上海阿姐のgooブログ

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スマホゲーム「旅かえる」中国で大流行~中国製乙女ゲーム「恋と制作人」との対比

2018年01月28日 | エンタメの日記
いま中国ではHit-Point社開発のスマホゲーム「旅かえる」が爆発的に流行っています。社会現象といってもいいです。
Apple Storeを中心に1月18日から急激にダウンロード数が増加し、瞬く間にSNSの話題が「旅かえる」で埋め尽くされました。

「旅かえる」はかえるにお弁当や道具を持たせて旅に送り出し、かえるが旅先から送ってくれるポストカードやおみやげを集めるという育成ゲームです。
日本公式サイト:http://www.hit-point.co.jp/games/tabikaeru/

 

このゲームは日本語版しかありません。操作画面のボタンやメッセージはすべて日本語で、しかもひらがなとカタカナが多いです。
漢字が多ければ中国人でも意味を予想できますが、ひらがなばかりなのでどうしようもありません。
日本語がほぼまったく分からない何百万人という中国人ユーザーたちが、ネット上の攻略を頼りにこのゲームをぽちぽちと操作しています。

「旅かえる」は占有メモリが小さく、電池を食うこともなく、レベルアップのために大量の時間を割く必要もありません。
操作パターンが極めて限られており、プレイヤーが主にすべきことは「待つこと」です。

この超スローペースのゲームが偶然にも、過酷な消費競争社会に生きる中国人の心をつかみました。

「かえるは何も告げずに出掛けていって、いつ帰ってくるかも分からない。
帰ってきたら帰ってきたで、ずっと部屋に閉じこもって会話もない。次はいつ旅立つつもりなのかも分からない。
だけど旅先から写真を送ってくれたり、おみやげを持って帰ってきてくれたりと、成長を見守ることができる。」

という育成シミュレーションを通じて、子どもの成長を見守る親の気持ちが分かる・・・といった分析が様々なメディアで議論されています。
蛙(かえる)は中国語でワ(Wa)と発音しますが、同音意義語で子ども(「娃」)のこともワ(Wa)と発音します。
また、中国で流行っているネット用語「佛系」(仏系、仏教系、僧職系)というキーワードと当てはまったこともブームの一因です。
ストイックに辛抱強く待つことを要されるスタイルが「僧職系ゲーム」(中国語:佛系遊戯)と呼ばれています。

中国でこれほどの人気を得ていますが、開発元のHit-Point社に何らかの利益還元はあるのでしょうか。
マネーに相当するクローバーの課金はiPhoneではできるようですが、Androidではできません。

クローバー購入画面 左:iPhone  右:Androidはグレーアウト。

 

公式では現在日本語版しかリリースされていませんが、中国ではAndroid版はソース書換えにより日本語文字を中国語に置き換えた「中国語版」が出回っています。
また、パロディ画像や同人画も非常に多く、どれが正規版なのかよく分からない状況になっています。

「選股宝」という株価情報アプリのパロディ広告。中国株の銘柄に関するアイコンが散りばめられており、かえるは部屋で株式相場を研究中。


非公式と思われるキャラクターグッズもあっという間に生産され、ネット上で大量に販売されています。



「旅かえる」が話題になる前は「恋と制作人」というスマホゲームがSNSの話題をさらっていました。
「恋と制作人」(原タイトル:恋与制作人/意味:恋とプロデューサー)は中国の本格的乙女ゲームとして派手に宣伝されています。2017年12月20日リリース。


中国では女性向けのいわゆる「乙女ゲーム」はまだ発展途上にあり、「恋と制作人」は初の大型中国製乙女ゲームといえます。
4人のハイスペック・イケメンキャラとヒロインが恋愛を展開させていくという恋愛シミュレーションゲームです。
音声は中国語版と日本語版があり、日中ともに有名声優を起用しています。
男性キャラクターはイケメン・ハイスペックで、いずれも風や時間を操るなどの超能力を持っています。絵柄は違いますが、世界観的にはCLAMPに近いと思います。
周棋洛(22歳、アイドルスター CV:辺江/柿原徹也)
白起(24歳、特殊警察 CV:阿傑/小野友樹)
李澤言(29歳、企業家 CV:呉磊/杉田智和)
許墨(26歳、科学者 CV:夏磊/平川大輔)
  

4人のメインキャラの一人、李澤言の誕生日は1月13日という設定です。

2018年1月13日李澤言の誕生日に合わせて、高層ビルの外装LED宣伝で、
「李澤言、誕生日おめでとう」「驚かないで」「あなたのブラックカードでやったことよ」というメッセージが流れました。


ビルの外装LED広告は最低でも12万元(約200万円)かかりますが、これはファンがお金を集めて誕生祝いメッセージ(広告)を流したと言われています。この仕掛けはSNS上でものすごく話題になり、公式も宣伝とキャラクターの誕生日ボーナスを行ったため、1月13日前後にDL数が激増しました。

ところが、「旅かえる」の出現により「恋と制作人」の存在感が薄れてしまっています。
この二つのゲームは主に女性ユーザーをターゲットとしますが、多くの時間を割き課金をして「男」を育てるより、無料でかえるを育てていた方が性に合っている・・・と考えるユーザーが多いのかもしれません。
なお、中国の某リサーチメディアの分析記事によると、「旅かえる」の開発コストは500万~800万円ですが「恋と制作人」は8億円以上と推定されています。
コメント (8)
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『芳華』『空海』中国版『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を凌駕するダークホース・ハンギョン主演映画『前任3』

2018年01月11日 | エンタメの日記
年末年始は新作映画が目白押しです。クリスマスや元旦連休のあるこの時期は、中国でも映画館は活況です。
中国ではショッピングモール付帯型のシネコンがすごい勢いで増えています。
スクリーン総数は北米を抜いて世界トップになり、2017年10月時点で中国全土のスクリーン数は4.9万を超えています。そして、郊外型モールの建設ラッシュにより、いまも毎日スクリーンが増え続けています。

映画チケットアプリを開くとGPSで近くの映画館が表示されますが、市街地を歩いていると、だいたい1km圏内にある映画館が3つくらい表示されます。それくらい映画館が多いです。
映画アプリではチケット購入機能や作品情報のほかに、興業収入がリアルタイムに表示されます
人々の映画興業収入に対する関心は高く、具体的な数字を頻繁に話題にします。

2017年12月に公開された馮小剛(フォン・シャオガン)監督の新作『芳華』は、文革終焉期の軍属の舞踊団の若者たちの人生を描いた作品で、非常に話題になっています。

『芳華』(Youth)2017年12月15日中国公開
監督:馮小剛。中国を代表する映画監督でヒットメーカー。
主演:黄軒、苗苗、鍾楚曦


1970年代後半、文革終焉期に軍属の舞踊団の団員として生きた若者たちを描いた作品です。
文革の終焉、毛沢東の死、中越戦争、改革開放といった時代の波にのまれながら、それぞれの人生を生きた男女の姿を、鮮烈な映像とカメラワークで淡々と語った映画です。
時間的には短いながらも中越戦争のシーンは強烈で、戦場での6分間のロングショットを撮るために7000万元(約10億円)が投じられたと言われています。
中国の映画やドラマ、小説などの作品には、政府を直接批判する表現はほぼみられません。
しかし、『芳華』のように、国や同胞のために大切なものを捧げた人間が、まったく報われなかったという現実を描いた作品はときどきあります。
一種の社会的なプロテストで、馮小剛監督が支持される理由でもあります。

興業収入ですが、1月8日時点で13.6億元。日本円換算で約217億円。中国では「10億元超え」がヒットの目安なので、『芳華』は興業的に成功といえます。
アプリユーザー評価:8.8点(10点満点)

グラフを見ると、公開直後の週末に最初の山ができ、翌週末にも前週に匹敵するほどの収入を上げています。口コミにより観客が動員されたと考えられます。
ただしピークの山が形成されるのが12月31日の週末までとなっています。

チェン・カイコー監督の日中合作映画『妖猫伝』(日本タイトル『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』)が中国で先に公開されました。

『妖猫伝』2017年12月22日中国公開
(日本タイトル『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』2018年2月24日 日本公開)
原作:夢枕獏『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』
監督:チェン・カイコー
主演:染谷将太、黄軒、張雨綺、阿部寛

唐の時代の繁栄と奔放さを、魔術的な美しさで描いた点が好評を博しています。
白楽天が李白の残した詩を通じて楊貴妃を敬慕し「長恨歌」を創作したというエピソードが主線になっています。
空海と白楽天がバディとして楊貴妃の死の謎を追っていくのですが、チェン・カイコー監督は唐代の文化・芸術・創作の美しさに対する賛美を表現したかったのではと思います。

宣伝では「総制作費150億円」とのふれこみですが、どういう計算で150億円(約10億元)なのかは疑問が持たれています。

中国興業成績は1月8日時点で5.17億元(約82億円)。制作費が本当に150億円だとすると、もう少し伸びてほしいところです。

12月22日の公開初日には高い数値を出しており、話題性・期待度が高かったことが伺えます。しかし公開の翌週は3連休ながら、落ち込みの幅がやや大きいです。ユーザー評価は7.9点。

12月29日には東野圭吾のヒット小説『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の中国版映画が公開されました。

『解憂雑貨店』(『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の中国版)2017年12月29日公開
原作:東野圭吾
監督:韓杰
主演:王俊凱(TFBOYS)、迪麗熱巴、董子健、ジャッキー・チェン

2018年1月8日時点の興業収入は2.16億元です(約35億円)。
俳優の演技もよく、破綻なくまとまっているのですが、思ったより興業成績が伸びなかったようです。ユーザー評価:8.2。


公開日12月29日(金)とその後に続く3連休の動員が期待されましたが、3連休の最終日である1月1日から下降がみられます。

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』中国版と同じ日に公開された中国映画『前任3』が思いのほか好成績を記録しています。

『前任3:再見前任』(元カノ3:さよなら元カノ)2017年12月29日公開
監督:田羽生
脚本:田羽生ほか3名
主演:ハンギョン(韓庚)、鄭愷、于文文

『前任3』は公開から2週間足らずで13.26億元(約210億円)を記録しています。最終的には20億元までいくのではとの予想もあります。
俳優はともかく女優は有名な人は一人も起用されていません。現代ものでセットにお金がかかっていないことは一目で分かります。
制作費は3000万元といわれており、中国では「低予算映画」の部類に入ります。
まさにダークホースです。
前半は割とベタなコメディなのですが、後半の脚本が素晴らしく、脚本の力で勝利した珍しいケースです。
監督の田羽生は1983年生まれで脚本家出身です。
映画「前任」シリーズの第3作で最終作です。
ストーリーはシンプルで誰にでもありえる現実味のあるものです。
主役の男性2人(ハンギョンと鄭愷)は会社を興し、事業は成功したけれど恋人とはうまくいかなくなり、ちょっとした喧嘩をきっかけに二人とも彼女と別れてしまいます。
前半は恋人の干渉から開放され、派手に遊びまわる日々を謳歌する男2人の生活がコメディタッチで描かれます。
後半は一転し、ハンギョンと彼女の心理が巧みな脚本によって深く描かれます。隙間を埋めるように入り込んできた新しい人物の位置付けが独特です。
ハンギョンは中国人男性ならではの素朴さと狡さを両方表現できるよい俳優だと思います。


グラフを見ると、公開直後の週末と比べて翌週の週末に大きく上昇しています。また、1月2日から1月5日は中国では普通の平日ですが、平日でも高い動員数を示しています。これも口コミによるものと思われます。ユーザー評価は9.0をつけています。

中国では新作映画は基本的に金曜日に公開されます。
次々と新しい作品が公開されるので、公開直後の週末が勝負です。そこで客足を集め、好評を得られると口コミで動員が伸びます。
しかし、動員が続くのはよくて4週間です。なぜかというと、新しい作品がびっしりとスケジュールされているので、人々の目はより新しいものに奪われてしまうからです。淘汰のスピードは非常に速いです。
コメント (4)
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