粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

立ち飲み屋の与太話?武田ブログ

2012-09-21 10:58:09 | 煽りの達人

今更なんだと思う。武田邦彦教授のブログ「福島の子供の甲状腺ガンをどう考えるか?」。この問題は1週間以上前に話題になっていたのに、その「時間差」の酷さに教授の関心の低さを感じざるを得ない。あまりこの問題に触れたくなかったけれど、読者の催促に渋々書いたような印象さえ受ける。

そしてその記事の内容もその動機に違わず、あまりにも精彩を欠いたものになってしまった。要は教授お得意の次の主張に象徴される。

かなりの被曝をしたのですから、子供の甲状腺の異常が見られ、ガンも発症すると考えるのが「普通」で、「大丈夫だ」というような科学的な根拠はありません。

相変わらず威勢はいい。しかし福島の県民検査での担当医師のいわば「原発被曝無関係宣言」ともいえる結論に「嘘をついている」とまでいっているが、その「科学的根拠」を全く示していない。ただ被曝は危険の一点張りだ。

思うに教授は甲状腺ガンの病気の初歩的知識やエコー検査の精密度とその限界など基本的なことを把握していないのではないか。エコー検査の「エ」の字も出てこない。「検査した子供の100人に36人が甲状腺に異常が見つかり」と書いているが、これは一方的な見方である。たぶん教授の「煽り」を期待する武田教の読者の情報を鵜呑みにしたものと思われる。実際はこの「異常」のほとんどが良性の結節などであり数ミリ以下の小さなものだろう。

教授は、この「異常」が今後どうなるかを再度調べるために、検査時期を担当医師が「2年後」としたことにも食ってかかる。

甲状腺に異常のある36%の子供達の検査は2年後ということになっていますが、親御さんとしては心配です。1年後に検査をして欲しいと希望する子供は検査すべきです

これも担当医師からすれば「余計なお世話」だろう。甲状腺ガンが検査で見つけられるのはガン細胞ができて4、5年後といわれている。さらにそれを本人が自覚するのは10年後ともいわれるほど甲状腺ガンの進行は遅い。したがって1年も2年も大差ないということになる。もちろん早期発見にこしたことはないが、教授のようにただ母親の不安だけを理由に福島の取り組みを批判することは無用の混乱を生むだけである。

教授のブログ内容は「被曝は少しでも体に影響がないとはいえない。親御さんの不安はもっともなのに福島の取り組みはこれに十分に応えていない」というありきたりの結論になっている。これでは立ち飲み屋のテレビを見ている初老のオッサンが「福島の医者は何をやっているんだ」と安い焼酎で酔った勢いに任せてド素人の野次をとばすようなものだ。少し品よくいえば、ワイドショーの芸能人コメンテーター(本業が減った今、少し新しい自分を出したいと考えている)なら「同じ子を持つ者として親御さんの気持ちは痛いほどわかります。行政や医療関係者はそれに応えて欲しいですね」なんてソフトなコメントになるかもしれない。

ただ教授のずるいと思える点を最後に指摘しておこう。

親御さんは「…できるだけのことをして何も起こらなかったら、それはそれで良いとする」という信念をもってください。

さんざん煽っておいて「(この心配が取越し苦労になっても)それはそれで良いとする」はないだろう。教授はある面防衛線を張っているとしか思えない。こんな不安なこと書いたが「実際はたいした問題は起こらないかもしれない。いやたぶん起こらないだろう」と思い直し自分の仕事の将来を気遣う。世渡り上手な教授だからもしかして…。


追記:おかしな話だが、教授の問題のブログはアップが20日以降なのに、日付は12日になっている。まあ教授にもいろいろ事情があるのだろう、というぐらいにしておこう。