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こんな夜にはこんな読書「江戸川乱歩全短篇2」

2007-11-03 04:27:58 | こんな夜にはこんな読書
こんな夜にはこんな読書「猟奇の果」を読んだ、件の編集屋さんから
こんなメールが来た。

「『猟奇の果て』は乱歩の失敗作ともいわれており、まとまりに欠けるんです。
 連載作品だったのですけど、人気が低かった&乱歩がスランプ気味だったので、
 当時編集者だった横溝正史が
 『明智を出したらいいんじゃね?』とかいったせいで、より混迷を極めて
 あんな感じになったという作品です。
 余韻しかいいところがない、ともいえるぐらいの作品です。

 (中略) 

 そんなわけで、初心者向けの作品ではないので、
 とりいそぎ『屋根裏の散歩者』か『何者』あたりから
 読んでいただきたいのでがいかがでしょう。」

言われてみれば、言われてみれば、だからだけれど
「猟奇の果」を読んでいて
あー、このタイミングで明智が出てくるんだと確かに思った気がする。

ということでとりいそぎ
「屋根裏の散歩者」と「何者」が収められてる、
「江戸川乱歩全短篇2」を読んでみる。

「屋根裏の散歩者」は「猟奇の果」と話の造りが、
主人公の性癖や人生に退屈してる点が、同じじゃんと思いつつも
先入観があるせいか、「猟奇の果」よりはすっきりまとまってる気がする。

「何者」は裏の裏の裏の、そのまた裏をかかれて
最後まで推測を裏切られっぱなしだったので
純粋に転げ落ちることができておもしろかったーと思った。

件の編集屋さんにはお会いしたことがないけれど
彼の文章から彼は豊かなひとだという雰囲気が漂っている。

乱歩のスランプ云々という裏話も知りつつ読めば
作品に対する目線はもっと奥深く、また興味深いものになる。

けれどもう乱歩はお腹いっぱい。

彼の読者は「水戸黄門」みたいに
20時10分ごろに犯人が屋根裏を徘徊する趣味を持っている驚愕の事実がわかって
20時40分ごろに目出度く事件が解決して
明智が犯人に自首を勧める型にはまった推理小説が読みたいのだろうか、

と決め付けてしまうのは早計だろうか。
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