ああ、今日も目が覚めた、と思う。
夫の闘病中もそうだった。
でも、それ以前からもずっとそうだったことを思い出した。
夫は病気になる前、
休みの日にごろごろして無為に過ごすことが嫌いだった。
家の回りの小さな修繕などを
何かしらことこととしてくれた。
子どもたちの休みと重なることは少なかったけれど、
たまに同じ日に休みになると
思いついたように突然、ドライブに行こうと言った。
でも、いつも初めて行く行楽地に連れて行ってくれたから
きっと、前もって行き先など考えていたのだろうと思う。
誘い方が突然で、行き先も言わなかったのは
子どもたちを驚かせたかったからだろうか…
お休みが平日で
天気が悪いと
何もできないで一日が終わることがあった。
そんな時
夫は決まって
「今日は何もしなかったなぁ」と嘆いた。
どうして
あんなに
いつもいつも
何かをしていたがったのか…
今思うと、
自分の時間が少ないことを予感していたような気さえする。
夜、布団に入った夫が
「今日は何もしなかったなぁ」と嘆くと
私は
「何もできなくても、
こうやって夫婦揃って
あったかいお布団で寝られることが
何よりの幸せよ」と答えていたことを思い出した。
そうだったのだ……
あの頃の
あの平凡で平穏な時間こそが
貴重で
何より幸せな時間だったのだ……
最近になって
ようやく
夫が元気だった頃に交わした言葉などを
少しずつ思い出しつつある。
それは
ひとつひとつ
心を暖めてくれるものなのだけれど
同時に
心がえぐられるような思いもある。
あの頃、
あんなことを言いながらも、
本当に、
その貴重な時間を
大切に過ごしてきたのかと自分に問えば
どうだったのだろうか…
そして、今も
私は何をしているのだろう…
本当にやりたいこと、
やらなければならないこと……
無為に過ごすことをやめたい。
あの頃の夫の思いが
何となくわかるような気がして……
今日は何ができるだろうか…
何為すということもなき日々なれど
朝な夕なに君思いおり
君思う
ただそれだけの日々なれど
ただそれだけが今の幸せ