天平グレート・ジャーニー

2013-02-01 15:08:15 | 日記

上野 誠著   講談社刊

サブタイトルは「遣唐使・平群広成の数奇な冒険」である。そして、タイトルの「グレート・ジャーニー」とは「漂流」を意味する。遣唐使には、漂流どころか遭難死すらあった。唐に渡るということは、命懸けのことだったのである。場合によっては日本を出発してすぐに船が転覆し死ぬことだってあった。今の常識で考えてはいけない。平群広成が唐に向かったのは天平5年(733)、当時の日本と新羅は最悪の状態にあり、朝鮮半島経由というコースは選択肢になかった。
これ以上は書かない。というのも、本書を通して天平時代の東アジアと日本の政治状況が分かる仕組みになっているからだ。ともかく、彼はこの時代にあって、長安・崑崙・渤海を見た男なのだ。
本書とは関係ないが、遣唐使と明治維新直後の海外留学生には共通点があることである。それは過剰なまでの日本の代表者という自意識と同時に、帰国後の出世・昇進という強烈な思惑を持っていたことである。この辺がよく書かれている。