宇宙の扉をノックする

2014-04-29 09:09:08 | 日記

リサ・ランドール著  NHK出版刊

やっと読み終わった。私にとってはこれはリベンジになる。前著『ワープする宇宙』で三回読んで、挫折した。というか、「5次元時空」という概念が掴み切れなかった苦い思いがあったからだ。
今回、それが氷解したかというと正直言って自信ない。しかし、前著よりはかなり分かり易く書かれているのは確か。という訳で何が分かったかと言うと、要するに宇宙に関しては過去も現状も、未来もまだ解明できてはいない、という事。しかし、かなりのところまでは分かりつつある、というのが現状らしい。
ただ、私が読んで良かったとおもうのは、例のLHC(大型ハドロン衝突型加速器)についてである。あの山手線一周ほどもある地下に作られた実験施設、ついこの間ヒッグス粒子を見付けたあの施設である。どうして見付けたと言えるのか、それがどうしても分からなかった。本書はこれらについて丁寧に説明されているのが嬉しい。どういう設備で、どんな実験をして、その結果をどう理解するのか、それを詳しく説明している。というのも、探している粒子そのものが見付かる訳ではないのだ。ある事象が観測された場合、結果から逆に類推して、この粒子が存在していない限りこの現象は起こらない。従って、この粒子は存在していた、と結論するのだ。
まるで犯罪の科学捜査みたいの手法だ。この類推する根拠を与えているのが、数学、著者の専門分野ということになる。
ここだけ読んでも、これから発表されるだろうこの実験施設の結果を理解するには役立つ。
今回はここまで。正直言って、3カ月かかりましたよ。


シモネツタのどこまでいっても男と女

2014-04-29 08:32:43 | 日記

田丸公美子著   講談社刊

久しぶりで著者のシモネツタシリーズを読んだ。イタリア語同時通訳の第一人者だけれど、私は米原万理との関連でこの人のエッセイのファン。相変わらずの軽妙な文章は面白いが、今回は少々趣きが違っていた。目次を紹介する「とかく夫婦はままならぬ」「男と女の仁義なき戦い」「波瀾万丈な父母の人生」「シモネツタの忘れえぬ男たち」。印象に残るのは三番目。
そうか、この人にもこんな背景があったのだと納得した。別に際立った人生ではない。私たちの世代ならば大小の違いはあっても、似たような人生を経た親を持っているから、この人も同じなんだなと思ったくらいだ。違うのは、これまでの著者の軽妙さを保ちながら、それを飾り気なく書ききっているところだろう。こういうことを書ける世代になったのだな、と思った。なかなかこうは書けない。著者の筆力に感心した。
それにしても、イタリア、特にイタリアの男たちの観察力は素晴らしい。同時通訳をするにはこれくらいの素養が必要なのだろうな。彼等のジョークに即座に切り返すには、さぞかし月謝を払ったのだろうな。