いつまで待させるんだ、としびれを切らしたかのように下仁田ネギがいう。それはこっちが言うセリフだといいたくなる。もういいだろう。いやまだだ。もうちょっと待とう。そんなことを言っていたら食べる時期を逸してしまう。そんなことを自問自答しながら待った。
霜柱が立ち、氷が張った。もういいだろうと満を持して登場となった下仁田ネギ。タネをまいてから14カ月。いよいよ食べる時が来た。そんな感じである。
冬ネギの赤ネギと九条太ネギの2種類は12月に入ってからさかんに食べているところだ。しかし、下仁田ネギだけは収穫せずに待った。じっと待った。もっと寒さにあたらないとうまくならないからだ。
下仁田ネギは見場がいい。茎は太くて、葉は青々として空に向けてまるで剣のように突き上げている。なんともうまそうだが、これに騙されてはいけない。
年の暮れが近づいたいまごろになると、寒さで葉は生色を失い、折れて倒れてくる。あの勇ましい姿はどこかに消えて、なんとも弱々しい姿になる。これが食べごろのサインである。この時を待っていた。厳寒の下仁田ネギはさすがにうまい。待ったかいがあった、というものである。