湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

「湿」の詩パート8

2015-05-20 00:30:59 | オリジナル
共通テーマ「湿」でEが書いた詩を投稿します。

幼子の贈り物

母親に叱られた幼子の涙は
抱き上げて頬ずりすると
心地よいしめりけで
私の胸を洗ってくれる
おしゃぶりしていた手で
ペタペタと頬を叩かれた時
甘いかすかな幼子の香りが
私の胸を包んでくれる

若すぎるヤンキー娘は母となり
年老いた親は内職を仕事にして
何事もなく一日が過ぎて行く
ややもすると苦しい生活の中
満面の笑顔にカタコトの言葉
プクプクした頬と幼子のしめりけが
私の胸の中の何とも言えない
ベットリしたしめりけをぬぐい取ってくれる
嬉しい気持ちをありがとう


 海岸は広~いお砂場
「湿」の詩は6月3日14時~の合評会で取り上げます。
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「湿」の詩パート7

2015-05-19 07:13:53 | オリジナル
今日はTの書いたテーマ「湿」の詩を投稿します。

大切なもの

麹室の適度な温度と湿度で
麹菌は生きている
昔からの蔵には独自の菌が住みついているという

人の心も室のように湿り気があったほうがいい
それぞれの中にいる菌を大事に育てれば
発酵 熟成がすすみ
その人の旨味が増す
乾燥している人の選択は二者択一のみで
不透明な部分は見ようともしない
他人に忠告はしても
寄り添うことはない
周りと共にあることに気付かず
常に自分中心になる

湿度が高いことは快いことではないけれど
その中で密かに育まれていくものがある

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「湿」の詩パート6

2015-05-18 00:11:06 | オリジナル
共通テーマ「湿」でEが書いた作品を投稿します。

湿度百パーセント

ネオンチラチラ夜の繁華街
チューハイ片手に老人が歩く
   オウ 上出来じゃねえか犬のケツ穴
   息してやがらぁピクピクしてるぜ
   姉ちゃん ここらはあぶないぜえ
振り向いた女に
   なんだ婆さんじゃないか
ふらつく足で踏ん張る老人の丸い目が笑っている
背中を丸めて足早に立ち去ろうとする女の足元に
踏ん張りきれずに転んだ老人の缶がころがり
こぼれたチューハイのシミが犬の足をぬらす
顔をしかめてよろけた女は電信柱にあたり
フツフツと込み上げる怒りと痛さに
女の心は爆発寸前
老人はバツが悪そうによろよろと立ちあがり
ジワァーと温かく濡れたズボンの尻に手をあて
走り去る女の姿を見ている

雨上がりのむし暑い夜
それぞれの人生で交差した一点は
湿度百パーセント
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「湿」の詩パート5

2015-05-17 00:04:11 | オリジナル
今月のテーマ「湿」でAが書いた詩を投稿します。


ドロドロ

ドロドロを認めなければ
嫌いでも称えなければ
小さい村の中で殺される
暗黙のうちに人知れずあっけなく公に

よく知らない全能のいい人(らしい人)の悪意で
この泥沼は甘く匂い
強く粘っている
足が抜けない
全世界ドロドロの泥沼だ

「湿」の詩は6月3日14時~の合評会で取り上げます。
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五行歌

2015-05-16 15:45:03 | 
タウンニュース逗子・葉山版5月15日号に逗子在住の方の作品が載っていました。作者の金森さんは、小説もお書きになります。
 ミントの赤ちゃん
お孫さんを抱いた素直な感慨が伝わってきます。
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「湿」の詩パート4

2015-05-15 01:00:38 | オリジナル
共通テーマ「湿」でTが書いた詩を投稿します。
 神武寺隧道
のぞみ

街の喧騒が遠くに聞こえる
はじき出されて気付けば
湿地帯に立っていて
全てがゆがんで見える

街は健やかで前向きに生きている人達だけのもの
真実も未来を確信している人達のものだ

周りには病になりかかっている人 過去のみを眺めている人
他人に敏感な人達ばかりがいる
快晴で爽やか色の風さえ吹いているのに
足元は動かすたびにズボッズボッと地面に沈む
湿り気は下から這い上がって心身に浸み込み
思考も停止寸前だ
歩みを止めてしまったら朽ちて果てるだけだ

湿地帯だけは抜け出したい
力を振り絞って 
できることなら健やかさを装い
街で暮らしたい
私だけの真実をかざして 
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dog earとdog year

2015-05-14 15:17:42 | 
5月9~10日に開催されたよこすかカレーフェスティバルでカレーバイキングを楽しんだのですが、初めて体験した連れが「これってバイキングではないよね?」と言うんです。

500円払って中央にライスが盛られた仕切り付き容器(写真右)を受け取り、18ブースから好きな4種類を選んでよそってもらう方式なのですから、確かに食べ放題ではありません。いくらでも好きな料理を食べられるという意味ではなく、好きなもの(しかし全部カレー!)を選べるというメチャ狭義の「バイキング」ということですね。
ちなみにバイキングは、北欧でお祝い料理をテーブルに並べてお客さんがそこから好きなものを自分の皿に取って食べるスモーガスボードというスタイルが語源。
北欧といえばバイキングだよね!という短絡的な発想で名づけられたんだって

さて、前回の競作詩(テーマ「折る」)で、タイトルが英語になっている詩がありました。合評会で片仮名タイトルにして縦書きではいけないのかという疑問が出されました。これについても実は片仮名では意味が曖昧になってしまう恐れがあったのです。作者Aの説明は、以下の通りです。
片仮名だとドッグイヤーもしくはドッグイアと表記する、ページの端を折る行為がタイトル・テーマになっています。これをDOG EARSと記したのはDOG YEARSと混同されないようにするためです。DOG YEARは、人間の7年に相当するといわれる犬の1年のこと。転じてIT技術の進化の速さの意味でも使われています。
DOG EARS

最初にページの端が折れているのは
風の中で揺れていた光 

次にページの端が折れているのは
口の中で溶けていくアイスクリーム  

次にページの端が折れているのは
生まれたての弟の柔らかい皮膚 

次にページの端が折れているのは
好きな男の子がこっちを見る眼差し

次にページの端が折れているのは
ロックミュージックの音とリズム

次にページの端が折れているのは
彼の匂いと混ざったコロンの香り  

次にページの端が折れているのは
破裂しそうな胸の高鳴り

最後に端が折れているのは注釈のページ
*ドッグイヤー:ページの角を犬の耳のように折り曲げること。瑣事と不満の堆積に蔽われ見えなくなった人生の感動を思い出すための目印。

合評会では「こういう今までに感動したことは毎日のようにうっとりと思い出すから、私は目印をつけなくても大丈夫」というコメントもありました。
でも作者は違うんです。日々の苦労にばかり気をとられ記憶の底に埋没させてしまうんですぅ
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巻貝の奥深く

2015-05-13 16:28:27 | 
 葉山しおさい博物館で
巻貝の奥深く 
    
巻貝の白い螺旋形の内部の つやつや光ったすべすべ
したひやっこい奥深くに ヤドカリのようにもぐりこ
んで じっと寝ていたい 誰が訪ねてきても蓋をあけ
ないで眠りつづけ こっそり真珠を抱いて できたら
そのままちぢこまって死にたい 蓋をきつくしめて
奥に真珠が隠されていることを誰にも知らせないで


鎌倉文士の一人で、その名を冠した詩の賞もある高見順の最後の詩集「死の淵より」から。彼は東慶寺に眠っています。
逗子市立図書館報第3号に、逗子に仕事部屋を持っていたという記述がありました。
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体験を基にもっと強い詩を

2015-05-12 12:23:50 | 
5月の合評会で、下記のAの詩について話し合ったことをまとめます。

日曜日、父は枯枝を燃やす
  
日曜日の夕方には決まって
父が家中のごみを集めて庭で燃やす
火の力で家庭を清めたくて
庭の片隅にまとめ置かれた剪定枝を
時おり折ってくべながら
父は真剣な顔で火を見つめている

日曜日の夕方
私は二階の自室の窓から
父が焔を見つめる姿を
悲惨な心で見おろしている
庭に降りて行って隣に立ちたいのだが
かける言葉がひとつも浮かばない

月曜日の早朝
一家の系統樹の私の枝を折り砕き
ごみ箱に捨てて家を出て行く
私の破片は次の日曜日に
父が燃やしてくれるだろう
朽ちて乾いているから
音を立ててよく燃えるだろう
父は哀しい表情で
音が消えて灰になるまで
ずっと聞いているだろう

:作者の弁 :評者の弁
私小説的な詩ですね。
ほぼ実体験です。
実体験から飛び上がれていない印象を受けました。特に出だしが散文的。半分ぐらいの長さに凝縮すれば、全体的に言葉をもっと強くできるのでは?
実体験だから響く部分もあるけどね。最終連がいいですよね。なんか父も娘もかわいそうで。
最終行の「ずっと」が陳腐で惜しい。もっと小粋な終わり方にした方がいいですね。
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「湿」の詩パート3

2015-05-11 00:19:56 | オリジナル
昨日は横須賀の2公園でカレー三昧&薔薇三昧してきました。
 三笠公園
 ヴェルニー公園
では、共通テーマ「湿」でAが書いた詩を投稿します。

ウエット

湿度零パーセント
トーストし過ぎたパンみたいにパサパサだと思われてもいい
ウエットな関係はごめんです

湿度三十パーセント
急性には冷湿布、慢性には温湿布がいいそうだ
全身に温湿布、心に冷湿布を貼ろうかな

湿度四十パーセント
寒くなって湿度が日毎下がっていく時期には
ストーブの上で景気よく湯気と音を立てていたやかんが懐かしくなる

湿度七十パーセント
潮風が重たくて疲れる
でも潮騒を聞きたかったり水平線を眺めたかったりする

湿度九十パーセント
お湯の音が響いて視界がぼやけるような湯気がいいのに
なんで君は換気しながら入浴するの

湿度百パーセント
前にも言ったとおりウエットな関係はごめんです
なのにあなたに溺れている
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