上海阿姐のgooブログ

FC2ブログ「全民娯楽時代の到来~上海からアジア娯楽日記」の続きのブログです。

日本人アーティストの中国ライブ再開~藤井風ピアノアジアツアー上海公演7月に開催

2023年06月27日 | エンタメの日記
コロナウィルス感染対策規制が解除されたことで、中国では5月頃からスタジアムクラスのコンサートが一気に再開しました。
コロナ規制が行われた3年間、中国では大規模なコンサートはほとんど開催されていません。2023年の1月に「ゼロコロナ政策」が完全に終了したことで、五月天(メイデイ)、梁静茹など中華圏のメジャーなアーティストが次々と中国各都市でコンサートを開いています。
海外アーティストの訪中公演も再開し、日本人アーティストの中国公演も増えています。
7月13日、14日には藤井風が上海で初の中国ライブを開きます。

藤井風 2023年ピアノアジアツアー 上海公演(ピアノアジアツアーはソウル、バンコク、ジャカルタ、KL、上海、台北、香港で開催)
日時:2023年7月13日(木)、14日(金)2Days 会場:上海センターシアター(上海商城劇院) 南京西路1376号上海商城
チケット価格:580元(約1160円)、380元(約7600円)


会場となる「上海センターシアター」は座席数約900の2階建ホールです。ここは元々上海雑技団が外国人観光客向けに雑技の公演を行っていた場所です。2000年代に観光で上海に来たことがある人なら、かなりの確率でここで雑技を観ているはずです。
今回の上海公演は「ピアノコンサート」でありバンドの帯同はなくライブの時間も短めとは言われているものの、チケット価格は他のアーティストよりもかなり安く設定されています。
900席 ✕ 2日間のチケットは即刻完売し高額取引されています。
「藤井風はいったいなぜこんなに小さい会場でやるのだ」と不思議に思われています。10倍のキャパの1万席クラスの会場でも余裕で埋まったのではと言われています。
藤井風は2021年、2022年と2年連続で「紅白歌合戦」に出場しました。中国で紅白が放送されているわけではありませんが、「紅白に出た」ということは中国でも一定のアピール力があります。ですが、ここまで知られるようになったのはやはり「死ぬのがいいわ」が音楽配信アプリで大ブレイクしたからだと思います。
中国ではSpotify、AppleMusicなどいわゆる欧米系の音楽配信アプリを使っている人は相対的にいうと少ないです(iPhoneユーザーに限られ、iPhoneのシェアは中国では25%程度)。一般的には中国国内の音楽配信アプリ「QQ音楽」や「網易雲音楽」(NetEaseクラウドミュージック)を使っています。これらの中国音楽アプリでも藤井風の曲は配信されており大量再生されています。

「死ぬのがいいわ」 中国語タイトル「不如死去」 NetEaseクラウドミュージックでは無料配信。


中国の音楽配信アプリではユーザー有志が歌詞の中国語訳を作ってアップロードすることができます。訳が間違っていると思うユーザーがいれば、修正を申請して翻訳をブラッシュアップすることもできます。かなり練り込んだ翻訳歌詞を投稿するユーザーが多く、歌詞に対する翻訳者の解釈が盛り込まれていることもありますが、翻訳のレベルは高いと思います。

藤井風はいまのところアニメとのタイアップをしていませんが、中国でライブをする日本人アーティストの多くはアニメ主題歌がきっかけで中国人リスナーを獲得しています。もっとも、いま売れているJPOPアーティストのほとんどがアニメとのタイアップ曲を持っています。アニメ主題歌のタイアップは海外リスナーを獲得するうえで絶大な効果を果たしています。

6月には向井太一が深セン、南京、杭州、上海の4都市でライブを開催しました。全公演完売しています。
向井太一 2023年中国ツアー


向井太一はコロナの前、2019にも中国ライブを行っており、規制が解除されたらすぐに中国ツアーを再開させています。
向井太一が中国で人気があるのは、2018年に放送されたアニメ「風が強く吹いている」のエンディング曲を提供したことが大きいと思います。
「風が強く吹いている」は三浦しおんの同名小説のアニメ化で、箱根駅伝を舞台にした作品です。
このアニメが中国ではものすごく高く評価されていて、特に20代、30代のスポーツ愛好家の間で絶大な支持を得ています。
配信サイト「bilibili動画」では異例の9.9という超高評価。向井太一はエンディング曲の「リセット」「道」を歌っています。特に「道」はアニメ最終回のシーンと相まって強い印象を残しています。


小林未郁が2020年に行わるはずだった中国ツアー「轉」(転)を2023年6月に開催しました。
小林未郁は多くのアニメ主題歌を歌っており、澤野弘之の歌姫としても有名で海外にも多くのファンがいます。中国ではアニメ「ギルティクラウン」の「βίος」、「アルドノア・ゼロ」の「aLIEz」などが非常に有名です。
2023年6月に北京、南京、上海、成都、広州の5都市でライブハウスツアーで開催。全日程完売。


小林未郁は以前よりアジアをはじめ海外ツアーを積極的に行っており、中国では2017年からシリーズライブ「Mika Type "起"/"承"/"轉"」(次は"合"?)を展開しています。

8月にはTK from 凛として時雨が再び上海にやってきます。
「The Second Chapter in Asia」ツアー 北京、上海、広州、深センの4都市でライブを開催。
チケット価格:VIP880元(約17600円) 普通680元(約13600円) 


TKもたくさんのアニソンを手掛けており、音楽配信アプリで多くの海外ユーザーに視聴されています。
「東京喰種トーキョーグール」アニメ第1期のオープニング曲「unravel」は恐らく外国人に最もよく歌われている日本語曲のひとつです。

秋以降はMIYAVIが中国ツアーを開催すると発表しています。その他、米津玄師、ONE OK ROCK、RADWINPSなどが来るのでは?と言われていますが彼らの「アジアツアー」の中に中国大陸の都市が組み込まれるかはまだはっきりしていません。
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2年ぶりの上海映画祭~2023年第25回上海国際映画祭開催

2023年06月14日 | エンタメの日記
6月9日から第25回上海国際映画祭(SIFF)が始まりました。開催期間は2023年6月9日~6月18日までです。


昨年の上海映画祭はロックダウンの影響で「来年に延期」されたので、2年ぶりの開催となります。
上海映画祭は市内の映画館で各国の作品が上映されると同時にコンペティション(「金爵賞」)が行われます。2022年のコンペティションにエントリー済みだった作品は2023年度に審査が持ち越されるという意味で、「来年に延期」という表現が用いられました。
上海映画祭はアジア地区の映画祭としては、釜山、香港・東京に次ぐ影響力を持っていると言われていますが、アジア内で4番目という位置付けからしてコンペティション部門への注目度はそれほど高くはありません。ただし、中国では日頃海外映画が劇場公開される機会が少ないので、普段は観ることのできない海外作品や旧作・名作を観るために上海映画祭には大勢の観客が詰め寄せます。

今年は上海市内41の映画館、50スクリーンで約450部の作品が上映されました。そのうち世界初公開作品は53作です。
チケット販売プラットフォームによるとチケット発売開始から1時間で30万枚を売り上げたそうです。
映画祭では大人数を収容できるスクリーンが求められますが、1000席規模の大型映画館は限られているので、普段は演劇用に使われている劇場も映画館として臨時使用されます。
昭和の時代には日本に1000席規模の大型映画館はいくつもありましたが、新宿ミラノ座が閉館(リニューアル)されたことで1000席以上の映画館は姿を消しました。上海でも1000席規模の大型映画館は持て余す傾向にあり、徐々に減っています。純粋な映画館として残っているのはSFC上海影城と1928年開業のクラシック映画館「大光明電影院」くらいです。普段は滅多に満席になることのない1000席規模のスクリーンも、上海映画祭ではほぼ満席の状態となります。

上海映画祭のチケット価格は徐々に上がっており、2023年は60元~180元の間で細分化されています。
普通の旧作70元(約1400円)、新作90元(約1800円)、4k版120元(約2400円)、140元(約2800円)といった設定で、90元か120元の作品が多いです。2017年頃までは一律60元だったので、この数年で急激に値上がりしたと感じます。

今年の上映作品は例年と比べると話題作に欠ける感じがするのは否めません。
それはコロナの影響もあり世界的に映画の制作ペースが落ちているためかもしれないし、映画の内容・スタイルが多様化しているため「話題作」が何か分かりにくくなっているのかもしれません。

2023年上海映画祭の話題作
・「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(2021年)
・「ラストエンペラー」(4k修復版)ベルナルド・ベルトルッチ監督 
・「悲情城市」(1989年)侯孝賢監督台湾映画
・「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(2022年公開)ミッシェル・ヨー主演。米国華人を主人公としたSFコメディ。アカデミー賞で多数受賞した米国映画。

現在、niko and...上海南京西路店で「EVA×niko and...」コラボを開催中です(開催期間:2023年5月27日から7月9日)。
コラボ初日の週末にはファンが殺到し、店頭コラボ商品の品切れ、カフェのコラボメニューの販売一時中止などが生じました。そのため2週目以降の人出はやや落ち着いています。




上海影城がリニューアル
第25回上海映画祭に合わせてメイン会場であるSFC上海影城がリニューアルされました。
上海影城は1000人以上収容可能な扇状に広がる一層式の巨大スクリーンを持つ劇場です。1991年開業で老朽化はしていませんでしたが2023年に改装されました。改装後は、エントランスエリアが展示、出店、カフェなど映画以外の商業・交流スペースとして利用できるようになります。


白く流れるような立体的な外観で写真映えします。上海影城は映画祭に間に合わせるべく改装工事をかなり急いだようで、外部のカフェや上層階はまだ工事中で、上映中にもドリルの音が鳴り響いていました。



毎年驚くことなのですが、上海映画祭では沢山の中国の若い人たちが古い日本映画を観に来ます。アニメを含め、上海映画祭では相変わらず日本映画の人気は高いです。
映画祭初日の6月9日(金)夜は「犬神家の一族」(1976年公開)が上映されました。1008席の“アジア最大のドルビースクリーン”で上映され満席になりました。


2年ぶりの開催のせいか、今年は観客のマナーに関する衝突が特に多いように感じます。
まず、遅刻してくる人が多いです。
単純に遅刻してくる人もいれば、映画祭のスケジュール上、1日に複数の劇場をハシゴしているため移動が間に合わず遅刻してくる人もいます。
スケジュールの問題とはいえ、移動時間をよく計算せずにチケットを買ったり、若干遅刻することが分かっていながら購入する人もいます。

そのほか、上映中のおしゃべりや飲食、そしてスマホに関する問題が多いです。
上映中にスマホをいじる人のディスプレイの明かりが邪魔、スマホでタイトル映像などを撮影する人といったマナー違反行為に対し、
他の観客から叱責の怒号が飛び、劇場が緊張に包まれることもあります。
映画観賞マナーに対する考え方の違いは大きく、「たかが映画のことで、そんなに厳しいことを言う必要はない」と思っている人も多く、実際、普段の映画館ではスマホの扱いに対する意識は緩いです。
また、映画のタイトル映像や特定のシーンを撮影したがる人はすごく多いです。
スラムダンク映画版「THE FIRST SLAM DUNK」が4月に中国公開されたときも、隠し撮りというより上映中の記念撮影行為が大きな問題になりました。
作品のために観に来ているファンと、作品は作品で好きだけれど自分が楽しむためのアトラクションと考えている人ではスタンスが異なり、一つの狭い空間に2時間も一緒にいるのはお互いに苦痛なことかもしれません。
映画祭でマナーを注意する人を「映画警察」として煙たがっている人もおり、さらに摩擦が生じるのではと心配になりますが、こんな喧嘩まがいのことが起きるのは客層が若く活気がある証拠だとも思います。
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肖戦(シャオジャン)主演ドラマ『夢中的那片海』(夢の中のあの海)放送開始~『陳情令』放送から4年

2023年06月10日 | エンタメの日記
肖戦(シャオジャン)主演のドラマ『夢中的那片海』(梦中的那片海/直訳:夢の中のあの海)が6月1日から放送スタートしました。このドラマは1970年代後半の北京を舞台とするドラマです。
「梦中的那片海」(原題直訳:夢の中のあの海) 英語タイトル「The sea in the dream」 全38話 放送開始日:2023年6月1日
主演:肖戦(シャオジャン)、李沁(リーチン)、劉芮麟、曹斐然、趙昕  放送媒体:テンセントビデオ、中央電視台(CCTV-8)、東方衛視  撮影期間:2022年2月から6月


中国ドラマは撮影が完了してから放送されるまでの間にタイムラグがあります。
スムーズであれば撮影完了から1年以内に放送されますが、事情によっては放送までに2年、3年とかかってしまうことも珍しくありません。
肖戦(シャオジャン)は2019年の夏に放送されたブロマンスドラマ『陳情令』で一躍有名になり、その後出演作が何本か放送されていますが、それらはいずれも『陳情令』が放送される前にキャスティング・撮影された作品です。

~2022年までに放送された肖戦の主な出演ドラマ~
『狼殿下-Fate of Love-』:王大陸(ワン・ダールー)×李沁(リーチン)のドラマ。2017年に撮影されたドラマで肖戦のキャリアの中ではかなり初期に出演した作品。撮影時期は『陳情令』よりも前。
『慶余年~麒麟児、現る~』:端役(スパイ言氷雲役)として出演していますが『陳情令』がヒットする前にキャスティング・撮影されたものです。『慶余年』は続編(第2部)の撮影が最近始まりましたが、肖戦は続編には出演しません。
『斗羅大陸 ~7つの光と武魂の謎~』:肖戦主演のファンタジードラマ。2019年に撮影されたドラマで『陳情令』放送前に作られた作品。
『これから先の恋』:現代もの恋愛ドラマ。楊紫(ヤン・ズー)と共演。肖戦は若きイケメン医師役。撮影期間は2019年8月~11月で『陳情令』放送前にキャスティングされた作品。

「夢の中のあの海」は「陳情令」が放送されて肖戦が大人気となった後に撮影されたドラマです。
このドラマで肖戦は1970年代後半の北京に住む青年・肖春生役(主役)を演じており、この役柄のために北京訛りの台詞回しをマスターしています。
肖戦が演じる肖春生は軍幹部の父を持つ青年で、軍関係者とその家族たちのための独立したコミュニティ・”北京(部隊)大院”の中で暮らしています。そこは特殊な階級に属する人々の世界であり、そこでの暮らしは物質的・文化的に普通よりも明らかに恵まれています。
ドラマの舞台となっている「北京(部隊)大院」は実際に存在したもので、ここで暮らす人々は軍や政治機関の関係者で政治・権力に近い位置におり、最新の情報に触れるチャンスも多かったため、現実の話として1970年代の「北京大院」で育った若者たち(北京大院子弟)の中から多くの社会的成功者が生まれました。
成功者たちが「北京大院子弟」の文化・暮らしを自伝や小説としてロマン主義的に述懐したことから、一種の文学ジャンルにもなっています。
日本でも1960年代、70年代の米軍基地の町が文学の題材になったことがありますが、特殊な空間の中で形成される独特の文化や人間関係、歴史的な意義はドラマの素材としても魅力を放っています。

「夢の中のあの海」の第1話から第3話あたりまでは当時の時代背景を描くために敢えて組み込まれているシーンや台詞が多く、関連知識を補わないと分かりにくいかもしれません。
第1話では肖戦ら軍人家庭の子弟たちで構成されたグループが冬のスケート場で他の青年たちと衝突しますが、なぜ彼らが初対面なのに衝突するのか、その対立感情が何なのかピンとこないかもしれません。
什刹海、鼓楼といった地名とその位置付け、「四九城」などの概念、「司令」など人民解放軍の役職や階級、「燕京大学」など歴史の荒波を受けて消えていった物事に対する知識を補足しないと、脚本の意図を把握しにくいのではと思います。
ただし、第5話くらいまで進むと主人公たちの恋愛、友情、家族愛や、時代の変化に振り回されつつ夢や理想に向かって勇敢に進んでいく若者たちの青春が主軸となり、話が分かりやすくなってきます

肖戦(シャオジャン)は主人公・肖春生を好演しています。肖春生はまっすぐで闊達な性格で仲間たちのリーダー的存在。義理堅く仲間思い。皆から慕われているが、父親の問題で入隊できる年齢をとうに達しているのに軍に入隊できずにいる。


ヒロイン・佟暁梅を演じるのは李沁(リーチン)。高級軍人の父を持つが本人は医学の道を志す。内省的で物静かだが芯の強い女性。


もう一人のヒロイン・賀紅玲を演じるのは曹斐然。度胸がある気の強い美人。バイオリン奏者になることを夢見ている。音楽一家の出身だがそれゆえに一家が迫害された過去を持つ。


冬になると北京市内にある「什刹海」という人口湖はスケートリンクになり、当時の人々の青春を象徴しています。
「夢の中のあの海」はテーマとしてはNHKの朝ドラに通じるような立志伝中的な物語で、肖戦が演じる主人公・肖春生は最終的には実業家として医療機器の分野で社会に貢献します。
中国の1950年代から2000年代あたりまでを描く「年代ドラマ」は近年かなり流行していますが、「夢の中のあの海」は当時の良い部分をロマン主義的に美しい映像で表現しています。現実には理不尽に虐げられたり犠牲になった人も多いはずですが、社会や政策を直接批判したり、権力者を非難するような表現はありません。


肖戦(シャオジャン)はブロマンスドラマ「陳情令」をきっかけに他に例を見ない速さでスターの座に上り詰めました。
「陳情令」放送から4年が経っていますが、「夢の中のあの海」が放送されたことで肖戦はやっと新しいステージに進むことができたのではと思います。「陳情令」の大ヒットに伴い発生したファン同士のネット暴力事件(肖戦227事件)の影響で、肖戦はリスクを抱えたスターとして扱われてきました。
「夢の中のあの海」ではこれまでとは全く違う役どころですが、特有の華やかさと美しい切れ長の目は変わりなく、実年齢はもう32歳ですが相変わらずのイケメンぶりを発揮しています。
ブロマンスドラマの美形俳優というフィルターがなくなると、演技力に対してより厳しい目が向けられるかもしれませんが、「夢の中のあの海」が俳優として大きなキャリアになることは間違いないと思います。
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