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こんな夜にはこんな読書「SAVING FISH from DROWNING」

2009-03-31 06:20:25 | こんな夜にはこんな読書
女会に参加するために読み始めた

AMY TANの「SAVING FISH from DROWNING」の全474ページを
半年かかってやっと読み終わった。

この本の2ページ目で
主人公は殺されたばかりであることを告白して物語は進むのだけれど

その知りたくて堪らない死因は469ページでやっと明かされる。

その間主人公の生い立ちやら
ミャンマーの政権批判やら

いろんなところに話が行く。

深くは理解できなかったはずだけれど
深刻な話なのに

ところどころに笑いが仕掛けられてて
なんとか最後まで完遂。

せっかくなので記念に
いちいち訳した4ページをここに残そう。

「1章 縮小版あたし史

 それはあたしのミスではなかった。
 もしグループがあたしの旅程をあちらこちらで変更したりせずに従っていたら
 この大失敗は起こらなかっただろう。
 しかしながらそうではなかったので、おわかりのとおり、
 残念ながらこう言わざるを得ない。

 『ブッダと同じ道を歩む』とはあたしがこの大冒険に名づけた名前だ。
 その旅程とはヒマラヤの景観と果てしない春の花々が咲き誇る場所、
 中国の南西、雲南省からスタートし、
 かの有名なビルマロードの南に続くというものだった。

 この旅程を行くことで、数千年、数千マイルにも及ぶ仏教美術に
 多種な信仰が与えた驚くべき影響の奇跡を追う、
 過去へのワクワクする旅になるはずだった。

 もし充分な魅力に欠けるようだったら
 ツアーリーダーにだってガイドにだってなって
 この大冒険をほんとうに価値ある旅にできるだろう。

 しかし12月2日のたった数時間のうちに、
 この旅に出発することになってたちょうど14日前に恐ろしい出来事が起こった、
 あたしは死んだのだ。そこで。

 やっとこのことを告白できたわ、ほんとうに信じられない。
 まだその悲劇の新聞巻頭だって思い出せる。

 『社交界の名士、カルト教団に殺される』

 その新聞記事はほんとに長いものだった。
 新聞の1面の左側に2段落。
 先物売買で完全に台無しになったアンティーク生地の織物を着たあたしのカラー写真とともに。

 それはひどい記事だった。
 『ビビ・チャン、63歳、小売専門家、社交界の名士、
 アジアアートミュージアムの役員の遺体は
 ウニオンスクエアの彼女の店のショーウィンドウの前で昨日発見された。
 名声不朽のシノワゼリ・・・』

 鼻持ちならない単語『シノワゼリ』、気取った方法で見下した言い方。
 新聞記事は続いて凶器について不明瞭に言及してる。

 あたしの喉を切断したと思われる熊手風の小さいもの、
 あたしの首に巻きついたロープ

 刺殺に失敗したあと、窒息死させようとしたと示唆するもの。

 ドアは無理やりこじ開けられ、血まみれのサイズ12の男性の靴あとは
 あたしが死んでた壇からドアの外へと続き、通りの下まで続いていた。

 あたしの遺体の横には宝石と壊れた像があった。

 ある情報筋によれば、
 サタンカルトの犯行声明を示す紙がそこにあったんだとか。

 2日後、写真なしの短い記事がまた載った。
 『アートパルトンの死に新証拠』。

 警察の報道官によると、
 それはカルト教団による反抗であるとは一度も示唆してないと説明した。
 刑事が言った、『ある新聞によると』これはタブロイド紙を示すのだけれど、
 報道陣がタブロイド紙はなんと書いたのかと聞いたところ
 刑事はタブロイド紙の一面『サタン教団、再び殺人予告』を示した。

 報道官は新証拠が発見され、容疑者が逮捕されたと述べた。
 警察犬があたしの遺体から続く血のあとを追跡したとのこと。

 それは人間の目には見えないのだけれど、と報道官は続けたが
 その出来事の1週間あとでもハイレベルに訓練された警察犬には嗅ぎ取れる微量の匂いだったと。
 あたしの死は出来事?

 犬の追跡の結果、小さい路地にたどり着いた。
 そしてたくさんのゴミが入ったショッピングカートの中に血のついたスボンが見つかった。

 そのすぐ近くに、防水シートと厚紙でできたテントが見つかった。
 そこに住んでたホームレスは現場に残された証拠の足跡と同じ靴を履いていたので逮捕された。

 容疑者に犯罪履歴はなかったけれど精神的な問題を抱えていた。
 事件は解決。

 いや解決はしてないかもしれない。
 あたしの友達がビルマで道に迷ったすぐあとに
 新聞はこう報じた『店主の死は精神異常者による偶発事故』

 理由も、動機も、責めるべき相手も存在せず、
 ただ『精神異常者』この憎らしい単語があたしの名前の横に永遠に。

 そしてなんであたしが『店主』に格下げ?
 さらにホームレスと血痕のついたずぼんと靴のDNA検査によると
 そのホームレスは容疑者ではないということがわかった。

 じゃあ、誰があたしのギャラリーに押し入って、足跡を残したってわけ?
 単純明快な事件じゃなかったっけ?

 誰が一体この精神異常者による偶発事故を起こしたの???
 まだそれ以上の調査については触れられてなかった、恥じを知れ。

 同じ記事の中ではさらに『奇妙な偶然』として
 『ビビ・チャンの計画したビルマロードへの旅で
 11人が仏教美術を見に行ったが行方不明』と報道していた。

 ひとがどう非難の矛先を向けるか、想像できるでしょう?
 彼らがしてることと言ったら
 充分に説明できない、あてにならない関連性でもって
 まるであたしがはじめから不運に見舞われた旅を計画してたかのよに匂わせてる。

 全くのたわごとだわ。

 この件について最悪の部分といえば
 あたしがどう死んだかを全く思い出せないことだわ。
 その最後の瞬間、あたしは何してた???

 あたしを死に至らしめた凶器を使った犯人をあたしは見たかしら?
 痛かった?

 あまりのむごい出来事にあたしはきっと記憶をシャットアウトしてしまった。
 それは人間として自然な流れ。

 そしてあたしは死んでるというのに、まだ人間でいるの?

 検視の結果、あたしは絞殺されたのではなく
 自分の血で窒息したのだとか。

 聞くだけでおぞましい。
 今のところ役立つ情報は何もない。

 あたしの喉を切断したと思われる熊手風の小さいもの、
 あたしの首に巻きついたロープ、
 事件ではなく事故?

 そんな風に思うのはばかげてる、少なくとも証拠があるんだから。

 死体解剖では身体を撮影された。
 特に損傷がひどかった首のあたりを。
 遺体は今後の研究のために金属製の引き出しに保存された。

 そこで数日間横たわる間
 身体のパーツがサンプルとして切り取られていった。

 毛胞、血液、胃液と、綿棒などで採取され。

 検視局長が休暇でハワイにいるからという理由で、それから2日経った。

 サンフランシスコ・クロニクル紙が言うよな、
 ただの小売店コミュニティの業界というわけではなくて、特に美術の業界で、
 あたしには名声があったから、
 犯罪法医学の分野に携わるひとは名声を高く評価するので
 その検視局長は自分が出ていってあたしの解剖に携わりたかったのだ。

 彼らといったら、お昼どきに
 なぜあたしに早すぎる死が訪れたのか、残酷な推測をした。

 数日の間彼らはあたしの中身を出したり、入れたりして
 あたしの胃の中身や脳内血管の完全性や、
 個人的な癖や過去の健康状態の履歴などについて
 ひどい言い方をした。

 軽食を食べながらの赤の他人にあまりにもおおぴろげに話されすぎて
 むしろ耳をふさぎたくなるよな会話だった。」
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