人生いろは坂

人生は山あり谷あり、そんなしんどい人生だから面白い。あの坂を登りきったら新しい景色が見えてくる。

懐かしき玉造温泉

2009-02-01 06:12:08 | Weblog
 2月28日(水)は実に素晴らしいお天気であった。とは言いながら
瀬戸内沿岸地方(特に岡山県側)では、さして珍しいことではない。
しかし、この時期、山陰地方では滅多にないことではなかったろうか。
しかも朝から夕方まで快晴だったと言うのは、晴れの国と言われる
岡山でも滅多にないことである。

 この日、私達は早朝に家を出た。電車に乗り岡山に着き、そこから
高速バスに乗った。一般道から高速道路へ入った頃から次第に空は
明るくなってきた。

 昨晩は、かなり冷え込んだのだろうか。周辺の雑木や杉や檜の先が
霜で白くなっていた。これらが朝日の中で、より一層白く輝き実に
幻想的な眺めであった。また、あまりの冷え込みからか、谷の深い
ところでは雲のように霧が棚引いていた。

 いよいよ県境近く蒜山を過ぎ大山が近くなった。それまでは、ところ
どころでしか見ることが出来なかった雪が、この周辺では、たくさん
残っていた。また、多くの竹藪では竹が大きく曲がり、中には雪の重さ
で裂けたものもあった。かなりの大雪がこの地方に積もったことを伺わ
せた。

 雲一つない青空の下で蒜山三座、続いて大山の勇姿がくっきりと
見えていた。伯耆溝口あたりであろうか、大山に続くなだらかな棚田
の向こうに伯耆大山が悠然と聳えていた。実に絵になる景色である。
私は昨晩の睡眠不足も忘れてカメラのシャッターを押し続けていた。

 そして松江に着いた。実は、雪の中を歩くことを期待していたのだが、
さすがに松江市内の雪はほとんど解けていた。日陰のところどころに
わずかばかりの薄汚れた雪が固まっていた。

 松江に着いたとき、家内が松江市内に住んでいるSさんのことを
思いだした。そして、声だけでも聞きたいと思い電話した。電話に
出たSさんは趣味のスキーで大山に行っているとのことであった。

 折り返し奥さんから電話があった。Sさんが奥さんに電話してくれた
ようだ。思いついて電話したので出てこられなくても良いからと言った
のだが、ぜひお会いしたいからと私達が歩いていた松江城近くまで出て
きて下さった。本当に申し訳ないことをした。何か他に用事でもあった
のではあるまいか。

 聞けば転倒し肩を骨折してリハビリ中だとか。車の運転が出来ない
ので歩いてきたとのこと、本当に申し訳ない。

 私達は奥さんに会う前に「堀川めぐり」をした。この船は冬になると
炬燵が設置されている。私達は炬燵の中に足を入れ、船頭さんのガイド
を聞いた。

 松江城の堀は今も残っていて、お城の周辺を一周出来るようになって
いる。お堀は宍道湖に繋がっているとのこと。幾本もの橋が堀に架かって
いて、中には船の屋根を下げなくては通過できないようなところや、
船の幅いっぱいの水路もあって面白い。

 また、お堀の周辺には、手つかずの自然がそのまま残されていて非常
に緑豊かな掘り割りである。水路の片方には武家屋敷や、この堀の水が
生活用水だった頃の名残の古い石段なども残っていた。

 日本に城下町は多く、お堀も残ってはいるが、多くは道路になって
いたりと、完全に残っているところは少ない。その意味に於いて実に
貴重な水路ではなかろうか。

 私達はSさんの奥さんの案内で松江城に登ってみた。明治以降、多く
のお城が取り壊されたが、ここ松江城は昔のままに残されていた。
むろん何度か修理は繰り返しているようだが、柱や天井の梁など主たる
部材は昔のままである。今は国の重要文化財になっている。

 もう午後だと言うのに、ここからも大山の姿がくっきりと見えた。
銀白に輝く大山である。殿様もその昔、ここから大山を眺めたので
あろうか。

 私達は当初の予定通り午後四時近く電車に乗って玉造に向かった。
玉造温泉はここ松江駅から二駅目である。最初に訪れた時から、もう
四十数年が過ぎてしまった。当然のことながら四十数年前とは大きく
変化した町並みであった。変わらないのは温泉地の中央を川が流れて
いること位で、ホテルや旅館は威圧するほどの巨大さであった。

 また翌朝、町の中を歩いたのだが、ホテル以外に見るべきものもなく
街は非常に寂れていた。昨年の温泉地「湯村温泉」と同じで、大きな
ホテルや旅館が客を取り込んでしまい、街の中の土産物店など見る影も
なく寂れている。

 これでは温泉地を訪ねた客としても何となく物足りなさを感じる
のではないだろうか。地方都市の衰退と同じように人の生活が直に
感じられるような街づくりが望まれる。

 私達は、この街の温泉宿としては特異な存在である「華仙亭有楽」
という旅館に宿泊した。各部屋の中にも露天風呂があるというのが
この宿の売りであろうか。

 しかし部屋の作りより、私達は「有楽」のサービスと食事を楽しんだ。
ここの従業員さん達は相対的に若く、一人が何役もこなせるような
システムのように見えた。この方が一人に多少高い給料を払っても
経営的には良いのではなかろうか。

 お点前で飲ませてくれる抹茶のサービス、紅茶、コーヒーや湯上がり
のレモン水の無料サービス等があった。また、部屋にも水のペット
ボトルが置いてあり、宿泊費はサービスでカバーして余りあるように
感じられた。とかく儲け主義に走りがちなこの業界にあって、実に
良心的な運営ではないだろうか。

 しかし、玉造温泉トータルで考えたときに観光資源(歴史的遺物や
遺跡が多い)を十分に活用し切れていないような感じがした。お客は
単に温泉や食事を楽しむだけでなく、街の雰囲気も楽しみたいと思って
いる。その点に於いて少しがっかりしたことは否めない。

 これからの観光は量より質の時代である。安く大量に食べさせるより、
洗練された料理を味わいたい。ほんの些細なことでもお客にとって新鮮
に感じられるサービスはあるはずだ。

 サービスに関しては、その立場にいる経営者や従業員の心がけ次第
であろう。遠来の客を迎えるという心に、お金も投資も必要はない。
ただただ真心でお客に接することだけである。

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