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王一博(ワンイーボー)と中国ポケモンカード~「二次元」は上海商業施設の活性剤

2024年03月28日 | エンタメの日記
上海の中山公園という地下鉄駅の前に「龍之夢」(龙之梦)という大きなショッピングモールがあります。このショッピングモールに最近ポケモン公式カードショップがオープンし、モールの外壁に巨大な広告ポスターがかけられています。広告のイメージキャラクターは中国人気俳優・王一博(ワンイーボー)です。中国では王一博(ワンイーボー)の巨大広告自体は決して珍しいものではないのですが、ポケモン×王一博という組み合わせはかなりのインパクトがあります。

ポケモンカプセルボールを手にした王一博(ワンイーボー)。「王一博と一緒にポケモントレーナーになろう!」と書いてあります。


ショッピングモール「龍之夢」3階にオープンした「ポケモン公式カード館」。
中国版ポケモンカード、グッズ売り場と対面ゲームスペースがあります。2023年12月にオープン。


店内にはカプセルを模したようなスペースがあり、王一博がポケモンカードでバトルする広告映像が流れています。


王一博(ワンイーボー)は2019年に放送されたウェブドラマ「陳情令」で世界的に人気を集めている中国若手俳優です。
ボーイズグループのダンス担当として韓国デビューした経歴を持つダンスの実力者でもあります。王一博ほどのメジャーな中国芸能人が日系企業の広告に出るのは珍しいことです。もっともポケモンは完全にグローバル化されているので「日系企業」という扱いでもないのかもしれません。

3月21日から中国大手動画サイトiQiyi(愛奇芸)で王一博(ワンイーボー)の主演ドラマ『追風者』の配信がスタートしました。『追風者』は1930年代の上海を舞台とするスパイものです。中華民国期の諜報活動をテーマにしたドラマは数多くありますが、『追風者』は1930年代の中国金融界(中央銀行)が舞台です。王一博は金融の才能を発揮して国のために戦うという新種のヒーローを演じています。


ここ数年、上海のショッピングモールではアニメ・ゲーム関係のショップが次々とオープンしています。
かつて中国ではアニメ・コミック・ゲームの頭文字を取って「ACG」という言葉がよく使われましたが、いまでは「ACG」とい言い方はほとんどされなくなっており、「二次元」という言葉に置き換わっています。中国語における「二次元」はアニメ・ゲーム・漫画の中でも二次元キャラクターを中心として構成されるものを指し、これにまつわるイベントやグッズなど周辺産業も包まれます。

上海には昔からグッズ(主にフィギュア)の輸入品を扱う店は多かったですが、ここ数年は日本のメーカーや制作会社の正規出店が増えています。現在、上海のショッピングモールでは毎日のようにアニメ関係のコラボイベントやポップアップストアが展開されています。

■コラボ
「呪術廻戦」とniko and...のコラボ。期間:2023年12月2日~2024年1月14日
「呪術廻戦」TVアニメ第2期は中国の三大プラットフォーム(Youku、iQIYI、テンセント)+bilibili動画というフル体制で配信中で、いま中国で最も知られている日本アニメのひとつです。




niko and...はアニメコンテンツとのコラボを何度も行っており、「エヴァンゲリオン × niko and...」コラボではかなりの混乱が起きたので、「呪術廻戦」コラボは予約入場制を取り入れるなど混雑対策が取られていました。そのため連日ファンが殺到というかんじではありませんでしたが、常に多くのコスプレーヤーが訪れていました。

「名探偵コナン」とデイリー・クイーン(アイスクリーム)のコラボ。2023年5月~。


「名探偵コナン」とパン&カフェのチェーン店「奈雪の茶」(NAIXUE)のドリンクコラボ。2023年11月15日~


「名探偵コナン」とテイクアウトドリンクのチェーンLELECHA(楽楽茶)のドリンクコラボ。2023年11月15日~。


「名探偵コナン」は中国で非常に人気のある作品です。
コナン劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影』が2023年12月16日に中国で公開されたので、劇場版公開に合わせて飲食系のコラボが企画されたのだとは思いますが、同じようなドリンクチェーン2社が同じ時期に同じようなコラボを行うという常識的には考えられないことをやっていました。相乗効果あるいは炎上効果を狙ったものだったのでしょうか。

■ポップアップストア
アニメのポップアップストアを出すモールはいくつかありますが、企画力・集客力ともに圧倒的に力があるショッピングモールが「上海静安大悦城」です。「上海静安大悦城」は上海の中心地・人民広場駅から1つ先の曲阜路駅と直結する大型モールです。常に何かしらのコンテンツのポップアップストアや展示イベントが行われており、「二次元城」と呼ばれています。LOFT、サンリオショップ、アニメイトカフェなど多くの日系ショップが出店しています。

「SPY×FAMILY」上海静安大悦城ポップアップストア。開催期間:2023年8月4日~9月3日


時期的に中秋節前だったこともあり、SPY×FAMILYコラボの月餅が販売(予約受付)されていました。


「エヴァンゲリオン×niko and...」中国コラボでも月餅を作っていました。かなり凝ったデザインでした。


■アニメ・漫画関係の公式ショップ
JUMPショップ上海店 美羅城1階 2021年12月開店。


JUMPショップ上海店は開店から2年以上が経っていますが、いまも常に賑わっています。賑わいが続いているのは「缶バッジ」などランダムグッズが定期的にアップデートされているためかと思います。ランダム缶バッジは価格が比較的手ごろで種類が多く、本気でコンプリートしたい人も遊びで買う人もいます。缶バッジの人気コンテンツはジャンプ系では「ハイキュー!!」です。


■“上海の秋葉原”・百聯ZX(百聯ZX創趣場)
百聯ZXは南京ロード歩行者天国にある商業ビルです(住所:南京東路340号)。2023年1月に現在のようなアニメビルにリニューアルされ、上海の新名所として人気を集めています。
1階に入居しているバンダイTAMASHII NATIONSをはじめ、アニメイト、ブシロードなど多くの日系ショップがあります。中古グッズショップもありまさに「ミニ秋葉原」です。


屋外の巨大スクリーンは公式の広告のほか、有志がいわゆる同人絵を流すことが可能で人気のあるキャラクターの誕生日には多くの生誕イラストが掲出されます。この街頭スクリーンを見るために集まる人もおりオタク濃度の高い空間を作り出しており「上海の秋葉原」と呼ばれています。


1階にはイベントスペースがあり、期間限定展示やランダムダンスのイベントがよく行われています。
飛び入り参加型のランダムダンスイベント。KPOPファンの間で流行っているランダムダンスのアニメオタク版です。


アニメグッズにはフィギュアなどのコレクター系グッズと、缶バッジやアクリルスタンドなどの収集系グッズがあります。
収集系グッズに関していうと、中国でいま流行っている日系IP(コンテンツ)は、ハイキュー!!、ブルーロック、あんさんぶるスターズ!、文豪ストレイドッグスなどです。
日系コンテンツの中国生産グッズを主に扱う店も出てきています。


ブルールックの缶バッジ。中古品なのでキャラにより値段が違います。安定してレートが高いのは凪。千切、蜂楽も高い。


ハイキュー!!缶バッジ。研磨、月島、及川あたりのレートが高いです。


百聯ZXの最上階にあるVRゲームのスペース。中国はそれこそ20年くらい前からVR、ARゲームに力を入れており、VRゲームのハードメーカーも少なくありません。しかし、VRゲームのユーザーがすごく増えているとはいえません。VRコーナーは“上海の秋葉原”・百聯ZXビルの中で最も閑散としています。カードゲームのコーナーのほうがよほど賑わっています。


■中国産コンテンツ
日本アニメの情報はほぼリアルタイムで中国にも入ってきます。ただし、ここ数年は、中国で正規配信される日本アニメの作品数が減少しており、メジャーな作品でも中国配信されていないこともあります。たとえば「推しの子」「チェンソーマン」「機動戦士ガンダム 水星の魔女」などは中国で正規配信されていません。また、「進撃の巨人」「PSYCHO-PASS サイコパス」「トーキョーグール」などはかつては配信されていましたが、ある時期から配信禁止になっており、後続シリーズも配信されていません。

正規板として出版が認められた作品は一般書店の店頭に並び、受け手の幅が広がります。中国では「スキップとローファー」、「ホリミヤ」、「ルックバック」(藤本タツキ)などが高く評価されており正規版出版物が多くの書店に並んでいます。


2023年は「進撃の巨人」10周年・完結記念の年でした。中国では「進撃の巨人」は配信禁止となっており、タイトル名を出すことすら難しいです。にもかかわらず、2023年11月には上海静安大悦城で「進撃の巨人」ポップアップストアが開催され多くのファンが訪れました。告知・宣伝ポスターすらなく闇イベントのように行われましたが、行列ができる盛況でした。期間:2023年11月11日~12月17日(延長があったかもしれません)「進撃の巨人」の名前は出さずに「リーブス商会展」として行われていました。


単体でみると中国にもかなりの数の有力「二次元」コンテンツがあります。
BL原作の古装ファンタジー「魔道祖師」「天官賜福」、国際的な制作陣による中国産アニメ「時光代理人」などはグッズの種類も多く、他業種とのコラボ展開もさかんです。
スマホゲーム「原神」「アークナイツ」「崩壊スターレイル」などは世界的にヒットしており、中国にも膨大な数のプレイヤーがいます。
また、中国乙女ゲーム「恋とプロデューサー」「光と夜の恋」「時空の絵旅人」「恋と深空」「未定事件簿」などは華麗なビジュアルと壮大なファンタジックなストーリーが特徴的で独自のジャンルを築いています。

「アークナイツ」(明日方舟)を制作する鷹角網絡(HYPERGRYPH)は上海のゲーム会社。


乙女ゲーム「光と夜の恋」のポップアップストア。上海静安大悦城 2023年9月28日~12月27日


日本アニメの方が産業として成熟しているので、いまは日本コンテンツの方が強いですが、中国もアニメに力を入れているので、中国コンテンツと日本コンテンツが半々くらいのバランスになると社会的に健全な市場とみなされ、持続的に成長できるのではと思います。

3月29日から上海静安大悦城に「ちいかわ × MINISO」の中国初ポップアップストアが登場します。中国にも本格的にちいかわブームがやって来そうです。
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2 コメント

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ようやく春が ()
2024-03-28 10:18:43
 阿姐さんこんにちは。日本は真冬のような寒さが続いていましたが、ようやく春らしくなってきました。今回は王一博に反応してしまいました(笑)ポケモン凄いですね。
 日本でもテーマパークやイマーシブシアターでマンガやアニメとのコラボがとても多いです。入ってみたいけど、最近のアニメは知らないので躊躇してしまいます。土台がないとつまらないですね。
 ユニバのコナンに行ったことがありますが、コラボレストラン(というかショーをやるレストラン)はキャパが少ないので、どうしてもチケットが取れませんでした。進撃の巨人もありましたが、内容に馴染みがないので入ったことないです。
 お台場にイマーシブフォート東京はシャーロックという定番を出してきたので、行ってみたいです。その一方で東京リベンジャーズもあって、こっちはパスかなあと。推しの子や第五人格もあります。
 イマーシブや脱出ゲームが流行りつつありますが、若者向きのアニメやゲームを勉強しないとならないから大変です。シャーロックやアリスという普遍的なテーマも使われますが。いろいろ新しいものが出てくるし、それも時代の流れだと思っています。
 中国でも日本文化頑張ってるなと思うと嬉しいです。ご紹介ありがとうございました。
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玲さん (上海阿姐)
2024-03-30 01:58:32
こんにちは!上海は急に暖かくなりました。中国にも桜がたくさんあり、桜が咲き始めています。
ポケモン×ワンイーボー、意外性がありますね!ポケモン好きなのでしょうか?ポケモンを嫌いという人はいないと思いますが・・・。
中国ではいわゆるeスポーツとしてプレイされる「リーグ・オブ・レジェンド」(LoL)などの系統のゲームがが人気があり、俳優や芸能人の中にもLoLファンを公言している人が結構います。
イマーシブフォート東京、第五人格のアトラクションもあるのですね!第五人格は中国のスマホゲームですが、かなり難しいゲームだと思います。でも日本で2.5次元舞台にもなっていましたね。東京リベンジャーズとかは漫画かアニメを知らないとちょっとハードルが高いですね。
最近のアニメは本当にあらゆるものとコラボをしていますね。ブルーロックとかそのたびにコラボグッズを出すので、1週間のうちに3日か4日くらいは新しいグッズが発売されているのではと思うほどです。
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