粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

電力需給と国富

2012-09-08 12:12:07 | 原発事故関連

関西電力管内の電力供給量は、大飯原発再稼働なしでも余裕があったと、夏の節電期間が終了した今週末、一部メディアが盛んに『検証」し始めた。

しかし、これは古い火力発電所も無理矢理稼働させたのが大きい。また池田信夫氏の指摘にある通り、夜間の原発の余剰電力を活用した揚水発電が電力供給に寄与した点も見逃せない。

ただ一番重要なのは管内の企業や家庭が節電に進んで取り組み、10%以上の削減を実現させたことだ。テレビで、ある文具メーカーの節電努力の模様を伝えていた。そこではメーカーの主力製品のうち、製造に比較的電力を要する文具を6月中に前倒しして集中して生産し、できるだけ夏の需要期を回避しようとしていた。

涙ぐましい企業努力ではあるが、それはあくまでも一時的な応急措置であり、決して常態化すべき性格でない。企業としては、必要な時期に電力を心配なく利用できるのが基本であることは間違いない。

そしてやはり忘れてならないは、化石燃料を使用することでのコストの増大だ。原発再稼働を批判するメディアは、意図的といってよいほどこの問題には目をつぶる。全国の電力会社で年間3兆円以上のコスト増となり、国富が海外に放出される。GNPの0.6%が失われていく。将来のエネルギー問題について考える場合に決して避けて通れない問題なのに。

話は変わるが、首都圏で工事が未定だった外郭環状道路(外環道)の練馬・世田谷間の建設工事が始まった。約16kmの工事は1兆2800億円、原発再稼働を批判する東京のテレビ局がこの建設にも「疑問」を呈していた。これだけの建設費でメリットはあるのか。無駄の公共事業ではないか、と。

少なくとも首都圏で仕事で高速道路を利用している人に聞けば、おそらくほぼ100%の運転手が外環道の必要性に同意すると思う。地域だけの高速道路で唯一黒字を出すドル箱が首都高速である。しかし首都高速は、都心から放射線に伸びる道路ばかりでそれらをつなぐ環状道路がなかった。東京の東部から西部へ移動するにも混雑する都心を通らなくてはならない。外環道が一部開通したが、常磐道、東北道路、関越道路が首都高速に入る箇所をつなぐだけだ。まだ中央高速、東名高速まで伸びていかず中途半端な状態だった。

したがってこの区間が開通すれば、首都圏の車の流れは遥かにスムーズになりこの首都圏の活性化につながる。首都高速の慢性的な渋滞は無駄な時間の浪費でありそれはコストの浪費そのものだからだ。外環道の練馬・世田谷間建設開始は、地方の整備新幹線よりずっと緊急を要する事業だと考える。

単純に比較するのは禁物だろうが、今日の化石燃料増で失われる年間3兆円の国富と比べたら、外環道の建設費1兆2800億円ははるか「安上がり」の費用だと思うのだが。