村山 斉著 講談社BLU BACKS
なかなか興味を引くタイトルでしょう? しかし、サブタイトルに「最新素粒子論入門」とあるので、途惑うことになる。
しかし、読み進めれば納得はできる。確かに我々の体の構成要素を元素レベルまで分解すれば、素粒子で出来ていることは分かる。ここまでは分かるのだが、これは、素人考えだが、人間は無機質の集合体でしかないということになる。元素が集合して精神や思想がどうして出来るのか、には著者は答えてくれない。しかし、これは著者に無いものねだりするようなものだろう。著者は生物学者でも宗教学者でもなく、物理学者なのだから。
それはともかくとして、本書を読んでようやくスッキリしたことがある。それは、最近話題になった「ヒッグス粒子」の役割である。何度読んでもその存在理由が分からなかったのだが、今回とりあえず見当が付いた。つまり、こういうことである。「ヒッグス粒子が真空中にビッシリ詰まっているおかげで、原子はその場にとどまっているように秩序をつくっているのだから……この粒子がなかったら、私たちの体はもちろん、宇宙には地球も太陽も何もできずに、ただ素粒子がビュンビュン飛び回っているだけだった(139頁)」。
つまり、これがサブタイトルの存在理由。まっ、この他にもおもしろい記事がたくさんあるけれど、とても分かり易く書かれているので、敬遠せずに読んでみてほしい。