2025年1月末に春節映画として公開された中国アニメ映画『ナタ 魔童の大暴れ』(通称「ナタ2」/原題『哪吒之魔童閙海』)は公開から約2ヶ月で興行収入150億元を突破し、圧倒的な差をつけて中国国内歴代1位となりました。世界歴代興行収入ランキングでも5位となっています。
現在、世界各国でも続々と公開されており、日本では4月4日から日本語字幕版が公開されています。
『ナタ 魔童の大暴れ』(ナタ2)公式サイト https://www.nezha2.jp/index.html
『ナタ 魔童の大暴れ』(『哪吒之魔童閙海』) 監督:餃子(ジャオズ) 中国公開日:2025年1月29日(春節) 言語:中国語、四川方言など 144分 IMAX 2D、3D

中国映画市場で「メガヒット」と呼ばれるには、興行収入50億元(約1000億元)を超えることがひとつの目安です。
日本の場合は、100億円を超えれば大ヒット、メガヒットというには200億円超えが目安かと思います。
つまり、難易度で考えると、日本で200億円突破することと中国で50億元突破することは、大体同じくらいの難易度といえます。
では、150億元はどういう数字かというと、中国においては「これまでのメガヒットの3倍の規模」、日本円に換算すると3000億円という文字通り桁違いの数字です。
なお、「ナタ2」がランキング入りするまでは、世界歴代興行収入ランキングの1位から30位まで米ハリウッド映画または米国との合作映画で占められていました。米国一色で埋められている世界ランキングの中に、突如中国アニメ映画が現れて5位に飛び入りました。

「ナタ2」は2019年に公開された『ナタ 魔童降臨』(「ナタ1」)の続編です。
「ナタ1」も当時50億元超えのメガヒットを記録しました。「ナタ2」は5年越しの待望の続編といえます。
一年を通じて最長の休暇となる春節期間は、中国映画業界にとって最大のかきいれ時です。
中国の映画チケットは約50元(約1000円)と比較的安く設定されており、しかもシネコンがそこらじゅうのモールに設置されており、映画は安価、安全、容易に楽しむことができる庶民にやさしい娯楽です。
「ナタ2」が記録的なヒットを実現できた最大の要因は、「ナタ2」が家族全員で安心して楽しめる映画であることだと思います。
中国は全般的に子どもを大事にする社会で、子どもがいれば子どもを中心に動くことが当たり前とされています。
子どもが喜ぶ映画、或いは子どもに観せたい映画であれば、子ども一人に対して、父親と母親、春節で帰省中であれば、祖父、祖母まで同行します。
1人の子どもに対して、大人4人を動員できるのです。
子ども+親(大人複数)という単位で動員できたので、通常のメガヒットの3倍の規模である150億元という興行収入を達成できたのだと思います。
「ナタ2」は3DのCGアニメ映画です。非常にハイレベルな技術が投入された3Dアニメーションで、革新的な映画だと思います。
一方で、ストーリーは大人から子どもまで幅広く受け入れられるものになっています。
「封神演義」の世界観と登場人物により展開されますが、ストーリーやキャラ設定はオリジナル要素が強いです。
本来中国神話「封神演義」の中の哪吒は、父親との確執、父権主義への抵抗が根幹にありましたが、映画「ナタ2」では親との確執はなく、父親も母親も「子どもを思いやる良い親」として描かれており、神話とは異なっています。

神話の世界設定をベースに、哪吒のトレードマークである風火二輪の炎の赤と、敖丙のバックグラウンドである龍族の水色のコントラストが全体的なイメージの基調とされています。ただ、キャラクターの性格や感情もCGを駆使して描かれているので、常に何かが動いており、流れるような色彩がやや過剰です。静止画面がほとんどないので、かえって記憶に残りにくくなっていると思います。

「ナタ1」は2019年に公開され、その当時も興行収入50億元のメガヒットとなりました。
「ナタ1」は、哪吒と敖丙(アオビン)の友情が物語の中核にあり、奇異な能力を持って生まれ、自身も周囲も持て余し気味の子ども・哪吒が、敖丙という友を得て、友に必要とされることによって成長していくという物語でした。中国ブロマンス要素がかなり強く、哪吒と敖丙の同人誌もたくさんできました。
「ナタ2」ではさらにブロマンス要素が強まるのではと思っていましたが、「ナタ2」はバトル要素が強化され、敖丙との関係はあまり進展しませんでした。
「中国版pixiv」と言われる同人投稿サイト「LOFTER」 検索キーワード”藕饼”

「ナタ2」は中国公開からすぐに世界各国で上映されています。
マレーシア、シンガポール、インドネシアなど中国文化と親和性があるエリアでは、比較的良好な興行収入を上げています。北米、欧州でも公開されていますが、いまのところ劇場に足を運んでいるのは現地在住中の中国人がメインと言われています。
日本の場合、3月14日に中国語音声+中国語・英語字幕版という形で先行公開されました。中国語音声+中国語・英語字幕というのは、中国本土で上映されているのと同じものになります。
その3週間後の4月4日に日本語字幕版が公開されました。
このように、日本語字幕なしで3週間も先行公開するというのは、かなり異例なことです。
しかし、3月14日から公開された中国語音声+中国語字幕版の興行収入は、9日間で1億円を突破したと言われています。
鑑賞者の大半或いはほぼ全員が中国人であったと思われますが、1億円÷2000円で計算すると、約5万人が鑑賞したことになります。
「ナタ2」の日本公開は、「面白映画」(FACE WHITE/面白映画株式会社)という2019年に東京に設立された中国系の配給会社が尽力しています。
この会社がなかったら「ナタ2」がこんなに早く日本で公開されることはなかったし、公開されたとしても一部の大都市の数館のみでの上映になったのではと思われます。
「面白映画」は中国アニメ業界の人材が日本で立ち上げた会社で、彼らは日本に居住している中国人に対するマーケティングルートを持っています。
留学生や在日中国人ファミリーに中国のヒット映画を届けるだけでも十分意味があることだし、中国アニメ映画を日本で浸透させるには恐らく時間がかかるので、たとえ今回日本人の動員があまり振るわないとしても、コンテンツ輸出の一つのプロセスを進めたことには違いありません。
現在、世界各国でも続々と公開されており、日本では4月4日から日本語字幕版が公開されています。
『ナタ 魔童の大暴れ』(ナタ2)公式サイト https://www.nezha2.jp/index.html
『ナタ 魔童の大暴れ』(『哪吒之魔童閙海』) 監督:餃子(ジャオズ) 中国公開日:2025年1月29日(春節) 言語:中国語、四川方言など 144分 IMAX 2D、3D

中国映画市場で「メガヒット」と呼ばれるには、興行収入50億元(約1000億元)を超えることがひとつの目安です。
日本の場合は、100億円を超えれば大ヒット、メガヒットというには200億円超えが目安かと思います。
つまり、難易度で考えると、日本で200億円突破することと中国で50億元突破することは、大体同じくらいの難易度といえます。
では、150億元はどういう数字かというと、中国においては「これまでのメガヒットの3倍の規模」、日本円に換算すると3000億円という文字通り桁違いの数字です。
なお、「ナタ2」がランキング入りするまでは、世界歴代興行収入ランキングの1位から30位まで米ハリウッド映画または米国との合作映画で占められていました。米国一色で埋められている世界ランキングの中に、突如中国アニメ映画が現れて5位に飛び入りました。

「ナタ2」は2019年に公開された『ナタ 魔童降臨』(「ナタ1」)の続編です。
「ナタ1」も当時50億元超えのメガヒットを記録しました。「ナタ2」は5年越しの待望の続編といえます。
一年を通じて最長の休暇となる春節期間は、中国映画業界にとって最大のかきいれ時です。
中国の映画チケットは約50元(約1000円)と比較的安く設定されており、しかもシネコンがそこらじゅうのモールに設置されており、映画は安価、安全、容易に楽しむことができる庶民にやさしい娯楽です。
「ナタ2」が記録的なヒットを実現できた最大の要因は、「ナタ2」が家族全員で安心して楽しめる映画であることだと思います。
中国は全般的に子どもを大事にする社会で、子どもがいれば子どもを中心に動くことが当たり前とされています。
子どもが喜ぶ映画、或いは子どもに観せたい映画であれば、子ども一人に対して、父親と母親、春節で帰省中であれば、祖父、祖母まで同行します。
1人の子どもに対して、大人4人を動員できるのです。
子ども+親(大人複数)という単位で動員できたので、通常のメガヒットの3倍の規模である150億元という興行収入を達成できたのだと思います。
「ナタ2」は3DのCGアニメ映画です。非常にハイレベルな技術が投入された3Dアニメーションで、革新的な映画だと思います。
一方で、ストーリーは大人から子どもまで幅広く受け入れられるものになっています。
「封神演義」の世界観と登場人物により展開されますが、ストーリーやキャラ設定はオリジナル要素が強いです。
本来中国神話「封神演義」の中の哪吒は、父親との確執、父権主義への抵抗が根幹にありましたが、映画「ナタ2」では親との確執はなく、父親も母親も「子どもを思いやる良い親」として描かれており、神話とは異なっています。

神話の世界設定をベースに、哪吒のトレードマークである風火二輪の炎の赤と、敖丙のバックグラウンドである龍族の水色のコントラストが全体的なイメージの基調とされています。ただ、キャラクターの性格や感情もCGを駆使して描かれているので、常に何かが動いており、流れるような色彩がやや過剰です。静止画面がほとんどないので、かえって記憶に残りにくくなっていると思います。

「ナタ1」は2019年に公開され、その当時も興行収入50億元のメガヒットとなりました。
「ナタ1」は、哪吒と敖丙(アオビン)の友情が物語の中核にあり、奇異な能力を持って生まれ、自身も周囲も持て余し気味の子ども・哪吒が、敖丙という友を得て、友に必要とされることによって成長していくという物語でした。中国ブロマンス要素がかなり強く、哪吒と敖丙の同人誌もたくさんできました。
「ナタ2」ではさらにブロマンス要素が強まるのではと思っていましたが、「ナタ2」はバトル要素が強化され、敖丙との関係はあまり進展しませんでした。
「中国版pixiv」と言われる同人投稿サイト「LOFTER」 検索キーワード”藕饼”

「ナタ2」は中国公開からすぐに世界各国で上映されています。
マレーシア、シンガポール、インドネシアなど中国文化と親和性があるエリアでは、比較的良好な興行収入を上げています。北米、欧州でも公開されていますが、いまのところ劇場に足を運んでいるのは現地在住中の中国人がメインと言われています。
日本の場合、3月14日に中国語音声+中国語・英語字幕版という形で先行公開されました。中国語音声+中国語・英語字幕というのは、中国本土で上映されているのと同じものになります。
その3週間後の4月4日に日本語字幕版が公開されました。
このように、日本語字幕なしで3週間も先行公開するというのは、かなり異例なことです。
しかし、3月14日から公開された中国語音声+中国語字幕版の興行収入は、9日間で1億円を突破したと言われています。
鑑賞者の大半或いはほぼ全員が中国人であったと思われますが、1億円÷2000円で計算すると、約5万人が鑑賞したことになります。
「ナタ2」の日本公開は、「面白映画」(FACE WHITE/面白映画株式会社)という2019年に東京に設立された中国系の配給会社が尽力しています。
この会社がなかったら「ナタ2」がこんなに早く日本で公開されることはなかったし、公開されたとしても一部の大都市の数館のみでの上映になったのではと思われます。
「面白映画」は中国アニメ業界の人材が日本で立ち上げた会社で、彼らは日本に居住している中国人に対するマーケティングルートを持っています。
留学生や在日中国人ファミリーに中国のヒット映画を届けるだけでも十分意味があることだし、中国アニメ映画を日本で浸透させるには恐らく時間がかかるので、たとえ今回日本人の動員があまり振るわないとしても、コンテンツ輸出の一つのプロセスを進めたことには違いありません。