今日という一日

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父と世界経済

2008-06-14 01:32:56 | 家族
最近たまに父のことを考えることがある。父は26年前に50歳の若さでこの世を去ってしまい、私の中で父は永遠に謎の人になってしまった。父が一体何を考えていて、どういう人だったのか、幸せだったのか不幸だったのか、どんな夢を持っていて何がやりたかったのか、何も聞かないままあっという間にいなくなってしまった。

父のことを考えていて、突然今日はっと気が付いたのだが、そういえば昔母から「パパは経済の本を書くのが夢だったのよ」と聞いたような聞かないような、なんとも頼りない記憶が蘇ってきた。

母に電話して
「お父さんって経済の本を書くのが夢だったって聞いたような気がするんだけど…」

「あぁー、そうだったみたいよ。毎日難しい本ばっかり読んでいるから『何でそんな難しい本ばっかり読んでいるの?』って聞いたら『将来世界経済の本を書きたいと思っている』って言うから、へぇーそうなの、どうぞ頑張ってくださいって思った。何だか知らないけど一生懸命勉強してるって感じだったね。」

「世界経済?そんなことやっていたの?知らなかった。お父さんって文章が旨かったの?」

「さぁー、読んだことないから分からない」

「じゃぁさ、世界経済の話とかしなかったの?」

「一度もない。どうせ話しても分からないって思っていたんじゃないの?」

記憶の中にいる父は日曜日になると朝からパジャマ姿のままダイニングテーブルの右端に座ってずっと経済書を読んでいた。日ごろは物静かで子供に対して怒鳴ることすらなかったのだが、一度だけ父の本を汚してしまったか、本を動かしてしまった時に、「絶対にお父さんの本に触るな!」と怒られたのを覚えている。「たかが本ぐらいのことで何怒ってんの、馬鹿みたい」とその時かなりむかついた記憶がある。それがきっかけで父がますますうざい存在になってしまい、うざい父が情熱を傾けている経済なんて興味すら持たなかった。

母に「あんた、何で急にそんなこと聞くの?」と言われ、何で急に思い出したんだろうと思った。先週、世界経済の話を聞きに行ったのがきっかけだったと思うが、その時はあの話と父が結びつくなんて思わなかった。ぼんやり経済のことを考えていて、そう言えばお父さんはいつも経済書を読んでいたな、一体何を読んでいたんだろうって考えていて、はたと思いついた。

今回母に聞いて初めて知ったのだが、父は大学時代はかなり優秀な学生だったらしく、経済学者になった飯田経夫さんという人とどっちが大学に残るかで争ったらしい。飯田さんはかなり裕福だったらしく、高価な本を次々買える身分だったらしいが、父はそんな余裕がなかったため、学問に生きる道をあきらめて社会に出ることにしたらしい。大学時代の成績もオール5だったと聞き、そこまで経済の道を極めようとしていたなんて想像もしていなかった。ましてや世界経済の本を書こうとしていたなんて…。

父は母とは本当に対照的な人で、寡黙で感情を表に出さないタイプの人だったから、何を考えているのかさっぱり分からなかった。やりたい放題の母をコントロールすることすらできない気が弱い父という風に見えていたが、経済に関しては内に秘めた情熱があったんだろうな。

26年も経ってからなぜ今気になるんだろう。ガンと宣告されてからの6ヶ月間、病室で毎日何を考えていたんだろう?何であんなにも全てを悟りきったかのように死を受け入れられたんだろう?父がどういう人間だったのか断片的な記憶をつなぎ合わせようとしても、あまりにも情報がなくてこれ以上膨らまない。父が情熱を傾けていた世界経済、そこに何があったんだろう?


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