【全国有機農法連絡会 フォトニュース ブログ版】

有機野菜宅配の全国有機農法連絡会の農業、イベント、生産者のレポート、直営農場の様子など

~バングラデシュの農村運動~/伊庭 みか子

2006年11月20日 | 月刊「土の声」より
ナヤクリシアンドロン『土の声』を聴く

「ナヤクリシアンドロン」バングラデシュの無農薬農村運動。「全国有機農法連絡会」とのおつきあいのきっかけとなった運動であるばかりでなく、まさに『土の声』を聴き農業を文明の尺度として捉えるその精神が全有連と同じだといつも感じています。農村女性が始めたこの運動をぜひご紹介しましょう。

 80年代末、改良品種と農薬使用による近代化農業を続けて20年近く、気づけば川から魚が、在来種の稲が消えていた。農村では気管支炎や皮膚炎が増えた一方で、農薬や化学肥料の支払いと家族の食費に追われる毎日で生活は楽にならない。何かおかしいのではないかと思い始めた女性たちは、年寄りの話を聞き在来の稲の種子を集め、身土不仁と農業生態系の重要性に気づきます。在来種の栽培方法を知っている人々がまだ現役だったその時が、健康な農業を取り戻す最後のチャンスだという思いで、『有機農業運動』を掲げて脱農薬、脱改良品種の運動を始めました。

 ところが、時代を逆行する『懐古主義』運動だと大いにたたかれ、そこで、「昔に戻ろうと言っているのではない、新しい持続可能な農業をめざしている」という思いを込めてナヤクリシアンドロンという名称に変え、91年から本格的に活動を展開し始めました。「ナヤ」は新しい、「アンドロン」は運動、「クリシ」というのは耕作するという語源を持つ
『文明』という意味だそうです。土を耕すことから農村社会の新しい文明、価値観を築いていこうという思いが込められています。

 ナヤクリシの村では、どの農家もびっくりするほど多くの種類の作物を少しずつ栽培しています。本当の「生産性」というのは、単一作物の収量ではなく、人も動物も土地も皆が健康に生存できる作物をどのぐらい豊かに生産できるかということだからと教わりました。センターの学校では一日中子供たちの元気な声が響き、夜は皆で音楽をかなでながらそれぞれが一日を振り返る時間を持つ。時計もコンピュータもいらない自然共生する価値観が、人々の笑顔と共に生きているナヤクリシ農業には10の原則があります。それを皆が自信を持って実践している。本当に新しい農業、新しい文明というのは、先進国の実験室や論文ではなく、こんな普通の人々が自信を持って豊かに生活する中から生まれるに違いないと強く感じることができる。ナヤクリシの村はそんなところです。

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