時代小説の江戸・東京を歩く

2011-03-16 09:44:39 | 日記
常盤新平著  日本経済新聞出版社刊
東京は、、オリンピックで道路事情は変わったとは言え、特定の場所は江戸後期の道筋とそう大きくは変わっていない。当時の地図を片手に、時代小説の舞台となった所を歩くというのは面白い企画である。私も経験したことがあるが、驚いたのは当時の人たちの歩く距離と時間である。ともかく早いし、健脚である。
それはともかく、本書に紹介されている店のなかには私も馴染んだ店が数店あり、中には足繁くかよった店もある。著者も言うとおり、味わい深い店もある。
しかし、問題もある。それは、そこに通う人々の気質がまるで変わってしまっている、ということである。例えば、鰻屋に行って白焼きを頼んだとする。今の人たちは30分もすると「まだ!」と声を上げる。生き鰻を裂き、焼き上げるまで一時間はかかる(本格的な店であれば)。その時間をどう按配するかが、客の度量というものなのだ。
老舗というのは店の雰囲気も大切だが、そこに通う客のマナーも大切なのである。両者が渾然一体となって、初めて良い店ということになるのだが……。
できれば、そうした空気を味わえる時間帯を教えて欲しかった。