野田内閣が進める「原発ゼロ戦略」は早くも怪しくなってきた。経済界、労働界、原発立地自治体の反発が強く、閣議決定を見送り参考文書にとどめるという。いわば「努力目標」でしかなく大幅後退=骨抜きであることは間違いない。
尖閣諸島問題で大騒ぎしている時期を狙って、わざわざ決定見送りを決めたのかと勘ぐりたくなる。政府にとっては財界はともかく労働界が政府に異議を唱えたことが大きかったのではないか。民主党には労働組合を支持基盤にしている議員が多いからだ。
また「決められない政治」の典型例をつくってしまった。自分はもともと「原発ゼロ戦略」には疑問を持っていたので、それが大幅後退したことは歓迎しているが、民主党の将来には悲観的にならざるを得ない。民主党は考えてみれば様々なグループの寄せ集めといってよい。細川護煕氏が結成した日本新党、自民党の小沢ループ、旧社会党、旧民社党、松下政経塾出身、鳩山グループ、菅直人前首相を中心とした市民グループなど「アンチ自民党」の旗のもと結集し、ついには政権交代を実現させた。そして今後二大政党制の時代到来かと思われた。
しかしいざ政権を担当すると各議員の思惑、エゴが表出し櫛が抜けるように造反議員が続出した。衆議院過半数の維持さえ困難の状況になりつつある。ただこれはまだまだ前哨戦の感じもする。総選挙の洗礼を受けてそれが決定的になるかもしれない。しかしこれはある面仕方がなく、また悪いことではない。同じ主張、信条を持った同士で再編されるのではないか。それは対立する自民党とて例外ではない。
キーワードはいうまでもなく「決められる政治」である。個々人が政治能力を持っていても、それを結集して、より能動的な政策集団になっていかなければならない。もしかしてこんな時期に、予想もつかなかった人物が政権をリードして行くかもしれない。
尖閣諸島問題で揺れる日本の外交、まだまだ序の口であり今後も様々な問題が噴出してくるだろう。国内にしてもしかり。「原発廃止で経済停滞もやむなし」などとのんきなことをいうノーベル賞作家の戯言を聞いている暇はない。