脳腫瘍の夫と共に

2010年4月グリオーマと診断された夫との手探りの日々…

あのころ・・・

2014-06-16 21:08:35 | 私の思い 3
だんだんと
できないことが増えていったころ・・・


わたしは
夫に
いのちのおわりが近いことを悟られてはならないと
必死で笑っていた

「あんたはどうするんや」と夫はくりかえし尋ねた。

失語がすすみ
意味を成す言葉をほとんど話せなかったのに
たどたどしい語り口で
夫はくりかえしその質問を口にした。

あのころ、夫はきっと気づいていたのだ。
自分がいなくなったら
わたしたちはどうやって生活していくのかと
そのことをくりかえし心配していたのだ、と思う。

わたしは
その質問の意味に気づきながら
気づかないふりをし続けた。
夫が
残してゆく家族のことをどんなに心配してくれていたか
そして答えようとしない私に
どれだけ失望し、絶望していったか。

最後の時間を
穏やかに過ごすどころか
わたしは
夫の問いにこたえようとせず
夫を絶望へと追い込んで行ったのだ、と思う。

できなかった。
夫のいのちのおわりがちかいことなど
決して認めることはできなかった。

けれど
それは
わたしのおもいであって
わたしが認めようと認めまいと
その「とき」は確実に近づいていたのだ。

いちばん大切にすべきは
当事者である夫の思いだったのだ。

どれだけ悔やんでも
もどれない大切な時間を
無為にすごしてしまったことへの
切り裂かれるような胸の痛みと懺悔の思いを
わたしは
ずっと
忘れてはならないのだ。

コメントを投稿