バイユー ゲイト 不定期日刊『南風』

ブルース、ソウルにニューオーリンズ!ソウルフルな音楽溢れる東京武蔵野の音楽呑み屋バイユーゲイトにまつわる日々のつれづれを

三陸を行く。(音楽がありました)

2011-07-22 | ある日の出来事

三陸路では被災地を訪れたことが大きな出来事のひとつだったのですが。そこには音楽がありました。人がありました。僕らが時に振りかざしたりする「音楽のリアリティ」なんてものを一瞬で凌駕してしまうような現実の凄まじさの中、人の手触りも生々しい音楽の場に身をおいてきました。

初日、大船渡の『秋刀魚だし 黒船』では「復興の狼煙をあげよう!」という思いを持って集まったミュージシャンたちの熱演が続き、長丁場のライヴを飽きることなく楽しむことができました。シャイさん意外はみんな初めて聴く方々。それを全部楽しめるって凄いことです。

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すべて楽しめたのですが特に印象に残ったのが及川智明さん。普段『東洋線』というバンドをやっているという彼の弾き語りは独特の手触りと熱があって素晴らしかった。110716_1735 (1曲のみ)方言で歌われた1曲目の、歌詞(の意味)が伝わり辛いからこその説得力?に身を乗り出してしまったら、もう最後まで釘付けでした。ギターと声の音の響き、なかなか意味がわからない(失礼!)歌世界。なのにじわりと胸の奥が熱くなる語り口。言葉がトンガッて突き刺さってくるというわけでもないんだけど心を熱くしてくれる不思議なメロディと歌心。声が魅力的だから、なのでしょうか?もっと聴きたい!と思わされるミュージシャンでした。(終演後お話しし、頂いた音源をバイユーで流しているので既に聴いたという方もいると思います。彼には近くバイユーで歌っていただく予定です!お楽しみに。)
東京から参加したAsia SunRise大樹さん、中山八大さんの豊富なライヴ活動によって培われた客席の心をガッチリつかむ熱いステージ!(彼らにも演っていただくつもりでいます)。そして地元のまっとさん、白石松則さんたち(彼らにも東京に来る機会があれば是非、と思っています)。誰もが競い合うような熱演でした。
そしてトップと最後の2ステージを務めたシャイさんのソウルフルなステージに(『イマジン』や『青い月…』『記憶』の沁みたこと!)

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お客さんも出演ミュージシャンも大興奮のエンディングを迎え終演。

その後、復興を祈り『手持ち花火大会』となったのでした。

110716_2154_2 大船渡の奇麗な月夜の下、大人たちが笑顔で大量の花火に火をつける。狼煙というより煙幕のようなケムリの中笑う。

目の前を通る道を少し下って行けば壮絶な被災地が広がっているのが嘘みたいに思えました。そんな風に思ったのは僕だけじゃなかったようで、他にもそんな声が聞こえてきました。

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でも時間を経て手に入れた「負けない。」という意志が伝わってもきました。
そんな今年初花火でした。

野球場の中に立ち並ぶ仮設住宅に泊めて頂いた翌日は
大槌町、陸前高田市でのライヴ。いずれの会場でもShyさんの歌が(炊き出しライヴ等の為、大興奮で受け入れられるわけじゃないけれど)確実に客席に笑顔を生み出してゆくのを目の当たりにしました。

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思わず声を失ってしまうほどの、歌さえも押しつぶされかねない圧倒的な現実の中で丁寧に届けられる音楽の誠実さが強く印象に残っています。

中でも忘れられないのが、県内でも最も被害が甚大な場所のひとつ陸前高田市の惨状を目にした後のステージで歌われた『What a Wonderful World』。文字で書く以上に勇気のいる選曲、そして音を慈しむような歌声に激しく胸を揺さぶられました。

帰り際、80歳くらいとおぼしきおばあさまたちが感激の面持ちでシャイさんと言葉を交わす場面を忘れることはないでしょう。

そして一緒にその時間を過ごしたMさんとふたりで夜道を一関まで走ったことも忘れることはないでしょう。
ただ行っただけ、になることのないようここで得たつながりを大切に生かしてゆきたいと思っています。

音楽が何にも勝る特別なものというようなある種、驕った気持ちはありません。ただ人間の営みのひとつとして大切なものである、ということは良くわかりました。主催した黒船の岩瀬さんや復興食堂を運営する方々は正しいのだと思います。
これからも微力ながら協力させて頂きたいと思います。
皆さんお世話になりました。