袋角というのは鹿の生え変わったばかりの角のこと。
春に古い角が落ちたあと、新しく生え始める際に見られる、まだ柔らかい血の通ったこぶ状の角を言います。夏の季語なのですね。
「鹿」と言っていなくても、季節感と奈良公園に集まってきている鹿の群れが浮かんでくるお手本のような一句ではないでしょうか。
せんべいを持っているのが外人さんというところがミソかもしれません。
能登さん:外人さんの困り顔が、目にうかびます。なかなか袋角の季語は思いつきません。
千香子さん:②と同じような情景ですが、鹿が人を取りまくのが面白いです。
亜子さん:インバウンドの情景をそのまま淡々と詠んでいるが、目に浮かぶ。今の世の中を写すこれも時事句。
確かに観光地に大勢の外国人の姿が見られるという状況はまさに今を表わしています。
次はバンビです。鹿の子は夏に生まれるのですね。
鹿の子を取り巻き愛でる他国人 須美
泉さん:最初は①(表題の句)をとろうとしたが外人という言葉がひっかかりこちらにしました。
外国人との取り合わせは同じです。少し残念なのは説明調になってしまったかもしれませんね。
鹿を見ている外国人と 鹿に見られている外国人 6月句会に揃って登場したことが楽しいです。
リピーターも多い外国の観光客のお目当てが変わってきました。清水寺、金閣寺、伏見稲荷大社といった人気スポットはもちろんですが、一歩入り込んで町家の宿泊や和菓子作り、着物体験といった日本文化を実際に体感できるプログラムも高く評価されているそうです。
都市の喧騒を離れて田舎の秘境ともいえる自然を楽しんだり、人情味あふれる下町商店街の総菜などを購入して食べ歩きするなんてことも好まれるようになりました。すこしコアな日本に触れてみたいということなのでしょう。いずれ私たちの普通の生活スペースに「ハロー」とあらわれるかもしれません。日本の良さをあらためて教えられる思いです。 郁子