世界史を変えた新素材

2018-11-18 08:42:38 | 日記

佐藤健太郎著   新潮選書

新鮮な視点である。
それは、あなたが同様の質問で、「新素材(=材料)12挙げてみよ」と言われてみたら分かる。
まず「金」「鉄」「紙(セルロース)」、「アルミ二ウム」「プラスチック」「シリコン」。ここまで挙げられれば大した者。いや、「ゴム(ポイソプレイン)」も忘れてはいけない。今日のモータリゼーションはこれをなくしては考えられないからネ。
しかし、「陶磁器」「磁石」「コラーゲン」「炭酸カルシウム」「絹(フィブロイン)」となるとどうだろうか?
間違えてはいけない。あくまで「世界史を変えた」「新素材(=材料)」であって、「技術」ではない!
著者は賢明である。もし、素材を使った「技術」という視点に及べば……そう、おぞましい兵器・戦争にまで話が行ってしまう! ひさしぶりで、新しい視点からの科学史を読んだ。


いずれの日にか国に帰らん

2018-11-15 09:03:40 | 日記

安野光雅著  山川出版社刊

「国」とは、著者・安野光雅の島根県津和野のことである。動機はともかく、本書はその思い出(昭和初期の頃)を描いた画集である。
私が言いたいのは、これは彼が画家・安野光雅として描いたものではない、と言うか、その気負い見られないのだ。ちょっと絵が゜得意な者が「ボクが生まれた家はココ、隣の家は〇〇屋で、その前に川があってネ、そこでサワガニを捕ったんだ」と、呟きながら描いたような絵なのだ。
これが良い、故郷の町並み、山々の四季、小学校、もちろん当時だから馬車や人力車も描かれている。なんとも仄々した郷愁滲み出ているのだ。実際、私も絵ではなく(描けない!)、小中校時代の街並みの地図を描いてみたほどだ(独り言を言いながらね!)。
構えていない安野光雅の絵をはじめて観た。なんとも懐かしい想いを起こす“絵本”だった。


国境なき助産師が行く  -難民救助の活動から見えてきたこと-

2018-11-11 08:58:17 | 日記

小島毬奈著  ちくまプリマー新書

「国境なき医師団」に助産師として参加した女性の手記。難しいことは書かれていない。むしろ、同医師団の仕事がどれほど大変なことかが嫌やというほど分かる。
ところで、同医師団=MSFの面接を受ける時には「私は中絶のために業務を遂行します」という同意書にサインすることが義務付けれているそうだ(初めて知った!)。医療者でなくとも海外スタッフは、全職種しているそうである。助産師である彼女にとっても、いや、宗教上納得できないスタッフもいるはずだと思うのだが、それが途上国・難民救助においては女性の立場・命を守るために絶対必要なのである。
何故か?  中東やアフリカ、東南アジアの民族紛争や宗教戦争、テロ行為の報道をみれば、敢えて例を挙げなくとも分かるだろう。詳しくは本文を読まれたい。遣り切れない!
しかし……こうした情況に耐えて、著者を含めてたくさんの人々が薄給にも拘らず頑張っている。せめて彼女のブログを経由して少しばかりの募金に応じたいと思っている。


絶滅の人類史 -なぜ「私たち」が生き延びたのか-

2018-11-02 09:37:03 | 日記

更科 功著  NHk出版新書

何故「私たち」が生き延びたのか?
答えは『「私たち」が賢い人=ホモ・サピエンスだったからではない!』 『私たち特別な存在ではなかった!』 これが本書の結論だ。
では何故、ネアンダルタール人をはじめさまざまな人種が歴史上誕生してきたが、結局生き残ったのは私たちだけ。その理由は?ココが本書の読みどころ。
ただ、私たちは「人類 最後の一種」なのだ。……一万年後、私たちは生き残っているだろうか?  「 病中 閑あり」 も悪くはない。

 


ほぼ命がけ  サメ図鑑

2018-10-31 10:35:49 | 日記

沼口麻子著   講談社刊

これも゛病中 閑有り゛の一冊。
一言で言えば“ユニーク”な本!しかも著者は東海大海洋学部・大学院でサメの生態を研究した暦とした生物学者。
そして、本書の構成もユニークだ。サメのよろず相談(サメに天敵はいるか?等々)、体当たりサメ図鑑(もちろん普通の図鑑と同じように和名・学名・英語名・図・分類・全長・形態の特徴・行動目生態の項目が記載されている。これだけでも十分価値がある)、世界サメ巡礼、フカ掘りサメ講座(まず大抵の人は知らないだろうな)。
それにしても、なんでサメなんだ!現在の肩書きは「シャークジャーナリスト」 多分、世界でたったひとりだろう。しかも、なんと彼女の後継者候補がいるそうだ。沖縄の小学4年生の女の子、中学1年生と小学3年生の男の子。いずれもサメが大好きな子供達らしい。いや、世の中広い。
楽しく読んだ。


古典歳時記

2018-10-30 11:05:55 | 日記

吉海直人著   角川選書

面白かった。本書の成功の一因は、旧暦と新暦の「ズレ」に着目したことだろう。いや、多くの歳時記もこれには触れている。本書ではそれが「太陰太陽暦」に基づいていることを詳細に説明してある。これからいろいろなことが分かるのだが、それは本文を読んで欲しい。
この「ズレ」が分かると、歳時記の本来の意味が分かるし、昔の人の知恵に感心する筈だ。
そして、この知識があると百人一首や源氏物語、枕草子、徒然草をもう一歩深く理解できる。それに、チョット一言、ウンチクを傾けられる楽しみも……。これも、病中 閑有りの一冊。

 

 

 

 

 

 

 


日本人、最期のことば

2018-10-30 10:35:27 | 日記

西村 眞著  飛鳥新社刊

゛病中 閑有り゛ということで入院中に読んだ本を何冊か。
そこで本書。正直言って期待外れだった。特に「日本人、」とタイトルに入れた意図が中途半端。
もちろん前文には、日本人の死生観や欧米人との違いがあることを指摘している。しかし、個々の人物の臨終の言葉なると、それらがどのような背景、思想、人生から生じたのかについての詳細な指摘がされていないように思える。
もう少し著者独自の分析が欲しかった。この程度ならば個々の伝記で十分知られているだけに残念だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                  


知の果てへの旅

2018-05-31 08:13:34 | 日記

マーカス・デュ・ソートイ著   新潮社刊

著者は二代目シモニー教授(初代は例の『神は妄想である』の著者リチャード・どドーキンス。詳細はp35)、と言えば察しが付くだろう。本来は数学者で『素数の音楽』の著者といえば知っている人も多い筈。本書は、そのシモニー教授としての著書。
テーマは「知の限界はあるのか、今現在どこまで分かっているのか」である。それを「最果ての地」として、その一からその七まで(全14章)、530ページ。かなり分厚いが、少しも苦にならなかった。サイコロの目をぴたりと当てる手はあるのか?といった問題から、ビッグバンの初めは? 一度だけだったのか?(これには興奮した!)、ブラックホールは全て光すら取り込んでしまう筈が、実はモレがあるらしい、とか読んでいて厭きない。
特に、脳が自分自身を調べられるのか?というテーマは考え込んでしまった。そして、「神は時間の外にいる」に至ってはどう考えたら良いのか、暫く悩んでしまった。何を言いたいのかまとめられないが、そのくらい面白かった。多分、もう一度読み返すことになるだろう。このままでは、納得出来ない。


世界を変えた50人の女性科学者たち

2018-05-20 08:10:39 | 日記

レイチェル・イグノトフスキー著  創元社刊


実は、本書は子供向けの本(テーマに惹かれてウッカリ買ってしまったのだが、後悔はしていない)。そのためか、分かりやすいように一人一ページでまとめられている。これが良い! 簡にして要を得ていて、彼女達の業績とその成果、世界をどう変えたかがスッキリ分かる。
と同時に、「女性科学者が正当な評価と処遇を受けるのに、どれだけの時間と、差別・妨害を受けてきたか」も分かってしまう。これを時代の所為、歴史の所為としてはいけない。今も、女性を差別する人達はいるし、それを当然だと思っている人達はゴマンと居る。それどころか、彼女達の成果を横取りした者さえいるのだ(ノーベル賞を貰って平然としている男性科学者)。これ以上は書くまい。書けば男の恥になる。
話が横道に逸れた。ここに取り上げられた人達の他にも多くの人達のリストがある。居るのですねぇ、素晴らしい方達が……。子供や孫達にぜひ読ませたい本です。おっさん達にも読ませたいが……まっ、無理、無駄、無謀、だろうな!


向田邦子を読む

2018-04-01 09:03:08 | 日記

文春ムック  オール読物責任編集

向田邦子が亡くなって、今年で37年目になるそうだ。早いものである。本書には彼女を悼む惜別の辞や思い出が再録されているが、その人達の何人かも既に鬼籍は入られている(山口瞳・森繁久弥・中川一政・團伊玖磨氏など)。
歳月、人を待たず…改めて、そう思う。
ところが。私は彼女の脚本によるTVドラマを観ていないのだ。なにしろ、時代が悪かった! 折しも高度経済成長が始まり、あの時間に家に帰ることは無理だった。今思えば、残念なことなのだが…。つまり私は、彼女のエッセイや対談、そして小説……もっと書いて欲しかった……のファンだったのである。あの時代に、茶の間で観たかった!
どこか…幸田 文に似た匂いがして好きだった。歯切れの良さと、意思の勁さが魅力だった。これが、限りない優しさに裏付けされていることを、今の若い女性達が判ってくれると良いのだが…。
今更に…彼女の全集を読もうかと、思っている。