2014年7月~全13話
  

「ホルモンズ」はバンコクの裕福な家庭の子女が通う高校を舞台にしたティーンドラマです。
実際にドラマ撮影時、多くの出演者がまだ10代でした。明らかに発展途上のルックスと演技なのですが、高校生の恋愛、いじめ、セックス、暴力、スクールカースト、同性愛、親子の確執などが大胆に描かれるドラマです。
テンポが速く、様々な人間関係が同時進行し、飽きさせません。また、シビアな内容を描きながらも、富裕層の家庭の子どもたちしか登場せず、おしゃれな設計の豪邸に住み、母親が運転する高級車で通学し、自室は趣味の道具で飾られているファッショナブルなドラマです。
教室内での暴力、子ども同士のセックス、喫煙など過激な描写は多いのですが、出演者が非常に透明感のあるビジュアルなので、バンコクの強い日差しの輝きのせいもあり、爽やかな作風が貫かれています。



このドラマをきっかけにたくさんの人気若手スターが生まれました。

成長中の10代の少年少女をキャスティングしているので、実際に成長している姿をテレビを通じて見ることができます。
特にシーズン1は、女の子は化粧っ気もなく、ストレートの黒髪を後で束ねた真っ白な肌の子ばかりで、最初は平凡に見えても、見ているうちにどんどんかわいく見えてきます。
ただ、つくづくタイのドラマや映画は韓国芸能の影響を受けているなと感じます。
特に女優はソンヘギョの影響が強く、ソンヘギョを連想させる仕草や表情が随所にみられます。



メインキャストの学生たちだけでも、男6人+女6人とキャラが多く、友情、恋愛、憧れ、嫉妬など様々な人間関係が交錯します。
恋愛関係も、男女のNLから、BL、GL(百合)と多種多様です。

数多いキャストの中で、中国で特に人気が高かったのは、シーズン2から出番が増えたDaoとKoiです。
DaoとKoiは同じクラスで、仲良しグループのメンバーなのですが、徐々に二人だけが親密になっていき、同性愛的な関係に発展していきます。



その百合カップルが中国ファンの間で大人気になり、カップリングファンミーティングが開かれました。

中国杭州 タイドラマホルモンズ 「タイで最も人気の百合カップルDao×Koi」~Fon&Belle ファンミーティング 日時:2016年6月19日


これは、Fon&Belleの私設中国ファンクラブが企画したものでしたが、だんだん規模が大きくなって主催会社もつき、400人以上のファンが集まったと報道されています。

6月11日には、上海映画祭の時期に合わせて「ホルモンズ」でPhai役を演じた俳優Torのファンミーティングも行われました。

Torのファンミーティングはタイ王国在上海総領事館で開かれました。

ふつう領事館で若手イケメン俳優のファンミやるか・・・?と思いますが、タイならありえます。

Tor Thanapob(通称Tor)1994年2月14日 身長185cm 現在大学に在学しながら俳優活動を行う。
出演作:「ホルモンズ」シリーズ(Phai役)、映画「May Who」(電撃少女)など。



ホルモンズ出演者の中で一番売れたのがこのTorなのでは。ドラマの中では坊主頭がトレードマークでした。
劇中では、大人びた少女とのベッドシーンもありました。相手は早熟な美少女ですが、誰が見てもおいおいと言いたくなるようなビッチの設定です。Torはそんな彼女に純粋な思いを寄せる不良グループに属する少年役を好演しました。
Kazz Awards 2014 最優秀新人俳優賞「ホルモンズ」出演をきっかけに数々の賞を受賞しました。



中国メーカーOPPO携帯のタイ広告。OPPOは中国国内でのシェアはそれほど高くありませんが、カメラ・音楽などの機能には定評がありタイ市場に力を入れています。 



映画「May Who」(電撃少女) 2016年上海映画祭上映作品。
主演の女の子 punpun sutatta(通称Punpun)も「ホルモンズ」出身です。
「ホルモンズ」では、思いやりがあり母性的な魅力で男子から思いを寄せられるToei役を演じ、一躍人気女優になりました。


「ホルモンズ」は本当に面白いし、タイでものすごい人気だったドラマです。

タイは東南アジア最大のエンタメ発源地で、イケメン俳優がいっぱいいます
中国には、少なからぬ「タイ芸能ファン」が存在します。タイのイケメンスターの多くは欧米系の血が入っているか、色白のいわゆる中華系タイ人です。
タイの俳優は馴染みやすく、また、BL描写が多いのもタイドラマの特徴の一つです。
普通のドラマの中に普通に男同士のカップルが出てくるので、BLドラマファンとタイドラマファンはかなりかぶっているといえます。
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2013年上海国際映画祭~日本映画週間とタイ映画ウィークの開幕セレモニー

2013年07月08日 | タイドラマ
6月15日から6月23日まで上海国際映画祭が開催されました。1週間あまりの開催期間中に、約25ヶ国約360作品が上海市内の映画館で上演されたほか、多くの映画関係者が上海を訪れました。中華圏からだけではなく、スーパーマン新作映画「マン・オブ・スティール」のザック・スナイダー監督、主演のヘンリー・カヴィルなどもイベントに参加し話題を呼びました。

上海映画祭では日本映画も多数上映され、6月16日(日)午後2時から「日本映画週間」開幕式が上海影城で行われました。開幕式には日本からのゲスト(映画監督:君塚良一、古澤健、川村泰祐、Claude Gagnon、雑賀俊郎、女優:余貴美子、工藤夕貴)も出席しステージで挨拶をしました。
参考(上海映画祭 日本映画週間オフィシャルサイト):http://cjiff.net/index_jp.html


上海映画祭は、約1週間の開催期間中、市内複数の映画館約10ヶ所で出品作品が上映されます。上海の映画館はショッピングモール内に入っている新しいシネコンが多いですが、歴史建築物を利用しているところもあります(中身はシネコン形式)。
■国泰電影(CATHAY CINEMA)

■衡山電影院

■大光明電影院



■上海影城(メイン会場)


今回の映画祭で特に楽しみにしていたのはタイ映画です。

6月16日の20:45からBie(Bie Sukrit Wisetkaew)というイケメン俳優主演の「愛触摸心」(英語名:The Rainbow In The Night)というミュージカル映画を観る予定になっていました。
公式スケジュールでは20:45から上映とされていたのですが、会場に行ってみると入口に人だかりができていました。警備員の背後で多くのファンが映画のポスターや電飾ボードを持って待機しており、明らかに入り待ちをしているのです。

会場に行ってみて初めて知ったのですが20:45から映画上映だけでなく、タイ映画ウィークの開幕式をやるというのです。開幕式には「愛触摸心」の主演女優Noonaが出席することになっているのですが、まだ到着していないのでファンが入り待ちをしている状態でした。関係者はなかなか到着せず、開幕式が始まったのは9時過ぎでした。

普通、夜の9時から開幕式始めるか・・・?

こんな時間しか場所が取れなかったのか、それともタイ側の事情なのかは分りませんが、日本映画週間の開幕式が日曜日の午後2時というまともな時間に行われたのと対照的でした。しかもタイ映画ウィーク開幕式の会場は映画館の中でも外れた位置にある小さな上映ホールでした。

夜遅くから開催されたタイ映画ウィークの開幕式は、小規模ながらも熱気に満ちていました。
まずはこの種のセレモニーでは必ず行われる、領事館大使の挨拶です。
タイ大使の挨拶がアツかった。
まず、「お忙しいところお集まりいただいたご来賓の皆さま、観客の皆さま、メディアの皆さま・・・」と始まるのはいいのですが、タイ領事館大使はこれに加えて、中央列に固まって座っている入り待ちをしていた女の子たちに向って、

タイ芸能ファンの皆さん、こんばんは!!

と熱意をこめて呼びかけます。

そして、原稿も手にせずにステージを自在に使って、中国語で熱弁をふるいました。
いかにタイ側がこの上海映画祭を重視しているかということに始まり、ドラマも含め、タイ芸能を中国に広めるためのこれまでの努力と成果についても語りました。

そして最後には、「ファンの皆さんの応援があってこそなのです!ファンの皆さんの応援があれば、私はタイのスターを必ず中国にもっと連れてきてみせます!!」

と、大使というよりはどこかの劇場の支配人みたいでしたが、たしかにタイ側は、タイ芸能の中国プロモーションに力を入れており、入り待ちの女の子たちが集まったように成果が表れています。
領事館の祝辞というものは、厳粛な雰囲気のもと行われるものだと思っていたので、タイ大使の熱弁には驚きました。

タイは対中国プロモーションとして、観光・グルメ・エンタメの三つを中心に掲げています。これはタイだけでなく、多くの国が採用する手法で、タイよりも早くこれを徹底して行ったのは韓国です。韓国のPRフィルムでは「イビョンホンが済州島で遊びながら韓国宮廷料理を食べている」といった、スター・グルメ・観光地を一体化した内容のものが作られています。
しかし、ペヨンジュンやソンヘギョ、Rainに相当するような、中国人に広く知られているタイのスターというものがまだ存在しません。そこで、意識的に「タイの顔になるスター」を育てようとしているのだと思います。その足場として、中国でタイドラマを放送できるように中国安徽衛視と協議を締結した経緯もあります。

また、挨拶の中で「芸能を通じてもっとタイに親しみをもってほしい、そしてタイに旅行に来てもらいたい」というメッセージを発しました。

日本領事の挨拶でも同じようなメッセージを発していますが、「映画の舞台となった風景を、実際にも見てほしいと思います」といった奥ゆかしい表現をされていました。タイ大使はもっとストレートに「多くの人にタイを訪れて、タイの食べ物、風景、そしてタイの人情を感じていただきたい!これは映画を見ているだけでは判りません!!」と訴えていました。

タイ映画ウィーク開幕式では更に特別ゲストとして「愛触摸心」の主演女優であるNoonaのインタビューが行われました。しかもインタビューだけではなく、その場でアカペラで中国語の歌をワンフレーズ披露したのです。この映画はもともとミュージカルを映画にしたもので、Noonaは歌手でもあるわけですが、あの場でいきなりアカペラで歌うのはすごいサービス精神だと思いました。フレンドリーなのはタイのお国柄なのでしょうか。集まっていたタイ芸能ファンの女の子たちはNoonaのファンというよりはBieのファンなので、Bieからのファンへのメッセージ動画も最後に放映されました。



日本領事館の挨拶とタイ領事館の挨拶を聞いていて、気になったことがあります。

日本領事館の挨拶では「映画という文化を通じて、両国の理解を深めたい」と語り、映画のことを「文化」と表現しています。
これに対してタイ領事館挨拶では「映画などの娯楽を架け橋として、タイのことをもっと知ってほしい」と語りました。内容的には同じような意味ですが、表現が異なります。日本は映画は「文化」と捉えており、タイは映画は「娯楽」と表現しています。
映画は「文化」かそれとも「娯楽」か・・・上海映画祭でタイ映画を2本観ましたが、たしかに娯楽作品でした。また、タイ領事館代表は映画だけではなく、現在中国で放送されているタイドラマのことも含めて話をしていたので「娯楽」と言ったのかもしれません。

中国では映画は「文化」というより「娯楽」として扱われています。文化を理解し合うより、娯楽をともに楽しむ方が容易く実現できると思うので、言葉の使い方の問題に過ぎないかもしれませんが、「娯楽を架け橋にして交流を深める」方が現実味があるように感じました。

今回の上映作品主演のBieにしても、タイドラマ俳優として中国で最も有名なPongにしても、インタビューなどを読む限り、彼らは中国だけではなく日本にも活動の幅を広げたいと考えているようです。中国だけをターゲットにしているわけではないけれど、日本は進出ルートが開かれておらず、参入が難しいのかもしれません。

日本でタイ芸能は流行るでしょうか?
タイドラマ(ラコーン)は次の展開が気になってしょうがない面白い作品もあります。しかし作り方に雑なところがあるので、大らかな心を持たないと受け入れられないかもしれません。タイドラマは台湾アイドルドラマと似たところがあり、女優よりも美男俳優を中心に据えた作品が多いです。タイ独特の雰囲気を持ったイケメン俳優も豊富です。
F4など台湾アイドルが好きだった、若しくは1990年代の香港スター(アンディ・ラウ、アーロン・クォックなど)が好きだった人は、タイスターに引かれる部分があるのでは。1990年代の香港スターが持っていた、アジア人なんだけど白馬の王子さま的なキラキラテイストがタイ俳優にはあります。かつての香港芸能を懐かしく思う方は、タイに目を向けてみてもいいかもしれません。

Bie Sukrit Wisetkaew(中国では通称Bie。タイのショウ・ルオ的な存在なのでは。)


Tik(Jesdaporn Pholdee)上海国際映画祭上映作品「Super Sarary Man」に出演。軍服を着るシチュエーションが多いのがタイ俳優の特徴か・・・
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中国でカットされる海外ドラマ~~カット・吹き替え・モザイクなど

2011年10月16日 | タイドラマ
中国のテレビで放送される海外ドラマは内容の一部がカットされることがあります。「広電総局」(広播電影電視総局)と呼ばれるテレビ・ラジオ・映画等を司る政府機関に管理されるため、ドラマを含めテレビ番組は広電総局の批准を受けなければならないし、広電総局の命令で放送停止になることもあります。
中国で制作する作品の場合、メディア制作側はどういうものがOKでどういう表現がNGか大体把握しているので、NGになりそうな表現は予め含めないようすることが多いと思います。

タイドラマでもカットされるケースがあります。2010年に安徽衛視で放送されたタイドラマ「明天我依然愛你」(明日もあなたを愛してる)は、タイオリジナル版は全30話ですが、中国版は全27話となっており、3話分がカットされています。

タイドラマ「明天我依然愛你」(明日もあなたを愛してる)


【原題】Proong Nee Ghor Ruk Tue
【時期】2009年制作。中国での放送は2010年。
【制作】Exact (Grammy傘下のドラマ制作プロダクション)
【監督】Boy Thakonkeit (Exactの有名な人物だそうです)
【主演】Pong(Nawat Kulrattanarak)とAom(Piyada Akkarasenee)

PongとAom。Pongは中国で最も有名なタイのドラマ俳優。Aomは司会者兼女優でベテラン、実年齢上はAomの方がPongより年上です。


【あらすじ】結婚を間近に控えるボー(Pong)とガンヤー(Aom)は家族全員に祝福され幸せに満ち溢れていた。ところが2人の姉同士が、ある誤解によりとり返しのつかない不幸な事件を起こし、両家は仇同士となってしまう。ガンヤーは残された家族のために、ボーの前から姿を消すが、2人は偶然にも6年後バンコクで再会し・・・というようなお話です。











このドラマはボーとガンヤーという主人公カップル、ボーとその新しい彼女(宝石商の娘)、ボーの姉夫婦、ガンヤーを慕う年下の男性社員、ガンヤーの親友の恋・・・といった複数のカップルの物語が進行しますが、これにボーとガンヤーの弟同士という同性の恋愛が加わります。この弟同士のカップルのエピソードが中国版ではバッサリとカットされています。

このドラマに登場するカップルの中で一番救いようがないのが主人公の姉夫婦です。夫婦の関係が一番えげつなくて、男女の恋人同士も利己的なキャラや意地っぱり、衝動的なキャラが目立ちます。それに比べると男同士カップルの2人は、恋愛に慎重で誠実な性格が丁寧に描かれています。これは監督が意図的にそういう演出にしているのだと思われます。
特にボーの義弟のピラウェイはこのドラマの中で一番理性的で誠実な好青年として描かれており、ある意味最も美化されているキャラクターです。
弟2人のカップルのシーンがこのドラマでは唯一サワヤカでほっとさせられます。こんなにサワヤカなのに同性愛はまずいという判断でしょうか、中国安徽衛視で放送された際はバッサリとカットされていました。おかげで後半に入る20話以降は、男女(特に姉夫婦とボーの新しい彼女)のドロドロしたシーンばかりになってしまって、キツイものがあります。また、同性同士の恋愛は両家族に波紋を投げかけますが、逆にそれが対立し合う家族の確執を解くきっかけを作っていき、ストーリーの伏線にもなっています。それなのに中国版はバッサリとカットしてしまうので、ドラマの後半のストーリーが薄っぺらくなってしまい非常に残念です。

ボーの義弟であり、ヒロイン・ガンヤーの仇の男の弟(ピラウェイ)を演じるのは、O-anuchydという俳優です。
ヒロインの弟(ゴン)を演じるのはタイのオーディション番組「The Star5」にも出ていたFluke (Pachara Thummol)。1988年生まれ、身長178cm、東方神起の大ファン。Flukeのプロフィールで紹介されている彼の生い立ちは、ドラマ以上にドラマチックなもの。
Flukeはこのドラマで、末っ子ながら家族思いの有能なリハビリ療養士を好演し新人賞を受賞。


この2人の役柄はタイでも反響が大きかったみたいです。

ヒロイン一家の家族の一員として一緒に暮らしているオカマのおねえさんが出てくるのですが、これがまたいいキャラクターです。オカマのおねえさんと弟2人がボードに文字を書いてやり取りをするシーンなど、すごくいいシーンだったのにカットされてしまってもったいないです。


台湾ドラマも表現的にひっかかることがあり、カットされたりセリフが差し替えられたりすることがあります。

「ザ・ホスピタル」(原題:白色巨塔)(ジェリー・イェン主演、蔡岳勳監督、2006年制作)では、ジェリー・イェンが演じる医師が勤務する病院に台湾総統の娘が入院し手術をするというエピソードがありますが、台湾「総統」という表現が大陸ではひっかかり、大陸のテレビ局東方衛視で放送された際は「総統の娘」ではなく「指導者の娘」(※指導者は中国語では「領導」)にセリフが差し替えられていました。総統が「省長」に置き換えられています。

「ハートに命中100%」(原題:命中注定我愛你)は、大陸では「愛上琉璃苣的女孩」というタイトルで湖南衛視で放送されましたが、カットされたシーンがたくさんありました。
(台湾三立電視2008年放送。陳喬恩、阮経天(イーサン・ルァン)主演で大ヒット)


映像が部分的にカットされたり、セリフが変えられたりすることはよくあることなのですが、なんとこのドラマの場合、ストーリー自体が一部変更されていました。ここまで変わっているのは珍しいです。
本当は事故で流産してしまうシーンがあるのですが、大陸版では流産したのではなく、「もともと妊娠していなかった」という内容に置き換えられているのです。これはストーリー上重要な意味を持つところなのに、そもそも妊娠していなかったということにされてしまったので、辻褄が合わないというか後半の流れに明らかに違和感があります。
大陸版には医師から「妊娠していませんでした」と病室で告げられるシーンがあるのですが、あのシーンは大陸用にわざわざ撮影したのでしょうか?それとももともと映像は存在して、セリフのみ大陸用に吹き替えられているのでしょうか・・・?

カットや吹き替えの変更以外にも、映像の一部にモザイクがかけられることもあります。
主人公が小学校の課外講座として陶芸を教えるシーンがあり、教室の黒板に小学校の名前が書かれています。台湾では小学校のことを「國小」(グォシャオ)といいます。「國小」は「國民小學」の略です。大陸ではこのような言い方はせず、小学校は「小学」(シャオシュエ)といいいます。大陸版では「國小」という文字の上にモザイクがかけられていました。中国共産党政府は台湾を国と認めず、中国の一部であるという政治的態度を取っているので、台湾が「国」という言葉を使うことに敏感に反応します。
「ザ・ホスピタル」で「総統」という言葉が差し替えられたのも同じ理由と思われます。総統は国の元首にあたるので、「国」と認めないとすれば、総統という言い方も認められない、ということになります。

日本で放送された「ハートに命中100%」も、ある部分にモザイクがかけられていました。
一体何にモザイクがかかってるんだろう?と不思議に思って、台湾版を見てみました。日本版でモザイクがかけられていたのは、サッカー選手ベッカムのポスターの部分でした。ヒロインの家の部屋にベッカムのポスターが飾ってあるのですが、選手映像の使用許可にひっかかるのでしょうか。
モザイクがかかっていたり、不自然にカットされていたりすると、逆に気になってしまいます。
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アジアの新勢力・タイドラマの魅力~~中国「安徽衛視」とPongとBee

2011年10月06日 | タイドラマ
中国ではタイドラマが密かにブームです。
正確にいうと、ある地方テレビ局が積極的にタイドラマを輸入して、次から次へと放送しています。タイドラマのことは中国語で“泰国電視劇”、略して“泰劇”といいます。
中国のテレビは、各地方(各省)ごとにテレビ局が置かれているのでチャンネル数が多く、一般的家庭で70チャンネル程度が視聴できます。多くの局が一日の大半はドラマを放送しており、複数のテレビ局が同じ時間帯に同じドラマを放送していることも珍しくありません。
放送枠が多いということもあり、中国はドラマの制作が非常に盛んです。テレビで放送されているドラマは、量的にいうと大陸ドラマが圧倒的に多いですが、海外ドラマも数多く放送されています。伝統的に多いのが、香港ドラマ、台湾ドラマ、韓国ドラマ、日本ドラマですが、いま海外ドラマの中で最も勢いがあるのがタイドラマです。
タイは東南アジアのエンタメ中心地であり、アジア各国の芸能が普及した時期も早く、90年代は香港や日本、2000年以降は台湾、韓国エンタメの影響が広がっています。

タイドラマをご覧になったことはありますでしょうか。

中国のテレビで放送されているものを何本か見たことがありますが、なかなか面白いです。日本でもタイドラマをやればいいのに・・・と思います。
俳優はイケメン、女優は美人でセクシー、お金持ちの上流社会が舞台となることが多く、衣装やセットなどが華やかで、ストーリーはハラハラドキドキだけどロマンチックで分かりやすく、ついつい先が気になって見てしまいます。

【中国で比較的早く紹介されたタイドラマ】
中国で最初にタイドラマが放送されたのは2003年頃と言われていますが、ヒット作といえるドラマが登場したのは2006年~2008年です。
中国タイドラマブームの先駆けとなった作品は「鳳凰血」(制作2002年)です。中国で放送されたのは2006年で、CCTV8中央電視台海外ドラマチャンネルで初放送されました。私自身2008年に「鳳凰血」の再放送をテレビで見て、生まれて初めてタイドラマというものに触れましたが、衝撃を受けました。面白いです・・!!
このドラマのことは昔の阿姐ブログ(FC2)に書いています。
http://allasia.blog74.fc2.com/blog-entry-168.html

「鳳凰血」のヒットに続いて、2008年に湖南衛視が「逃げ出したお姫様」(中国名:出逃的公主/22話or27話)というドラマを放送します。


これはタイ宮廷もののドラマで湖南衛視がゴールデンタイムに放送し、かなりの人気を集めました。しかし、このドラマ以降、湖南衛視はタイドラマの放送にあまり積極的な動きは見せず、安徽衛視という別の地方局が怒涛のごとくタイドラマを輸入し放送し始めるのです。

【“タイドラマの安徽衛視”】
「安徽衛視」というのは安徽省合肥を本拠地とする地方テレビ局の一つです。安徽衛視はタイドラマで差別化をはかろうという戦略を取っており、中国テレビ界において画期的な動きをしています。
安徽衛視のタイドラマ戦略が本格的にスタートするのが2009年で、「天使の争い」(中国名:天使之争/22話)というドラマを放送します。
ヒロインは努力の末に憧れのスチュワーデスになり、優れた仕事ぶりで周囲に認められるようになる。ヒロインはパイロットの男性に恋をするがその男性は既婚者である。別のパイロットの男性にヒロインは思いを寄せられ結婚に至るが、そのパイロットは破綻的な二面性を持っている。ヒロインが愛と幸せを手にできる日は来るのか・・!というようなストーリーです。



主演俳優&女優はPongとBeeです。PongとBeeはタイドラマの超有名なコンビです。(写真:CRI Online
タイドラマ人気俳優のPong(Nawat Kulrattanarak)と美人女優のBee(Namthip Jongrachatawiboon)
  

「天使の争い」ではPongがプレイボーイという言葉では済まされない、性格破綻といってもいい病的な浮気を繰り広げるイケメンパイロットを好演。ディープな役です。Pongはこの作品での演技で多数の賞にノミネートされたと言われています。(※詳細は未確認です)
タイドラマの輸入に乗り出したのは、日本ドラマや韓国ドラマに比べてタイドラマは版権が安く、コストパフォーマンスが良いという理由があったのですが、「天使の争い」は好評で視聴率も良く、タイドラマ輸入に自信を与えました。
2010年は、同じくPongとBeeのコンビ作品「キューピットの罠」が放送され、「天使の争い」と同様に好評を得ます。
名門企業家の兄弟と、貧しい家庭の姉妹の恋、残された子供を通じて繰り広げられる家族の争いと新しい恋の展開・・・というようなストーリーです。
「キューピットの罠」(中国名:丘比特的圈套/28話)


タイドラマの特徴を挙げると;

○俳優、女優は中華系やハーフが多い。モデル出身者が多く、長身でルックスが良い。
○上流階級・裕福な家庭が舞台になることが多い。
○男の方が富豪のプリンスで、ヒロインが貧しい家庭の出身というパターンが多い。
○親と家族を大切にするという道徳観が強い。お父さんの影は薄く、お母さんまたはお祖母ちゃんが強権を握っている。
○俳優も女優もセクシーでワイルド。悪役(ヒロインのライバル)の女優はロングヘアでいつも肩があいた服を着ている。
○ストーリーや演出などの点で、日本/韓国/台湾ドラマの影響を受けていることは公知のこと。
○展開は読めるけれどハラハラドキドキするストーリーでついつい見てしまう。
○脚本や設定にはツッコミどころが多いが、ドラマ(“Lakorn”)はそういうものとして受け入れられている。
○中盤は驚きの展開が続くが基本的にはハッピーエンドで、脇役はともかく主人公が病気や事故で死んだりすることはない。

タイの俳優や製作者側は、タイドラマの魅力は「ビジュアル、新鮮さ、馴染みやすさ」だとインタビューで語っています。どうしてタイドラマを見ようという気になるかというと、最大の理由は新鮮だからです。ドラマの中で描かれる風景や生活様式が目新しく、俳優や女優のビジュアルが魅力的です。

今中国で紹介されているタイドラマは、タイでは「Lakorn」と呼ばれるものです。
「Lakorn」はロマンチックで華やかな娯楽性の強い、大衆に人気の一種のドラマジャンルであり、これがタイドラマの全てというわけではなく、ましてやタイの現実社会を表わすものでもないと解説されています。
タイ芸能界は「Grammy」(GMM)という芸能事務所が圧倒的なシェアと実力を持っており、中国で放送されているタイドラマはほとんど全てGrammy傘下のドラマ制作会社である「Exact」制作の作品です。PONGとBEEもExact所属のタレントと紹介されています。更に、タイのドラマ・映画コンテンツを中華圏向けに輸出するエージェント会社が存在し、安徽衛視のタイドラマ戦略にも関与しています。

2011年、安徽衛視はタイドラマ放送に更に力を入れることを宣言しており、今年は8本のタイドラマを放送すると報道されていいます。作品の層は韓国ほどは厚くありませんが、魅力的なドラマスターを擁するタイドラマ。日本でも、韓国ドラマ、台湾ドラマに続きタイドラマがブームになる日が来るかもしれません。
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