上海阿姐のgooブログ

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中国大ヒットスマホゲーム「陰陽師」~中国製の3D和風RPG~

2017年01月13日 | エンタメの日記
いま中国では「陰陽師」というスマホゲームがものすごく流行っています。
2016年9月にリリースされてから、「僅か45日で1日あたりのアクティブユーザー1000万突破」と公式が宣言しています。
そんな数字に頼らなくても、WeChat(微信)やWeibo(微博)などのSNSでは「陰陽師」の情報で溢れかえっているし、上海市内のバスや地下鉄に乗れば、周りにいる乗客の何人かは「陰陽師」をプレイしており、「流行っている」ということがいやでも分かる状況です。

「陰陽師」は中国のIT大手網易(NetEase)傘下の「網易移動遊戯」(網易モバイルゲームス)が開発・運営するゲームです。
和風3DソーシャルRPGということで、中国製ゲームですが平安時代を舞台として、安倍晴明、源博雅などが妖怪や呪縛霊たちと戦う和風ゲームです。

網易 NetEase(ネットイーズ)「陰陽師」公式サイト
http://yys.163.com/



ストーリー:
陰陽師である安倍晴明とその仲間たちが、召喚される式神を操り、妖怪たちと戦いながら失った記憶の手がかりを求めて旅を続けていくというゲームです。
主人公の晴明をはじめ、キャラが何らかの記憶を失っており、なぜ自分がここにいるのか分からない、なぜこのような戦いの世界になっているのか、謎を抱えた状態で始まります。
敵の妖怪たちは、怨念に縛られて動けなかったり、永遠の時を生きることに苦しんでいたり、大切な誰かのことを思い出せないなど、それぞれの謎と秘められた物語が織り込まれており、ゲームを進めていくうちに謎が少しずつ明らかになるという面白さもあります。

CVはすべて日本人声優が起用されています。
メインキャラだけでも、安倍清明:杉山紀彰、神楽:釘宮理恵、八百比丘尼:沢城みゆき、源博雅:鈴木達央と豪華で、
さらに大量に登場する式神、妖怪にも有名声優がこれでもかというほど起用されています。
中国製のゲームに日本人の声優が起用されるのは珍しいことではありませんが、ここまで大量に有名声優を動員したゲームはないのでは。

「陰陽師」は、中国製ゲームでありながら、舞台設定は平安時代で、音声は完全に日本語です。
セリフはすべて中国語字幕で表示されており、画面上の文字は完全に中国語です。
ただし、中国のゲーム会社が開発・運営しているので、ゲームのシステムとしては中国式で、中国ユーザーのプレイ習慣に合う仕組みになっています。

「陰陽師」は間違いなく2016年に中国で最も流行ったゲームで、数々の栄誉に輝いています。
このゲームの最大の強みは、男性ユーザーも女性ユーザーもともに楽しめるという点です。

私もプレイしていますが面白いです。戦闘は手動とオートを選べます。

キャラデザが豊富で秀逸:

参考元のイメージがあるのかもしれませんが、完成度が非常に高く色彩や3Dも大変きれいです。
「和風RPG」と銘打つだけあって、キャラや背景が完全に和風デザインです。





キャラクターデザインの絵師は中国人が担当しているようです。
公式絵師は基本的にいまのところ公表されていないと思います。そのうち公式設定画集とか出ると思いますが・・・。
絵師は一人ではなく、複数からなるチームでデザインやイメージ設定を担当しているといわれています。

式神の一部



謎に包まれた魅力的なキャラ設定とストーリー:

「陰陽師」の最大の魅力は、ストーリーとキャラ設定が深いところです。
章ごとにまとめられたエピソードを通じて、次々と新しいキャラが登場し、どんどん先に進みたくなります。

最初の10分プレイしてみた時点で、「このシナリオは日本人が書いているに違いない」と確信しました。
声優がしゃべるセリフがすべて日本語なので、日本人がシナリオを書いているのはある意味当たり前なのですが、スタッフ情報の中に、シナリオ作者が誰なのかは長らく明らかにされていませんでした。
2016年12月下旬に、シナリオを担ったライターグループのことが記事になってはじめて、Qualia(クオリア)という日本のシナリオライター集団が「陰陽師」のシナリオを提供しているのだと知りました。

Anitamaインタビュー:「スマホゲーム「陰陽師」のシナリオ創作の背景~シナリオグループQualiaインタビュー」
http://www.anitama.cn/article/849dd43c8b3adf1b

インタビューによると、ゲーム制作会社である中国の網易が原案及び要望を示し、Qualiaがシナリオを制作したと語られています。
シナリオライター集団・クオリア http://gamequalia.blog.fc2.com/

なお、音楽を提供しているのも日本人です。
映画音楽を多く手がける日本の作曲家梅林茂が提供しており、オリジナルサウンドトラックの曲名も公表されています。

コスプレや同人誌も流行っています
コスプレのレベルが異常に高いです。担当デザイナーが衣装の型紙をネットで公開してるのかと思うほど、コスプレの衣装が精巧に作られています。使っている素材もいいです。

 

人気の高い式神SSR・大天狗 (2016年12月3日 上海COMIC UP19)

  

犬神 友達の雀さんも一緒にいます。

  

式神 傀儡師 この復元度、もうすごいとしかいいようがありません。

  

式神いろいろ


網易公式で、同人イラスト、同人小説も大々的に募っています。網易の傘下には「Lofter」という中国版Pixivのようなサイトがあるので、Lofter上で投稿イベントが行われています。



2017年1月現在、中国での「陰陽師」の人気はすでに成熟期にあります。
リリース直後に食いついたユーザーは2016年秋からプレイしているので、そろそろ「卒業」するユーザーも出てきています。
そのため、運営側は、新しい式神をリリースしたり、レアの出現率を上げたり、新規ユーザーの獲得と人気の維持に努めています。

「陰陽師」はカードゲームの要素にバトル、RPGをミックスさせたよくできたソーシャルゲームです。
ただし、キャラデザ、設定などに既存の人気ゲームの影響が折々にかいま見られます。「これどっかで見たな」と思うこともありますが、それは今の時代のゲームには回避し難いことかもしれません。

また、ビジュアル的には入りやすいですが、とにかく時間を要するレベル制RPGなので、食いつきの早いコアユーザーが卒業していった後、ライトユーザーをどこまで取り込めるかが課題になると思われます。

もっとも、「陰陽師ブーム」がいずれ収束するとしても、もうすでに十分といえるくらいには流行りました。

【おまけ】

ネットシネマ「双程」に出演したコスプレイヤーでもある黄靖翔が2016年の冬コミC91で「陰陽師」晴明のコスプレを披露。出典:新浪微博@黄靖翔


中国では「陰陽師」の実写版映画の製作も計画中と報道されています。ドラマ化、漫画化、アニメ化、グッズ化など、網易は二次展開に積極的な姿勢をみせています。アニメは日本の制作会社が作る可能性もあるのでは。
http://fun.youth.cn/yl24xs/201612/t20161216_8954638_1.htm

「陰陽師」日本サーバー予約受付中。1月12日現在予約人数21万人を突破。25万まであと少しです。
https://www.onmyojigame.jp/
コメント (6)
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日本アニメ・ドラマ配信に力を入れる中国動画サイトPPTV~三強にどこまで迫れるか

2017年01月02日 | エンタメの日記
かつて海賊版の宝庫だった中国動画サイトは、2011年頃から徐々に法制化が進み、映画、ドラマ、バラエティ、コンサート中継、アニメなどを正規配信するプラットフォームになっています。
Youtubeだけでなく、Netflix、huluなどの欧米系の動画サイトは、法律上の規制で中国市場に参入することができません。
そのため中国の大手動画サイトYouku、iQIYI、テンセント動画などは、「中国版Netflixと中国版Youtubeの融合体」のような存在になっています。

中国の動画サイトユーザー規模は、5億ユーザー程度と言われており、実際、人気のある中国ドラマは1話あたりの配信回数が億を超えます。
「大ヒット」と呼ばれるためには、億単位の再生回数を記録しなければなりません。
これは動画サイトとテレビの融合が進んだ結果ともいえます。

現在、中国の動画サイトはYouku(優酷)、iQIYI(愛奇芸)、テンセント(騰訊)動画が三強といわれています。

この3サイトはそれぞれIT大手の資本的背景を有します。

iQIYI:検索エンジン百度(Baidu)の傘下。
Youku:2016年に正式にアリババ(Alibaba)傘下に入る ※Youkuと合併したTudouはYoukuへの統合吸収が加速しています。
テンセント動画:QQ、Wechat、ゲーム配信会社として強い影響力を有するテンセント(Tencent)の動画サイト。

上記の三巨頭の頭文字をとって「BAT」と呼ばれます。

この「BAT」に迫る第二グループに属する動画サイトの一つが「PPTV」です。
PPTV聚力 http://www.pptv.com/

PPTVは上海を拠点とする古くからある動画サイトの一つですが、2013年に中国家電大手の蘇寧(SUNING)が資本参加したことが一つの転機となっています。
蘇寧(SUNING)は2009年にLaoxを買収した会社です。

PPTVは古くから存在しているとはいえ、Youku、iQIYI、テンセント、Letv(楽視網)に比べると存在感が薄かったです。
ところが、2015年あたりから配信コンテンツが徐々に充実し、特に日本アニメのラインナップが充実しています。目利きが版権購入しているような印象を与えます。
第二勢力の中では、Letv(楽視網)よりもPPTVの方が勢いを感じます(Letvはハード機器の販売が占める比率が高いので、単純に比較することはできませんが)。

本格的に目を引くようになったのは、2016年4月新番アニメ「文豪ストレイドッグス」の独占配信権を獲得したことです。


「文豪ストレイドッグス」は中国アニメファンの間で期待度が高く、他サイトでも配信意向が高かったであろう作品が、なぜPPTVでしかも独占配信できたのか!?と驚かれました。
その後も「91days」「ドリフターズ」「ALL OUT」などを独占配信しています。
クールによっては、新番配信のラインナップが、bilibili動画よりもPPTVの方が充実しているときがあります。

PPTVは正規版と非正規版(海賊版)が混在しており批判されるところもありますが、全体としては正規版化に向けてシフトしています。

PPTVで配信中の日本アニメ


PPTVは2016年後半から、日本ドラマの配信にも力を入れています。
「ダメな私に恋してください」「下町ロケット」などTBS系ドラマを配信しています。

下町ロケット 2016年11月頃からPPTVで配信。毎週火曜日、水曜日に一話ずつ更新。(中国語タイトル:下町火箭)




「ダメな私に恋してください」2016年10月頃から配信PPTVで配信。毎週火曜日、水曜日に一話ずつ更新。(中国語タイトル:請和廃柴的我談恋愛)


中国動画サイトで海外ドラマを正規配信するためには、全話分が出来上がった後に中国当局の審査を受けなければならないので、日本と同時配信することはできません(日本ではドラマの制作と放送が同時進行するため)。
そのため、日本での放送よりも数ヶ月遅れての配信になるので、「ダメな私に恋してください」や「下町ロケット」のPPTV配信については、予期していたほどの反響は得られなかったかもしれません。

「ダメな私に恋してください」は2016年の1月クールのドラマなので、日本放送中に中国語字幕付きの海賊版がかなり出回ってしまっていました。
人気があった分、すでに字幕付き海賊版を見てしまったという人が多かったのではないでしょうか。2016年の秋になって「正規版」が配信されても新鮮味が薄れていました。
「半沢直樹」は中国でも(海賊版が)大ヒットしたのですが、「下町ロケット」の面白さは少し伝わりにくかったかもしれません。

逆に、日本では難しいとされる恋愛ものが中国ではウケるような気がします。
例えば、月9の「好きな人がいること」や「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」といった20代の男女を主人公とする恋愛ドラマは、中国でやっていたらかなりの人気を集めるのではと思います。

2016年10月クールのヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」もPPTVで正規版配信されるのではと期待しています。
いま当局の審査を受けているとすると、3月頃には配信されるのではないでしょうか。
「逃げるは恥だが役に立つ」は海賊版動画が比較的厳しく取り締まられているので、もしPPTV又は他の動画サイトで早期に正規版が配信されれば、日本新作ドラマの中国における本当の関心度を表すことができるのでは。

中国にも日本ドラマファンは確実に存在するので、少し時間がかかっても「PPTVでは日本ドラマが見れる」という認識が根付けば、日本ドラマや映画の中国配信がより活性化するのではと思います。
コメント (5)
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