臓器たちは語り合う   -人体 神秘の巨大ネットワーク-

2019-10-12 09:28:06 | 日記

丸山優二・NHkスペシャル「人体」取材班著  NHk出版新書

私の今年のベスト1になった!!
本書はNHkの「人体 神秘の巨大ネットワーク」の書籍版である。本で読む利点は何度も読み直しが出来ること。私も何度も後戻りしながら読んだ。
本書の最大のポイントは「体の中の臓器・細胞同士(腎臓・脂肪・筋肉・骨・腸など)は互いに語り合って働いている」という点である。「脳が全身を支配している」のではない!!(この意味、解るかな?)
そして、私達の遺伝子は「長生きしていい」と言っている。そのために人間の臓器のネットワークは絶えず働いているのだ!!ピンピンコロリではなく、ピンピンソロリと生きよ、と言っているのだ。物言えぬ臓器たちがだ! なんと素晴らしいメッセージではないか。そして、最近の研究ではアルツハイマーの治療のきつかけも掴めたとか。
ぜひ読まれるとよい。自信を持って推薦したい。私も満身創痍の身だが、こうして生きているのも臓器ちのお陰かと思うと、人間の身体を見直した。いや、褒めてやりたくなった。乾杯しよう!

“次の『遺伝子』編が発売された。早速、読むことにする”

 

 


鳥頭なんて誰か言った? -動物の「知能」にかんする大いなる誤解-

2019-09-05 09:29:50 | 日記

エマニュエル・プイトバ著  早川書房刊

地球上で一番賢いのは? ヒトである。なぜか? 道具を使うからだ。つまり、知恵がある。では、道具を使えば、その生き物はねヒトと同じように知恵があるのか? ヒトとどちらが上なのか?
本書は、この疑問に真正面から取り組んだ本である。実は、我々はすでに多くの生き物が道具を使ってることを知っている。著者はさらに観察を重ねてたくさんの例を挙げている。その結果は……知恵とは何だ、というところに行き着く。道具を使う、というヒトの優位性は怪しくなってくる。
それどころか、著者は最後の章でラマルクの「(賢いヒトは)地球を住めなくした後に、自分自身を自らの手で絶滅させる運命にある」という一節を引用しているくらいだ。どうやら、地球上で一番賢いのはヒトではないようだ!
追記 ところで、本書に登場する生き物にはリンネの二名法によるラテン語が付されている。彼女(著者) のルールならばヒトはヒト属ヒトのラテン語が付される筈なのだが、そうはなっていない。ヒトも生き物の一種類なのに……。ここに、著者の主張が隠されていると思うのは考え過ぎだろうか?

 

 


将軍家康の女影武者

2019-07-21 14:26:25 | 日記

近衛龍春著   新潮社刊

徳川家康の影武者をテーマにしたのでは、隆敬一郎の『影武者徳川家康』という傑作があるが、本書はその女性版である。
主人公は実在した家康の側室である。側室中ただひとり小石川伝通院の徳川家墓所に葬られていることからも見ても、その真実性が分かろうというものである。意外性もあって早速読んだという次第。
ただ、残念なのは主人公の背景の書き込みが不十分なため、どの程度影武者としての実力があったのかよく分からない。同じ意味で彼女の手足となる伊賀者や彼女の一族の存在も唐突すぎて、不自然である。
彼女が実際に戦場に参陣したのは関ヶ原、大坂冬の陣、夏の陣の三度である。いわば家康の総仕上げの戦である。面白のは、家康がこの戦は「戦の無い世をキ築く為」と言うのにたい対して、彼女が「その為にこれほどの人が殺されねばならないのか」と事あるごとに責め立てるところであろう。戦の矛盾である。もっとも彼女はそれでも影武者を務めるのだが……。もう少し書き込んでくれたら読み応えがあったのに、残念である。


皇室はなぜ世界で尊敬されるのか

2019-06-17 09:03:45 | 日記

西川 恵著  新潮新書

主として平成天皇・現天皇による皇室外交のこれまでの経過について書かれている。
通常、皇室外交はマスコミには概要が報道されるだけで、詳細を知ることはあまりない。本書も十分応えているとは思えないが、それでも庶民のわわれが初めて知ったエピソードが紹介されている。
本書を読了してつくづく思ったのは、平成天皇御夫妻の「慰霊の旅」である。その努力と「誠意」はとてもではないが、政治家ではできないことだ。それと、外交のスケジュールである。ハードなのだ。頭が下がる。
昭和天皇、さらには他の皇族方の外交も紹介されている。皇室外交について改めて考えてしまった。


交雑する人類 -古代DNAが明かす新サピエンス史-

2019-05-21 08:10:30 | 日記

ディヴィッド・ライク著 NHk出版刊

本書を読んでいる最中に朝日新聞で次の記事を見つけた。①「フィリピンに新“原人5万年以上前の化石」 北京原人、ジャワ原人、フローレンス原人、澎湖原人に続く第5の原人だ。 ②「16万年前の人類からの贈り物?ー現代チベット人に同じ遺伝子ー」 この人類とはデニソワ人という古代人。 ③「縄文人は脂っこいもの好き?ー脂肪分解しやすい遺伝子解析ー」世界で始めて縄文人の全ゲノム解析で分かった。
-本書は、この古代人のDNAの第一人者の著者の中間報告(多分?)。これが凄い! これまての常識ではホモ・サピエンスはアフリカを出て、独立独歩で世界中に拡散したことになっている。他の人類には出会わなかったはずだった。大雑場に言えば……。ところが。
原人は絶滅した古い人類で、現生人類のホモ・サピエンスの直接の祖先ではない。が、この古代人の遺伝子DNAが、現代の我々のDNAの中に数パーセント残っているのだ、ということは? そう、ホモ・サピエンスはアフリカを出発してから世界中に拡散する過程で、古代人と子孫を残すほどねんごろに交雑(この言葉使いたくないな。つまり、愛し合った)ということだ。もちろん、駆逐したとされているネアンデルタール人の遺伝子も受け継いでいる。つまり、敵対していたのではなかった。
本書の紹介はここまでにしたい。やや分厚い本だが、面白い。
本誌読了すると分かる事なのだが、敢えて書いておきたい。それは、人種差別は全く意味が無い、どころか「天に唾する」ようなものなのだ。年の為に重複を承知で言うと、他人の素性とやかく言う前に己の素性を確かめろ、ということ。なにしろ、我々は何種類もの古代人の遺伝子を受け継いでいるのだ。


遺稿『人類の闇と光』(仮題)

2019-05-01 08:26:23 | 日記

梅原 猛著  藝術新潮 4月号

梅原猛の遺稿が掲載された。
今月号には、 第Ⅰ部 新しい人類の定義、それは「戦争する動物」 が掲載されている。つまり、人類は動物の中で殆ど唯一戦争(同類の殺害)する動物だと定義する。梅原猛は何度も推敲することで知られているので、軽率には言えないが素晴らしいタイトルだと私は思う。
そこで、この章の小見出しを挙げて見る。第一章 同類の人類殺害を行う動物種 森の神フンババ殺害が意味するところ 小麦の文明と稲作の文明 何故人類は同類の殺害を行うのか  知・情・意の立場から人間を顧みる 一、知ーー理性の立場すらの人間の定義  二、情ーー情感の立場からの人間の定義  三、意ーー意志による人間の定義  「怨」で生まれたユダヤ一神教四、知・情・意以外のもうひとつ、「怨」すなわちルサンチマンによる人間の定義。
掲載されているはここまで。遺稿には第二章、第三章があるそうだ。この後、どう展開されていたのか気になる。一切の私情を排して章立てだけ紹介した。本当はいろいろ書きたいのだけれど、まだその整理が出来ていない。 

 

 

 

 


魂に息づく科学  -ドーキンズの反ポピュリズム宣言 - 

2019-03-09 09:15:03 | 日記

リチャード・ドーキンズ著  早川書房刊

久し振りの著書だが、これまでの科学的な著書ではなく、どちらかと言うと散文である。いかも、なかなかの文体なのである。寄稿分や手紙、そしてエッセイなどであるが、その舌鋒は少しも変わらない。すでに70歳半ばなのだが。それにしても「魂の…」とはドーキンズらしくないが、それは本文を読めば分かる。
徹底したダーウィン主義者が、「たとえば英国のブレグレジッド問題を、あるいは米国のトランプ大統領登場を……」どう論評するか興味ありませんか? 詳細は書きませんが、ダーウィン主義という生物学的信念を他の分野に応用したら…こんな風になるという実例です。その文体のキレのいいこと!!第一部の「科学のためにーチャールズ皇太子への公開状」などがシニカルなユーモアで゛面白い。
もうひとつ。彼の譲れない信念「神は妄想である」。これを遺憾なく表明した第四部の「メリー・クリスマス、首相」。これもなかなか……。

ただし、一気読みは出来ません。例のごとく脚注が多いのです。正直言うと、脚注の脚注が欲しいくらい。なんと読了まで三ヶ月かかってしまった!
瑣末な感想ですが、日本にこんな学者も、それを受け止められる+首相も大臣もいない!とツクヅク思いましたねぇ。

 


 

 


作家との遭遇 -全作家論-

2019-01-07 09:12:57 | 日記

沢木耕太郎著部分も   新潮社刊

断っておくが、著者の著作は一冊も読んでいない。本書が初めてである。もうひとつ。本書のうち読んだのは日本人作家の部分のみで、全体の六割弱でしかない。
しかし、読み応えは十分あった。採り上げられている作家の著作はまず殆ど読んでいたこともある。
ただし、著者の作家に対する「作家論」に必ずしも首肯したというわけではない。むしろ、深読みし過ぎというか、一方着な思い込みに付いて行けない部分もあった。
しかし、面白い読み方もあるのだな、とは思った。でも、これは「作家と作品の相関」学とも言うべき読み方で、疲れるだろうな(商売だから仕方ないか)。
それは置いておいて……読物としては面白い、


どこにでも神様 -知られざる出雲世界をあるく-

2018-12-17 08:52:39 | 日記

野村 進著   新潮社刊

本書は“知っている人ならば、良く知っている出雲”地方のルポルタージュである。
著者はそのマンネリを避けるため、女子大生五人と同行して、彼女達自身に「出雲」を語らせる方法を採っている。それなりの効果はあったと思う。
ただし、その成り行きで「水木いげるロード」を採り上げたのはどうだろうか? 私には違和感があった。まっ、著者と水木しげるとの親しさ(直接ではないが…)・思い込み(というか、ファン)を考えれば許してもいいけれど……。
しかし、著者が言うように出雲(水木さんは別として)は独特なところだと思う。四半世紀前にも数度行ったのたが、神魂(かもす)神社は特に印象深い。それを確かめるために三度も行ったのだが……。
その頃は訪れる人も少なく、立派な社務所もなかったと記憶しているが、確かに、何者かが「御座(おわ)す」と感じた。それも、全身で感じた。それを「神様」だと断言することは、私には出来ない。二度と同じ体験をしていないし、なにしろ神様にお会いしたことは一度も無いので…。

 

 

 

 


科学者はなぜ神を信じるのか  -コペルニクスからホーキングまで-

2018-11-24 09:17:28 | 日記

三田一郎著  BLUE BACkS 講談社刊

科学者の気持ちは分かる。なにしろ、“無”の状態からビッグバン(聖書によれば「光あれ」)が起こり、宇宙が誕生したと言うのだから…。本当だろうか? 全ての原子は宇宙誕生後であるから、“光の元”がある訳がないのに……(この件については本文を読んでしい)。私はリチャード・ドーキンスの「神は妄想である」説を断固支持しているので首肯できない。
著者は素粒子物理学者で「B中間子系におけるCP不変性の破れ」の研究の第一人者である。と同時に、カトリック名古屋司教区終身助祭でもあるのだ。従って、ここで著者が言う神はキリスト教の神で、イスラム教や神道の神ではない。
本書は副題にあるとおり、歴代の科学者が宇宙問題とどう取り組んできたかを「神」との関連で分かり易く解説してあるので、じっくり読んで欲しい。
さて、私の読後感。著者の結論は、「無境界宇宙を創った科学法則」を創ったのは神である、そうだ。
そこで私の疑問というか質問は、「では、その科学法則を創った神は何処に居る? である。神は“天”とかに居るのだろうか? “天”と宇宙はどのような存在関係にある?」「宇宙は他にも在って、“天に居る神”がコントロールしているのだろうか?」

宇宙を創った神(及びその存在場所)と、宇宙との相対関係を明らかにしてくれないと、著者の結論は受け入れられない。