エストニア紀行

2013-02-18 14:44:46 | 日記

梨木果香歩著   新潮社刊

著者の博学に驚いた。並大抵ではない。特に鳥類、植物(著者がなりたかった職業に生垣職人だったそうだから当たり前か!)、とくに茸についてはやたら詳しい(単に食い意地がつよかったのかも知れないが)。このまま、里山の住人としても十分楽しい人生を送れそうだ。
もうひとつ。文章が上手い。とくに句読点の使い方が……。感情の流れが手に取るように分かる。文章が上手いのは季刊『考える人』で時折読んでいたので、ある程度察しは付いていたが、通して読むと尚更だった。それに取材に同行していた編集者、通訳、カメラマン、ドライバーの人物像も目が行き届いていて、丁寧に描写されている。
というわけで、ほっとした気分で読める本だが、同時にエストニアという国を改めて考えさせてくれる本でもある。日本人にはバルト三国は馴染み薄い国だが、地政学的な意味を含めてヨーロッパの複雑な状況が垣間見えてくる。
苦言をひとつ。サブタイトルが執こい。おそらく、出版社に配慮した結果なのだろうが、一本に纏めたサブタイトルを考えてもよかったのではないか?