東京-大阪 単身赴任 旅物語

2003年10月1日から2012年9月30日まで経験した単身赴任。帰省旅行の思い出と、お得情報を綴っています。

北陸廻り

2005-08-26 23:03:00 | 寝台列車
往路:8月26日(金)
八王子→神田:中央特快
神田 →上野:山手線
上野 →金沢:特急北陸
金沢 →松任:特急しらさぎ
松任 →長浜:米原行普通
長浜 →大阪:新快速
運賃:¥450+北陸回数券+¥920+青春18きっぷ1回分

間もなく8月が終わる。

夏の疲れが溜まってきた。どうしても心を癒す旅に出かけたくなった。それで、北陸廻りで帰省する。上越線は初めて通る鉄路。心が躍る。子供の様に何日も前から楽しみにしていた。

いつもの中央線を今宵は神田で降りる。山手線で上野に向かう。上野駅。旅立ちの駅は昔話である。13番ホームだけが、その面影を留めている。





雑踏の中、遠くへ旅立つ人だけに許された空間、5ツ星広場で旅立ち前の一時を優雅に過ごす予定であった。ところが、長距離特急列車専用の待合い場所といっても、ホームの一角に丸テーブルと椅子が並べられているだけ。おまけに、冷房が全く入っていないので凄く熱い。ホームのベンチとたいして変わりはない。

実は、JALのダイヤモンド・プレミアムラウンジのようなものを勝手に想像していたのだが、それは大きな誤りであった。これなら、駅構内の喫茶店でゆっくりと過ごした方が余程快適である。結局、涼を求めて上野駅構内を彷徨っている間に列車の入線時刻が近づいてきた。

22時45分頃、列車はゆっくりとホームに入ってくる。

今宵の宿は 寝台特急 北陸 ソロである。

所謂、ブルートレインに乗車するのは、3年前の銀河以来であり、もちろん、北陸に乗車するのは、これが初めてである。

昨夜は台風のため、北陸をはじめとする東京地区発の夜行列車は運休になった。そのため、旅行を一日延期した人もいるのだろう。そのせいか個室、寝台とも満席とのことである。また夏休み最後の週末のためか、親子連れが多い。

通路を抜けて、自分の部屋にたどり着く。噂に違わず、広くて快適である。ベッドのサイズそのものは、普通のB寝台と変わらないが、スペースにゆとりがある。サンライズ瀬戸のソロと比べても明らかに広く、居住性は良い。これで、電源コンセントがあれば言うことはない。

ただし、車両そのものが古いためか、ガタが来ている箇所もある。カーテンはすぐに外れてしまうし、走行中、蛍光灯の取り付け金具が振動している。個室扉の補修痕も痛々しい。



列車は定刻に上野を出発し、闇の鉄路を一路、北へとひた走る。部屋の明かりを全て消して、ベッドに身を横たえる。窓の外を流れる夜景を独り占めである。東京-大阪、飛行機ならたったの1時間である。にもかかわらず、わざわざ、北陸廻りで12時間かけて帰省する。この優雅なひとときこそが、私を旅路へと駆り立てるのである。

昼間の疲れのため睡魔が誘惑する。せっかくの個室寝台なので、どこまでも車窓を楽しみたい。しかし、どうやら限界に達したので、携帯のアラームを3時半にセットして、眠りにつく。うまくいけば、明日の朝、夜明け前の日本海が見えるかもしれない。



ふと目が覚めると、長岡だった。北陸はここで停車する。夜行バスでもそうなのだが、動いているものが止まると変に目が覚めてしまう。もう一度眠ることもできたのだが、せっかくなので、ここで起きることにした。

深夜の駅は、ひっそりと静まりかえっている。機関車の付け替えのためか、汽笛が鳴り、軽いショックがあった。しばらくすると、列車は動き出す。なるほど、進行方向が逆になっている。

雨が降ってきた。それも結構な量である。昨日の台風の残り雨か。それでも列車は結構なスピードで走り続ける。全く頼もしい限りである。程なく、直江津に到着する。こんな深夜にもかかわらず、ホームには何人かの人がいる。北陸の後で発車する急行能登を待つ人達だろうか。列車は再び深夜の北陸路をひた走る。

糸魚川到着。駅標識が見慣れた姿に変わっている。すでに列車はJR西日本管内に入っている。一気に大阪が近づいたような錯覚に陥る。機会があれば一度は訪れたい場所である。

しばらくすると、列車は海沿いを走る。いくつかのトンネルを越えて、日本海が所々に姿を現す。もし、天気が良ければ、すばらしい朝焼けの海が広がるはずであるが、残念ながら暗雲立ちこめている。暗い海である。

もうすぐ富山である。車内放送が再開される。ここで、改めて睡魔がやってきたので、せっかくの寝台に再び横たわる。金沢まであと、1時間足らずである。

眠ったような眠っていないような、ベッドでぼんやりと過ごすうちに、外は完全に明かるくなった。日が差している。何をすることもなく、金沢に到着し列車を降りる。金沢に旅行に来た気分である。

金沢には、30年以上前に家族旅行で訪れたことがあった。その時とは似ても似つかぬ新しい駅に生まれ変わっている。時の流れを感じる。

しかし、郷愁に浸っている暇はない。間もなく向かい側ホームに到着する特急に乗り換えて、松任まで急がないといけない。特急の自由席は意外と混んでいる。松任までたったの6分なので、デッキで立っていようかと思ったが、空席があったので座る、

金沢から松任まで、たった一駅を、わざわざ、特急で乗り継ぐのは理由がある。金沢発6時21分米原行き長距離普通列車がある。これに乗れば、長浜まで乗り換えなしでいけるので快適である。しかし、残念ながらこの列車は北陸が到着する14分前に金沢を発車してしまう。そこで、この米原行きが特急待ちをする松任までしらさぎに乗って追いかけるという次第である。そのための、乗車券と特急券は、予め昨夜上野駅で購入を済ませている。

松任でしらさぎを降りて、米原行きに乗り換え、本日分の青春18きっぷの旅を開始する。6両編成であったため、車内はがらがらである。特急の混雑が嘘のようである。









列車は昔ながらのボックス席であり、懐かしさがよみがえる。デッキ付近がロングシートに改造されているのと、車体の色が塗り替えられているのを除けば、30年前以上前に、家族旅行の時に乗った急行列車と全く同じである。あのとき、家族4人で座ったボックスに、今、一人悠々と足を伸ばし、あのときと同じ車窓を眺める。平凡な田舎の風景であるが、たしかに、昔見た景色である。

福井到着、ここで長時間停車する。車掌が訪れた折り、18きっぷに日付を入れてもらう。後ろ3両を敦賀で切り離す旨、アナウンスがあった。自分が座っているのは、たまたま前から2両目である。直感でこの車両に座ったのだが、正解だった。

北陸トンネルを抜け、敦賀に到着する。ここで後ろ3両を切り離すと、たちまち車内は満員になった。ここより、米原に向けて南下するが、混雑は駅毎にひどくなる。座席に荷物を置かないように、さかんにアナウンスしている。

長浜到着。ここで多くの乗客が降り、長浜始発の新快速姫路行きに乗り換える。普通列車に飽きてきた頃なので丁度良い。これに乗ると、もう、大阪まで戻ったも同然である。睡眠不足のため、京都まで熟睡である。ぼーとした頭で大阪で降り、関空快速に乗り換えて13時に帰宅する。

富山、金沢、福井、敦賀と廻って、上野から、延々、14時間もの長い旅が終わった。

幼い頃の、あの夏の日の思い出に浸る贅沢な時間。また、それに会いたくなったら、きっと、再びこの鉄路を通ることだろう。あのときと同じ列車で。

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