上海阿姐のgooブログ

FC2ブログ「全民娯楽時代の到来~上海からアジア娯楽日記」の続きのブログです。

上海2013年秋の同人イベントCOMICUP13~江ノ島盾子と流子とRWBY(ルビー)

2013年11月27日 | ACG
先週の週末「COMICUP」という上海で最もメジャーなアニメ同人イベントに行ってきました。「COMICUP」は今回で13回目、1年に約2回のペースで開催されます。今回は11月23日と24日に上海市内の展示場「光大会展中心」(光大カンファレンスセンター)で開催されました。日本のコミケに派生するイベントといえますが、同人誌を売り買いする場所というよりは、コスプレパーティです。コスプレをする、またはコスプレの写真を撮ることを目的に参加する人が多いのですが、サイン会やライブなどのイベント、アニメショップの出店、アニメ・ゲーム企業のプロモーションなどもあり、総合的なアニメ系のお祭りとなっています。同人サークルの出展もありますが、同人誌はストーリー漫画よりもイラスト集が多いです。
いままでこの手のイベントに何回も行ったことがありますが、今回が一番運営が良かったと思います。レイアウトが非常によかった。(11月23日は行っていません、24日のみ参加)
展示場施設の2階と3階を使用していますが、今回は2階に広めのコスプレエリアを設けてくれたので人の流れも良かったし見やすかったです。中国のイベントにしては出展サークルも多かったので、エリア別にテーマ性が出ているのも良かったです。(ちなみに2日目である11月24日は「女性向けの日」でした)
イベント入場券は約40元(約650円)で、パンフレットの購入は不要です。コスプレエリアは隔離されていないので入場チケットのみでコスプレイヤーの写真を撮ることができます。
■2階エリアは柵でスペースが区切られており、大型コスプレもゆっくり写真が撮れる。




■入場者は多いけれど、2階と3階をフル使用していたので並ばずに入場できます。一般入場者のチケットが前売制で「COMICUP」の場合、前売りで完売します。(当日会場転売もあるので、当日入場することも可能だと思います)


■ルールはほとんどなし。フリーダム・・でも会場がゴミだらけでものすごく汚い。


上海のコスプレのレベルは非常に上がっています。小道具やら剣やら仮面やらに相当お金をかけていると思います。ウィッグの色や質も良くなっています。見るからにお金をかけていそうなコスプレばかりになってしまいました。本格的になりすぎて、ただ単純にキャラが好きというだけでは手を出せなくなっていると思います。
そして新しいキャラに手をつけるのが早い!!
前クールである2013年夏にヒットしたキャラクターのコスが会場に溢れており、現在放送中の新作アニメのキャラクターも頻繁に見かけます。

■現在放送中のアニメ「キルラキル」のコスプレ。早い!!!まだコスプレショップで服や道具が市販されてないのでは・・・全部自分で作ったかまたはオーダーメイドで作ったのでしょうか。纏流子と犬牟田宝火。ものすごくよくできていました。


今回のイベントはきっと江ノ島盾子(ゲーム「ダンガンロンパ」のキャラクター)がいっぱいいるだろうな・・と思ったら、案の定会場の中は江ノ島盾子だらけでした。特徴的でしかも着用しやすいデザイン、タオバオ(※中国最大のネットモール)で頭から靴までフル装備が販売されています。今回はダンガンロンパキャラのコスプレがものすごく多かったです。
■左:江ノ島盾子、右:霧切響子。
  

セレスさん。左は女の子、右は女装です。180㎝くらいある男の人でした。女装コスも増える一方です。
  

この巨大な鎌を持ったキャラは誰だか分かりますでしょうか?



今年の7月に公開されたアメリカの3DCGアニメ「RWBY」(ルビー)のキャラクター、ルビーとワイスです。ルビーの武器である鎌(クレセントローズ)がでかい!どうやって持ち込んだのか・・・折りたためるのでしょうか・・・?(RWBYについてはピクシブ百科の解説が非常に詳しいです:http://dic.pixiv.net/a/RWBY
RWBYはアメリカのアニメスタジオが制作した作品でYoutube版が16話まで公開されていますが、1話あたりが6分とか11分だったりもします。つまり、作り方やスタイルは日本の商業アニメの規格とまったく異なります。しかしキャラクター作りなどは日本アニメの影響が見られ、主要女性キャラのデザインや音楽などは非常にセンスが良く規格にとらわれないスタイルが逆にオリジナル性を引き立てます。「RWBY」のコスプレをしている人は他にも何人かいました。大体がルビーとワイス(Weiss )です。本作の音声は英語ですが、中国ではbilibili動画などで中国人有志による中国語アフレコ版も作られています。

11月24日(日)は「女性向けの日」だったからでしょうか、女性向けのコスが多かったような・・・。
■左:「BROTHER CONFLICT」。主人公と朝日奈昴(大学生でバスケ部という設定)。主人公、手にペットのリスを持っています。芸が細かい。
■右:「Free!」凛、鮫柄学園ジャージ姿。多分女の子がコスプレしてます。
  

■「JOJOの奇妙な冒険」のコスプレグループ。左「第5部 黄金の風」、右「第7部 スティール・ボール・ラン」のキャラ。この人たち上手いです。
  

■進撃の巨人。女形の巨人と巨人。ユミル+クリスタ。
  

コスプレはビジュアル+役の解釈+演技力(ポージング)の三つが必要です。「進撃の巨人」のコスプレ服(調査兵団)は、そっくりなものがフルセットでネットで比較的安く販売されているので、ビジュアルを再現することは難しくないのですが、ポーズが難しいです。

■左:「D.Gray-man」。ラビとアレン。このハンマーもどうやって運びこんだのか・・・。
■右:西尾維新の「化物語」など物語シリーズ。忍野メメ、阿良々木くん、成人版の忍。
  

他にもたくさんの秀逸なコスプレがいました。
そして、知らないキャラのコスプレがものすごく沢山いました。
中国アニメ、中国小説のキャラクターのコスプレもだんだん増えてきています。
特にネット小説の「全職高手」、ゲームの「古剣奇譚」などは今ちょっとしたブームです。
イベントの参加年齢層は高校生から20代が主流ですが、「RWBY」が人気を集めていることを見るに、若い世代が海外の新しいものを吸収するスピードは非常に速いと感じます。
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MTV EMA 2013ワールドワイド・アクト賞受賞のクリス・リー(李宇春)とは~複製不可能な成功

2013年11月20日 | エンタメの日記
11月10日、ヨーロッパ最大級の音楽イベント「MTV EMA 2013」の授賞式がオランダアムステルダムで行われました。MTV EMA 2013には「ワールドワイド・アクト賞」(World Wide Act Award)という項目があり、この賞は「世界中の国・地域から、人気No.1アーティストを競うもの」とされています。日本からはEXILE、ももクロなどが候補に入りましたが、ジャスティン・ビーバー(北米)、EXO(韓国)など10組のファイナリストの中から投票を経て最終的にこの賞を獲得したのは、中国/香港/台湾エリア代表のChriss Lee(クリス・リー)です。
MTV EMA 2013 ファイナリスト:http://jp.mtvema.com/news/worldwide-act-nominees-are-in/qbk72n
Chriss Leeは中国大陸の女性アーティストで、中国語名は李宇春といいます。
21世紀の大陸芸能を語る上で、絶対に欠かすことのできない人物です。
■MTV EMA 2013でワールドワイド・アクト賞を受賞したクリス・リー(Chriss Lee)


李宇春は2005年の夏、「超級女声」(Super Girls)という女性ボーカルオーディション番組に出場し優勝を飾ったことから瞬く間に有名になりました。それ以降、一貫して中国芸能界の第一線で活躍しているスターです。
身長175cmの長身に短髪、スレンダーな体型をトレードマークとし、シャープなダンスが得意で華やかなステージでファンを魅力しています。李宇春のファンのほとんどは女性です。歌手活動だけではなく、作詞作曲、MV監督、ステージ演出、女優、ファッションブランドのキャラクターなど、幅広く活動しており、フォーブス誌のランキングで上位にランクインし、TIME誌の表紙を飾るなど、海外メディアからも「注目の中国人女性スター」としてよく取り上げられています。

李宇春をスターにしたのは2005年の夏に湖南衛視が放送した女性ボーカルオーディション番組「超級女声」(Super Girl)です。中国でオーディション番組が流行し始めたのは2004年頃からで、2004年の湖南衛視「超級女声」(第1季)、上海SMG「我型我秀」(MyShow)(第1季)が先駆けですが、全国的に爆発的なブームとなったのは、2005年の「超級女声」(第2季)です。 
当時のオーディション番組は約4ヶ月に渡って勝ち抜き戦形式で進行し、一般視聴者が携帯電話のショートメッセージを送信するという投票で進退が決まりました。最後の一席を争って一対一の決戦になる場面も多く、携帯ショートメッセージによる投票の刺激性は非常に強かったです。
生放送のテレビ画面の投票数にいま自分が送った一票が反映される、この投票数を見て応援している選手が笑ったり不安に緊張する姿がリアルタイムに目に入ってくる・・・。この仕組みは非常に強い刺激を生み出し、多くの少年少女が夢中になりました。アメリカメディアからは、「これまで“投票”に無縁だった中国にとって、革命的な出来事」などと評され、投票を勝ち抜いた李宇春はTIME誌に表紙付きで特集されたほどです。

当時はオーディション番組が行われる夏になると、ファンの女の子たちが応援組織を作り、繁華街や駅前などで票集めの活動を行いました。1つの携帯番号から投票できる数に制限があるため、より多くの人の支持が必要だったのです。まさに少年少女たちによる、選挙活動が形成されました。ファンによる応援活動が最もヒートアップしたのが2005年の「超級女声」で、そのとき最も多くの票を集め優勝したのが李宇春です。李宇春のファングループは「玉米」(ユーミー)と呼ばれますが、李宇春の勝利はファン組織「玉米」の勝利ともいえます。MTV EMA 2013のワールドワイド・アクト賞獲得もネット投票で勝ち上がった結果ですが、ファン組織「玉米」は投票活動のプロのような集団なので、勝つべくして勝ったともいえます。

2006年、2007年は様々な形態のオーディション番組が制作されましたが、テレビ生中継+携帯投票によるリアルタイムな展開は刺激が強く、問題も出てきました。ショートメッセージ投票は無料ではなく、1票につき通信費抜きで1元(約15円。※当時は1元でエアコン無しのバスに乗れた)という、積もり積もればバカにならない金額でした。活動がエスカレートすると、ファンの少女たちが制限数まで投票にお金を費やし、繁華街で通行人に投票を請うような行動を起こすこともありました。2008年からは政府によって一般視聴者からの携帯投票システムが禁止され、番組放送時間帯も制限されました。(但し2008年の夏は北京オリンピックの年であったため、メジャー局では大規模なオーディション番組が制作されなかった

2013年現在までたくさんのオーディション番組が制作されましたが、ふりかえってみると、2005年「超級女声」のときの興奮と感動が再びもたらされることはありませんでした。あれから8年が経ったいま、李宇春の成功は複製不可能な成功と形容できます。

オーディション番組の出場者の中には李宇春より歌の上手い選手、李宇春より端正な容姿を持つ選手はたくさんいました。しかし、李宇春より熱狂的な人気を長く獲得した人物はいません。他のオーディション出身のタレントと、李宇春のどこが違ったのか?何が彼女独自の魅力であったのでしょうか。
魅力の一つはその声質です。長身でボーイッシュな容姿で、しかも声変わりする前の少年のような声を持っています。歌唱力という点では、プロの歌手によく見られる技巧的な歌い方をしません。音域が広いわけでも豊かな声量があるわけでもなく、あくまでナチュラルな歌であることが、彼女の特徴になっています。

しかし、いくら彼女が長身でボーイッシュな魅力を持っているといっても、なぜここまで人気があるのか分からない人も多いと思います。昔からアンチファンも少なくありません。まず、顔の造型がすごく美形かというと、そういうわけでもないですし、他を圧倒する歌唱力を持っているわけでもありません。ボーイッシュすぎる容姿も、ある意味イレギュラーで、コンプレックスになってもおかしくないです。しかし、欠点にとらわれるのではなく、どんなときも自分の個性とともに自然体で生きる、そのプラス思考のマインドにファンは強く引き付けられたのです。
革命的な成功と言われた2005年夏から約8年間、現在まで人気を保ち、常に新しいチャレンジを続けてくることができたのは、所属事務所である天娯メディア(湖南衛視傘下の芸能事務所)の強いバックアップがあったことと、本人のストイックな努力があったからに違いありません。

10月26日(土)に上海で李宇春のコンサート「Why ME」があり、はじめて単独コンサートを見ることができました。中国で活動する芸能人は、中国人(大陸出身)、香港人、台湾人、その他(シンガポール、マレーシア、韓国など)がおり、音楽面では伝統的に台湾・香港出身のアーティストがリードしており、大陸は遅れを取っていました。簡単にいうと、大陸のものは「ダサい」と思われていました。
しかし、コンサートを実際に見てみると、舞台演出、映像、音響、バックダンサー、バックバンド、衣装、楽曲、振り付けなど、エンタメショーとして、台湾・香港、日本・韓国アーティストのコンサートと比べても全く遜色のないレベルです。
逆に、李宇春は「大陸歌手」という分野の筆頭として取り上げられることが多いですが、コンサートからは「大陸のテイスト」が感じられませんでした。現在の中国芸能界の舞台裏では、台湾、香港、韓国、日本などのプロフェッショナル人材が多数関わっているので、垣根がなくなっているともいえます。

歌や公演の演出はメッセージ性が多分に含まれており、夢、努力、自分の道を歩むこと、大切な人への感謝の気持ち・・・といったシンプルなプラスメッセージが伝わってきます。彼女の芸能活動そのものが「李宇春という自分であり続ける」ことの実践ともいえます。中性的な魅力を持つ歌とダンスが好きなボーイッシュな女の子が、様々な芸能活動を通じてキャリアを重ねて成長していく姿をファンは寸分離れず追いかけ、その成長のドラマと感動を分かち合うことができる・・・それが魅力なのではないでしょうか。

■2013年10月26日 上海メルセデスベンツアリーナ 「WhyMe」上海公演。イメージカラーの黄色のペンライトに染まる会場。




コンサートは満員で、アリーナからスタンド後方まで熱気に包まれていました。
様々な分野で経験と実績を積み上げていく李宇春は、歌手として、プロデューサーとして、いま中国で最も輝いている女性です。

■最新アルバム「再不瘋狂我們就老了」
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2013年上海ブックフェア~中国の流行書籍が分かる市民にやさしいイベント

2013年11月09日 | エンタメの日記
上海では毎年夏の一番暑い時期にブックフェアが行われます。今年も例年どおり8月14日から20日まで上海展覧センターにて上海ブックフェア(上海書展)が開催されました。今年で第10回目の開催となります。上海ブックフェアは一般公開型の書籍即売会で、作家を招いたサイン会、座談会などたくさんのイベントが企画されます。
統計によると、今年の出展出版社数500社以上、出品書籍数15万種以上、イベント数約600、ゲスト数900以上という規模に成長しました。一般入場はチケット制で、チケットは安価に設定されており、昼間10元(160円)、夜5元(80円)という、今の上海の物価からするとタダみたいな値段です。しかも開催時間は9時から21時までで、会場の交通の便も良い場所にあるので、平日でも仕事帰りに立ち寄ることができます。毎日通うことも可能で、市民にやさしいイベントです。

上海ブックフェア2013 オフィシャルサイト:http://book.online.sh.cn/special/node_90094.htm
関連サイト:http://sh.sina.com.cn/news/z/2013shsz/index.shtml (新浪特設サイト)

上海ブックフェアは出版を管轄する政府機関である「上海市新聞出版局」が主催組織とされています。ここに上海世紀出版集団など地元の有力出版社が大規模な出展ブースを設けて外周を支え、更に全国各地の大小出版社が加わるという状況です。

■会場の上海展覧センター(延安中路1000号)
  

上海展覧センターの全エリアを使用しています。場所不足のようで、廊下やエントランスまで展示スペースに利用されており、レトロな作りの建物ですが内部はかなり雑然とした雰囲気です。



中国では出版物に対して政府機関による審査(いわゆる検閲)があります。ただし、審査が厳しい分野と厳しくない分野があります。最も厳しい分野は国内政治に関する言論です。特に中国国内の現役政治家に対する言論は厳しく管理されています。しかし、審査のハードルが低い分野も存在します。政治・宗教と関係がなければないほど審査のハードルは下がり、規制を受けない分野を狙って消費者の嗜好を開拓する形で、中国の出版業界は発展を続けています。
出版物に対する消費者の嗜好という面からみると日本と中国にはかなり共通する部分があると思います。毎年いくつかの出版界のメガヒット作品が生まれます。最近は「正能量」(プラスエネルギー)という一種の自己啓発本が大ヒットしました。メガヒット本を購入する人の多くは、本当にその本が読みたいからというより、どちらかというと、流行に対する関心あるいは人付き合いの際の話の種にするために本を読んでいます。メガヒットとなる作品は、歴史本(特に歴史の新解釈)、健康本、映画ドラマ化作品の原作、自己啓発本、有名企業家の自伝、成功ノウハウ本など、流行本のジャンルの傾向は日本とかなり近いと感じます。

日本の小説は中国で非常に人気があります。2012年9月以降尖閣諸島問題の影響を受け、日本人作家の作品を大々的にプロモーションする動きは控えられていますが、読者層は確実に存在するので日本小説の翻訳出版は続いています。
ここ数年の間で特に人気があるのは東野圭吾です。東野圭吾の大量の作品が中国語に翻訳されています。上海最大の書店「上海書城」では店内売上げランキングが公表されますが、一時期は外国小説部門ベスト10の中で東野圭吾の作品が6作くらいを占めていることがありました。東野圭吾と並んで根強い人気があるのが村上春樹です。
過去の上海ブックフェアには多くの日本人作家が来訪しています。2012年は石田衣良、阿刀田高、2011年には島田雅彦などが座談会やサイン会を開いています。2013年は日本人作家の出席は篠原令氏だけだったようです。

■日本小説
東野圭吾、青山七重の看板。東野圭吾の作品「白銀ジャック」の中国語版出版(中国語タイトル:雪国之劫)。
  

「女いっぴき猫ふたり」(伊藤理佐)「ホームレス中学生」(田村裕)


「時をかける少女」(筒井康隆)「秒速5センチメートル」(新海誠)


「Another」(綾辻行人)


■村上春樹シリーズ。


左から「中国行きのスロウ・ボート」「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」「国境の南、太陽の西」 「パン屋襲撃」「神の子どもたちはみな踊る」「風の歌を聴け」「アンダーグラウンド」「ノルウェイの森」「羊をめぐる冒険」 「ねじまき鳥クロニクル」「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」・・・村上春樹の小説は片っ端から翻訳されています。これまでは上海訳文出版社という翻訳出版に強い出版社から発行され、翻訳者も固定されており、訳者の林少華は、“村上春樹御用翻訳者”と称されるほどです。しかし「1Q84」以降、出版社が南海出版に代わり、翻訳者も施小煒に変更されました。ファンの間で二人の翻訳者の比較論も論じられています。

■日本ライトノベル 天聞角川
角川系のライトノベルの中国語版を発行し、少年少女の人気を集めています。




中国の一般的な少女向け小説。学園ものかタイムスリップものが多いです。作家が韓国人、台湾人というケースもあります。



出版業界にとっても海賊版は大きな悩みで、書籍分野では主に以下のような海賊版問題があります。

1.紙媒体の廉価複製本販売(ネットや路上で販売される)
2.電子版の無断アップロード
3.コンテンツ自体の無断複製・無断使用(地図、画像などを含む)

特に2.の電子版無断アップロードの問題は深刻です。
今年の上海ブックフェアでは地図コンテンツに対する海賊版の撲滅キャンペーンを行っていました。


■子供の向けの本
子供向けの本は、大人向けの一般書籍と比べると、活字離れや違法コピーによる影響を受けにくいです。また、1ページ1ページめくって読むという書籍本来の役割が求められており、伝統的な形態の本の需要があります。教育熱心な親が多いこともあり、比較的安定した売上げが望める分野といえます。また、ここ数年の間に絵本が急激に増えました。日本の絵本も多数翻訳出版されています。
  



■タレント本
俳優や女優の自伝や自己啓発本、タレントによる旅行本が流行しています。
今年の上海ブックフェアでは人気テレビ司会者華少(ホア・シャオ)が新書を携えてサイン会を開きました。華少は浙江テレビの男性司会者ですが大ヒットリアリティショー「中国好声音」の司会で全国的に有名になった、今が旬のテレビ司会者です。写真右は人気俳優の陳坤(チェンクン)のチベット旅行本。
  

■読書とインターネット
ポータルサイト新浪(sina.com)の読書チャンネル。ネットスタジオで人気作家のインタビューなどを企画。


■時事本、話題の本
韓国初の女性大統領パク・クネ大統領の日記 上海訳文出版


■政治本「中国の夢」
総書記に就任した習近平が「十八大」(中国共産党第18回全国代表大会出)で連呼したキーワード「中国の夢」。関連書籍が発売されています。


元上海市長朱鎔基の上海講話実録集。上海市長を担ったのは1988年~1991年。上海の現代化に大きな功績を残したといわれています。


■夜9時まで開催しているので仕事帰りでも立ち寄ることが可能です。




■中国のメディアの評価とネット小説の発展
中国の出版物には審査(検閲)があります。
「検閲が行われているような国に面白い作品が生まれるはずがない」という見解を持つ人が少なくありません。また、中国人の中にも「中国のメディアは全部ゴミ」といった発言をする人が少なくありません。出版検閲制度(審査制度)やコネ社会に対する嫌悪感がこのような発言を引き起こすのだと思います。
しかし、出版界にメガヒット作品が定期的生まれていることから分るように、少なくとも消費者の支持を得る作品は存在します。また、中国は小説を発表するウェブサイトが発達しており、「在起点」「晋江」「新浪」などの小説サイトでは、日々多数の作品が公開されています。日本の場合、作品を投稿して文学賞を受賞して作家になるという一つのパターンがありますが、中国の場合、小説サイトに作品をアップして、人気を獲得した作品が書籍化されるという流れの方がむしろ一般的です。ネット上で人気を博した小説が出版され、更にドラマ化・映画化されることもあり、日本でも放送された中国ドラマ「宮廷女官ジャクギ」(原題:歩歩驚心)や「宮廷の諍い女」(原題:甄嬛伝)はネットで発表された小説が原作です。「宮廷女官ジャクギ」の原作小説の作者は1980年生まれ、「宮廷の諍い女」の原作者は1984年生まれで、ネット小説の世界からどんどん若い世代の作家が誕生しています。
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INFINITE ワールドツアーONE GREAT STEP 上海公演~平日上海のINFINITE

2013年11月01日 | エンタメの日記
10月30日(水)にK-POPグループINFINITEの上海コンサートに行ってきました。
■2013 INFINITE 1ST WORLD TOUR ONE GREAT STEP 上海公演:2013年10月30日(水)上海大舞台


■座席表


INFINITEは2010年にデビューした7人組のK-POPボーイズグループです。
一糸乱れぬダンスと安定したボーカル、そして楽曲の良さで人気を集めています。
INFINITEがデビューしたのは2010年6月ですが、当時K-POPグループはすでに飽和状態でした。感覚的にいうと、2009年にBROWN EYED GIRLSのアブラカタブラが流行った頃がK-POPグループ全体の一つのピークで、あの頃すでにあらゆることがやりつくされた感があります。但しそれ以降レベルが下ったという意味ではなく、飽和状態ながらもダンス、歌、アレンジ、ビジュアルのレベルは上昇を続けていると思います。2010年にデビューしたINFINITEは、デビュー曲「タシトラワ」から異常なほどハイクオリティなパフォーマンスを見せていました。
INFINITEの活動を常に追いかけてきたわけではないのですが、デビュー当時から存在は知っていたので、自分にとっては思い入れのあるグループです。(参考:前のブログの過去ログ
デビュー曲「タシトラワ」があまりに衝撃的だったので、このクオリティを今後維持できるのだろうか?と思ったものでしたが、現在に至るまで力を維持しているどころかダンスも歌もレベルアップしていると、コンサートを見て思いました。

INFINITEのパフォーマンスを生で見るのは2回目です。1回目は2012年9月に「K-POP MUSIC CHINA」という韓国系ファッションブランドが主催するイベントにゲスト出演したステージを見ました。2回目が今回のツアーコンサートになります。

「一糸乱れぬダンス」と評されるとおり、INFINITEのパフォーマンスはCGで構成された映像を実写で再現しているような錯覚に陥ります。日頃パフォーマンスを映像でチェックしているファンですらも、生で見ると思わずおお~っと唸り声を上げてしまいます。

7人を役割別に分けると、
メインボーカル :ソンギュ(リーダー)、ウヒョン
ダンス・RAP   :ドンウ、HOYA
ダンス・ボーカル:ソンヨル、L、ソンジョン
ということになりますが、メインボーカル2人とRAPの2人、つまり、年長4人の安定感がすごいです。特にドンウのしなやかでシャープな動きとHOYAの華のあるダンスは圧巻です。才能がある子が努力するとこういうことになるんだなと思いました。

中国で一番人気があるメンバーはLでした。Lが登場すると明らかに歓声が大きくなります。やっぱり中国ファンはとことん顔のいい男が好きなのだろうか・・・Lだけは個人人気が突出しており、他のメンバーの人気はほぼ互角でした。Lのソロのときは、スタンドの一角を陣取ったLファンたちが電飾ボードで「L」の形を作るというファンパフォーマンスを披露しました。

Lはメンバーきっての美形です。コンサート中に上映されるミニムービーはLの美貌を全面的に押し出した作りになっており、L君はお姫様で、このグループは「お姫様と6人の職人」なのだろうか?と思ってしまいましたが、Lは美貌を担当するだけではなく、フォーメーションの中でいい仕事をします。HOYA、ドンウは言うまでもなく、メインボーカルのソンギュとウヒョンもダンスが上手いので隠れてしまいがちですが、Lも美人オーラが滲み出る非常に良いダンスをすると思いました。

INFINITEはダンスも歌も実力があり楽曲もいいのですが、メンバーは「アーティスト」というより「アイドル」としてファンの前に立つことをポリシーとしているように感じます。愛想が良くてファンサービスがいいです。ステージ衣装は激しいダンスに適した比較的シンプルなものが多いですが、いかにも“衣装”というかんじで、可愛らしいデザインのものも多いです。そして、玄人受けしそうなパフォーマンスに反して、コンサートグッズなどはコテコテのアイドルで、このギャップがある意味すごい・・・。

上海コンサートではMCをほぼ中国語で貫きました。この中国語がすごかった。
基本的な発音や中国語独特のイントネーションを勉強したことは良く分るのですが、定期的に中国活動をしているわけでもないので、上手いかと聞かれると決して上手くはないです。
にもかかわらず、かなり長い中国語MCをやり遂げました。MCといっても、一人一人が中国語のメッセージを分担するようなかんじで、本来MCにあるべき会話の掛け合いなどはありません。全員が均等に、相当量の中国語を話します。一生懸命に堂々と・・・。ソンジョンなどはステージの死角に記されたカンペを読み上げているのが完全に分りましたが、悪びれずにやり抜きます。
多くのK-POPタレントが中国公演の際に中国語MCを試みますが、苦手意識があると最低限で済ませたり、得意なメンバーに託したりするのですが、INFINITEは全員が均等に中国語MCをこなしました。
7人の中ではソンギュ、ソンヨルが上手いと思いました。HOYAとウヒョンもまずまずですが、ソンジョンはカンペ読み、ドンウは英語を話しているのか?と勘違いする独特の発音でした。
なお、前座でTASTYという双子のユニットが登場しましたが、TASTYの中国語は大変上手でした。

中国語MCを取っても、INFINITEは「7人全員で頑張って均衡を保つ」ということをポリシーにしているのかなと思いました。
ダンス、ボーカルの力と同じくらい驚異的なのは彼らの体力です。アンコールでは「タシトラワ」、「Histerie」とダンス曲が続いた後にMCが入ります。スクリーンにメンバーがアップになると、汗で白いシャツが完全に透けているのが分ります。しかし、顎から汗が滴るほどの運動量でありながら、息が乱れていないのです。驚きました。あれだけ激しい動きをしながら、ほとんど息も切らさずすぐにMCに入ります。
最後のMCではウヒョンだけが韓国語になりました。ドンウとホヤも最後のMCは英語混じりになりました。ウヒョンの声はどこぞの人気声優かと思うような美声です。
メンバーは疲れ知らずなのか、ファンとのコミュニケーションにも余裕があります。
INFINITEはBL(もどき)カップリングはそれほど盛んではありませんが、2S(ソンヨル+L)は仲が良いことで知られています。Lのソロのとき、ベンチに置いてある大きな白いテディベアをLが抱きしめてキスするという演出がありますが、ソロの後のMCのとき、ソンヨルが「テディベアに嫉妬したよ~」と言ってLに抱きつくというカップリングサービスもありました。

上海で平日にコンサートが行われることは珍しいです。
中国の学生は普段学校の寮で生活していることが多いので、平日の夜にコンサートに出かけることができる人は限定されます。会場の上海大舞台はコンサートとして使用する場合は1万人弱収容できますが、もともと5000枚しか発券しないと公言されていました。実際の集客数は3000人弱だったのではと思います。はっきりいって空席は多かったのですが、もともとオーバーキャパの会場であることはファンもINFINITE側も認識していたはずなので、客やメンバーのテンションは高く、雰囲気としては別に悪くなかったと思います。(日本公演と比べると、また全然違うとは思いますが・・・)

当日のチケット売買相場は、席種によっては定価の2分の1から3分の1に値下がりしました。アリーナ前方の定価は1680元(約27000円)なので、仮に3分の1まで下がったとしても日本円換算で約9000円です。3分の1に下がっても、中国の収入水準から考えるとまだ高いくらいです。しかし、このような高額な価格設定でありながら、アリーナ最前列はダフ屋を通じて定価以上の金額で取引されています。

上海大舞台は古い会場でステージと客席最前列との距離が比較的近いです。この会場は時々、最前列の警備が決壊し、ファンがステージに押し寄せます。INFINITEコンサートでも最後の最後で決壊しました。決壊を許すのは私が知る限りこの会場だけです。上海の公安はよっぽど治安の維持に自信があるんだなといつも関心してしまいます。
上海は中国の他の都市に比べてコンサートの警備が全般的に緩いです。アリーナでは椅子の上に立つどころか、椅子の手すりに立ったり、椅子の上に更に脚立を乗せて立つ子もいます。クッション座席に靴を脱がずに上がるので、マナーはよくありません。そして、ほとんどの子がカメラやスマホ、iPadで公演を録画しています。望遠一眼レフを抱えている子もいます。オレンジのペンライトを一心不乱に振る観客、カメラを回しっぱなしの観客、周りを意に介さず悠然と椅子に腰掛けてスクリーンだけを眺めている観客・・・この状況がカオス・・・。
コンサートの途中で疲れたので椅子に座ると、観客の隙間からきれいなスポットライトが交差するのが見えます。
平日の水曜日、通い慣れた上海体育館駅で途中下車するとINFINITEがコンサートをやっている--。この無秩序ながらもファンの熱気に溢れた空間、独特の開放感、ああ、我らが魔都上海--。





なぜかINFINITEはいつも平日に上海に来ます。昨年上海に来たときは金曜日でした。それは2012年9月14日(金)のことで、その2日後に上海で反日デモがありました。昨年9月は毎週末のように全国で反日デモがあり、上海の反日デモは9月16日(日)に予定されていました。そのため、日系企業の中には日本人社員に外出を控えるよう指示したり、日本人社員をミニバンに乗せて集団送迎したりと緊張状態にありました。9月14日は毎年1回行われる「上海旅行フェスティバル」という観光振興イベントパレードのリハーサル日でしたが、日本観光を宣伝する山車は出場を取りやめたと発表されたので、私はINFINITEとEXO-M、MISS-A、f(x)がゲスト出場するイベント「K-POP MUSIC CHINA」を見に行きました。

あのとき、K-POPが鳴り響く大きなスタジアムの芝生の上で、スタジアム特有の屋外用ライトを感じながら、開放感に浸ったのをはっきりと思い出せます。

明後日は反日デモがあるけれど、こんなに楽しい上海がここにある・・・
と、2012年9月のINFINITEのステージを見ながら思いました。

今度はいつINFINITEを見ることができるか分かりませんが、きっとまた素晴らしいステージを見せてくれると思います。そしてやはりK-POPは面白いです。別に彼らがK-POPを代表するわけではなく、ましてや韓国を代表するわけでもないのですが、あんなに実力があるのに、あんなにアイドルな彼らを生み出した韓国エンタメ界は、すごいものがあると思わざるを得ません。

セットリスト(19:30開演、TASTYが前座、19:50頃INFINITE登場、22:10頃修了)
1. DESTINY
2. パラダイス
3.tic toc
4.リクエスト
5.Inception
6. Can U smile
7. ?
8. 3分の1(ソンヨル&ソンジョンSOLO)
9.Special girl (INFINITE-H)
10.思いが届く場所 (掛け声が入る
11 MV
12.?
13.Love U Like U(LのSOLO)
14.Beautiful(ウヒョンSOLO)
15.60秒(ソンギュSOLO)
16.オモニ
17.Nothing's over
18. ?
19. Cover girl
20.Man in love
21. ネゴハジャ
22.BTD
23.The Chaser
アンコール
24.タシトラワ
25.Histerie
26.With
コメント (19)
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