上海阿姐のgooブログ

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ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学vs氷帝~テニミュ初の上海公演

2016年09月18日 | エンタメの日記
ミュージカル「テニスの王子様」、通称「テニミュ」の上海公演を観に行ってきました。
「テニスの王子様 3rdシーズン 青学 vs 氷帝」の上海公演は2016年9月15日、16日、17日の3日間5公演で、上海の美琪大劇院で上演されました。テニミュ史上初の中国公演です。





チケット:VIP 1080元(約16,200)/680元(約10,200円)/ 480元(約7200円)/280元(約4200円)/180元(約2700円)(VIPはツーショット撮影付き)

美琪大劇院(MAJESTIC THEATRE)は1941年に作られたクラシックな中型の劇場です。上海市内中心の繁華街「南京西路」から一本裏に入ったところにあります。

  

「テニミュ」は2003年から現在まで続く10年以上の歴史を持つコンテンツで、何人もの人気俳優を輩出しています。
メインキャラクターは何代も役者が入れ替わり、後々まで「○代目○○」という肩書きで呼ばれるほどです。
多くの役者が上演を重ねているので、キャラの立ち居振る舞い、ビジュアル、原作に基づく特徴的な仕草や決めゼリフなどは研究しつくされています。
いわゆる2.5次元舞台は、先行して存在するアニメ版の声優の演技に舞台版の役者が寄せてくるケースがよく見られますが、テニミュの場合は舞台実績があまりにも豊富なので、もはや独立したひとつの世界になっているように思います。

テニミュは伝統的に、ミュージカルという割には役者の歌唱力にばらつきがあります。
その代わり、ダンスが上手い、芝居が上手い、テニスプレイのアクションが上手い、原作どおりのアクロバットができるなど、役者によって得意分野と個性があります。
どの役者にも共通していえるのは、テニスのプレイをしているときの動きが美しいことです。
役者が手にしているのはラケットだけで、舞台セットはネットだけです。音響と照明でボールを表現し、役者の演技と体の動きでテニスバトルを表します。
音響と照明を駆使したステージ上でのテニスバトルはまさに「お家芸」というべき見事なものです。「テニミュ」というエンタメの独特の表現方式であり、芸術的です。
緊迫するテニスシーンは照明・音響・役者の連携と信頼関係があるからこそ成り立つもので、コンテンツとしての成熟度に感動します。

ただし、テニミュには「型」があり、ストーリーの展開・決着のつけ方も決まっています。
前半を見ていて、「面白いけれど、テニミュはどこまでいってもテニミュだな」と思う瞬間もありました。

10年以上続く長寿コンテンツ「テニミュ」。それを新しく切り開き、観客を引き寄せるのは、役者の魅力だと思います。

今回のキャストの注目の新人、跡部景吾役に抜擢された三浦宏規がすごくよかったです。
バレエダンサーであることがよく語られますが、ダンス以上に演技がいいと思いました。声質がとても良く、芝居・歌ともにメインキャストとして舞台を引っ張っていました。
ダンスもバレエを取り入れてはいますが、あからさまにバレエを披露するわけではなく、跡部としてのダンスのバリエーションのひとつとして溶け込んでいたと思います。


9月16日(金)夜公演を観たのですが、1階席の集客率は6~7割でした。
集客率が高いとはいえないのですが、お客さんの反応は良かったです。
日本から観に来ていたお客さんもちらほらいたのですが、基本的には中国現地のお客さんでした。9割以上が20代前半の女の子です。

観に来ていた中国人の女の子たちは、もともと「テニミュ」というコンテンツの存在を知っていたと思います。
テニミュのDVDを観たことがある、もしかすると日本まで観に行ったことがある人もいたかもしれません。
もともとテニミュを知っている中国人テニミュファンが上海公演を観に来ていたように思われます。

テニミュの代表曲ともいえる「Do Your Best」がかかったとき、周りのお客さんは「Do Your Best」を知っているような反応でした。
プレゼント・手紙を預けることができるのですが、手紙を預けるダンボールがいっぱいでした。
好きな役者宛の手紙やプレゼントを預けるというシステムを知っていたのだと思います。



ただ、お客さんの反応はピュアというかストレートで、人気キャラである手塚と不二が接触するシーンでは、客先の女の子から「キャ~」という声が上がったり、氷帝学園のメンバー一同が登場するシーンで歓声が起きたりして、海外公演ならではの雰囲気でした。
アンコールは特に、お客さんがキャーキャーいうことが盛り上がりの証拠になっていました。



出演者がところどころのセリフを中国語にして混ぜてくるのですが、中国語セリフはお客さんに大変ウケてました。
テニミュはコミカルなシーンが多いので、中国語を挟める場面が多いです。

昨年の「黒執事」、今年7月の「フェアリーテイル」、今回のテニミュ上海と、ネルケプランニング・チャイナにより2.5次元舞台が中国に次々と上陸しており、来月10月からは舞台「NARUTO-ナルト-」が始まります。
舞台「NARUTO-ナルト-」は10月22日~30日の上海初日を皮切りに、杭州、北京、湖南、広州、深センと6都市、37公演(上海12公演、他の都市は各5公演)が予定されています。
NARUTOは中国で非常に人気のある作品です。少年JUMPでの漫画連載が終了したときは、中国国営放送局CCTV(中央電視台)ニュースで報道されたほどです。
NARUTO舞台劇は、2.5次元舞台というものを知らない新しいお客さんを多く取り込むことになるのではと思います。

コメント (4)
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中国本土で映画「寄生獣」公開~125分版が中国全国のスクリーンに登場

2016年09月04日 | エンタメの日記
9月2日(金)、映画「寄生獣」が中国全国の劇場で公開されました。中国映画市場にとっても日本映画にとっても画期的な出来事といえます。



日本映画が中国の映画館で全国的に上映されることは多くありません。
中国では、映画館で公開できる外国映画の本数に制限があり、しかもその限られた「枠」の大部分がアメリカ映画に割当てられているので、アメリカ映画以外の外国映画が劇場公開されるケースは大変少ないです。

ただし、2015年あたりから少しずつ状況が変わり、日本映画が劇場公開される動きが出ていました。
2015年5月に中国で3D版ドラえもん映画『STAND BY MEドラえもん』が劇場公開されて大ヒットしたことが大きいです。これを契機に、日本側からの中国映画市場に対する関心も大幅に高まりました。
2016年1月には、「NARUTO」の映画版『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』(ボルト ナルト・ザ・ムービー)が大々的に公開され、2016年6月には有村架純の『ビリギャル』も劇場公開されています。

毎年6月に行われる上海映画祭の「日本映画ウィーク」では多くの新作日本映画が上映されており非常に人気がありますが、2016年は『世界から猫が消えたならなら』など最新の作品をもってきて「初の海外並行上映」を実施するなど、例年以上に力を入れていました。

日本映画の中国劇場進出がじわじわと進む中、まさかの「寄生獣」公開です。

中国では、政府機関(広電総局)による審査、すなわち検閲に通過しなければ映画を劇場公開することができません。

「寄生獣」が政府の審査に通過したことに誰もが驚き、中国メディアでは「奇跡の上映」などとも言われています。

2014年10月~翌年3月にかけて、アニメ版の「寄生獣」もテレビ放送されていました。
アニメ版は日本放送と並行して、中国動画大手サイト「youku&tudou」が正規版を配信していました。
ところが、2015年4月に中国政府機関(文化部)の指導により、配信停止処分を受けてしまったのです。
これは、日本アニメに対する「ブラックリスト通達事件」と呼ばれており、このとき名指しで指摘された「残響のテロル」「Blood-C」「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」ほか、「進撃の巨人」「東京グール」などとともに「寄生獣」も配信停止措置がとられました。

なぜ「寄生獣」が上映?と驚きの声が挙がっていますが、『STAND BY MEドラえもん』ヒットの実績のある山崎貴監督の作品であったことも大きいと思います。

中国公開版は、二部構成の作品だったところ、一本の作品(125分)に短縮されています。
つまり、ほぼ半分に縮められています。
そのため、大幅なカットが施されており作品の印象がかなり違っています。
最大の違いは、中国大陸版「寄生獣」には、重要なキャラクターである浦上が登場しません。浦上か関係する市役所包囲のシーンも大幅にカットされています。

その結果、ラストシーンが大幅に変更されています。

「え、ここで終わりなの!?」

と声を上げてしまうくらい驚愕のエンディングでした。

ですが、尺を半分に削り、浦上が登場しない以上、あの終わり方が一番自然かもしれません。
中国で公開するにあたり、過激なシーンがことごとくカットされるのではと懸念する声もありましたが、そういう観点からではなく、尺を半分に縮めることを目的にエピソードカットがなされています。

細部のエピソードがカットされ、主人公新一の変化に関する描写が省略されている部分があるので、作品のスケールが一回り小さくなっているようには感じられますが、かえって共感しやすいかもしれません。中国語字幕のクオリティもとても良かったです。
125分の尺に収められた中国バージョンは、新一の回想のような視点で編集されているように思います。
これはこれで、一本の作品としてまた違った解釈ができて面白いのではないでしょうか。

中国観衆の反応ですが、「寄生獣」は「ドラえもん」と違って万人に受け入れられるタイプの作品ではありません。
しかし、実際に鑑賞した人の評価は決して悪くありません。
作品テーマの深さ、染谷将太、深津絵里の演技、ミギーのキャラクター、CGの創意性などは高い評価と好感を寄せられています。
とはいえ、中国の映画市場が娯楽偏重であるため、興業的にどのような結果になるかはまだ何ともいえません。

9月3日時点の評価は10点満点中の8.4。54%の観衆が9点~10点をつけています。



9月2日は9月の第一金曜日で、多くの新作が公開されましたが、「寄生獣」は4位となっています。

2016年9月3日の劇場公開映画ランキング 映画チケットサイトGewaraの統計
http://www.gewara.com/movie/



1位:『スター・トレック BEYOND』(9月2日公開)
2位:『ジェイソン・ボーン(Jason Bourne)』(8月23日公開)
3位:『アイス・エイジ 5(Ice Age: Collision Course)』(8月23日公開)
4位:『寄生獣』(9月2日公開)
5位:『我們的十年 Days Of Our Own』(9月2日公開、中国映画)

1位から3位を占める作品はアメリカの3D・IMAX映画です。
視覚的な刺激を重視する、アトラクション的な楽しみ方が根付いてしまっているといえます。

「寄生獣」を皮切りに、より多くの日本映画が中国公開されるかもしれません。
日本でヒットしても海外市場では反応が良くないこともあり、その逆もありえます。
中国のスクリーンには、ハリウッド大作、CGを駆使しスターを大勢使った中国の大作映画が溢れているので、リアリティを重視する日本映画を観るとギャップを感じるはずです。
そのギャップを好む人と、受け入れられない人がいるはずです。
社会的情緒の変化に左右されるので、何が中国でウケるのか、何が売れるのか、どんなにマーケティングしても読めない部分があると思います。
中国で公開される日本映画が増えると、意外な作品がヒットしたりするのでは・・・と期待しています。
コメント (2)
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